ベリアル(悪魔)

登録日:2012/01/02 Mon 22:19:29
更新日:2024/11/02 Sat 21:40:30
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「キリストとベリアルの間に何の調和があるか?」
「コリントの信徒への手紙二」




◆ベリアル◆

「ベリアル(Belial)」はユダヤ/キリスト教の大悪魔
名は「無価値(beliya'al)」を意味する。
ユダヤ/キリスト教に起因する神秘学では最も古い世代に属する悪魔めいた存在の一人で、かつてはサタンの代表格とされていた。

中世以降の悪魔学では、
ルシファーに次いで創造された古い天使にして、人間に知恵を授けるべく地上に降りたが、女の色香に迷い堕天した、怠惰と悪徳を愛する者」とされる。
地獄の八十の軍団を率いる大悪魔で、ソロモン王に使役された悪魔としても特に有名だが、ソロモン72柱では序列六十八位に置かれる(別に力や地位の順位では無いが)。
また、その出自から七つの大罪では「傲慢」を司る悪魔とされる場合もある。


ベリアルは旧来には伝統的な悪魔の姿で顕されていたが、中世に堕天使としての設定が固まると炎に包まれた戦車に乗った美しい天使の姿で現れるとされる様になった。

一方で、ゲーム『女神転生』等に見られる様にサタンの異称の一つである「古き竜」に倣ったドラゴンの姿で描かれる場合もある。

ベリアルは悪魔の中でも特に悪徳を愛する者であり、美しく心地よい言葉で語りかけ、巧みに他者を欺くと云う。
これについては、芸人随一の「ええ声」にも喩えられる事からも明らかであるが、ベリアルは生来の嘘吐きであるので決して信用してはならないとされる。

旧約聖書にて、悪徳の果てに硫黄の火で灼かれたソドムとゴモラの町を堕落させたのはベリアルであるとされる。

また、弁舌が巧みであるとの設定から、イエスが悪魔の権利を不当に干渉していると訴えたとの説話でも知られる。



【由来】

名前の原義は前述の様に「無価値(知らんがな)」で、
ユダヤの教義や説話集に於ける敵対概念をディスった言葉が一人歩きした事から誕生した概念であったらしい。
サタン(障害)と同じく、元来はベリアル(イミフ、死んでいい位のニュアンスか…)は極々一般的な単語であったらしいが、
ヤハウェが唯一神として善の一元神として生まれ変わる際に分離した「悪魔」の呼び名として定着した様である。

尚、当初のベリアルは単に悪徳を為す存在でしか無かったが、
反逆天使ルシファーの概念がユダヤ/キリスト教徒の間に劇的に広がった後には共に堕天使であると考えられるようになり、
その最も強力な配下の一人とされたと考えられている。


ベリアルは新約聖書外典の『バルトロマイの福音書』『バルトロマイの質問』に於いて、バルトロマイに向かって、
かつては神の使者(サタナエル)と呼ばれていたが、神の似像(アダム)を拒否した後は地獄(タルタロス)を管理する天使を意味するサタナスと呼ばれるようになったこと、
自らが神によって造られた第一の天使であり、ミカエルガブリエルウリエルラファエル、ナタナエルらが自らに続いて造られたと語ったとされる。

……上記の様に、この説話にもルシファー(堕天使)の神話の影響が見られるが、
そもそも、ルシファー(金星)が神(太陽)に挑み敗れたとする伝説はユダヤ/キリスト教以前の古代宗教に原型が見られるとの事で、
それこそが反逆天使ルシファーの概念が人々に受け入れられた原因でもあった。

また、ユダヤ…特にキリスト教に於いては悪魔は堕天使(反逆天使)で無ければならず、その意味でもベリアルが堕天使となったのは必然だったのだろう。



【悪魔】

最近の悪魔項目で、激しく混乱している方も居る様なので、改めて中世までの悪魔の概念を紹介しておく。

■堕天使(デビル)
ユダヤ/キリスト教に於ける悪魔の基本形。
……何故ならば、この世の凡ては唯一神が創った事になっているので、悪魔も神の創造した存在で無ければ教会が困るから……である。
つまり、キリスト教に於ける悪魔は決して最初から存在する純粋悪等では無く、最後に敗れる事が約束された存在である。
特に、中世の黙示録に倣いイメージが固められた悪魔の王としてのサタンは強大な信仰を受ける反面、
神の万能性を脅かさない為に原型となったルシファーらの様には神に並ぶ全能を語られる存在では無い。

……これに異を唱える神秘学者は神学を基本としつつ独自の悪魔の系譜を生み出すべく苦心しているが、その明確な答えは遠のくばかりであるらしい。
※事実、キリスト教の悪魔は人間を堕落させる位の役目しか仕事が無く、旧世界を滅ぼすのは神自身である。

■魔神(デーモン)
中世の悪魔学の横行と共に認められる様になった存在で、キリスト教が排斥した古代宗教や土着宗教の神々が悪魔として断罪された存在。
……尤も、明確に区分が為されている訳では無く、由来を辿ればそうと解る程度でしかない。
事実、本来は他宗教の神であるベルゼブブアスタロトは悪魔として高名であるが故に堕天使(デビル)として扱われている。
……これらの説を採用したのは教会では無く、中世のオカルティズムに取り付かれた神秘学者である。

■天使(エンジェル)
古代宗教の神々は西欧でも人気の高いギリシャ神話の神々を見れば判る様に、かなり人間に近い性格をしていた。
しかし、ユダヤ/キリスト教では自らの神を人間から逆に遠ざけ、更に唯一の神の概念を押し付けるべく理想の神の属性にそぐわない要素や概念を排斥した。
そうして神から分離した悪を背負ったのが「悪魔」なら、神の代わりに人間との仲介役を背負わされたのが「天使」である。


【主な登場作品】

◆ゲーム『女神転生』シリーズ
特に有名なのが『真・女神転生
本人はともかく(イベントの噛ませ)、アリスたんを連れて来た赤おじさんとして登場。


◆ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズ
初登場は「ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々
ハーゴンの部下の一体として登場する。
アークデーモン系の最上位種で、最強のステータスを誇る悪魔。
イオナズンが凶悪。さらにはベホマも唱える。

後にドラゴンクエストⅧ 空と海と大地と呪われし姫君でザコ敵として登場。
しかし隠しダンジョンに出現するため、強敵であることには変わりはない。
お馴染みのイオナズンのほか、激しい炎を吐いたり、テンションためを使ってくる上2回行動する事も多い。
攻撃力もあのレティスを超えているため、侮れない。

◆ゲーム『パズル&ドラゴンズ
燃え盛るバイコーンの戦車を駆る、紅蓮の髪を持つ魔神卿。堕天使のため、コウモリ翼ではなく鳥翼を生やしている。
レアガチャ限定のモンスターだが、神タイプではないので初期はゴッドフェスでピックアップされる事は無かった。*1しかしガチャキャラが増えるにつれ後にちゃんとピックアップされるようになる。
スキルは敵の攻撃を受けると火属性攻撃で受けたダメージの3倍分与えるというものであまり使い道が無かったが、後に上方修正で木ドロップを火ドロップに変化させる効果が追加された。更に後に究極進化、超究極進化、覚醒進化、転生進化が追加され、非常に強くなった。

◆ゲーム『モンスターストライク
緑色の長い髪を持つ美男子。…以上。
いや、戦えなくはないんだが、上のパズドラの方と比べて本当に説明する点がこれくらいしかないってくらい弱い。タダで手に入るキャラな上に星4モンスター。その上アビリティが魔王キラーLの1つしかないので育てる価値が低いのである。名前負けとはまさにこの事。
…が、2021年4月30日に彼にある転機が訪れようとは誰が想像しただろうか。


◆ゲーム『エルシャダイ
個別項目参照。

◆ウルトラシリーズ
M78星雲・光の国40万年の歴史でただ一人生まれた悪と力に溺れた反逆者・ウルトラマンベリアルの名前の由来。
善人しかいない光の国の中で正義と理想に唾を吐いた「絶対悪」という意味では堕天使と言えるかも。
最近息子も登場したが、こっちは顔が怖いだけで正義の味方です。

◆漫画『ゲゲゲの鬼太郎
髭もじゃの中年男の姿だが、「脳を持つ水爆」と称される危険な悪魔。
明治元年にポルトガル商人に化けて来日し日本を支配しようとしたが、鞍馬山の烏天狗に見破られ封印される。
しかしねずみ男が封印を解いたため、現代日本で暴れ回った。
身体のパーツを無数に分身させた巨岩を作り出す術を有する。

◆ゲーム『Devil May Cry4
ネロが序盤に戦うことになるボスキャラ。中盤以降に今度はダンテが再戦する。詳細は個別項目参照。

◆ゲーム『ブルーアーカイブ -Blue Archive-
ゲヘナ学園に通う自称アウトロー集団、『便利屋68』のリーダー陸八魔アルがベリアルをモチーフとしている。
(陸八魔→68魔→序列68の悪魔、ベリ「アル」、対価と引き換えに何でもやる等)


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最終更新:2024年11月02日 21:40

*1 一応、ゴッドフェス外伝なるガチャイベントでピックアップされる事はあった。