パブリク突撃艇

登録日:2025/07/10 Thu 12:29:00
更新日:2025/08/03 Sun 22:25:06
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「戦法は正攻法。突撃艦パブリクによるビーム攪乱幕を形成後、全艦正面より進行する!」


パブリク(PUBLIC)とは、ガンダムシリーズの登場兵器。
地球連邦軍が運用した、宇宙用突撃艇である。


【基本設計】

「ミサイルを抱えた不ッ細工なのいるけどアレなんだア?」
「パブリク・タイプの突撃艇ですよ」
「突撃艇!? てこたぁまた厳しくなりそうだな。おお嫌だ嫌だ」

全長ははっきりした設定こそないが、劇中描写ではそれなりの大型機と思われる。
(40mぐらいという説もある)
やや寸胴気味な船体に、後部には本体に比べて大きめのブースターが左右に一対、下部には二対の伸縮式アームがある。
このアームの間には二発の超大型ミサイルを搭載できる。というより、超大型ミサイルの上にパブリクが抱き着いているようにも見える、やや異様な容姿をしている。
上段のカイのセリフが全てを物語っているというかなんと言うか。

このミサイルは、一年戦争末期にはメガ粒子ビームを散らしてしまう粒子を詰め込み、いわゆる「ビーム攪乱幕」を形成していた。
うまく形成できれば、戦艦の主砲や要塞の大型砲からのメガ粒子ビームを封殺できる。
もちろん通常の火薬弾頭ミサイルを搭載することも可能であり、対艦攻撃にも有用。

またこの超大型ミサイルに比べると目立たないが、船首部には機銃もしくはミサイルランチャーが設置されており、これもガトル爆撃機を撃破するぐらいの火力はある。
この艦首の武装については「ミサイルランチャー」という設定が多いものの、劇中ではどう見ても機銃として描かれていた*1

運動性では、機体後部に左右二基のブースターがある。
このブースターも本体に比べてなかなか大きく、推進力はかなりのもの。
加えて機動力も割と高く、劇中では逃げるガトル艦爆を猛追し、撃墜すると同時に急速離脱する描写がある。
なお、大型ミサイルを発射すると、ミサイルを抱えるのに使っていたアームは縮めるため、邪魔にはならない。

このブースターとは別に、長距離移動用のブースターユニット(燃料タンク付き)を増設できる。
こっちはやや小型だが、噴射を最小限にすることで、ルナツーからソロモンまでを問題なく航行するほどの航続距離を持つ。

なお、マゼラン級戦艦サラミス級巡洋艦の艦載機とする設定もあるが、劇中の様子を見る限りでは艦載機としての運用は為されず、遠方の基地から直接長期航行をする船である。
(ジオンの突撃艇ジッコも基地から直接発進するタイプ)

防御面についてははっきりと断定し辛い。
撃墜描写は多いので堅牢ではないとも思えるが、撃破される場面のほとんどは要塞からのビーム砲や、ガトル艦爆の対艦ミサイルの直撃によるものであり、あんなものを食らえばジムでも盾ごと砕かれそうな勢いなのである。
ゲームのムービーでは腹を見せたところに黒い三連星のザクにマシンガンを打ち込まれて爆砕しているが、急所だからなのか、あるいはルウム戦役の初期型で、ソロモン戦以降に使われたタイプはより堅牢になっているのかなど、いろいろ分からない。

……というかガンダム世界では戦艦でもMSでも割とポンポン砕けていくので、防御力で特筆する機体なんてのは一部の高級試作機ぐらいしかないのだが。

故に損耗率は非常に高く、一説には未帰還率9割とも。
流石にこんな未亡人製造機がこれ以上開発されることはなくパブリクの系統はあっさりと途絶えた。
一方でビーム兵器は更に発展していきそれらの脅威に対抗するためIフィールドをはじめとした受動的な対ビーム防御手段が開発されることになる。

【劇中の活躍】

「ビーム攪乱幕成功です!」
「よし! 各艦任意に突撃!」

ソロモン攻略戦からア・バオア・クー攻略戦にかけて多数が参加。
艦隊の先鋒として敵陣に突撃して特殊ミサイルを発射、ビーム攪乱幕を形成して、要塞据え置きの大口径メガ粒子砲を封殺する役割を担った。

ソロモン攻略戦では、ヴォルフガング・ワッケイン大佐指揮下の第三艦隊で集中運用され、予定通りにビーム攪乱幕の形成に成功。
ジオンの要塞砲を封じるとともに、ジオン艦隊をソロモンから前線に引き出させる役割を担った。
また、マクファティ・ティアンム中将麾下の第二連合艦隊が展開中だった、ソーラシステムを要塞砲から守る役割も同時に果たしている。

もちろん要塞近くにビーム攪乱幕を形成してしまえば、連邦艦隊もソロモン要塞への直接砲撃はできないが、
艦砲の一部を実体弾に換装したり*2、ビーム攪乱幕より前進してきたジオン艦隊を狙うことで、成果を上げることができた。

ただし、パブリクのビーム攪乱幕形成は、「まだ攪乱幕の形成されていないところに展開する」ものである。
つまり、敵の要塞砲や艦砲が一撃必殺のメガ粒子ビームを集中させているど真ん中に突っ込み、肉薄してミサイルを発射する、というすさまじいものであった。
正直無人機ではないかと疑いたくなる戦法である。*3
銃殺相当の懲罰兵をかき集めて乗せていたのだろうか。「これで生還できたら罪を免じる」とか。

また、ミサイルを発射した後は身軽になり機敏な動きもできるが、ミサイルを抱えた状態では機動力が落ちるようで、要塞の長距離砲やガトル艦爆に撃墜される機体も目立った。
ただしミサイルを発射してからは、ガトルを駆逐するほどの機動力と火力を見せているので、宇宙戦闘機あるいは宇宙駆逐艦並みの活躍はできた模様。

ともかく、ソロモン攻略戦においてはパブリクも優秀な成果を上げることはできた。

「敵は、ビーム攪乱幕を張りつつ……」
「ミサイルで対抗しろ。モビルスーツ隊はまだ動かすな」

続くア・バオア・クー攻略作戦でも、やはり先鋒としてビーム攪乱幕の形成を狙う。

ア・バオア・クー自体が「要塞砲による火力集中で敵艦隊を撃滅する」構造となっているため、その頼みの要塞砲をビーム攪乱幕で制圧できれば戦いを優位に進められるはずであったが、
先のソーラ・レイでパブリクの数が減ってしまったことと、ソロモン戦の情報から厄介さを学んでいたギレン・ザビがミサイルによる集中迎撃を指示したため、
思ったほどにはビーム攪乱幕の形成ができず、連邦艦隊は要塞砲も加えた強烈な砲撃のなかを死に物狂いで前進せざるを得なかった。
実はジオングはビーム砲しか搭載していないためにビーム攪乱幕にめっぽう弱い。シャアはギレンのおかげで命拾いした。

もっとも、連邦軍の練度と戦意はそうした蹉跌を突破するほどのものではあったが。

また、一部のパブリクはこちらでも駆逐艇のような働きを見せている。

テキサス・ゾーンに攻め込んだワッケイン艦隊に六機のパブリクが登場。
こちらは耐ビーム攪乱幕ではなく、爆薬を詰め込んだ大型ミサイルを搭載。さらに、大型ミサイルを発射して身軽になった後は小型ミサイルで弾幕を張っている。
この小型ミサイルの弾幕でザクを二機撃墜している。
実は「ザクが11機出現」「パブリクがザクを2機撃破」「ガンダムが5機、ガンキャノンが1機、ジムが1機、ザクを撃破」とつづいて「ザクが4機撤退」とあって、数が合わない。
その後マ・クベたちが「ザクが7機やられた」と繰り返すので、なぜかパブリクの戦果がなかったことになっている。「ザクの核爆発の光が見えた」とか描いてあったのに。

レビル艦隊にも多数のパブリクが配備された。
グラナダ攻略時には先鋒としてビーム攪乱幕を展開。キシリア軍のビーム砲を塞ぐと、その後はミサイルによる爆撃に切り替えた。

アクシズをソーラシステムⅡで攻略するにあたり、チェンバロ作戦にならって作戦が行われた。
それでパブリクも投入され、やはりビーム攪乱幕を形成している。

【バリエーション】

  • 機動戦士ガンダム0079版
近藤和久による「機動戦士ガンダム」のコミカライズ版。
こちらではデザインが大きく変更されており、まずミサイルが超大型化。搭載する数も一発のみになり、「ミサイルを抱えた」というよりも「ミサイルに乗った」というような様子になっている。
さらに宇宙戦闘機らしく主翼と、その先端にブースターユニットらしきものが搭載された。
設定も変わっており、量産型Gファイターを設計のベースに装甲を増設・強化して、敵戦火の中での生存性を高めている機体らしい。
一方で装甲強化と引き換えに重量が増え、機動力は量産型Gファイターよりも落ちるとのこと。
また、相手は要塞砲であるため、装甲を強化されたはずの本機もかなり破壊されている。

  • ガンダム・センチネル0079版
モデルグラフィックス1990年6〜7月号に掲載されたセンチネル0079に登場(別冊には未掲載)。
他のメカニック同様カトキハジメによるリファインが成されており、上記近藤版とは逆に主翼は安定版程度の小さいものになり、主脚は伸び縮み式ではなくトラス状の構造を持った使い捨て式のものに変更、全体のデザイン含めいかにもSF的なアレンジがされている。

【余談】

ジオンのカウンターパート的な兵器としては「ジッコ突撃艇」がある。
……しかしこのジッコ、登場するエピソード自体が少なく、良くも悪くも印象的なパブリクに比べて非常に地味。
劇中の活躍といえば、せいぜいグラナダ艦隊に混ざってただ移動しているだけである。
あと名前と形状がひどい
いちおうはパブリクよりは強力とされるが、より洗練されたガトル戦闘爆撃機と用途が被っていることもあって、ジオン軍でもあまり用いられなかったらしい。
なおジッコは「ギレンの野望」のムービーでは、ザクに比べるとかなりの大型機として描かれている。
(具体的には、手前を航行するザクより奥にいるジッコが大きく映っていたり、ほとんどくっついているザクよりジッコが三倍ほどの大きさがあったり)
パブリクはジムやボールと接近して映る描写がなく今ひとつ大きさが分かりにくいのだが、ジッコとパブリクが同じようなサイズと考えた場合、やはりパブリクもなかなか大きそうである。
「小型艦艇」というのはあくまで「艦艇としては小型」ということだろう。

ゲームのムービーにおいては、ミサイルを搭載しない状態のパブリクが、ソロモンのスペースゲートに入港したマゼラン級を誘導する場面がある。
小型艦艇として雑務も担う模様。

Gジェネレーションシリーズ』でも登場。ミサイルを撃つとミサイル無しのグラフィックになるというちょっと凝った仕様がある。
そのミサイルの威力はまぁまぁ高いため削りに最適。自軍で使うには心許ないが、ゲスト軍で配備されていることも多いので使う機会は多いかもしれない。

機動戦士ガンダムUC』に登場したドゴス・ギア級大型戦艦2番艦『ゼネラル・レビル』がアニメではビーム攪乱幕を形成する際に、パブリクによく似たミサイルを妙にアクロバティックな投射方法で発射するシーンがある。
大きさや機能が同等かは不明だが、パブリク本体はともかく運用されたビーム攪乱幕敷設ミサイルの装備は未だに連邦軍にて現役な模様である。

機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の最終話にもパブリクを元に改造した宇宙船と思しきものが登場、カネバン有限公司の面々が運用していた。
この時はミサイル保持アームの部分に大きなコンテナを装着しており、内部にMSを格納していた。


追記・修正・突撃をお願いします。

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最終更新:2025年08月03日 22:25

*1 おそらく演出と描写上の都合。似たような例として、ジャブローでウッディ大尉が乗っていたホバークラフト「ファンファン」も、本体上部に設置されている武装はどう見ても「5連装ミサイル」だが劇中ではマシンガンにしか見えない演出で描かれていた。

*2 ワッケインの旗艦レナウンは艦首砲塔を実体弾に変えていた。その後のテキサスコロニーの残党討伐戦では全砲門メガ粒子式に変えている。

*3 かなり後の作品だが『00』では無人の戦艦に粒子ビーム攪乱幕を満載し敵に突撃させたことがある