トイター教(有:Toitaqsakt)とは、トイター=ハグナンスケ(Toitaq=Hagnanske)が開いた宗教でハタ王国の国民のほとんどが信仰する一神教*1


概要

 万物の存在要因であるとされる唯一の神(aru, armrei)の存在を信仰し、その神の定めた様々な規範に基づいて生活し、高みを目指す(イミル)ことを目指す一神教。トイター教によって人々の生活を規定し、敬虔なトイター教徒であり続ける最大の方法として唯一の預言者であるトイター=ハグナンスケが直接後継者に指名した王家であるスカルムレイを中心に国家が構成されている*2

名称

 日本語では「トイター教」と訳される。彼らの自称では「Toitaqsakt(トイターサクト)」であり、日本語に直訳すると「トイターの宗教」となる。無論、「トイター」というのは創始者であり預言者とされるトイター=ハグナンスケに由来している。ほとんどの派閥ではこの「トイターの宗教」という自称を容認している。
リパライン語ではユーゴック語の"Toitaq"が音訳され"toytar(トユター)"と呼ばれるか、人名としての「トイター」と区別する場合は「トイターの宗教」という意味合いで"tvasnarl'd toytar"と呼ばれる。

教義

 トイター教の教義(基本理念)の整理やそのほか応用的な法学は現在のハタ・スカルムレイ朝の成立より考えられ始めたが、より飛躍的となったのはtoi.1000年ごろ以降の、スステ=スカルムレイによる完全封建政治(スステ政治)の開始とトイター教対立の鎮圧からである。トイター教派それまでに10以上の派閥に分離したとされているがそれぞれの派閥は段階をもって発展を遂げているとされ、原理派であるアッタクテイ派の教義の考察から進められた。

トイター教における預言者

 トイター教には神からの教えを受け取りそれを人類に伝える使命を持った「預言者(ktese)」の存在が認められる。しかし、地球上の一神教と異なる点として、神の言葉を伝える人間はトイター=ハグナンスケ以外に認められていない。

ディアン

 「ディアン」という語はユーゴック語の"dian"に由来し、「理由」「根拠」といった意味合いを持つ。トイター教世界ではまずはじめに神があり、そこから万物を創造しすべての物体がその創造者に依存するようにした。この依存する対象を「媒体(kariahonar)」と呼ぶ。kariahonarという単語について本来「背負う者」という意味であり、それ以外の用法で使われるsumalとは区別される。
世界のすべての物は生命の有無を問わず、このディアンから存在できるとされている。神はその頂点に立つ存在であり、どんな事物をなくそうとしてもこの世界においては神は必ず存在できるとされている。
ディアン論においては人間の存在についても規定されており、これを特に「トイター法学」と呼称している。このトイター法学の存在そのものについてはそれ以外の生物とは別に人間の為に特別に神によって定められたディアンであり、これに反すれば存在を否定される。

イミル

先述の「ディアン」には二つの段階があると後世のトイター法学者により位置づけられている。そのもっとも頂点に君臨する究極のディアンが「イミル(imir)」である。"imir"はもともと「持論」という意味を持っている。
第一段階が特に跳躍を求めずに、神の定めたディアンに従って生活をし生涯を全うすることである。これを果たしたものは死ぬと同時にイミレホナル(imirehonar, イミルを果たしたもの)になる。普通に生活するうえでのイミルとしては、一日の生活の仕方、葬式・結婚などの儀式、幾つかの祭や祭事などを真面目に取り組み参加することなどが決定されている。
第二段階では新たなイミルを見つけることにある。神が最初に定義したディアンより自然的に発生した新たな理論は人類にのみ自覚し、発見できるとされており、これもイミレホと言われる。これを果たすと生きたままイミレホナルとなることができ、その後の生活態度に関わらず、安定した生活ののちに死期を迎えることができる。
「イミルを得る」ことをimirに動詞化の接辞である-ehoをつけて"imireho"と言われる。またそれを果たした者をイミレホナル(imirehonar)と呼ぶ。
 それに対して、イミルを果たさなかった者は「存在否定」をされる。これは論理的には神が別個に定めたディアンに反しているものは人間とは認められないということであり、神の名をもって存在がなかったことにされる。存在否定に処され丸ごと消滅する際にはその予兆として激しい病とひどい吐き気に侵されると考えられている。
これらの教義は派閥によって表現方法が少しずつ違っているが大体以上のようなことが起きるとされる。

アチェミル

 神はトイターに世界の普遍真理を言葉にして授けるとき、ある一つのイミルを渡してトイターに最初の人間によるイミルの取得をさせた。その結果生まれたのがアチェミルである。

三行六信

 ディアンの一部である「人間の存在規定」の体系化が古代より進められてきた。その中で現在最も知られている法体系モデルが「三行六信」である。
 三行六信では人間が行うべきものを三つに、信じるべき普遍真理を六つにまとめている。

三行

  • 観察
  • 信仰
  • 感謝
 「観察(kensodis)」は人間は孤立して生きることは不可能であり、常に周りの世界に対して何らかの行動をとる必要があると定めている。
 「信仰(zirkodis)」は読んで字のごとくで神の存在を信じ、その偉大さを讃えることである。アプローチの方法はまた別途に礼拝の仕方として定められている。このほかにもトイタネインなどの祭事によっても行うことができる。
 「感謝(kamsamdis)」はより身近な自分の媒体への感謝と称賛をする。基本的に両親などの先祖や恩師などに対する敬意である。もともと「仲間、隣人への感謝」から来ている。

六信

 六信は学者たちの提唱した独自の合成語が命名されている。
  • アルモテキャムン(armotekyamn)
  • ラーシミレホディス(raqosimirehodis)
  • サメヨズィルコディス(sameyozirkodis)
  • メピデヨルヤルザディス(mepideyoryarzadis)
  • シェターンツェーナディス(syetaqntseqnadis)
 アルモテキャムンは「すべての物はいずれ滅ぶ」という意味合いを持つ。事物には永久性がなくそれらはすべて神に起因している。
 ラーオシミレホディスは「正しきイミレホ」という意味合いを持つ。ここでいうイミルの段階については学者によって扱う範囲が違ってくるが、第一段階であるというのが多数派である。これについては不信仰者や偽の信仰者に対しては容赦がないという意味である。
 サメヨズィルコディスは「罪人の信用」を表す。実際の意味はこれの否定であり、罪人は信用されるべきものではないとするものであると同時に、それらに対しては天誅が下るという教えでもある。
 メピデヨルヤルザディスは「子子孫孫」「子孫繁栄」を意味し、人類に与えられた能力として生殖機能を讃えている。生物学上では人間を含めすべての生物は個体を作り数を増やすことができるが、トイター教世界ではそれを人間にのみ正当に与えられたとしている。
 シェターンツェーナディスは「贅沢の破壊」を意味する。「贅沢は身を滅ぼす」ということであるが、トイター教では飲酒などの行為を全面的に禁じているわけではなくあくまで進んでやるべき行為ではないと定義している。
 ここだけ見ると合成語として定義されている普遍真理は五つしかないように感じられるが、このほかに神の存在が入れられ「六信」とされる。

偶像崇拝と芸術

 トイター教では「人類が創りだす偶像には神も何も宿っていない」とし、偶像崇拝を意味のない行為として禁じている。人々が礼拝をする際には神に通じる手段として儀式・祭事が整えられ、イルキスとズィルケタが成立した。
 しかし、スステ政治以降の教育方針によって崇拝を禁じつつ新教徒(子供や改宗者)に自らの宗教の成立経緯などについて理解を進めるため、トイターが預言を受ける様子が教育的に描かれ、これらはハケホブェムンとして芸術に発展した。このハケホブェムンからより詳細な神や預言者についての理解を広めさせるために有字による抽象芸術が発達し、さまざまな書体が生まれた。メシェーラという筆はもともとイルキスで勤勉をするシャスティの為の者であったが後に芸術用として用いられはじめ「ユーゴック語書道」あるいは「トイター書道」「王国書道」として発展した。この時に生まれた書体にアルムレイン体やププーサ体がある。

派閥

 樋咫帝国のころには預言者であるトイターこそがトイター教の教義全てであり分裂の兆しはなかったがハタ・スカルムレイとなってからトイター教の教義に対する考察は進み、アチェミルから発展してさまざまなイミルが多数出現し提唱された。これがトイター教における最初の分派の出現である。この時にできたトイター教の派閥はアッタクテイ派(Avtaktei)あるいは原理派と言われる。"avtaktei"は「原理派の教徒」を意味する合成語である。
 そのあとユーゲ平野の古代からの宗教であるイーグティェルーアルーの教えが若干混ざり、さまざまな神に関する逸話と、アッタクテイの世界観で説明されていない数々の世界現象についての考察が為され、最終的に「女神アルムレイ」を中心とした新たな神学体系が成立した。これを広く信仰するトイター教の一派はクントイタクテイ派(Kuntoitaktei)あるいは新生派と言われる。"kuntoitaktei"は「新生トイター教徒」を意味し、kunという形容詞は若干古い言葉であるが「新生の」という意味を持つ。これら二つの派閥の形成については無論アッタクテイ派が最初に成立したのであるが、独自の派閥名を名乗り始めたのはクントイタクテイ派が先である。
 トイター教の数々の派閥は伝統的にアッタクテイ派とクントイタクテイ派に大別される。しかし、スステ政治の開始以降、クントイタクテイの神学を元に新たに占いを取り扱うテリーン派やクントイタクテイ神学の亜流であるシーナリア派の成立から、現在のトイター教で派閥について扱うときはアッタクテイ派・クントイタクテイ派・シーナリア派・テリーン派を四大派閥として取り扱うことが多い。
最終更新:2023年12月12日 00:27