話の途中から小夜本人も薄々感づいていたようだが、小夜も自分が斬り殺していた翼手そのものであり、
「翼手の女王」という存在である。
翼手の女王とは文字通り翼手という種族の頂点の立つもので、必ず女性の双子で誕生する。
(親も当然翼手の女王である)。翼手は生物学上の分類は霊長類とのことだが、人間とは比較にならない身体能力を持つ生命体である。
そして翼手の女王は自分の血を人間に与えることで 「シュヴァリエ」と呼ばれる翼手とし、
そのシュヴァリエと子をなすことで繁殖していく。
また一度シュヴァリエを従えた翼手の女王は2、3年の活動を経て30年ほどの休眠期間に入り、
再び目覚めては休眠するという周期を繰り返す。
そして2人の翼手の女王の互いの血を混ぜ合わせると何故か結晶化することが確認されている。
ちなみにシュヴァリエとは 「騎士」を意味する仏語。シュヴァリエとなった者は驚異的な身体能力や治癒力を得、不老不死となるが、代償として人間の血液以外を摂取できなくなる。
この辺りは 吸血鬼のイメージに非常に近い。
様々な場所で暴れる翼手はもう1人の翼手の女王「ディーヴァ」の血から採取した成分を元にして作られた
「D(デルタ)67」という薬品を人間に投与した結果生み出された人工翼手であり、
小夜の血で翼手を殺すことができるのもこのためである。
小夜とディーヴァは1833年、動物・生物の進化について研究していた2人の人物により
翼手のミイラの胎内で発見された繭の中から誕生した。
その成長過程を記録するために一方にはサヤという名を与えられてお嬢様のような不自由ない暮らしをしていたが、
一方は名前も与えられず1つの塔に 幽閉されまさに動物のような扱いを受けていた。
サヤはこのことを知らされず、その塔に近付くことも許されなかったが、
塔から聞こえる奇麗な歌に気づき、塔越しに幾度も会話をして友達関係になろうとしていた。
この時サヤは少女をその歌声から「ディーヴァ(歌姫)」と名付け、
本人も気に入ったのか以降アニメ最終話まで自分のシュヴァリエにもその名で呼ばせている。
1883年、サヤの育ての親である研究者の誕生日パーティーに、
サヤは皆を驚かせようとしてこっそり塔の鍵を持ち出し、ディーヴァが塔を出られるよう取り計らう。
その後サヤは別の用事のために鍵を開けただけでその場を去ったが、ディーヴァはこの間に脱出、
サヤがパーティー会場に戻ると、そこには血を吸われて死亡した大勢の人物と炎上した館、
そして育ての親の首から血を吸うディーヴァの姿があった。
この時以降、小夜は100年以上にわたって世界を渡り歩き、この世に存在してはいけないと断ずる翼手、
ディーヴァを殺すために戦い続けている。
前述したハジは小夜がまだ(事実上の)研究所に居た際からのシュバリエであり、
小夜の覚醒のたびに彼女の傍らに現れて行動を共にしていた。
なお小夜が現在記憶を失っているのは、30年前、ベトナム戦争でディーヴァが発見された時
まだ休眠期にあった小夜を強制的に目覚めさせるためとある血を投与したのだが、
そのショックで小夜は暴走し、記憶を失ったと思われる。
この時小夜は周囲の生物を敵味方、周囲の無関係な住民も斬り殺しており、
アニメの初期はその頃の記憶にさいなまれることがよくあった。
義父のジョージは暴走の後に再び眠りに就いた小夜を引き取り匿っていた米軍兵士であり、
現代における小夜の覚醒の際にカイやリク同様、自身の家族として彼女を迎え入れた人物。
また上述の「赤い盾」の構成員でもある。
「赤い盾」はかつて小夜とディーヴァを研究していた一族の子孫が、翼手を解き放った事を悔い、ディーヴァを滅ぼすために結成したもので、小夜の覚醒の際は彼女をサポートするなどして活動していた組織である。
義兄のカイ、義弟のリクの兄弟はジョージの義理の息子。
二人ともジョージの没後、家族として小夜を支えていたが戦いが激しさを増すうちにすれ違いなども起き、様々な悲劇を経験し、成長していく。
戦闘能力は一般の翼手よりははるかに強いが、ディーヴァのシュバリエ相手には劣勢になることも多かった。
一因としては翼手とはいえ、小夜の人体構造が人間に近いせいかもしれない。対するシュヴァリエはいざとなれば人間の姿をやめて強大な力を持つ翼手の本性を現す事が出来、
その際は筋力の増加、外皮の硬質化などの明らかに戦闘能力が上がっている。
また活動期が限界に近付くにつれ強烈な眠気に襲われたり戦力が低下するような描写もある。
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