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#1 新大陸へ


 この作戦を考案したバカは、おそらく何らかの法律に違反している。
 都市バスのミラーにでも首を括り付けて、リーネ・ヴェ・キーネを引廻しにするのがこの惑星のためだろう。早急に。

 世間からはXelken過激派と呼ばれるテロリストながら、そんなことを思う。俺はここに居るのには向いていなかったのかもしれない。戦闘機に詳しくさえ無ければ、こんな機体の中に居ることもなかったはずだ。
 荒い風音はヘッドホン越しに自分の状況をまざまざと示してくれる。自分が手助けもなく空を飛んでいるということを。
 そんな中、ヘッドホンから聞こえてくるのは忌々しい現代標準リパライン語だった。

「機体番号T-8197、お前は捕捉されている。背後に付けてる連邦空軍の機体が誘導を行うので従ってスニーオーヴァルに着陸せよ」

 背後を見やる必要はなかった。後ろに付けていると言っている連邦軍機は真横に付けていた。コックピット内のパイロットがついて来るようにハンドサインを示す。しかし、俺はそれに従わずに手前のレバーを引いてスポイラーを立てた。
 急速に減速しながら、二機の背後へと潜り込む俺を見るパイロットの驚いた顔が一瞬だけ目に入った。

「ただでは捕まってやらねえよ!」

 シミュレーターで経験した空戦の経験を思い出す。相手の機動は甘く、背後に付いた瞬間に勝敗は決まっていた。
 スポイラーを格納し、操縦レバーのミサイル発射ボタンを2回押し込む。彼我の距離は通常の空戦の距離と比べれば、極近距離と言ったところ。機体を震わせながら放たれた二本の白煙はすぐに連邦機に死を与えた。
 明確な勝ちの光景に見えた目の前の状況はすぐに一変する。

「ぐっ!?」

 空気を切り裂くような、連打の音が機体を激震させる。対空機銃が地上から砲火されたのだ。多少の被弾は問題ないが、機体は操縦に応じず、ふらふらと軌道を外れ始める。

「機体番号T-8197、スニーオーヴァルに直行しなければこのまま撃墜するぞ」
「いやいや、無理だって!!」

 ユエスレオネの上空から地上へと逸れていく機体は、既に俺の操縦に応じなくなっていた。

■    ■   ■

 ここがどこなのか良く分からないが、しばらく暮らして分かったのはクラナという知られていない大陸であるということだ。
 俺は墜落した後にケートニアー特有の身体の回復能力でいつの間にか目覚めていた。現地住民は怪しげな俺に甲斐甲斐しく面倒を見てくれた。言葉こそまだ通じないが人々はやさしく受け入れてくれた。

 日々を過ごすために彼らの手伝いをしながら、俺は連邦も知らないであろうこの事実をXelkenの仲間に伝える手立てを考えていた。昼は労働をして、夜はほぼ壊れてしまった戦闘機を分解しながら、通信機の復活に賭けて色々と機械を弄る日々。
 そんな日々は諦めかけた試行が成功した瞬間に変わることになった。

「シェルケン・ヴィール・エーイ、発見した新大陸に向けて我々の先遣隊を送った。到着を待て」

 聞こえた古典リパライン語の響きに一時は安心するも、俺の心のなかには一抹の不安も過っていた。



続き:第二話
最終更新:2026年07月04日 13:47