本作でも単純な攻め手段に関しては中々の性能を持っている。
逆ピラ、垂ピラを使った
起き攻めは、「アナカリスに前起きをするのは愚の骨頂」といっても差し支えがないほど見切るのが難しい。
コンボのダメージも高く平均点以上の攻め性能を有している。
防御に関しても弱点ばかりではない。
リーチは長く頼れる対空をしっかり持っており、
飛び道具もあるので寄せない戦い方にその性能を発揮できる。
画面端から逆サイドに移動ができる、ダウン追い討ちをスカす技があるなど、このキャラにしかない強い部分もある。
そしてその特異性から、相手が慣れるまでに経験を要するというのも強みだろう。
こういった強みは稼働から長い時期が経った今でも健在である……にも拘らず、
アナカリスは『セイヴァー』における最弱キャラ候補筆頭である。
それは「システムに愛されなかった」であるが故。
まず何より痛いのが、展開が早く「相手に先に触った方がかなり有利」というゲーム性故、
アドバンシングガード(以下AG)による間合い離しの防御手段が前提のゲームなのに、
一人だけAGを使えないという謎な処遇を受けており、これだけで防御に回った際に大きなリスクを抱えている点。
特に画面端を背負った時のダッシュを使った固めラッシュや、
サスカッチのロングダッシュ連係など、
一部の行動に対して明快な脱出手段がなく、相手のミス待ちを狙ってタイミング良くジャンプか画面端バックダッシュの画面反対ワープで抜けるしかない。
AGの欠如は、投げ抜けにも関係する。
他のキャラはAGの入力が投げの入力を伴っているため、案外勝手に投げ抜けが発動するのだが、
このキャラにはそれがないため、投げ抜けを意識して自分で入れなければならない。
前作から続く『通常投げの欠如』も大きな問題である。攻めのバリエーションが減るのは勿論のこと、
防御面でも投げ確定の状況に対して、確定反撃ができない。
こういった切り返しの弱さを助長するのが、『ハンター』の頃から待望の実装を迎えたはずなのに、
全く使えない
ガードキャンセルの性能である。
発動するのに1ゲージ必要な上に、ヒットさせた後に相手の通常投げが確定してしまい、脱出手段としてまともに機能しない。
体の大きさも防御面での弱さを加速させているのも悲しい所。
見た目通り
喰らい判定が非常に大きいので、色々な技に引っ掛かり、アナカリス限定のコンボも多数存在する。
攻撃面でもややシステムに嫌われた点があり、性能が良くて狙う機会が多く前作までは重要なダメージソースだった追い打ち攻撃が、
本作では全キャラ一貫して回復可能な
リカバリダメージ(通称「白ダメ」)として計算されるようになった結果、
追い打ちを決めてから改めて距離を取って立ち回りで拒否っていくといった、
アナカリスの主要戦術の一つを取ろうとすると相手に回復されてリターンを取り辛くなっている。
そのため、追い打ち攻撃まで入れ込んだ際、それまでの攻撃をしっかり通した成果として繋げるためには、
リスク覚悟でもう一度アナカリスの方から触りに行かなければならない。
実際の所、『セイヴァー』稼働初期は牽制と攻めに転じた時の強さ、地対空の拒否力が評価され、中堅以上の評価を得ていた時期もある。
ただ、システムの研究と共に他キャラが伸びしろを発見させていく中、アナカリスはむしろ弱点の方が見つかっていき、
次第に努力では中々埋められないランク差を付けられていった結果、作品内で低迷を招いてしまったという経緯である。
この「尖った能力はあるが、一人だけ作品中の共通システムを使い得ない脆さ」が露呈しダイヤグラムを落としてしまったという点で、
後年の『
北斗の拳』の
ハート様(一人だけ能動的なブースト使用が不可)と似通った部分があると言えるかもしれない。
安定とはかけ離れたこのキャラで安定した強さを誇るには、他のキャラとは比較にならないほどの経験と、
一度攻めの主導権を得たらラウンドを取るまでそれを握り続けるほどの粘り強さが必要である。