「フッ、エクシア…。ガンダムエクシア……」
「ルイス・ハレヴィ…。良かったね、これで君にも戦う理由が出来た…」
「何だ?あのシステムは……?」
「リボンズ、あのGNドライヴは何だい?」
「……」
「分からない?レベル7まで掌握している君が……」
「イオリア……シュヘンベルグ……!」
「連邦保安局を、独立治安維持部隊の直轄組織にする事が議会で決定した。
4千万人規模の軍隊…その創設を可能にしたのは、偏にヴェーダの情報統制があればこそ」
「御役に立てて光栄です。連邦政府はどんな些細な抵抗にも屈してはなりません。
“来るべき対話”の為にも……」
「あなた方の能力に期待する」
「勿論です。僕達はその為に…生まれてきたのだから……」
「僕はイオリア・シュヘンベルグの計画を忠実に実行している。それは人には出来ない。出来るのは僕達、イノベイターだけさ……。」
「アザディスタンの姫君…今迄放置してたくせに、どういった心境の変化なんだい?」
「フフッ、分かってるくせに……」
「彼らはやって来るかな?」
「勿論来るさ。あそこには、ガンダムマイスターもいるのだから……」
「ソレスタルビーイングの復活を予見し、それを逆手にアロウズの権限拡大を図る、か…。
これは君の考え?それともヴェーダ?」
「さあ…どっちかな?」
「既にガデッサもロールアウトしています。出撃命令を下されば、すぐにでも」
「それには及ばないよ、リヴァイヴ。例の作戦は、ある者に頼んであるからね」
「“ある者”?」
「デヴァインですか?それとも…ブリング?」
「人間だよ。ある意味、その枠を超えてるけどね……」
「全く、余計な事を……」
「困ったもんだね、リジェネの勝手も……。彼はもう少し泳がせたかったんだけど……」
「何故…私をこんなパーティーに?」
「あなたはアロウズ最大の出資者…ハレヴィ家の当主だ。
此処に集まっている人々は、統一世界による恒久和平実現の為に尽力している。彼らの協力が必要なのですよ。
勿論…ガンダムを倒す為にも……」
「…挨拶が終わったら、仕事に戻っても良いでしょうか?」
「勿論。それと…お詫びと言ってはなんだけど、ソーマ・ピーリスが乗っていたアヘッド、あなたの乗機となる様、手配しておきましたよ…」
「感謝します…」
「初めまして、リボンズ・アルマークと申します。1曲如何ですか?」
「まさかその様な格好で現れるとは思わなかったよ」
「マイスターは男だと知られている。戦術予報士の指示に従ったまでだ」
「リジェネ・レジェッタを差し向けたのは君か?」
「まさか。彼の悪戯に僕も振り回されているよ」
「…イオリア・シュヘンベルグの計画を実行していると聞いた」
「信じられないかい?なら…今すぐ君に返しても良いよ……ヴェーダへのアクセス権を」
「ッ!―――アクセス権?君が掌握しているというのか?」
「フッ……!―――少し場所を変えようか」
「ヴェーダを掌握しているというのは本当なのか?」
「身に覚えがある筈だよ?」
「まっ、まさか……!スローネに行った、トライアルシステムの強制解除は……!
……という事は、疑似GNドライヴを国連軍に渡したのも…。何故だ?」
「ソレスタルビーイングの壊滅は…計画の中に入っていたからね。本来なら…君らは4年前に滅んでいたんだ」
「ハッ…!そんな…!」
「アハハハハハハハッ…!君は思った以上に人間に感化されてるんだね。
あの男に心を許し過ぎた…ロックオン・ストラトスに。計画遂行よりも家族の仇討を優先した…愚かな人間に!」
「リジェネ……。君のおかげでパーティーが台無しだ」
「ティエリア・アーデを怒らせたのは君だよ?上手く振舞えば彼を仲間にする事も出来た筈さ。
折角僕が御膳立てしたというのに…」
「フッ……。彼らには、僕達に対抗して欲しいのさ」
「ソレスタルビーイングが活動すればする程、アロウズは世論から指示を受け、その行動が正当化される。
良いんじゃない?相手がカタロンだけじゃ物足りないわ。戦闘用であるアタシの出番が無くなっちゃうもの」
「……ツインドライヴシステム……。2つのGNドライヴを搭載したガンダムは、ソレスタルビーイングが独自開発したものか…?
それとも、トランザムシステムと同じ様に、イオリア・シュヘンベルグの遺産か…?」
「どちらでも構わないよ。あの程度の性能…ガデッサに遠く及ばない。次の戦闘でリヴァイヴ・リバイバルが証明してくれるさ」
「アタシの出番も用意してね?リボンズ」
「勿論だよ……」
「メメントモリの使用…?」
「これで中東計画は加速し、人類の意思が統一されていく事になる…」
「“統一”?“画一”の間違いじゃないのかい?」
「いいや、“統一”だよ。僕らの下に集まってくるという意味ではね。メメントモリの建造協力、感謝しているよ」
「……期待していますわ、イノベイターの作り出す未来に」
「言いつけ通り探し回ってみたが、それらしいのはいなかったぜ?大将」
「そうかい?なら良いんだ。手間を掛けたね」
「俺のクライアントは大将だ。好きに使ってくれていい」
「お詫びのつもり、と言うのもなんだけど…君も見ていくと良い」
「何だい?」
「きっと楽しめると思うよ…」
「ハハハハハハハハッ!コイツは凄え!凄過ぎて戦争になんねぇぜ?大将」
「かもね……」
「(機体が量子化した……!?僕も知らないガンダムの力だと……!!)」
「どうなされました?ひどく動揺されているようですが―――(ビンタされ)アァッ!」
「黙っていろ。意地汚い小娘が……!」
「メメントモリを落とした償い、果たして貰うよ。ソレスタルビーイング……」
「……イノベイターか!?」
「そうだよ。名前はリボンズ、リボンズ・アルマーク。久しぶりだね、刹那・F・セイエイ。いや…ソラン・イブラヒム」
「ハッ…!」
「そうか、君にとって僕は初対面だったね。でも僕にとってはそうじゃない…。僕は11年前に君と出会っている」
「…ッ!」
「そう…この場所で……。
愚かな人間同士が争い合う泥沼の戦場…その中で、必死に逃げ惑う1人の少年……。僕は君を見ていたんだ。
モビルスーツのコクピットからね」
「…ッ!!ま、まさか……!あの機体に……?オーガンダムに……?」
「あの武力介入は、オーガンダムの性能実験。当然機密保持の為、その場にいた者は全て処分する予定だった。
けれど僕は、君を助けた……。オーガンダムを…僕を見詰める君の目が、とても印象的だったから……。
それだけじゃない。ヴェーダを使って、ガンダムマイスターに君を推薦したのは…僕なんだよ」
「な…ッ!!」
「フフッ……」
「……礼を言って欲しいのか?」
「君の役目は終わったから、そろそろ返して欲しいと思ってね。それは本来、僕が乗るべき機体なのだから……」
「……悪いが、断る!!」
「わざとかい?」
「大将、俺の生き甲斐は戦いでね」
「フッ、好きにすればいい……」
「産業革命以来、機械文明を手に入れた人類は、その知恵で争い、滅びに直面してきた。
偉大なる時の指導者達も、数十年で寿命を迎え、世の中は再び混沌の時代に戻る」
「それが世界の…人類の歴史……」
「人類は過去から何も学ばない」
「だから、イオリア・シュヘンベルグはイノベイターを創造した。人ならざる者が、人より寿命を持って人類を滅亡から救う。
そして、“来るべき対話”に……。それが出来るのは僕達だけさ…」
「君は僕に作り出された事を忘れている様だね。云わば君にとって、僕は創造主…」
「ッ…!」
「人類を導くのはイノベイターではなく……この僕、リボンズ・アルマークだよ……」
「ソレスタルビーイングが活動を再開した様ですわね」
「頃合いだと思っていたよ」
「正直な所、今の状況に落胆していますわ」
「落胆?」
「情報統制と軍備増強…旧世代のやり方を世界規模に広げただけ。この後どうするおつもりです?」
「人間が知る必要は無いね」
「何れ全ての人類は、イノベイターとなるのではなくて?」
「それは違うよ」
「!?」
「時代の変革期には…古きもの、悪しきものを切り捨てなければならない。
例えば、富や権力を当たり前のように持ち、同種でありながら、大衆を上から見下ろす旧世代の考え方とか…」
「私の事を仰っているの?」
「望まぬとも時代に取り残されていくのさ。君の美貌が時と共に劣化していく様に…。華やかかりし頃の過去に固執し、他者を傷つけて安寧を得る。
いけない事だと分かっているのに、止める事すら出来ないんだ。誰かが諭してやる必要があると思わないかい?」
「それが…あなた方だと?」
「人間の価値観は狭過ぎるんだ。僕等はもっと広い視野で物事を考えている」
「……そうですか。なら、その広い世界の変革…期待しておりますわ」
「一つ言っておくよ。君は…イノベイターにはなれない」
「!」
「悲しいけど、それが現実なんだよ」
「良いのかい?彼女をあそこまで突き放して…」
「最早利用価値は無いさ。何なら君が面倒を見るかい?」
「まさか…」
「この4ヶ月、よく彼女と会っていたじゃないか」
「…ッ!ソレスタルビーイングの情報を聞き出していたんだよ」
「そうかい?ならそういう事にしとくさ……」
「ッ……!」
「ダブルオーが出撃している?……良いさ。君に任すよ、ヒリング。ヴェーダの予測では彼の細胞異常は致死レベルに達している筈……。
ツインドライヴが関係している…?まさか…!変革を始めたというのか?刹那・F・セイエイ……」
「ダブルオーガンダムは…この僕にこそ相応しい…。君もそう思うだろ?リジェネ」
「勿論だよ、リボンズ…」
「フッ、心にも無い事を……」
「君はやんちゃが過ぎる。今度勝手な真似をしたら……分かってるね?」
「体調が優れないと聞いたけど、どうしたんだい?」
「……」
「どうやら新しい薬を処方した方が、良さそうだね…」
「アルマーク、私は…」
「君の体内を蝕む細胞異常を抑制する薬を与えたのは……何の為だい?」
「あっ…」
「君が求めたからだよ?紛争の無い統一世界を実現する為に。御両親の仇を…ガンダムを討つ為に」
「ガン…ダム……」
「僕は君に期待している。このレグナントだって、君の為に持って来たんだ。
人類初のイノベイターとなって、この世界を導いて欲しい。良いね?ルイス・ハレヴィ……」
「……分かっているわ、アルマーク」
「フッ、良い子だ……」
「イノベイターは、人類を導く者……。そう。上位種であり、絶対者だ。人間と対等に見られるのは、我慢ならないな。
力の違いを見せ付けてあげるよ……」
「ソウイウキミノヤクメモオワッタヨ」
「HARO…?」
「カッテヲスルモノニハバツヲアタエナイト」
「ハッ…イノベイター?」
「フフフッ、君を裁く者が現れるよ」
「裁く者ですって…!――まさか、アイツが?面白い…。兄兄ズの仇を……!」
「ソウダネ、アルイミカタキデハアル」
「遂に審判が下される。純粋種として覚醒した刹那・F・セイエイか僕達か?そのどちらかが人類の行く末を決める。それで良い……」
「アロウズ艦隊は突破されるか……。人類は余程戦いが好きと見える…」
「そう仕向けたのは君の方じゃないのかい?彼らを此処まで導いた……」
「それは君の願いでもあった筈だ」
「何?」
「言っただろ?僕は君達の、上位種に当たる。創造主とも云える…。
だからさ…野心に囚われた君の考えは…、脳量子波を通して僕に筒抜けなんだ」
「ッ……ハッ!」
「残念だったね?リジェネ・レジェッタ……」
「フフフッ、フフフフフフッ…。ハハハハハハハッ…ハハハハハハハッ!これで…イオリア計画の全てが僕の物に……!」
「それは傲慢だよ」
「ば、馬鹿な…!……ッ!何故?」
「僕の意識はヴェーダと直接繋がっている。肉体はただの器にしか過ぎない」
「そんな事が?!」
「君に出来ない事が、僕には出来る。言った筈だよ?僕は君達の上位種だと……」
「大将!アロウズさんはヤバそうだ。そろそろ、俺の出番かな?」
「……期待しているよ」
「“コロニー型外宇宙航行母艦ソレスタルビーイング”……。
イオリアは2世紀以上も前に予見していた。未知なる種との遭遇を…“来るべき対話”を……。
GNドライヴ、ヴェーダ、イノベイター、そして……この船こそ人類の希望。人類を滅亡から救う……まさに方舟だよ……」
「フフッ。さあ始めよう……。来るべき…未来の為に……」
「中々やるね……」
「アタシらの出番まだぁ?」
「ガガ部隊で充分さ。君達はとっておきにさせてもらうよ、ヒリング」
「了ぉ解」
「内部に侵入し、モビルスーツによる白兵戦を仕掛けてでも、ヴェーダを取り戻すつもりか…。しかし……」
「人類は試されている。滅びか、それとも再生か……」
「だが、それを決めるのは君じゃない」
「ティエリア・アーデ……!」
「ティエリア・アーデ…。君はイノベイターの分際で―――」
「違う!僕達はイノベイターではない!
僕達は…イノベイターの出現を促す為に、人造的に生み出された存在……“イノベイド”だ!
ヴェーダを返してもらうぞ、リボンズ・アルマーク!」
「フッ…。そのイノベイドが、進化を果たしていたとしたら?」
「何!?」
「僕はイノベイドを超え、真のイノベイターすら凌ぐ存在となった」
「世迷い言をッ!!」
「言った筈だよ?僕はイノベイターをも超える存在だと……。ヴェーダは渡さない。そうさ…人類を導くのはこの僕だ」
「今のGN粒子は何だ?僕の脳量子波を乱して…!」
「この時を待ってたよ……」
「リジェネ・レジェッタ?―――ヴェーダが僕とのリンクを拒絶した?まさかシステムを!?」
「感謝して欲しいな。君がその力を手に入れたのは、僕のおかげなんだよ?刹那・F・セイエイ……」
「俺を救い、俺を導き…そして今また…俺の前で神を気取るつもりか?」
「いいや、神そのものだよ」
「そこまで人類を支配したいのか!?」
「そうしなければ人類は戦いを止められず滅びてしまう。救世主なんだよ、僕は」
「共に歩む気は無いと…?分かり合う気は無いのか!?」
「人間が自分達の都合で動物達を管理しているのと一緒さ。それに…純粋種となった君に打ち勝てば、僕の有用性は不動のものとなる!」
「ッ…!そのエゴが世界を歪ませる…!貴様が行った再生を……この俺が破壊する!!」
「良い覚悟だ!」
「ダブルオーライザー!」
「リボーンズキャノン!」
「刹那・F・セイエイ!!」
「リボンズ・アルマーク!!」
「出る!!」
「行く!!」
「ツインドライヴシステムが自分だけのものと思っては困るな。そうとも、この機体こそ…。人類を導く……ガンダムだ!」
「援護しますよ、リボンズ・アルマーク!」
「フッ、余計な事を……」
「こ、この力…!純粋種の力か!」
「君のその力……オリジナルのGNドライヴの恩恵があればこそだ!返して貰うぞ!!」
「誰が!」
「そうさ……。そうでなければ僕が作られた意義が無い…!存在する意味も!!」
「(違う!)」
「ティエリア・アーデ…!?ヴェーダを使って……!」
「(人類を導くのではなく……人類と共に、未来を創る。それが…僕達イノベイドの…あるべき道だ…!)」
「下等な人類等と一緒にッ!!」
「(そうやって人を見下し続けるから…分かり合えない!)」
「……その気は無いよ!!」
「量子化しただと!?」
「フハハハハハハハッ…。遂に手に入れた…オリジナルの太陽炉を!これさえあれば、僕はイオリア計画の体現者に…いいや、それすらも超越した存在となる!」
「これは……運命だ!まだ僕は……戦える!」
「GNドライヴ、マッチングクリア。行ける…!」
「何処だ?何処にいる?刹那・F・セイエイ!」
「ガンダムエクシア…刹那・F・セイエイ!未来を切り拓く!!」
「この…人間風情がぁあああッッ!!!」