最終戦争(遊戯王OCG)

登録日:2009/12/21 Mon 22:32:37
更新日:2025/05/15 Thu 12:22:12NEW!
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遊戯王OCGに存在するカードの1つ。

最終戦争
通常魔法
手札を5枚捨てる。
フィールド上に存在するカードを全て破壊する。

概要

第2期最初のパックである「Magic Ruler -魔法の支配者-」で登場した通常魔法。
効果は《ブラック・ホール》と《大嵐》を合わせたものである。
当然コストも相応に重く、手札上限6枚のカードゲームにおいて手札を5枚捨てなければいけない。
これらのことから元ネタはおそらくMagic the Gathering黙示録/Apocalypse*1

イラストは、荒野と夕焼け(朝焼けかも)と立ち上るキノコ雲をバックにして立つ人が描かれている。

ちなみに、立つ人のシルエットがまさに


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である。ナンテコッタイ



小学生でも覚えられる分かりやすいカード名、絶望的なイラスト、そして端的なテキスト(第2期時代)のインパクトはすさまじいの一語。
なにせカード1枚で《ブラック・ホール》と《大嵐》なのだ。当時はまだ「除去耐性」なんて便利なもんはないので、発動さえしてしまえば文字通り何も残らない。
あとは手札に残っていたモンスターを召喚するなり、《死者蘇生》で強いモンスターを蘇生するなりして相手を殴ればいい。

しかしこのインパクトのせいで効果を非常に誤解しやすい。
ひとつ目が「手札を5枚捨てる」というテキストがコストなのか効果なのかが分かりにくい点。冒頭のテキストを読めばわかるが、このテキストだとコストとも効果とも取れてしまう。
当時はまだコストと効果の表記区別が非常にあいまいであり、特に《最終戦争》の場合は「カード1枚で徹底的なリセットを行う」というデザインなのでどちらとも取れてしまうのである。

そしてもうひとつが、「ここまで徹底的に破壊するのだからお互いに手札を5枚捨てるのではないか」という点。
これは特に小学生に多かった勘違い。魔法カードは基本的に《昼夜の大火事》然り《光の護封剣》然り、相手にいやなことを強要するものである。
それにカード名が「最終戦争」なのである。自分だけ手札を5枚捨てて、相手がのうのうと生き残っているというのはやっぱおかしいのでは?という結構素朴な意見。
また、後述するゲーム版の効果が相手の手札に至るまですべて捨てさせるのも勘違いを手伝ったのかもしれない。
当時は「遊戯王wiki」どころかインターネットを自由に使える家庭さえ珍しかったので、こういう勘違いされたルールは結構多かった。

現在では
「手札を5枚捨てて発動する。」
と分かりやすく表記されているため揉めることはないだろうが、今のように分かりやすいテキストになる前にはこういう歴史があったのだ。
今は分かりやすいテキストのカードが大半のようで何よりである(すべてとは言ってない)。


ゲーム版

魔法カード
てきとみかたのしょうかんしたすべての
モンスターとトラップとてふだをはかい
魔法カード
場にあるカードと手ふだを
全て消めつさせる
非OCGルールのゲームでは、OCG版のものとは異なり発動コストが無く、フィールド・手札をリセットという凄まじい効果を持つ。
それらの作品だと相手の手札を能動的に捨てさせる手段はこれ以外には無いか、あってもごく一部のため、貴重なハンデスカードでもある。
カードコストも15と低いため、デッキキャパシティが低い状況でも難なくデッキへ投入できる。

ただし使った時点でこちらのカードも全て消し飛んでしまうので追撃ができず、ターンエンドするしかない。
お互いにデッキトップ勝負を余儀なくされるわけだが直後に相手へターンを渡す以上、先にドローできるのは相手。
そのため、考え無しに使うとこちらが不利になりかねないという…気軽に投入できるが気軽には使えないハイリスクハイリターンなカードである。

しかし、DM7DM8では三幻神が効果破壊耐性を持っているため、《最終戦争》の効果では破壊されない。
強固な耐性を持つ彼らを予めフィールドへ出してから使うことで、場ががら空きになってしまうリスクを消しつつ追撃ができ、一方的な制圧も可能となる。
焼け野原と化したフィールドでも平然と立っていられる彼ら三幻神の姿は、相手から見ればたまったものではないだろう。


遊戯王ラッシュデュエル

遊戯王ラッシュデュエルでは「レジェンド覚醒パック」にて実装。
ルールにより毎ターン5枚にできるため、前のターンに最終戦争を伏せておくなりすれば発動はOCGよりも遥かに容易。

しかし、発動した後に何もできないという問題がOCG以上に立ち塞がる。
現状では「破壊された時に発動する効果」「フィールドから墓地へ送られたら発動する効果」「墓地にいる時に発動できる効果」と言ったカードが存在しない。
そのため発動した後の攻め手は必然的に手札から出すことになるが、ラッシュデュエルでも手札を6枚以上抱えながら動くのは難しく、そういった動きをするとデッキ回転が鈍ってしまう。
相手のフィールドを吹き飛ばしても、次のターンには相手の手札は5枚なのでサンドバッグにされてしまう。

何より各種デッキに1枚しか入れられないLEGENDカードなのが問題でブラック・ホールを使ったほうが良い場合が多く、魔法のLEGENDカードはモンスター・罠と比べても超激戦区。
結局の所LEGENDの中でも最下位を争う性能となっており、LEGENDじゃなかったとしても弱いと言われてしまうぐらい厳しい立ち位置となっている。



非常にピーキーな性能から使いこなせるデッキがほとんどなく、ほとんど「効果は派手だがコストにまったく見合ってない」という評価になりがち。
「下位・クズカードを評価するスレ」でこのカードが評価された時の評価文を置いておく。

このカードに込められた願いにデュエリスト諸君は気が付いているだろうか。

このカードのイラストにはキノコ雲が描かれ、頭を抱えた男が一人立っている。
そう、このカードはかつての第二次世界大戦を意識したカードなのだ。

このカードを使用した場合、手札も場もほとんどなにも残らないだろう。戦争も同じである。ただ失うだけ。

この文章を書いている私自身もであるが殆どのデュエリストは戦争を経験していないだろう。
そんな戦争を知らないデュエリスト達に平和の尊さを伝えるのがこのカードの真のアドである。

このカードの生まれた時代の主なデュエリストの年代層からして、
きっと制作者は「あの戦争がこのカードであそぶデュエリストたちにとって最後の戦争であってほしい」と願って作ったに違いない。

同時に当時のデュエリストたちに伝えたかったに違いない。
「戦争しても何ものこらないんだな」
ということを。

その思いは、今や世界を駆ける。

遊戯王は世界的カードゲームとなり世界各国でアニメやグッズが展開し、多くの子供達もデュエリストとしての道を進んでいく。
その時に出会うのがこのカードだ。

きっと彼らの中には「Wow! This is Japanese history!!」と初めて日本の歴史について知るものもいるだろう。

そして同時に先ほど述べた戦争の辛さ、苦しみを理解するに違いない。
このカードは世界中のデュエリストにまで効果を及ぼす幅広い効果範囲をもっている。

今の時代はグローバル化が進み遊戯王は世界大会が行われるまでになり、なんとネット中継されている。

そんなときに思い出してほしい、70年前までは、
机を挟んで世界のデュエリスト達がデュエルを楽しみ笑い合うなんて考えられなかったという事を。


「最後の戦争であってほしい」という願いを伝え続けること、
このカードの真のコストは全カード中最も大事で重い「平和維持コスト」ではないだろうか。


真面目な話


①手札コストが重い

手札を5枚捨てなければいけないというのは、事実上手札がこのカード+他5枚の合計6枚を要求するということである。
メタモルポット》を使っても5枚。原作版《天よりの宝札》相当の効果を持つ《サイレント・バーニング》《未来の沈黙》や《蘇りし天空神》でようやく6枚。尋常ではなく重たい。
インフレにより宝札効果が容認されつつある現状でさえ、余程ドロー手段に恵まれたデッキでないと現実的には撃つこともままならない。
凡骨の意地》や《光神テテュス》級の爆発的なドローが行えるデッキなら採用の余地は一応あるのだが、以下の問題がさらに立ちはだかる。

②自分側のフィールドも巻き添えに全体除去してしまう

《最終戦争》本体を消費し、5枚捨てて、さらに自分フィールドにカードがあればそれらも情け容赦なく消し飛ばされる。
破壊耐性を持っていたり、自己再生が行えるモンスターならコンボにできるだろうが、5枚のコストを確保しつつそれらを並べる難易度の高さはもはや論じるまでもない。
自分フィールドが空であれば損失を最小限に抑えられはするが……。

③カードアドバンテージを取りにくい

《最終戦争》が発動された時点で、自分は《最終戦争》1枚と手札コスト5枚の計6枚、カードの枚数面でディスアドバンテージを被っていることになる。
これで破壊できたのが1枚や2枚などでは到底割に合った話ではない。
そもそも《ブラック・ローズ・ドラゴン》のようにもっと使いやすい全体除去もあるし、カード1枚から展開できる選択肢の強さ・多彩さなどはこのカードが印刷された20世紀末よりもはるかに増えている。
カード1枚の質が極めて高くなった時代に、あえて前世紀のロートルとコスト5枚、合計6枚のカードを手札から使ってまで相手の盤面を更地にしたいだろうか?
損失を補填するには相手フィールドに大量のカードが存在する状況で、それらを一網打尽にすることを求められるわけだが……。

④発動を通しにくい

フルール・ド・バロネス
シンクロ・効果モンスター
星10/風属性/戦士族/攻3000/守2400
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):1ターンに1度、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
(2):このカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、魔法・罠・モンスターの効果が発動した時に発動できる。
その発動を無効にし破壊する。

(3):お互いのスタンバイフェイズに、自分の墓地のレベル9以下のモンスター1体を対象として発動できる。
このカードを持ち主のEXデッキに戻し、そのモンスターを特殊召喚する。
現在の環境ではこんな感じの妨害モンスターが、平然と複数体並んだ状態でターンが返って来るのは珍しくもなんともない。加えて正体不明のリバースカードも併存していることだろう。
「相手フィールドに大量のカードが存在する状況」とはすなわち、「相手が大量の妨害・防御手段を構えている」ことと同義なのである。
相手からすれば通すわけにいかない効果である上、手札コストも甚大と止め所は明白であり、確実に何かしらの対応はされてしまうことは想像に難くない。

……とまあ、このカードの評価はあまりの使い難さからお世辞にも高いとは言えない。発動しても勝てるとは限らないどころか、そもそも発動すらできないデッキが大半だろう。
ではさっぱり使えないのかと言われれば環境下での採用例が存在するせいで、一概に弱い・産廃とも言い切れない。


三原式

このWikiにも個別項目が存在する、由緒正しきデッキ破壊系1キルデッキ。かつての禁止カード《サイバーポッド》を複数回リバースさせて相手のデッキを枯渇させ、《手札抹殺》の強制ドローでとどめを刺す。
しかし《サイバーポッド》は自分にもドローを発生させるため、状況によっては《手札抹殺》で自分がデッキ切れを起こしてしまう可能性がある。この溜まっていく手札を減らすために《最終戦争》が使われていたのである。
後に残手札全てをコストに要求する《連続魔法》の登場で《最終戦争》はその役割を失うことになった。

【最終異次元】

《最終戦争》の重いコストを逆手に取り、《次元の裂け目》と組み合わせて《次元融合》用の除外モンスターを確保し、相手のカードは《最終戦争》で《次元の裂け目》もろとも除外させずに墓地へ送る。
あとは自分だけモンスターを展開し、更地に降り立った5人の最終戦士で殴り殺す、という1ターンキルデッキ。「コスト」と「効果」の両方をきちんと生かせるのならしっかり強い、という現実的な運用がなされた一例。
基本的には《凡骨の意地》と併用される。《凡骨の意地》が「手札コスト兼フィニッシャーの確保」「キーパーツのドロー」などを行ってくれる。《リロード》などと組み合わせれば結構素早くパーツが揃ううえ、《最終戦争》の弱点を長所に変えられるところから結構人気のあるアーキタイプだった。
やってることが1ショットキルなのであんまりウケがよくないため、《最終戦争》とともに懐かしんでもらうために「原作モンスターや懐かしいモンスターを採用する」などで不快感を和らげるテクが存在していた。《冥府の使者ゴーズ》の登場後はあんまり推奨されない構築なのだが、ぶっちゃけ相手の除外ゾーンに《仮面魔獣マスクドヘルレイザー》《超伝導恐獣》《マスター・オブ・OZ》みたいなデカブツが落ちてたらその時点で詰むので……*2

【ダイヤモンドガイ】

かつては徹底的に相手のリセットを狙うタイプのダイヤモンドガイで使われることがあった。手札を5枚捨てる部分を無視するという使い方なので、ここに書かれている例の中では割と特殊な方。
おジャマ・デルタハリケーン!》などの一方殺系が優先されるため、このカードはそれらのカードを徹底的に採用した後、10枚目や13枚目以降のリセットカードということになる。
「自分のフィールドも更地になってしまう」など弱点が多いので、比較的正気のプレイヤーにはあまり好まれない。しかし正気を失ったデュエリストは「ねぇ、知ってる?対戦相手を全体除去で殴り続けると死ぬんだよ」といわんばかりにダイヤモンドガイで全体除去を繰り返すため、このカードも立派に採用候補に入ったってわけ。
《エクスチェンジ》で相手に押し付けてもまず発動されない、というか発動を狙って手札を貯めてくれたらしめたものである。

幻影騎士団

幻影騎士団はほとんどのカードが墓地効果を持っているため、コストで捨ててしまっても大きな問題にならない。
主に【神碑】へのメタカードとして運用されており、「魔法なので効果モンスター無効の影響を受けない」「全体除去なので身代わりで対処されない」点を活かして使われている。

これらの例を見てわかるとおり、「全体除去を生かす」というよりは「手札コストそのものを利用する」デッキで採用がなされる傾向にある。
最近は逆に手札誘発や墓地誘発なんかのトリガーになりかねないが、ついでのように全体除去ができるので、「手札を5枚捨てながら相手の妨害を挫いておく」ことも可能。
まだ手札誘発なんて俗語がなかった頃は、このコスト・効果の両面から愛されたものである。
魔轟神】【未界域】のような「捨てるコスト」がアドバンテージに転じるデッキが台頭してきた暁には、《最終戦争》が環境で輝く日が再び来るのかもしれない。

非常にピーキーな性能をしているので、ぶっちゃけ「平和維持コスト」なんて強引な世迷言を言わなくても、この重いコストをうまく使えるテーマなりサポートなりが登場しないとも限らない。
「墓地発動」のように、手札やフィールドにカードがなくても行動できる選択肢も増えてきている。
過去に活躍したりリメイク版や上位互換が印刷されて時代を終えたカードたちに比べれば、《最終戦争》自体にまだまだ活躍できる余地はあるのではないだろうか。
実際最近でも、マスターデュエルで神碑対策に注目されてたことがあったようだし。


現在でも遊戯王色のあまり濃くない動画などでは、「遊戯王ネタに絡めた爆発オチ」などで使われる。
「最終戦争」という字面のどうしようもなさと絵柄の絶望感が笑いを誘う。初期の遊戯王ならではの独特の味があるイラストとカード名、ド派手な効果、そして何より知名度があるからこそ務まる役割だ。
つまり爆発オチなんてサイテー!するのに、この上なくうってつけのネタカードってことである。


余談

アニメDMのアニメオリジナルエピソード、遊戯vsレベッカ戦で《ジャッジメント・ボンバー》なるカードが登場している。使用者はレベッカ。
そのカードは「手札を5枚捨てて、フィールド上のモンスターを破壊する」という《最終戦争》に似た発動コストと破壊効果を有していた。
彼女は《シャドウ・グール》の効果を活用するデッキ構成だったため、手札に溜まったモンスターを一気に捨てる手段として採用していたのだろう。

……だったら《最終戦争》を使えばいいだろって?
そこは手札も丸ごと捨てるとなると、握っていた《シャドウ・グール》まで墓地に行ってしまうのを嫌ったか、
あるいは「戦争」という物騒なワードをアニメで出すのはマズかったので、それを連想させない名称のカードにした……的な理由なんじゃないですかね。


暇な時間を5時間捨てる。
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最終更新:2025年05月15日 12:22

*1 当時はMTGに範を取ったカードが結構多く、中には遊戯王の方がデザインをうまく使いこなせるようになったというカードもある。

*2 当時の通常モンスターの最高攻撃力は3000である。