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「ミミック(mimic)」とは日本語に訳すと「ものまね、擬態」。広義では「迷彩塗装」等もミミックの一種と言えるだろう。
生物学では周囲の環境に擬態する性質を持った種の名前にも用いられ、「ミミックオクトパス」などが実在する。
 
 
転じて、SFやファンタジー作品において物体に擬態する能力を持ったモンスターを指す。
 
(イミテーター(偽者)またはシェイプシフター (姿を変える者、つまり「宝箱に似た生物」ではなく「宝箱に化ける生物」)とも)。
 
その正体と生態については作品によりまちまちで、
 
一般的には宝箱の姿をしているが場合によっては扉や床、天井などの構造物や壷などの容器に擬態していたり
 
武器や防具、宝石や黄金(金貨)などの宝物そのものである場合や、「ダンジョンそのものがモンスターだった!」などのケースも。
 
広義の意味では、石像に擬態しているガーゴイルなどもミミックと言える。
 
ちなみに、『ドラクエ』にもガーゴイルは登場するが石像に擬態していない(動く石像 や土偶 は別にいる)。
 
「迷宮に眠る財宝」、そしてその「財宝に潜む危険な罠」というモチーフが好まれ、多くの作品にトラップ型のモンスターとして登場する。
その強力な牙で噛み付く攻撃の攻撃力は非常に高く、打ち倒そうにも金属で補強された頑丈な宝箱の外郭を持つためにかなりの労力を要する。
 また、冒険者にステータス異常を与える行動や酸による特殊攻撃、冒険者を即死させる行動を使ってくる場合もあり、
 一度戦闘になると倒すのに非常に苦労する設定が多い。
 TRPGにおいては、GMの判断によりデストラップ(プレイヤーを即死させる罠)として運用される事もあり、
 冒険者の天敵の一種と言っても過言ではないだろう。
 
 
日本では『ドラクエ』での扱いが有名になったため、日本のRPG業界ではミミックと言えば大抵は宝箱の姿をしたトラップモンスターとして登場する
 
(世界的には1970年代のTRPG『アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ 1st Edition』の影響)。
 
固有名詞ではないため様々な作品に同名のモンスターがいる。
 
宝箱の口部分を巨大な口部分に見立て、鋭い牙が並んだデザインである事が多い。
 
デザインに関してはベースを宝箱としたものが主流だが、
 
細かい部分については差異が多く目や舌、手などのパーツの有無に始まり、中に別の生命体が入っているなどの場合もある。
 
特に『DARK SOULS 』シリーズの「貪欲者」は箱を開けた途端に長い手足を伸ばして8頭身ボディとなり 、プレイヤーを捕まえて貪り食らう。
 
更に先制攻撃を加えても防御力が高いので中々倒せず、ガード不能の掴み攻撃や竜巻旋風脚 まで繰り出してくる強敵として知られている。
 
『新・光神話 パルテナの鏡 』にも、このミミックに近いタイプとして、女の艶めかしい生脚 が特徴の「ミミッ子」が登場する。
 
こちらも強敵であり、同作や『大乱闘スマッシュブラザーズ for 3DS 』の「フィールドスマッシュ」でも辛酸を舐めさせられたプレイヤーは多い。
 
漫画『ダンジョン飯』では、宝箱や木箱などに住み着き、不用意に接近した冒険者を襲う巨大なヤドカリ(ヤシガニ)型のモンスターとして登場。
 
しかし本作は「食料を現地調達=モンスターを美味しく頂く」がメインネタであった為、甲殻類という事で宝箱に閉じ込めた所を酒蒸しにされてしまった。
 
 
『ゴブリンスレイヤー 』では本編に直接登場しないまでも、TRPG版などで「やつし(ミミック)」としてその存在が言及されており、
 
外伝作品では怪物からの「朝は四足、昼は二足、夜は三足の生き物は?」という謎掛けに、
 
女神官が「ミミックですよね?」 と解答して切り抜ける一幕が描かれた。
 答えは人間って……そんな朝昼晩で姿が変わる人間なんているわけないじゃないですか常識的に考えて
(元ネタは『ファンタジーRPGクイズシリーズ(五竜亭シリーズ)』において、冒険者の宿に集う冒険者の一人が、
 
 スフィンクスの謎掛けに対し「ボンボエリカ虫や!」と架空の虫をでっちあげて切り抜けたと言うエピソード。
 
 なお「クイズ」と言っても「ピンチを乗り切れさえすれば良い」ので答えはひとつとは限らない。 要は大喜利)
 
サイバーパンク活劇小説『ニンジャスレイヤー 』では、
都市の自動販売機に擬態するベンダーミミック なるものの存在が語られていたりする
 
(正確には本編ではなく設定資料集的な番外編且つ都市伝説的存在としての紹介ではあるが)。
触手で襲う というイメージの為か人気を博し、何故かベンダーミミック合同同人誌なども作られた。
 
1997年には『ミミック(原題もMimic)』というタイトルの同盟短編小説の実写映画版も公開されている。
 
監督は後年『ブレイド2 』『パシフィック・リム 』を手掛けたギレルモ・デル・トロ氏。彼のハリウッドデビュー作にして出世作。
 
タイトル通り、人間に擬態する巨大昆虫(元は遺伝子操作されたゴキブリ の近縁種)と人間達との戦いを描くという作品。
 
元は伝染病を媒介するゴキブリ駆除のためにシロアリとカマキリをかけあわせて作られた、ゴキブリの近縁種にして天敵である「ユダの血統」という品種で、
 
本来はメスに断種処理がされていたため駆除終了と共に「ユダの血統」も絶滅するはずが、オスが産卵能力を獲得 したことで生き延び、
 
駆除のため加速された世代交代により数年間で肺を獲得して巨大化、「知性ある人間サイズの捕食昆虫 」という人類の天敵種 に進化してしまった。
 
人間に擬態する、といっても、「暗がりや遠目だとトレンチコートを着た大柄な人影に見える」程度の幾分か現実 的なものになっている。
 
しかし『2』『3』と デル・トロ監督の手を離れ迷走するのに反比例して擬態能力を強化し、人間の皮を被って成り済ますまでに進化を遂げた。
 
とはいえ一作目は「人の身勝手で作り出され、人の身勝手で生きる事を否定される怪物の悲哀 」をグロテスクに描いた傑作なので、一見の価値あり。
 
第3回アスキーエンタテインメントソフトウェアコンテスト(Aコン)では、
 
ミミック(のなりそこない)をヒロインにしたRPGツクール3作品『Boxful Treasure』が好評を受けて入賞している。
 
2020年の漫画『葬送のフリーレン』の主人公であるフリーレンは天才魔術士 であるにも拘らず、
 
「鑑定魔法により99%ミミックだと鑑定されても、レア魔導書 を求め残り1%の可能性に賭けて 突っ込む」性格であり、
 
ミミックに上半身を齧られた状態で「暗いよ怖いよ 」と喚く公式ネタがニコニコ静画やピクシブで流行、ミミック関連のイラストが一気に増えた
(一方で、その状態から生還出来ているという事は「魔王を討伐した元勇者パーティーのメンバー」なのは伊達じゃない のだろう)。
 
なお、一概にミミックと言っても自然生物型(CRPGでは少数派)と人工生物型(CRPGでの多数派)の二種類がおり、
自然擬態型は不注意な人間を襲う(食う)ために宝箱に似た姿に進化しただけの生物(迷宮の奥では餓死しそうだが)なので、特に宝は持っていない
 (一応、腹の中に犠牲者達の遺品があるかもしれないが、それは他の人食いモンスターも同じである)。
 一方、人工生物型は財宝の守護のために造られた存在。
 つまり倒せばミミックが守っていた金品財宝を得る事が出来る。特別な強さのミミックならば貴重な武具や財宝を隠し持っているかもしれない。
 
 
一方で数少ない例外として、JRPGでは『ドラクエ』と双璧を為す『ファイナルファンタジー』シリーズではモンスターではなく、
『V』 や『VI』 に登場するゴゴのジョブ「ものまね士」のアビリティ「ものまね」 の英訳として使われている
 
(英語の「mimic」はこの形で動詞・名詞・形容詞のいずれにも使う事が可能)。
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