アメリカのホラー映画『The Car』に登場する殺人
自動車。
撮影に使用されたのは1971年式リンカーン・コンチネンタルマークIIIをベースにした改造車で、
TV版『
バットマン』(1966年)でバットモービルの製作も手がけたジョージ・バリス氏により製作された。
ユタ州の田舎町サンタ・イネスにて連続轢き逃げ事件を起こした自動車で、
地元の保安官ウェイドにより行方を追われることになるが、捜査の過程で不可解な事実が次々と浮上してくる。
まず、目撃者であるネイティブ・アメリカンの老婆の証言によれば「車には運転手がいなかった」という。
さらに殺人自動車には普通の車に必ずあるはずのドアノブ・ドアミラー・更にはナンバープレートが無く、出現する際には前兆となる風が吹く現象が起きる。
加えて、教師でウェイドの恋人ローレンが子供達の引率として付き添いパレードの予行演習をしていると、
突然風が吹き荒れて例の車が出現し彼らを襲い、ローレン達は逃げた末に必死に墓地へ逃げ込むと、
車は何故か墓地の中には入らず、イラつくように周囲を徘徊する行動を取った。
おまけにこの事件で駆け付けたウェイドは車の前にバイクを転がして足止めしながら銃撃したのだが、
どこを撃っても全く効果が無いなど、普通の自動車以上の耐久性を見せた。
その後、帰宅したローレンが家ごと殺人自動車に破壊されて犠牲になってしまい、
自動車を操るものの「正体」に気付いた保安官達、特に恋人を殺され怒りに燃えるウェイドにより反撃が始まるが……?
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殺人自動車の正体&映画のネタバレ注意 |
この殺人自動車の正体は悪魔。
残忍な犯人を比喩しているのではなく、本当に超自然的な存在の「悪魔」である。
劇中では墓場に逃げ込むと追いかけてこれなかったことが、神聖なる土地である墓地には入れない悪魔と気付く根拠になっている他、
『ヨハネの黙示録』のキーワードである「ラッパ」「風」「荒れ野に逃げ込む女」などが要所に織り込まれ、殺人自動車の正体を暗示している。
ウェイドと仲間達は爆破のプロであるエイモスの協力を得て、殺人自動車を爆弾の設置場所に誘き寄せて破壊する計画を建てる。
ところが決行日当日、ウェイドのガレージに突如として殺人自動車が出現し、
その場に居合わせてしまったウェイドをいつでも殺せると言わんばかりに排気ガスと激しいクラクション音で苦しめる。
窮地に立たされながらもウェイドはドライバーでガレージの壁をこじ開けると見せかけつつ自分を狙った突進を寸前で躱し、
即座に大音量のクラクションでガラスが割れて脆くなった窓を突き破り、その先に止めていたバイクに乗り逃亡。
自分を追ってくる殺人自動車を小回りとスピードを活かして振り切りながら、爆弾を仕掛けた崖へとバイクを走らせる。
激しいカーチェイスの末にギリギリまで追い詰められるウェイドだったが、何とか車を崖から落として爆破に巻き込む事に成功する。
その時、ウェイドとその場にいた保安官達は確かに目撃した。
……爆音とは別の何かの断末魔のような声が轟き、爆炎の中にまさしく悪魔のような存在の舌を出しながら悶え苦しむ顔が一瞬浮かぶ光景を。
劇中の描写を見る限り、性格は非常に執念深く悪質。
墓地には入ってこれないのを見抜かれ煽られたことを根に持ち、上記の通りローレンを家ごと攻撃することで殺害するという大胆不敵な行動を取ったり、
ガレージでウェイドを追い詰めた際も、何とか逃げ道を確保しようとする彼を敢えて嬲るような方法で追い詰めたりしている。
ただし、自分がクラクションでガラスを割ってしまったためウェイドの退路を作ってしまったり、
深追いしたせいで最後の罠の餌食になるなど、慢心や詰めの甘い部分も見られる。
いずれにせよ、人間を見下しきっていた精神性の持ち主だったのは間違いない
(そもそも人を殺すだけが目的なら音を立てずに近付いて跳ねれば済むので、
わざとクラクションを鳴らしまくる時点で「人間を弄んでから殺す」のが目的だと分かる)。
ちなみに余談だが、劇中で頻繁に鳴らしているクラクションの「パー! パ パ パー!」という音は、
モールス符号の「X」(-・・-)のリズムになっている。
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日本での知名度はあまり高くない作品であるが、一部『
ジョジョ』ファンには、
第3部の敵の
DIOの刺客の一人である
ズィー・ズィーの
スタンド、
「運命の車輪(ホウィール・オブ・フォーチュン)」の元ネタの一つではないかとも以前から言われている。
怪物のように人智を超えた力を備えて襲い掛かってくる車という要素からであろうか。
クリスティーン
後述するクリスティーンもMUGENキャラとして作られてこのページで扱うためここで述べる。
スティーヴン・キング氏のホラー小説及びそれを原作とした映画『クリスティーン』に登場する殺人自動車。
1958年型のプリムス・フューリーで、真っ赤な車体が特徴。
原作小説では持ち主の怨念が取り憑いた車という設定だが、映画では原作を2時間以内の尺にするには設定過多だったため、
製造された時点で邪悪な意思を持っていたとされるなど、いくつか設定が変更されている。
本項では映画版を中心として解説する。
スクラップ寸前の所をイジメられっ子で気弱な高校生アーニーに一目惚れの形で購入された中古車。
支配的な両親から車購入を批判されたアーニーは自分の手で車を修理し、「クリスティーン」と呼んで可愛がっていたが、
しかし実はクリスティーンには邪悪な意思が宿っており、徐々にアーニーの自我を蝕んでいく。
クリスティーンは工場の作業員が休憩中に
ウィジャ盤で遊んでいたことがきっかけで何かに取り憑かれ、
製造中にも工員を殺し、前の所有者の妻子を殺し、そして前の所有者をも殺した、呪われた車だったのだ。
大人しく臆病でも優しかったアーニーは、快活ながらも何をするにもクリスティーンを最優先する暴力的な男に成り果て、
親友のデニスはすっかり変わってしまったアーニーを救うべく、クリスティーンに戦いを挑むのだが……。
運転手無しでも自由に動ける他、潰されても自力で復元する再生能力を有している。
作中ではアーニーへの嫌がらせのため不良達によって一度スクラップ同然にまで破壊されているのだが、
絶望するアーニーの前で独りでに元の姿へと復元し、そのまま不良達を報復として皆殺しにしていった。
狭い道に逃げ込んだ標的を、ボディをひしゃげさせながら追跡して轢殺する姿などは凄まじいの一言。
この修復シーンでアーニーの「よし、見せろ(OK,Show me)」という命令口調に応じて元の姿を取り戻していくクリスティーンの姿は、
単なる車とは思えないほど、非常にエロティックでセクシー、艶やかに演出された、本作のハイライトの一つとなっている。
原作版でも同様の再生能力を持ち合わせているが、これは走行距離メーターが逆回転する事によって発動するとされ、
アーニーはクリスティーンの修復を早めるため、自らの手で彼女を押してバックさせ続けるという場面が描かれている。
そしてこれによってアーニーは腰痛を患い、サポーターをつけるようになる。前の所有者と同じように……。
殺人自動車という点は共通だが、猟奇殺人鬼的なザ・カーと比較すると性格は「ヒステリックで独占欲が強く無駄にしぶといメンヘラ女」と形容すべきもので、
作中でも前所有者の妻子がクリスティーンの車内で不審死を遂げた事から「所有者とクリスティーンを引き離すのは危険」と警告されており、
実際にアーニーのガールフレンドであるリーを、彼とのドライブデート中に嫉妬から車内に閉じ込めて殺そうとする描写がある。
では女を寄せ付けなければ安全かと言うと、前所有者はクリスティーンの車内に排気ガスを引き込んで(あるいは引き込まれて)自殺しているため、
最終的にはアーニーもそのようにしてクリスティーンに取り殺されるだろう事が示唆されている。
原作小説ではクリスティーンそのものは『シャイニング』のオーバールックホテルのように超常現象が起こりやすい「場」に過ぎず、邪悪ではないのだが、
そこにクリスティーン以外に何も持たない、暗く陰鬱で不幸な人生を送った前所有者ルベイの怨念が宿った事で、邪悪な意志を持つ車に変貌したようだ。
アーニーの変貌はルベイの怨霊が彼に憑依して成り代わろうとしているのではないかという事が度々示唆される一方、
クリスティーンもクリスティーンでアーニーへの異常な執着を見せていくようになる。
デニスはアーニーに気を遣って片思いをしていたリーから距離を置いていたのだが、皮肉にもアーニーがクリスティーンに執着した事がきっかけで、
リーと接近して密かに交際を始める一方、親友を助けねばならないと決意してクリスティーンとの対決に挑む事になる……。
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その結末(ネタバレ注意) |
デニスとリーはクリスティーンを破壊すべくブルドーザーを持ち出すのだが、
自我を持つクリスティーンは運転手であるアーニーが振り落とされて死亡してもなお暴走と再生を続け、
デニスは再生が追い付かないほどブルドーザーで執拗に轢殺する事で、どうにかクリスティーンを沈黙させた。
戦いを終えたデニス達は、クリスティーンの残骸がスクラップとして固められ廃棄される光景を見届ける。
しかしジャンクヤードに打ち捨てられたその鉄塊は、未だに蠢いていた……。
原作小説でも同様の顛末を辿るが、クリスティーンとの戦いでアーニーは死亡しない。
デニスはアーニーが街から外出してクリスティーンと離れた隙を突いて、クリスティーンとの対決に挑み、
こちらではタンク車ペチュニアを用いてクリスティーンを完膚なきまでに潰す事に成功する。
しかし戦いを終えたデニスが聞いたのは、アーニーが家族と共に高速道路で事故死したという報せだった。
クリスティーンが破壊された瞬間、前の持ち主の亡霊が車から抜け出すのを目撃していたデニスは、
正気を取り戻したアーニーが、自分に憑依しようとした亡霊に抵抗して事故を起こしたのだという事を悟る。
数年後、リーと別れたデニスは、かつてクリスティーンを破壊した不良グループの一人が怪死したという新聞記事を見つける。
クリスティーンは復活を果たし、自分を襲った者達を次々と殺して回っているのではないか。
そしてその最後の獲物こそが自分なのではないか……。
クリスティーンに宿った前所有者ルベイの底知れぬ怨念をデニスが感じた場面で、物語は幕を下ろす。
「彼の飽くことを知らぬ目的意識。
彼の已むことなき怨念。」
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クリスティーンも再生能力から上述した「運命の車輪」の元ネタの一つではないかとも言われている。
また、『
女神転生』シリーズでは何度かクリスティーンとザ・カーをオマージュした(というか割とまんまな)悪魔「クリス・ザ・カー」が登場している。
種別は「外道」。愛を得られずに死んだ女性の怨念が取り憑いたピンク色の外車
足立区ナンバーで、ボンネットが歪みフロントが顔のようになっている。
その来歴から原作小説のそれと同種の存在とされつつ、嫉妬深く所有者に他の女ができようものなら殺しにかかってくるという辺りは映画版に類似する。
元ネタのような異様な再生能力はないものの、「たいあたり」「おしつぶし」「どくガスブレス」を習得している。弱点は電撃系。
LVは16-17とさほど強力な悪魔ではないが、序盤を終えて中盤に差し掛かる頃に仲魔にする事ができれば物理アタッカーとして活用できるだろう。
初出の『真・女神転生II』では一人称「オレ」で狂気的な口調であったが、
『真・女神転生if...』で登場した際は一人称「私」の女性的な口調となっているので
恋愛対象として安心できる。
ちなみに『葛葉ライドウ』シリーズに登場する「オボログルマ」は、伝承では牛車の妖怪だったものが自動車にアレンジされているのだが、
デザインがクリス・ザ・カーのオマージュとなっている(しかも初出となる『超力兵団』の別件依頼では出現場所が
栗須坂(くりすざか))。
他、アーニー、クリスティーン、デニス、リーの関係は、『
沙耶の唄』の主要人物達にも類似性が見られる。
どっちも純愛かもだが傍から見ればねえ……
実際キングによる原作小説はアーニーとデニスという男友達の関係がクリスティーンという「女」の登場によって破綻し、それでも二人の友情は続くという物語で、
デニスは「自分がクリスティーンを警戒しているのは、アーニーへの友情ではなく彼を奪われた嫉妬なのでは?」という疑念に苛まれながら立ち向かう事になる。
映画版もジョン・カーペンター監督の発案で撮影された前述の再生シーンは
(内部から水圧式の吸引装置で破壊した後、フィルムを逆再生する事で修復を表現した)、
クリスティーンとアーニーが
「関係を持った」事を暗喩する(原作での「腰を痛めた」描写も踏まえるとかなり直接的な)描写となっており、
不良集団に暴行された彼女がそれでも堂々と彼氏に裸見せるのはセクシーだし、そんな彼女相手の慰めックスもえっちだ……
物語もアーニーとクリスティーン、リーの三角関係の恋愛模様を描こうという意図で撮影されている。
そのため原作・映画共に単なるホラー作品ではなく、ある種の友情、恋愛、青春作品とも言えるのである。
これを念頭に置いて視聴するとまた違った見方があるかもしれない。
『沙耶の唄』も医科大学に籍を置く男女4人の恋物語だしね
MUGENにおけるザ・カー
カーベィ氏の製作したキャラが公開中。
スプライトはMonstkai氏によるもので、モーションは「OPTPiX SpriteStudio」を用いて作られている。
のりものっぽい外見だが
ハイパーアーマーは無く、
投げ技も普通に通用する。
大きな特徴として
アナカリスのように画面端から逆サイドへワープできるという能力を備えており、
あちらと違い壁際でバックダッシュをしなくとも任意に移動可能。
しかも喰らい中のヒットバックや吹っ飛び時にも適用される(
壁バウンドは除く)ため、
このキャラに対しては「壁際に追い込んでコンボを叩き込む」という戦法が基本的に通用しない。
ただし、移動速度が速い上に微妙に慣性がかかるので制御が難しい点に注意。
技構成は自動車だけあって突進技がメイン攻撃になっている他、広範囲攻撃「クラクション」も持つ。
超必殺技は猛スピードで一直線に突進し、画面端に到達すると反対側の端から現れる1
ゲージ技「突撃」。
突進回数が9回と多く、しかも発動中は全身無敵かつ
中段判定という
わからん殺しとなっている。
AIはデフォルトで搭載済み。
じりじりと距離を詰めつつクラクションで牽制し、ゲージが溜まると突撃で一気に轢き殺しにかかるという、
原作さながらの獲物を追い詰めるかのごとき
立ち回りを見せる。
射程外から攻撃できる技を所持しているキャラなら対処は容易だが、迂闊に吹っ飛ばすと反対側から飛んできたザ・カーの射程内に入ってしまい、
クラクションや
通常投げ(と言ってもやっぱり轢き逃げなのだが)を喰らったりするので油断は禁物。
また、同じくカーベィ氏により同キャラの流用で同じく自動車ホラー映画のクリスティーンも公開されている。
性能はほぼ同じだが、クラクションがフラッシュに差し替えられているなどの変更点がある。
出場大会
最終更新:2025年08月24日 10:34