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310 :427な俺:2012/12/12(水) 22:18:19 ID:mBDFxrkU
 書類。書類。書類に書類に書類で書類のてんこ盛り書類あえ。
 明らかに嫌がらせとしか思えないのはシェパードのせいに違いない。ぜんぶシェパードのせいだ。

「もう嫌ぁ!」

 ミーナ中佐がそう吼えたのはそんなある日の午後の事だった。

「中佐。吼えたって減るものじゃないですよ。あ、検印お願いします」
「このままじゃダメよ俺君! 書類の山に埋もれるわ! 息抜きが必要よ!」

 中佐が机をバンバン叩くので舞い散る書類を慌てて拾う。ただでさえ量が多いのだから混ざりでもしたらどうなる事やら。

「この前もネウロイを討伐したことだし、私達には休暇が必要だわ」
「ま、まぁいいんじゃないですかね。あ、全員連れてかないで下さいよ。防衛上の問題があるんで」
「大丈夫よ。ロマーニャ空軍に交渉してなんとかしてもらうわ」

 ミーナ中佐の中ではもう501丸ごと休暇を取ると決めたらしい。どんな無理でもこじ開けそうだ。

「お土産は期待してますんで」
「え? あなたも行くのよ?」
「……俺、有給どころか一生涯休日ゼロにされてるんですけどね、皇帝命令で」
「そ、そういえばそうだったわね……ほぼ濡れ衣のようなものなのに……」

 もちろん、501基地に来てから休暇なんて無いのであった。医務室送りになった? あれは療養。飛行停止中にも書類仕事はしてたし。
 ミーナ中佐が明らかに凹んでしまい、書類仕事も止まったのであった。お、終わらねー……。


「…と、いうわけでミーナ中佐の気分転換と、司令部の目を欺けるバカンスの方策を考えてください」

 一時間後。とりあえずミーナ中佐をベッドに放り込んでから中佐以外の隊員を集めてそう告げると、全員は何故か白い目で俺を見ていた。

「あのさ……仕事増やしてるの半分ぐらい俺だよね?」
「なんだよエーリカ、ワタクシニハサッパリミノオボエがアリマセンのコトヨ?」
「トラックの破損、ストライカーの全損、小型ネウロイの侵入時に廊下でフリーガハマーをぶっ放し、最近は風呂を覗こうとして転落したのもあったな? 細かいことまで含めればキリがないぞ?」

 バルクホルン大尉から非常に手厳しい言葉を突っ込まれた。
 ああっ、皆の視線が痛い! そんなに風呂覗き事件がいけなかったのか!? あの時リネットちゃんに思い切りパワーボムされたというのに。

「まぁ、長期的な士気も考えて適度な息抜きは必要だろう。ある程度訓練もやれば査察が入ろうと誤魔化せるしな」
「でも普通に休暇申請すれば通るんじゃないの?」
「大敗の責任を押し付けられたせいで俺が一生涯休日無しにされてるからです」

 坂本少佐の言葉にシャーリーがそう問いかけたのでそう返しておく。

「なるほど、確かに俺さんを一人で基地に置いておく訳には行きませんもの」
「わお、流石はペリーヌ! 話が解る」

311 :名無しの俺:2012/12/12(水) 22:18:45 ID:ke3o7ZI6
このスレもうダメだ

312 :名無しの俺:2012/12/12(水) 22:20:43 ID:kgAeU/5w
ミーナ中佐はこんなキャラじゃないだろ……

本編見直してこいよ……

313 :名無しの俺:2012/12/12(水) 22:21:08 ID:qSoW3l9M
ミーナさんは【ピー】だから……

314 :427な俺:2012/12/12(水) 22:21:27 ID:mBDFxrkU
「だって何をしでかすか解りませんし」
「おい」
「わかる気がする。おばさんも言ってたけど俺はちょっと目を離したら何かやらかすからウーシュに常に見てるようにって…」
「おいエーリカまで何を言ってる」

 なんだか俺の扱い酷くないか?
 こういう時に助けてくれるのはサーニャちゃんだけだ! そう思いつつ視線をサーニャちゃんに向ければエイラ中尉が早くも鉄壁ガードをしていた。

「サーニャに一歩でモ近づいたらセクハラで憲兵に通報すっからナ!」
「言いがかりにも程がある!」

 とりあえずエイラ中尉には隅に転がっていた一斗缶を被せて「反省中」と書いて置くことにした。
 チョークを手に取り、いい案があるか聞いてみる事にしよう。

「えー、ともかく何か案ある人挙手でお願いします」
「……ところで何で俺さんが司会をやってますの?」
「放送かけたのも俺さんでしたよね…」
「こら、ペリーヌと芳佳ちゃん! 私語は慎む!」
「一応聞いておくが少尉、ミーナに許可は取ったのか?」
「ちゃんと許可下りてます、ご覧の通り」

 坂本少佐にはミーティングルームの使用許可を見せると、納得したようだった。
 ベッドに運んだ時に、めそめそしていたミーナ中佐を口先八丁で騙してサインさせたのは永遠の秘密だ。
 サインをしたのは中佐だから俺は悪くない!

「俺は何か案を考えているのか?」
「そうですねー……山岳地帯に着陸した事を想定した山岳サバイバル訓練という名目なんてどうです?」
「ほう。それは面白そうだな!」
「行きも帰りもストライカーです。山岳地帯でもストライカーの運用が出来る事を……」
「俺…ネウロイは山岳地帯は迂回してるぞ?」

 俺が坂本少佐に熱弁しているとバルクホルン大尉の冷たい突っ込み。見事に却下。

「まー、でもサバイバル訓練はいい案だと思うよ俺ー? それでさ、海に…」
「海却下。はい、次の方ー」
「ちょっと俺!? 今、あたしを露骨にスルーしたよね!?」
「いや、100%遊ぶってバレるだろ海!? これ以上司令部の心証悪くなったら俺銃殺だもん!」

 エーリカの返事に慌てて弁解。海とか川とかそういうのはとにかく避けるべし。
 すると、一斗缶が挙手した。

「じゃ、川ナンテどうダ? 川近辺でのサバイバルなら、有り得なくもナイゾ?」
「いい案だな、エイラ。俺、早速書いて…どうした?」
「い、いいえなんでもありませんよ。すんばらしい意見だと存じ……」
「? 大丈夫か、俺?」
「俺さん、まさか水が怖いんですの?」

 心配そうな少佐の声に、ペリーヌからのダメ押しだった。言ってはいけない台詞を!

315 :名無しの俺:2012/12/12(水) 22:21:47 ID:vFwfeFlE
313
としまっ!

316 :名無しの俺:2012/12/12(水) 22:24:02 ID:n8jY2QfI
発進しませんのノリで書くとこんな感じじゃね?

317 :427な俺:2012/12/12(水) 22:24:39 ID:mBDFxrkU
「えー? でも、子供の頃フツーにあたしやウーシュと川で泳いで遊んだこともあるし、それはないんじゃない? あれ、俺?」
「ふんだ。俺にはスオムスのフィヨルドより深い理由で泳げなくなったんですよーだ。いじけてやる」

 とりあえず床に寝転がり、のの字を書いておくことにする。いじいじ。

「いじけ始めましたわ、この人」
「でもロマーニャは半島だからイザという時に泳げないのは危ないよねー」
「ルッキーニの言う通りだぞ俺! 昔泳げたのならお前は泳げる筈だ! カールスラント軍人の力を見せろ!」
「うむ。名目上お前の訓練にすれば司令部の目など気にするな! 私がじきじきに泳ぎ方を伝授してやろう、はっはっはっはっは!」

 かくして、海付近でのサバイバル訓練(と称したバカンス)が決定されたのであった。
 大佐。俺は自分で自分の首を絞めてしまったようです…。

 しばらくして目を覚ましたミーナ中佐に決定を伝えると、狂喜乱舞して通信室へと向かっていった。
 ただし、戻ってきたらミーティングルームの使用について突っ込まれた為、やっぱり坂本少佐に絞られた。
しかも口先八丁が発覚したせいで晩ご飯抜きにされた。おのれ。


「サバイバル訓練の許可が下りました。出発は明日です」
「めっちゃ早急ですね!?」

 翌日の朝。ミーナ中佐は昨晩のうちに色々な魔法を使ったらしく早くも司令部から許可をもぎとってきていた。
 どうやらこの人、相当鬱憤が溜まっていたらしい。

「と、いうことで今日はその準備期間とします!」
「じゃ、新しい水着を買いに行けるねー」
「ハルトマン、遊びに行くんじゃなくて訓練なんだぞ」
「でも実際休暇みたいなもんでしょ?」
「ミーナ、我々がいない間、防空はどうするんだ?」

 エーリカとバルクホルン大尉がそんな会話をしている中、坂本少佐がそう問いかけると、ミーナ中佐は意外な答えを返した。

「ええ。その…第471夜間戦闘航空団が担当してくれるそうよ? 何でも次の作戦までやる事無いとか…」
「なんだその理由? 俺、471について知ってるか?」
「知ってるも何も同期です。カールスラント軍からの同僚もいますし」
「ふむ…では一度挨拶にいくべきか?」
「いや、俺から電話しときますよ。次の作戦までやる事無いとか言ってるんなら暇してるでしょうし」
「暇してるってどんな理由だ…」

 坂本少佐が呆れていたのでとりあえず弁護しておくことにしよう、471の名誉の為に。

「夜間戦闘航空団に任地が無い理由って、世界中のどこにも飛ばせるってのと、最前線の殴りこみ部隊としての仕事か緊急時の援軍としての仕事ばっかの隊だからですよ。
 で、今回俺も471もロマーニャで近いうちに展開される作戦の為に呼ばれたんで…471はその作戦まで仕事が無いからフラフラしてるんじゃないですか?」
「待て。それって、お前も本当は仕事無いんじゃないか?」
「……俺は501の増援扱いも兼ねてるので…」
「俺…苦労してるんだな…」

 坂本少佐に同情されてしまった。まぁ、実際苦労してるのは否定しない。
 ついでにもう一つの理由として471の危険な奴らを皆に会わせたくないってのもあるが。

318 :名無しの俺:2012/12/12(水) 22:24:50 ID:qSoW3l9M
俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!!

315
世界一可愛い!

319 :427な俺:2012/12/12(水) 22:27:41 ID:mBDFxrkU
316ごめん、実はコメディ部分だけは発進しませんのノリで書いてるんだ
427俺が問題児すぎるからというのもあるけど


「ということで、ロマーニャの防空はよろしく頼む」
『……え? お前の従妹のハルトマン中尉とか、可愛いことで有名なリトヴャク中尉がお菓子持って挨拶に来るとか無いの?』
「ねーよ。シュタイナー、何を言い出す」

 471に電話をかければ、出たのは元エックスレイ組のシュタイナーだったので、ミーナ中佐からの挨拶を伝えるとそんな返事が帰ってきた。

『なんだ、そうか。残念だな。久しぶりに可愛い女の子が見れるって、エミリオが騒いでたのに』
「アイツはヒスパニアに送り返しちまえ。どうせ一日中シエスタしてるんだろ?」

 ヒスパニアからやってきたマイペース野郎の事を思い出しつつそう返すと、シュタイナーは同意する。

『まさしくその通りだ。何せやる事が無いんでな。女の子と遊ぶ機会も無い。羨ましいぞこの野郎』
「訓練だけどな。女の子ってお前の隊にもいるじゃんかよ、ブロックマイアーちゃん」

 各夜間戦闘航空団は夜間戦闘なのにナイトウィッチがいないことをネタにされてた為、アフリカ戦線でマロニーのおっさんが連れてきたのは記憶に新しい。
 確か、471のブロックマイアー曹長はオストマルク空軍だったか?

『あんな小さくて優しい子に手を出そうものなら自分の良心が許さねーよ』
「意外とまともな理由だな。ま、ともかくそちらの司令にはよろしく頼むと伝えといてくれ」
『司令に? ああ、あのさ。その司令の事なんだけどな。去年退任したんだよ。今はカーク少佐が兼任でやってる』
「え? 退任? なんで?」
ガリアが解放されたのでガリア復興の為に有休全部使ってから退任してったよ。貯金も殆どガリア復興財団に突っ込んでた』
「……ペリーヌに伝えとく。じゃ、言ったぞ。あ、もう一つカーク少佐に伝えといてくれ」
『なんだ?』
「お土産にタコをどっさり届けるから期待しといてくださいってな。じゃ、また」
「何の話でしたの?」

 電話を切ると同時にペリーヌがそう問いかけてきた。

「いや。あっちの司令の人が去年退任したとさ。なんでも、ガリアが解放されたからその復興のためだって」
「まぁ…それは有難いですわね」
「ガリアの人だからな。貯金もあらかた復興財団につぎ込んでたと。おろ? 電話?」

 とりあえず取ってみる。

『やぁ、俺少尉。お土産のデビルフィッシュは遠慮しておこう。お返しはダイナマイト1ダースでいいかな?』
「勘弁してくださいよカーク少佐。エーリカの可愛い顔に傷が付いたらどう責任を取ってくれんです?」

320 :427な俺:2012/12/12(水) 22:30:43 ID:mBDFxrkU
「二日酔いが辛いので運転したくありません」
「どれだけ泳ぎたくないんだお前は。ほら、さっさと運転しろ」
「とほほだぜ…」
「安全運転でお願いしますわよ? もし変な真似したらどうなるか解ってますわね?」
「イエス、アイ、マム」

 昨日の夜に一人で飲みすぎて二日酔いなのは事実だが、どうやら501には正しく運転できる人が少ないらしくトラックの運転手は俺になっていた。
 バルクホルン大尉も運転できないというのは意外だったが。
 ペリーヌのジト目と助手席に座るバルクホルン大尉の冷たい視線を受けながら、煙草を咥えて火をつけ、エンジンをかける。

「ほんじゃま、出発しまーす」
「俺君、車内も禁煙よ?」
「……ミーナ中佐、もしかして501って喫煙者に非常に厳しいのではないでしょうか」
「その歳で一日に10本越えてるのは不健康ですよ、俺さん。せめて減らしましょうよ」
「精神安定剤みたいなもんなんだけどなー。とほほだぜ」

 芳佳ちゃんからも言われてしまった。なんで芳佳ちゃんが俺の本数を知ってるのかは不思議だ。
 仕方なく点けたばかりのラッキーストライクを灰皿に突っ込み、トラックを進める。

「あれ? ……俺さん、ジャケットの腕のところ…ワッペンが取れかけてますよ?」
「ん? おお、本当だ」

 芳佳ちゃんに言われて右腕を見る。右の二の腕に縫い付けられた、427の部隊章がデザインされたワッペンが取れそうだった。
 外れたら困るのでジャケットを脱ぎ、脱いだジャケットはとりあえず自分のカバンのところに放っておく。

「ぶぅっ!? ちょっと俺、当たったよー」
「あ、悪いエーリカ」
「……ジャケットに物入れすぎじゃない? なんか凄い重いよ? わわっ!?」

 エーリカの悲鳴と共にトラックの床にジャケットの中身がぶちまけられる音。

「あちゃー……」
「なんだか相当入ってたな…煙草だけで3箱もあるじゃないか…ほう、珍しいものがあるな。詰将棋の問題集とは」
「ハットリの奴から貰ったんですよ。いい頭の体操になるんで…」
「ん? 俺。これってもしかして、アフリカのリベリオン兵で流行ってるっていう、塹壕ラジオじゃないか?
 受信機が無いと聞けないんじゃ…あ、通信用のインカムを改造したのか」
「シャーリー正解。スオムスじゃあんまり役に立たなかったけど」
「俺君、P38を使ってるの? 結構珍しい銃使ってるのね…」
「ルガーは手入れが面倒なので…ミーナ中佐はPPKでしたっけ?」
「チョコもーらいっ♪」
「おいルッキーニ! 俺のM&M'sを勝手に食うな! 緑食ったら怒るからな!」
「ワッペン、縫い直しときましょうか?」
「いや、それは自分でやるよリネットちゃん」
「俺さん、これリボンですか?」
「ああ、そうだよサーニャちゃん。悪いがそれは戻しといてくれ」

321 :427な俺:2012/12/12(水) 22:34:00 ID:mBDFxrkU
 ところで勝手に俺のジャケットの中身を分けないで貰えませんか。つーか、チョコ皆で回し食いすんな!
 いくらサーニャちゃん言えども緑を勝手に食うのは許さん。

「それにしても、一対の角と蝙蝠の翼に囲まれた髑髏のマーク…随分と恐ろしいマークですわね。”スカル”という愛称も頷けますわ」
「427”スカル”、448”ネクロ”、471”アンデット”……不吉な名前なのはネウロイを威圧する為らしいよ? 効果があるかどうかは知らんけど」
「部隊番号がバラバラなのは意味があるのか?」
「援軍として赴いた時に部隊がたくさんいるように見せかける為…ってのが噂の範疇を出ないですけど」

 ペリーヌと坂本少佐の問いに答え、501の皆と色々な話をしながらトラックを走らせていく。ちなみにチョコは全部食われた。おのれ。


「「「うーみー!」」」
「こらお前達走るな! 危ないぞ!」
「まぁ、たまの息抜きだから…」
「「「あー!!!」」」
「ああっ! シャーリーさん達が落ちちゃいましたよ!?」」
「なるほど…ミーナ中佐がストレス溜まるのも解る気がします」
「俺君、解ってくれるのね……ここはいつもハチャメチャよ…」
「ミーナも俺も眺めてないで助けるのを手伝え! 宮藤、リーネ、浮き輪もってこい浮き輪!」
「お手伝いしますわ少佐! とにかくこの棒に捕まらせて…」

 501のトラブルメーカーズは何処にいても問題が付き纏うんだなぁとつくづく思う。
 なお、俺とミーナさんは助けるのをサボっていたのでバルクホルン大尉に海に放り込まれた。酷すぎる。

「では俺。泳ぐ訓練を始めようと思う」
「やっぱやるんですか…」
「昔は泳げたのだろう? 大丈夫だ、すぐに泳げる」

「だからいつまでも岩に張り付いてないで降りて来い」
「人を海に投げ込んだ人が言う台詞かよそれ!? 余計にトラウマが悪化したわ!」

 501の皆の眩しい水着姿を見たくはあるが、それ以上に水への恐怖が上回るって凄いな俺の体。
 だいたい俺が見たいのはシャーリーとかリネットちゃんとかそういうスンバらしいおっぱいなんだよ!
 いや、バルクホルン大尉や坂本少佐のスタイルだって素晴らしいぞ? 眩しいぞ?
 エーリカやウルスラは悲しくなるほどの絶壁なので、大きくて柔らかいのには憧れる。

 しかしそれでも水への恐怖心は拭えない!
 俺は岩に張り付いてセミの如くいやいやをするのであった。

「俺さん、相当怯えちゃってますね…」
「あたしの知らない場所で何があったんだろう…」
「……任せて」
「サーニャちゃん?」

 遠くの方で遊んでいたが、俺の方が気になり始めたのかおしゃべりしていた皆からサーニャちゃんが一人で離れてきた。

322 :427な俺:2012/12/12(水) 22:37:07 ID:mBDFxrkU
「俺さん、大丈夫ですか?」
「全然大丈夫じゃねぇ。サーニャちゃんには緑のチョコ食われたし。緑が一番好きなのに…」
「ごめんなさい…あの、俺さん魚は好きでしたよね?」
「ああ。芳佳ちゃんの料理が旨いからってのもあるし…。まぁ、好きだな」
「ロマーニャの海は豊かですよ? 自分で獲れるようになったらすごいじゃないですか」
「い、いやぁ…魚なら釣ればいいんじゃね? 俺も釣りはするよ?」
「違います、自分でもぐって獲る事に意義があるんですよ…。ルッキーニちゃんはそういうワイルドな人が好きだって」

 ルッキーニは素潜りで魚を獲るようなワイルドな男が好きとな。ワイルドな男。ワイルドな男。
 一年前はチビと言われ続けた俺。アフリカではエーリカと瓜二つといわれ、体格も殆ど差が無いせいでとある大尉に酷い目に遭わされた事もある。
 つまりそんな俺は身長は伸びても、ワイルドセンスが足りないのだ。

「よし、やるか! 俺は泳ぐぞサーニャちゃぁぁぁぁん!」
「頑張ってください、俺さん」

 俺は岩から思い切り海へと飛び込んだ。
 当たり前のように沈没して浮上できなかった。

「もうダメです…」
「浅瀬で練習してみるか。バタ足ぐらいは出来るだろう?」
「や、やってみます」

 しかし、沈んだ身体はまるで浮かない。バタ足しようにも前進はしても、呼吸までが出来ない。
 呼吸をしようと顔をあげても、顔が上がらない。そもそも水面に顔を出すことすら難しい!

「俺…ここまでダメなの? どうしようもないレベルなの? 俺、泣いちゃう」

 もう流石に諦めるしかなかった。自分の情けなさに涙が出るレベルだ。つーか、もう泣く。
 大佐、俺には泳ぐことは無理なようです。

「これでは仕方が無いな。まさかここまで酷いとは…。ほら、カールスラント軍人がそうそう泣くんじゃない」
「そうだぞ、そんなに落ち込んでばかりではクロステルマン大佐も浮かばれん。ほら、立て」

 バルクホルン大尉と坂本少佐に引っ張られ、結局俺は…釣竿を渡される事になった。
 確かに釣りはするが。坂本少佐、まさか昼飯のおかずを俺に調達させる気ですか?

「どうでしたの?」

 釣竿を片手に岩場まで移動すると、『青の一番』の名に相応しくブルーのセパレートな水着を着たペリーヌがやってきた。
 胸こそ無いけどやはりスレンダーな体型、その白い肌と金糸のような美しい髪が素敵だ。
 あと、小さいお尻も可愛いし、普段は黒いタイツ履いてるからかも知れんけど、足もすらりとして綺麗だ。

「ちょっとどこを見てますのよ!?」
「眼福。今日のご機嫌度が少し上がった♪」

 親指を立てながらそう言うとペリーヌは呆れ果てながら俺の隣りに座った。

323 :427な俺:2012/12/12(水) 22:40:13 ID:mBDFxrkU
「で、泳ぎの特訓はどうでしたの?」
「全然ダメダメでした。俺には泳ぎのセンスというものが無くなってしまったようです」
「427では水場での訓練は…」
「あったけど俺はもしもの時に備えて拠点待機してました」
「エーリカさんは子供の頃は泳げたと言ってましたわよね? では、入隊までの間に?」
「うん、まぁね。色々恥ずかしい話なので話したくありません」

 そう、思い出せば思い出すほど情けなくて泣きたくなる程恥ずかしい話だ。
 とりあえず、釣り針には捕まえたゴカイを付けると、思い切り遠くまで飛ばす。

「ま、でっかい魚を期待してくださいなっと。俺は釣りをするので皆で楽しんでて下さい」
「あなた一人だけ岩場に置いておくというのもアレだと思ったんですのよ」
「そういう時のためのラジオと詰将棋問題集ですよ、奥様!」
「何のセールスを始めましたのよ」

「そもそも使える駒が少なすぎるではありませんの!? こんな少ない手数でキングを追い詰めるのは無理ですわ!」
「ペリーヌ、将棋には持ち駒という概念があるのでそれを上手く使いましょう」
「もう一回挑戦してやりますわ…!」

 何故か俺の隣りで詰将棋の問題集に夢中になるペリーヌ。水着姿の女の子が隣りにいるというのは凄く嬉しいけどね?
 しかし釣り針の方はうんともすんとも言わない。潮の流れでも悪いのだろうか。

「うーむ、かからない…このままでは皆が昼飯抜きになる…」
「あら、宮藤さんがお弁当を作ってきたのではないですの?」
「まぁ、そうなんだけど坂本少佐が塩焼きを食いたいと言い出してな。こうして俺が釣りしてる訳だ」
「どんな手段を使ってでも魚を獲りなさい、俺さん!」

 一瞬でペリーヌの目つきが変わってそんな言葉をかけられる。どんな手段を使ってでも、か。
 俺はカバンを引き寄せると、ペリーヌを見て言った。

「なら、簡単にたくさん獲れる方法あるんだけど、許可してくれるか?」
「え、ええ許可しますわよ?」
「OK。じゃ、皆に海から出てって伝えてくれ」
「? 皆さん、海から一旦出てくださいましー!」

 ペリーヌが皆に声をかけている間に俺は準備をする。
 本当は我らがエックスレイ組の同僚、爆弾魔マテウスの得意技なのだが、今回は俺も使わせてもらおう。

「皆出ましたわよ…って、俺さんそれなんですの!?」
「ちょっとハデに……お魚さんボンバー!」

 ピンを抜いた手榴弾を三個、岩場から海へと投げ入れる。
 爆音と共に盛大に水の柱が上がり、魚が数十匹、ぷか~と浮いてきた。

324 :名無しの俺:2012/12/12(水) 22:41:42 ID:qSoW3l9M
わーお

325 :427な俺:2012/12/12(水) 22:43:19 ID:mBDFxrkU
「グッジョブ」
「何がグッジョブですの! その手榴弾はどこから持ち込みましたのよ!?」
「爆弾漁法は違法だぞ少尉!? 何を考えてるんだーッ!」
「ペリーヌには了解取りましたよ?」
「さり気なく私にも責任を負わせないでくださいますこと!?」

 もちろん、浮いてきたお魚さんはゲットしましたが坂本少佐にこってり絞られる羽目になった。


『ウルスラ? あれ、ウルスラ!? 何処に…あ! ウルスラ!』

 離れた場所で、水面を上下するウルスラ。
 もがいて、手を振り上げ、必死に助けを求める。急げ、急げ、急げ。
 大事な従妹なんだ。家族なんだ!

『ウルスラッ!』

「ふーん、俺はまったく泳げなかったカ」

 そんなエイラ中尉の声で思考を現実に引き戻す。皆でお弁当を広げ、焼き魚に齧り付いている時の事だ。
 あまりに事実なので何も言えないのであった。そう、泳げなくなった俺。

「う…し、仕方ないだろー。無理なものは無理だったんだから」
「でもどうして泳げなくなっちゃったの? 昔は泳げたのに…」
「話したくないらしいですわ」
「芳佳ちゃん、そっちのたくあん取って」

 エーリカの問いにはペリーヌが答えた。その間に俺は弁当を食べて誤魔化すことにします。
 しかしこのおにぎり旨過ぎる。大きさも結構大きいし、具の方も大振りでいい。まさしく男の料理って感じがする。
 あれ? うちの隊、俺以外に男いたっけ?

「おにぎり旨ぇ」
「うむ、主食と副菜が食器なしで一度に摂取できるというのは素晴らしい。ところで宮藤、これいつもより大きくないか?」
「はい、今回おにぎりは坂本さんが作ったんです」
「な、なんですってー!」

 ペリーヌが驚愕して叫ぶ…本当に、ペリーヌは坂本少佐が好きだなぁ。
 ただ、ああいう風に憧れの人の側で、助けていられるってのは凄く羨ましいなとも思う。
 俺はあそこまで大佐の事のすぐ側って程じゃないけど。空の飛び方を教えてくれたのは、大佐だ。

「ペリーヌさん離しなさい! あなたは取りすぎよ! 美緒のお手製おにぎりは私が!」
「いくら中佐いえどもこれだけは譲れません! ガリア貴族の誇りにかけて!」
「カールスラント軍人を舐めないでちょうだい! いいから黙ってそのおにぎりを寄越しなさい!」

326 :427な俺:2012/12/12(水) 22:46:36 ID:mBDFxrkU
 色々ありますけど、今の上司は結構頼りになる方ですし、ペリーヌはあなたと同じように、ノーブレス・オブリージュを持っています。
 ペリーヌが目指すそれは、常に大佐とイコールではない事は解ってる。
 でも俺はそんな彼女の二番機につくのも悪くないと思っています。
 昔はあなたを追いかけていました。でも今は、ペリーヌの背中を守っています。

「ところで宮藤、私はどうもおにぎりを三角に握れぬのだがコツでもあるのだろうか?」
「大丈夫ですよ坂本さん。今のおにぎりでも充分ですよ、ボリュームありますし」
「そうか。そう言われるの照れるな…はっはっはっはっは!」

 とうの坂本少佐は芳佳ちゃんやリネットちゃんとおしゃべり中、バルクホルン大尉はエーリカ、シャーリーはルッキーニ、エイラ中尉はサーニャちゃんにかまけている。
 中佐とペリーヌはまだおにぎり争奪戦の真っ最中だ。この際仕方が無い。
 固有魔法を使おう。使っていない箸をひとつ失敬すると、魔力を流して、ペリーヌと中佐の間で所有権が舞うおにぎりへと突き刺す。
 箸からおにぎりへ魔力が移り、二人の手元からおにぎりはふわりと浮いて俺の元へ。

「ああっ! 俺君、そのおにぎりを…」
「俺さん、そのおにぎりは長機に譲りなさい! 上官命令ですわ!」
「ネガティブ」
「「ああ~ッ!」」

 結構なサイズだが一口で頂く事にする。

「な、なんてことを…いや、今すぐ俺君の口の中から奪取すれば美緒と…!」
「それだけは絶対に譲れませんわ、中佐。俺さん、口移しで…」
「おい。とりあえず二人ともそこに正座」
「嫌ですわ! 俺さんとにかく…」
「そうよ、そもそも上官の命令が…」
「正座しろってんのがわかんねーか? ああ?」
「「さ…Sir、Yes、Sir」」

 気持ちはわかるけど食べ物で喧嘩すんなよ、坂本少佐と食材に失礼という説教と硬い拳骨をかますのであった。

「うぅ…まさか本当に拳骨するなんてあんまりですわ…」
「瘤にならないかしら…うう、美緒~」
「少尉の愛の鉄拳だと思え、ミーナ。流石に傍から見ててどうかと思ったぞ」
「なら少佐も止めるの手伝って下さいよ…」
「女の子に容赦なさすぎだよ、俺…。だからチビだったんだよ」
「な! エーリカ、身長は関係無いだろ! それにもうちゃんと伸びたし! むしろ成長してないのはエーリカだろ!」
「自然体だもーん」
「そのせいでアフリカでとある大尉に酷い目に遭わされたのですが」
「そういえば昔の写真、ハルトマンにそっくりだったな」

 俺のぼやきにバルクホルン大尉がそう答える。まぁ、まさか一年ぐらいで15センチも伸びるとは俺も思わなかったけど。
 あの頃は誰かに顔を合わせる度にチビだのガキだの色々言われまくってたからな。
 今はご覧の通り、長身とまではいかなくても平均ぐらいはある…はず!

「さーてと、もう一回釣りでもしますかな、と」
「手榴弾は違法だからな」
「大丈夫です、あれで全部使ったんで二度も出来ませんよ」
「釣りならあたしもやろうかな」
「んじゃ、競争でもしますかねシャーリー?」

 俺の問いかけに、そのわがままボディを惜しげもなくさらした水着姿のシャーリーは「いいねー」と答える。ノリノリである。
 よし、勝負に勝ったらそのおっぱいを揉ませてもらおう、そうしよう。そうすれば本日のご機嫌マックスだ!
 昼食後もやっぱり遠慮なく遊びます。バカンスは最高です。


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355 :427な俺:2012/12/21(金) 22:57:41 ID:.TDuxqvI
 明るい太陽。青い海。そして、おっきくて柔らかいおっぱい!
 男が一度は思い描くロマンである。隣りで釣り糸を垂れるシャーリーの素敵なボディはもう一生の記憶に焼き付ける。これで後10年は戦える。

「おっ? こいつはデカい! こいつはデカいぞ!」
「おっと、こっちにもかかったぜ俺? 負けないぜ、大きいのを釣ってやるからな!」
「シャーリー、頑張れー!」
「任せろルッキーニ! リベリオン is ナンバーワン!」
「おい俺! リベリアンに負けたら許さんぞ、カールスラント軍人の意地を見せろ!」
「もちろんですよ大尉! おっぱいの為に負けるつもりなんかねぇ!」
「「どんな動機だ(よ)それは!」」

 ルッキーニとバルクホルン大尉の声援を受けつつ、俺とシャーリーは釣り勝負の最中。

「そんなに大きいのがいいんですの俺さんは!」

 俺の言葉に、ペリーヌが吼えた。

「いや、昔から言うじゃん? おっぱいには夢が詰まってるってさ」
「そう…なら私には夢がないと仰るのね…」

 あれ、もしかして地雷踏んだ?
 レイピアを構え、魔力を集中し始めるペリーヌの姿は怒った時の大佐にそっくりである。あ、やばい。これ、トネられる。

「い、いやペリーヌのサイズはペリーヌのサイズで可愛いと思うぞ!? ほら、掌にジャストフィットだし? もし良ければ俺が揉んで大きくし――――」
「トネール!」
「ぎゃああああああ!!!」

 やっぱりトネられた。

「…酷い目に遭った。俺、泣い―――」
「いや、明らかにお前のせいだろ。ああ、魚が…」
「お魚ー…」

 バルクホルン大尉とルッキーニの悲しそうな声と共にペリーヌにトネられた魚が浮かび上がってくる。
 ちなみに俺だけでなくシャーリーもボンバーな事になっていた。
 結論。おっぱいは自重。考えてみれば伯爵中尉は女性だったから大目に見られてたのかも知れない。


「まったくあなたという人は…」
「ごめんなさい。調子乗りすぎました。以後反省します」
「……ペリーヌの姉の苦労が目に浮かぶな…」
「なんでわかったんですかバルクホルン大尉!? もしかして感知系の固有魔法に…」
「容易に想像できるだけだ!」

 バルクホルン大尉は呆れたように叫ぶと、魚が全滅してしまったので動かなくなった釣竿を引き上げる。
 シャーリーも「勝負はまた今度だなー」と答えて釣竿を上げた。

356 :427な俺:2012/12/21(金) 23:01:22 ID:.TDuxqvI
「そういやそのペリーヌのお姉さんの事で思い出したけど、機体制御補助ユニット外してたのってその人の指示だっけ?」
「ああ。接近戦向けの固有魔法だから、そういう風にしとけば小回りが利くってのもあるし…大佐も同じ仕様だったんだよ」
「それは驚いた。あれを使いこなすとは相当な技量だ。ペリーヌもその姉も素晴らしい腕前なんだな」
「そう言われると誇りに思いますわ」

 バルクホルン大尉の言葉にペリーヌがそう答えたあと、シャーリーは続ける。

「で…頼まれてたカスタムはもうすぐ出来るぜ? けど、本当にアレ乗れるのか?」
「おいおい、俺を誰だと思ってやがるんだシャーリー? 元々安全性と安定性が皆無のストライカーで自由自在に空を飛んでたんだぜ?」
「なんだ、頼まれてたカスタムって? リベリアン、何をしたんだ?」
「ああ。うん。俺が乗ってるのって、メッサーシャルフ Bf109G型を機体制御補助ユニットをオミットして小回りや旋回性、
 ブレーキと加速力を引き上げた上で最高速度と航続距離を伸ばしたカスタムだったんだよな?
 その時点で既に無茶なカスタムだったんだけど、この前エンジン真っ黒になったから更に性能強化を頼まれてさ…まぁ、今後壊れないようにするっていうから…」
「で、シャーリー。強化のポイントは?」

 バルクホルン大尉が説教を始める前に聞いてしまうことにした。

「うん。まぁ、まず最初に最高速度と加速性能の更にアップって事でエンジンをまるっと乗せ変えたんだ。たぶん、あたしのと同じぐらいは出るし早くなる。
 次に旋回性なんだけど、俺は格闘戦が多いから宮藤が乗ってる震電を参考に回路を繋ぎ直して、それをちょっと弄って急旋回でも速度が落ちない。
 ただし、その分急激に振られるから安全性は更に皆無になってるから注意しろよ? で、頼まれてたブレーキの調整な。これが一番難しかった…」
「まぁ、空中でエンジン停止と急発進を連発するような機動は俺しかやらねーよなぁ」
「つーか、一瞬でトップスピードから停止に持っていくって相当難しかったぞ? しかも速度ゼロから急発進後数秒でトップスピードにしなきゃいけないなんて…」
「で、出来たのか?」
「ああ。出来たぜ?」
「マジか! やったね!」

 いやぁ、これで安心だ。この前みたいに冷却ユニットへの配線まで引っこ抜いたせいでエンジン真っ黒なんて事態にはもうならないだろう。
 ん、G型CMCと名づけましょう! 意味はシャーリー(C)メイドの(M)クレイジー(C)仕様です。

「ただ、これ整備性最悪になってるからメンテナンスしっかりやるんだぞー? 整備兵が号泣してたよ、俺少尉のストライカーほど扱いに困るものはないって」
「出来る限り自分でやるさ」
「で、操縦の癖も前より強くなってるから注意するんだぞ。正直、あたしがカスタムしといてなんだがあたしはあれに乗れないと思う」
「大丈夫さ」
「シャーリーさんの腕前を信頼してない訳ではないですけど、扱いに難しいのなら注意しなさいな。それと、なるべく危険機動はしないこと。…私がついていけませんわ」

 俺の返事にペリーヌの心配そうな声…の後の本音である。まぁ、そうだろうな。
 なにせカールスラント空軍の生きた機動教本が俺に教導する事を諦めたレベルだし。

「わかったよ、ペリーヌ」

 俺はそう答えつつ、何気なく沖に目をやった。
 珍しい組み合わせだった。坂本少佐とエーリカ。しかし、随分遠くまで泳ぎに行ってないか?

357 :427な俺:2012/12/21(金) 23:04:30 ID:.TDuxqvI
「おーい、ハルトマン! あんまり遠くまで行き過ぎると戻…ん?」

 バルクホルン大尉が異変に気付く。そう、エーリカと坂本少佐が…いや、エーリカは泳ぎが達者だし、坂本少佐は知らないが、島国扶桑の軍人、泳ぎは上手いはずだ。
 それなのに、あんなに沖で水しぶきを上げてるのは不自然じゃないか?
 まさか。

「!? まさか、少佐とエーリカさん…」

 ペリーヌの言葉と同時に、俺の脳裏に重なったのは、かつてのウルスラの姿。
 俺に助けを求める、あの時は川だったけれども…同じだ。

「溺れてるぞ! 坂本少佐とエーリカが!」

 俺が叫ぶと同時に、浜辺で遊んでいたエイラ中尉たちが慌てて沖を振り向き、パラソルの下で寝ていたミーナ中佐が跳ね起きた。

「美緒っ!? フラウも…だ、誰か助けに!」
「浮き輪を貸せ!」
「宮藤、借りるな!」

 バルクホルン大尉とシャーリーが浮き輪を片手に海へと飛び込んだ直後…二人は悲鳴をあげた。

「あ! 嘘、そんな…!」

 芳佳ちゃんが海へと入って二人を引っ張り出す。二人はそれぞれ足を抑えていた。

「どうした? 何が…」
「毒くらげです! さっきまでいなかったのに…」

 慌てて目を凝らせば海の中にくらげがゆらゆら、たくさん揺れている。

「これじゃいけない…ど、どうしよう」
「お、落ち着いてルッキーニちゃん」
「でも!」

 泣きそうになるルッキーニ、だがそれ以上にミーナ中佐の顔面が蒼白になった。
 これじゃいけない。空でも飛ばない限り…いや、空?

 ひらめいた。

「浮き輪とロープ貸せ!」

 浮き輪を掴み、ロープを縛り付ける。後は、そこら辺を漂っていた板切れを掴み、水面まで走る。

「俺さん!? 泳げないのに、何を…」
「泳げないし、海に入れないなら……上を通っていけばいい!」

358 :427な俺:2012/12/21(金) 23:07:30 ID:.TDuxqvI
 浮き輪に手を触れて、魔力を流し込む。俺の固有魔法は物体操作。
 重いものを動かすことは出来ないが、浮き輪を飛ばしてそれに捕まっていけばいい!
 浮き輪を二つ空に浮かべ、そこから伸ばしたロープを掴んで板切れの上にサーフィンの要領で乗っかる。

「行けぇぇぇぇぇぇ!!!」

 戦闘のときのショートソードのように、高速で動き出した浮き輪から伸びたロープを掴む。
 板切れの上から落ちない、というのは今まで安定性皆無のストライカーを駆っている俺だ、それよりバランスを取るのは楽勝さ。!
 可能な限りの速度で、水面を駆けて行く。
 二人が見えてきた。浮き沈みするエーリカ。坂本少佐は必死にエーリカを浮かばせようとするが、自身も足が動かないのか、立ち泳ぎする事すら難しい。
 二人の姿が、ウルスラと重なる。でも、あの時と同じ過ちは繰り返さない!

「捕まれ!」

 急ブレーキをかけて、二つの浮き輪を落とすと同時に、俺の身体は板から沈んだ。

「俺っ!」

 浮き輪に到達したエーリカの悲鳴。その水中には大量のくらげが漂っている。
 だが、俺の固有魔法は物体操作。浮き輪から伸びたロープをしっかりと握り、そのまま腰へと結びつけた。
 動け。俺の身体。手でくらげを払いのけ、足を賢明に動かす。

「…泳げた。泳いでるじゃないか、俺! 見ろ、ハルトマン! 俺が泳げた!」
「……俺ぇっ!」

 言われて気付いた。俺は、また泳げた。
 くらげが次々と襲い掛かってくるが、そんな事すら構わずに手足を動かし続ける。止められるものなら止めてみろ!
 無理だ。
 手や足にぶすぶすと突き刺さるくらげ。徐々に痺れていく手足。
 いいや、それならば…しっかりと握り締めたロープ越しに、浮き輪まで魔力を流していく。手足がダメなら浮き輪を使え。


 数分後。陸へと戻ってくるとミーナ中佐がすっとんできた。

「良かった…本当に良かった…!」
「芳佳ちゃん、足酷いから治療してお願い…」
「クラゲには酢です!」

 ミーナ中佐の洗礼よりも治療が最優先である。
 用意の良い芳佳ちゃんはクラゲ用の薬も用意していたのか、全身に酢を塗りたくられた後、軟膏を塗ってもらってだいぶ痛みは引いてきた。
 流石は芳佳ちゃんである。クラゲに刺された経験なんて俺にはろくにないや。

「……疲れた」
「…俺、泳げたじゃん」
「あ、うん。まぁね」

359 :427な俺:2012/12/21(金) 23:11:28 ID:.TDuxqvI
 そう呟いて大きくのびをすると、隣りにエーリカがやってきた。
 よく見るとエーリカも泣きそうだった。やっぱり怖かったんだな、と思う。

「怖かった。すごく、死んじゃうかと思った。手も足も痺れて動けなくなっちゃうし、少佐も思うように動けてないし…本当に、もうだめかと…」
「ばっか、お前…俺の目の前で、お前を死なせたりなんかしねーよ」
「う、うん……ありがと」

 ぎゅっとエーリカの手が、俺の手を握って、それから少し俺の方へと寄ってきた。まったく、子供の頃と全然変わってないな。
 その頭をわしわしと撫でる。昔よくそうしていたように、落ち着かせるように。
 もう一度泳げるようになったんだ。今日ここに来た目的も達成された訳だし…本当に、大したものだ。

「ねぇ、俺…。なんで泳げなかったの?」
「そ、それは私も聞きたいゾ。さっきまでまるで泳げなかったノニナ」

 皆が口々に「なんでなんで?」と問いかけてくるので白状するしか無さそうである。

「エーリカの双子の妹の…」
「ウルスラの事か。彼女がどうかしたのか?」
「うん。エーリカが軍に行った後で、ウルスラも俺より先に軍に入ったんだけど…まぁ、入隊まで間があってな? その間に、二人で川で遊んでたんだよ」

「散々泳いだ後、ふっと見たらウルスラがいない。どこにいたかと思えば…溺れて、流されるところだった。慌てて助けに入ったんだよ」

「どうにかウルスラの元まで追いついて、流されてきた木切れをウルスラにつかませて、岸の方に押した…までは良かったけど、そこで力尽きて、急流に飲まれたんだ」

「で、俺はあっさり溺れた。目を覚ましたらウルスラにはめちゃくちゃ泣かれるし、母さんにはむっちゃ殴られるしもう散々」
「え、それって…」
「うん。俺が泳げなくなったのってさ。ウルスラを助けようとして逆に自分が溺れたからなんだよね…だから言いたくなかったんだよ」

 だって間抜けにも程があるじゃない。もしかしたらウルスラも助けられなかったのかも知れないし。
 ところが、皆は実にほほえましい視線でニコニコ笑っていた。

「本当に優しい子なのねぇ。あらあら」
「何も恥じる経験ではあるまい。男の勲章として誇っていいぞ」

 いや、そういわれても俺個人としては思い出したくも無い経験なんですけどね…。
 まぁ、何はともあれ泳げるようになった事だし。もうひと暴れしてきますかね!

「俺はワイルドになってくるぞ!」
「俺さん、毒くらげ出てますから泳げないんですって…」
「そういう時の為のフリーガハマー全弾発射だ! 行けー!」
「そのフリーガハマーはどこから持ってきたんだ少尉ー! ああ、弾は高いのに全部撃って…」
「すいません、非常時用に私がストライカーと一緒に…」
「サーニャちゃんの荷物が大きかったのはそのせいだったんだね…」

 バルクホルン大尉の嘆きの言葉を尻目に、毒くらげを一掃した俺は再び飛び込む事にした。



381 :427な俺:2012/12/25(火) 22:55:46 ID:mfTbswuA
「獲ったどー! シャーリー、タコ獲ったどー!」
「キャー! デビルフィッシュ! 近づけないで!」
「……まぁ、楽しそうだからいいか」
「そうね、トゥルーデ。あの子は扱いには困るけど…いい子だわ」
「まぁ、そうだな。私もそう思うよ、ミーナ」

 タコを片手に嫌がるシャーリーを追い回す俺の姿は、どこにでもいる男の子にしか見えなかった。
 実際、それが俺の本当の姿なのかも知れない。


「…やっぱこうなりますかね」
「まぁ、こうなるだろうな」

 帰りのトラックの車中で、ハンドルを握る俺の呟きに助手席のバルクホルン大尉が答える。
 起きているのは俺とバルクホルン大尉の他は、ミーナ中佐と坂本少佐、そしてシャーリーとまぁ上級士官ぐらい。
 シャーリーの方もルッキーニに胸を貸しているので半分眠りかかっている。皆散々遊んだせいでお眠りタイムである。

「それにしても、俺君がいなければ本当にどうなってたかわからなかったわ」
「べ、別に…その、目の前で…」
「いや、それは誰だって同じだよ、俺」
「……そうっすね」

 俺の弁解にバルクホルン大尉がそう口を挟み、俺も色々な事を思い出しながらそう返した。
 さて、このまま基地に戻りたいところだけどそれで終わらないのが仕事である。

「ちょっと寄る所ありますんで、迂回しますよ?」
「どこに行くんだ?」
「471の連中に今日のお土産を渡しに行くだけです」

 荷台にどでんと乗った巨大木箱を指差す。本日のお土産である。

「あら、ならついでに挨拶をしておこうかしら」
「そうですね。カーク少佐は色々と曲者なので注意しといてくださいよ?」
「お前が言うか俺少尉」

 俺の言葉に坂本少佐が笑いながらそう突っ込む。そんな話をしていると、471が駐屯しているというロマーニャ軍基地が見えてきた。

「む? 庭の真ん中で誰か寝ているな?」
「ああ…あれは、471のエミリオですね。暇さえあれば昼寝しているマイペース野郎です。まぁ、それなりの仲なんであいつに案内を頼みますか」
「案内を頼むって、寝ているぞ?」
「起こせばいいんですよ。こうやって」

 俺はアクセルを思い切り踏み込んで速度をあげ、中庭でシエスタ中のエミリオのすぐ横で大きくハンドルを切って盛大にドリフトし、そのまま急停車。
 ちなみに盛大にドリフトした時に寝ていた皆が悲鳴と共に目を覚ました。




383 :427な俺:2012/12/25(火) 22:58:51 ID:mfTbswuA
「ドリフト成功」
「お前は何を考えてるんだ! 心臓に悪い!」
「な、なんだ今の!? どこのトラック…」

 バルクホルン大尉の拳骨を喰らった直後、運転席を覗き込んできたエミリオの顔が凍りつく。

「げえっ!? 俺少尉」
「人の顔見て悲鳴とはいい度胸だなエミリオ? カーク少佐いる?」
「い、いるにはいるけどさ…あのさ。一ついいか?」
「なんだ?」
「アフリカで貸した晩飯代。返してもらってないんだけど」

 なんでそんな事覚えてるんだよこいつ。もう二年近く前の事じゃねーか!

「いや、返してやれよ」

 ごもっともである、シャーリー。


「あら、美緒?」
「おや、珍しいところで会うな」

 エミリオの先導で基地を行くと、扶桑海軍の制服を着たウィッチがいた。するとこの人が504の戦闘隊長の竹井醇子大尉か。
 ミーナ中佐も竹井大尉との再会を喜んでいるのか、三人はしばし談笑する。

「そっちの様子はどうだ?」
「少しずつ再建中ね。まぁ、急にこの基地に異動しろって言われたからまたどたばたしてるわ…。471の人たちは結構紳士的だから困ってはいないわ」

 471と同じ基地に移された?
 なんとなく疑問に思う。トラヤヌス作戦の事で448の隊員の目撃証言を聞くにしちゃ長すぎるし。何かあるのだろうか。
 471のバックボーンはシェパードだ。シェパードが448の生存疑惑について乗り出す可能性は無い訳じゃない。何せ448のバックボーンはマロニー大将。
 マロニー大将が更迭されている今、夜間戦闘航空団という戦力を手元に置けばそれは…。

 木箱を抱えたままそんな事を考えていると、竹井大尉が「あら」と口を開いた。

「カーク少佐」
「ああ、どうも竹井大尉。お客さんが見えたようなのでね」

 ミーナ中佐と坂本少佐がくるりと向きを変える。
 高い身長に、肩幅が広い。比較的掘りが深い顔立ちだが、落ち着きのある表情。19歳という若さの筈だが、中堅将校並の威厳と落ち着きを持っている。

「第471夜間戦闘航空団隊長。リベリオン海兵隊所属、カーク少佐です。初めまして」

 二人が挨拶するのを見計らって俺は木箱を渡すことにした。



385 :427な俺:2012/12/25(火) 23:02:05 ID:mfTbswuA
「お久しぶりです、カーク少佐。あ、これ今日の土産です」
「やぁどうも。随分と大きなものだね」
「まごころを込めましたので」
「ははははありがたく受け取るよ。ところで、先日から動きはあったかね?」
「何にも。むしろこっちが聞きたいですね。……でもここに504がいるって事は、事実って確認された事ですか?」
「いいや、違う。確認出来てないから、詳しく調べる為に呼ばれたが、正しい」
「え? 本当に?」

 竹井大尉としては意外だったらしい。ちなみにミーナ中佐と坂本少佐は話しについていけてないようだったので後で教えると耳打ちしておく。

「まぁ、もし仮に真実であるとすれば、マロニー閣下の方が情報は早そうだしな」
「ですよねー。でも、あの人今東部戦線ですよ? 接触すんのは無理でしょうね」
「ところがだよ、少尉。実はな…504をこの基地に異動させたのは閣下なのだよ?」
「……マジですか」

 ミーナ中佐と坂本少佐の顔が引きつったのを見つつ、そう答える。

「生憎と私はあの人と反りが合わないのでなぁ。特に何も言われたりはせん」
「さいですか」
「まぁ、今地中海方面司令部に視察に来ているそうだ。また転属してくるかもな」
「なるほど」

 近いうちにマロニー大将と話しておくべきかも知れない。448問題も含めて…もう一つ疑問に思うことがあるのだから。
 そんな俺を見抜くように、カーク少佐はぼそりと小声で囁くように呟く。

「ウォーロック事件が不自然だと思うのは、お前だけじゃない」
「……でしょうね」
「後で、見ておけ」

 俺のポケットに押し込まれたメモは後で確認しておこう。


「504のヴェネツィア撤退時に、消息を絶った448と思われる隊員が目撃された?」
「あくまでもらしき、なんですけどね。特徴は一致してますが本人と断定されたわけじゃありません」

 坂本少佐の言葉にそう付け加えると、ミーナ中佐は「そう…」と答える。

「ま、それにもし本人達だったとすれば何故マロニー大将に接触しなかったかが不明ですしねぇ」
「俺君、それともう一つね。ウォーロック事件が不自然だと思うのって…」
「よく聞こえましたね、中佐」

 ポケットの中のメモは後で確認することにしましょう。
 そんな事を考えつつ、トラックまで戻る。ちょうど後ろの方で「ぬわーーっっ!!」という悲鳴が聞こえた。

386 :427な俺:2012/12/25(火) 23:05:18 ID:mfTbswuA
「なんだ今のは?」
「カーク少佐がネズミ捕りでも踏んだんじゃないですか? さ、帰りましょう」

 坂本少佐を押してトラックまで戻ると、さっきのドリフトで目を覚ました皆から口々に運転についてのクレームが入ってきた。
 それでもシャーリーよりまだマシという芳佳ちゃんの言葉が天使の声に聞こえるぐらいには。

「あれ? あれって、ベネディクト中尉じゃない?」

 ふと、エーリカの声が響き後ろを見ると、基地から血相を変えたベネディクトが偉い勢いで疾走してくる。
 よし、逃げよう。そうしよう。とりあえずエンジンをかける。

「俺ぇぇぇぇぇっ! お土産と称して1.5メートルはある巨大タコを持ち込んだのはお前だろ!」
「何だよ、俺の心を込めたプレゼントじゃないか」
「カーク少佐がタコに拘束されて窒息しかかってるんだよ!」
「電話した時にお土産はタコにするからって言っただろう!」
「本当に持ってくる奴がいるか! どう転んでもお前が悪い!」

 運転席の扉を開けようとするベネディクトを振り払うべくエンジンをかけようとすれば坂本少佐がキーを引っこ抜いてしまった。

「ちょっと待て! それはいかんだろ! ミーナ、救助しに行ってくる!」
「少佐、私も行きましょう。大タコの力は大変なものだと聞いています」
「ああ、バルクホルンも…いや、他の皆も手伝え! 巨大タコに絞め殺された人間は割りといる!」
「ああ…俺君はどこまでいっても俺君なのね…」

 ミーナ中佐は遠い目をして空を仰いだ。

 坂本少佐が一刀両断したのでカーク少佐は死なずに済んだが青い顔で医務室送りになった。
 ちなみにタコは結局お持ち帰りする事になり、真っ二つの巨大タコをトラックに乗せたらシャーリーは泡を噴いて気絶した。
 そして俺は坂本少佐とバルクホルン大尉と、竹井大尉にまでみっちり説教された。


 基地に戻ってからメモを開くと、そこに乗っていたのは人の名前らしき文章と、数字の羅列。
 ただ、数字は日付のように見えるし、人の名前は…ブリタニア語の読み方が大半だった。

「これだけじゃ何のことかわからないけど、人とその日付、でしょうかね?」

 ミーナ中佐にメモを渡しつつそう呟くと、ミーナ中佐は意外な言葉を口にした。

387 :427な俺:2012/12/25(火) 23:08:19 ID:mfTbswuA
「どれも女性の名前ね。ウィッチの名前のようにも見えるわ」
「……ブリタニア語の読みだが、ガリア系の性やカールスラント系の性もあるな。リベリオン人かも知れんぞ?」

 坂本少佐もそう口を挟むと、マイクを使ってシャーリーを呼ぶ。
 すぐにやってきたシャーリーにメモを渡すと、シャーリーはすぐに驚いた顔になった。

「……中佐。変なリスト持ってますね」
「知ってる子が中にいるの?」
「一部ですけど、あたしと同じ頃にリベリオン軍に採用になった奴がいる。面識あった奴の名前も…」
「彼女達は今どこに?」
「…全員はわからないけど、3、4人の行方はわかる。でも、全員戦死か行方不明になってる」
「すると、このリスト全員戦死か行方不明の可能性があるって…事か?」
「それはわからないけど…このメモ、模写しときます。知り合いだけでも、リベリオン軍に問い合わせたら解るかも」

 俺の問いかけにシャーリーはそう返事をする。ただ、全員戦死か行方不明って事は…日付は戦死もしくは行方不明の日付か?
 それがウォーロック事件と何の関係があるのだろうか。

「シャーリー。やばいと感じたらすぐ引っ込めよ。これは中佐も少佐も…」
「あら。私達を誰だと思ってるの?」
「それぐらい気にするな。一度話を聞いたんだ、今更こういうのに首を突っ込んだところで問題ない」

 豪快に笑う坂本少佐だったが、俺はどうにも不安が拭えなかった。

 そして後日。リベリオン軍に問い合わせたシャーリーから、嫌な情報が告げられた。

 リストに乗っているのは陸軍、海軍、海兵隊と所属はバラバラだったが、全員が戦死もしくは行方不明になっている事。
 そして入隊が1942年末から43年にかけての、ウィッチの大量増員で入隊したウィッチだという事。
 戦歴が比較的短く、それに加えて戦果の方もどちらかというと良くないウィッチばかりという事。これは偶然か、もしくは…。

「悪いな、シャーリー。迷惑かけっぱなしだ」
「気にするなよー。でもさ、俺もあんまり一人で皆背負い込むんじゃないぞ? 中佐とかもそうだけどさ」

 シャーリーは少しだけ心配そうな顔でそう呟いた。
 まぁ、出来れば俺も無茶はしたくないけどさ。でも…何かおかしい点が出てきて、それがもしかしたら427にも関わってるとすれば。
 首を突っ込まずには、いられないんだ。
最終更新:2013年04月02日 18:58