アンドリュー・フォーク(銀河英雄伝説)

登録日:2020/01/21 Tue 17:27:05
更新日:2024/03/20 Wed 19:16:14
所要時間:約 45 分で読めます







自分の才能を示すのに実績ではなく、弁舌をもってし……しかも! 他者を貶めて自分を偉く見せようとする!

だが、自分で思っているほど才能などないのだ。

彼に3000万将兵の運命を委ねるのは危険すぎる!!

by.自由惑星同盟軍 統合作戦本部長 シドニー・シトレ元帥


アンドリュー・フォークは『銀河英雄伝説』の登場人物。

●目次

【概要】

自由惑星同盟に所属する軍人。
宇宙暦770年・帝国暦461年生まれで初登場時は26歳。……にしてはちょっと老けた感じで血色が悪く陰気そうな風貌をしている。

士官学校を首席で卒業した秀才で、若くして准将の地位に就いているエリート。役職は作戦参謀。
ちなみに同期の次席は後にビュコックの副官となり、ヤン艦隊の幹部にも加わるスーン・スール。

首脳部の宇宙艦隊司令長官ラザール・ロボス元帥から高く評価されている人物である。
しかし、その実像は「こんな奴がどうして首席卒業できたんだ?」と読者視点で見ても首を傾げるような小物。
…小物で済んでいればどんなに良かったか

劇中での多大な活躍(?)や迷言によって作品ファンはおろか各媒体で演じた役者にまで嫌われており、一周まわってネタキャラとしても扱われているという凄まじいキャラクター。
アニメにおいてOVA版では古谷徹が、Die Neue These版では神谷浩史が声を務める。

【劇中での活躍】


帝国領侵攻作戦・作戦会議にて

事の発端はヤン・ウェンリーイゼルローン要塞を無血攻略に成功したことに始まる。
このあまりに大きすぎる戦果は同盟市民を熱狂させて「さらなる勝利と戦果を!」といった声が高まっていた。
これに加えてこの時の最高評議会であるサンフォード政権の支持率が下がっており(イゼルローン要塞を攻略したのに支持されないとか、余程嫌われてたのか……)、次の選挙のためにより大きな成果を求めていた。

そんな時にシトレ本部長のライバルであるロボス派の軍人達も巻き返しを図ろうとしており*1、同じくヤンの功績を妬み勝手にライバル視するフォークが自分のコネによる私的なルートによってシトレからの決裁も得ずに最高評議会に帝国領侵攻の作戦案を持ち込んだ。
シトレははっきり出兵に反対していたのにそんなものを軍部からの作戦として認めるとか……。

こうしてジョアン・レベロやホワン・ルイ、さらにはヨブ・トリューニヒトのみが作戦に反対して残るは賛成したことから3000万人もの将兵を動員する無謀な大遠征は決定してしまう。

そしてヤンやシトレら多くの主要提督達は渋々ながらも作戦会議を行うのだが、まだ具体的な行動計画が立案されておらずそんな計画を議会のアホ供はあっさり承認したのか……、シトレ元帥は活発な提案や討論をするようにと告げた途端……


「作戦参謀フォーク准将であります! 今回の遠征は我が同盟開闢以来の壮挙であると信じます!」

「幕僚としてそれに参加させていただけるとは武人の名誉! これに過ぎたるはありません!」

……? だからどうした?
まだ発言の許可すら出てないのに勝手に喋りだすフォークだが、自分の立てた作戦を自画自賛してアピールするだけで中身のない言葉しか吐かなかった。
前口上としてならまだ分からなくもないが、たった今「提案をしろ」と言われたばかりだろうが。
もちろん、シトレには無視されるしヤンに(愚挙の間違いじゃないのか?)と呆れられた。

続いて第10艦隊の名将、ウランフ提督が発言する。

「軍人として、命令があれば出征もするし、暴虐な帝国と戦うというならば喜んで戦う」

「だがまずこの作戦の戦略上の目的は何か?」

「敵軍と一戦するだけなのか、敵軍を壊滅させて和平交渉に持ち込むまで粘るのか」

「そもそも作戦自体が長期的なのか短期的なのか分からない」

と、実に真っ当な疑問を提示する。無気力なロボスはフォークに全部丸投げし、そのフォークの自信満々な回答はと言うと……。


「大軍をもって帝国領土の奥深くへと侵攻する。それだけで、帝国人の心胆を寒からしめることができましょう」

……? それは敵が応戦してこない限り戦わないで退く=示威行動ということなのか?


「そうではありません。高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処することになろうかと思います」


……な、何を言ってるかまるで意味がわからんぞ!?
あまりに意味不明な内容にウランフも「抽象的すぎるからもっと具体的に話せ」と言うが、第5艦隊のビュコックが一声。

「要するに、行き当たりばったりということではないのかな?」

つまり作戦立案者であるフォーク自身も敵地に侵攻をして何をしたいのかまるで考えていなかったのだった。
フォークはビュコックの指摘にムッとしながらも、否定も肯定もせずに「他に何かあるか?」と話題を変えてしまう。……図星だな。

新アニメ版ではロボスがフォークを擁護するのだがその内容は「遠征自体が帝国の民衆に希望を与えて専制政治に対して打撃を与えられる」というものであった。
確かに、戦争が一種の政策手段である以上『帝国に対する帝国民衆の支持に打撃を与える』というのは究極的な戦略目標としては一理ある。
しかし軍の活動の指標として考えればやっぱり具体性が無く、とても目標設定にならない。
しかも後に彼らはその究極的な戦略目標を自らぶっ壊す「帝国領内での略奪」を余儀なくさせるのだから救いようがない…

次にヤンからの意見が上がり、「帝国領内への侵攻を今にした理由は?」と尋ねるが、これはビュコックら他の提督達にも分かりきったこと。最高評議会が選挙に勝って、政権を維持するためである。ついでに言えば、自分の出世のため。むしろ、こっちが本音。
ヤンとしてもなんて言い出すのかと試すぐらいのつもりであった。


事実、フォークも作戦案を最高評議会に持ち込んだ際、政権維持のための方法があると説得していたのでこれもまた図星。
無論、そうとは答えられないフォークの回答は、


「戦いには機というものがあります。それに逆らえば運命そのものに逆らうことになります」

全く理由にもなってないが、「つまり現在こそが帝国に対して攻勢に出る機会だというのか?」とヤンが尋ねると、


「攻勢ではありません! 攻勢です!!」

「イゼルローンを橋頭保とし、ここから帝国領の奥深くへと侵攻する! さすれば帝国軍は狼狽し、成す所を知らないでしょう!」

「同盟軍の空前の大艦隊が長蛇の列を成し、自由惑星同盟正義の旗を掲げて進む所、勝利以外の何物もあり得ないのです!!」


……いや、だから何を根拠にして今攻めようとしているのか説明して欲しいと言っているのに、フォークは美辞麗句や精神論を並べ立てるだけに留まらず最初から勝った気分であり、「質問に答える」という姿勢すら見せていない。

……実はもう半年ほど待って仕掛ければ帝国の内乱である「リップシュタット戦役」と重なり*2、本当に“最高のタイミング”になったかもしれない。
ただ(フォーク准将というより)少なくともサンフォード政権とコーネリア・ウィンザーらにとっては「選挙が終わってからの『最高のタイミング』など(自分の地位と権力の維持には)無意味」であろう。


ヤンは隊列が長くなると補給や連絡が困難になることや簡単に横から分断されるリスクが大きいことを語ってフォークの作戦の欠点を指摘するのだが……。


「何故、分断の危機のみ強調するのか小官には理解致しかねます」

「我が艦隊の中央に割り込んだ敵は前後から挟まれ、集中砲火を浴び惨敗すること疑いありません!」

「ヤン中将のおっしゃることは取るに足らない危険です」

俗に言う、「双頭の蛇」ということなのだろうか?
新アニメ版ではビュコックがヤンをフォローし、アスターテ会戦と同じで兵力を集中させず分散させると各個撃破されてしまう」と過去の失敗と反省を持ち出すのだが…。


「戦術的にはともかく、戦略的には先の戦いは敗北じゃない」

「我が軍は最終的に帝国軍を駆逐して侵攻を防いだ」

「そもそも今回の作戦は今までと意義が異なり、自分達は民衆を救済する解放軍なのである」


さりげなくビュコックを侮辱した上で屁理屈を述べて一蹴するばかりか自分達が「正義」であり「救世主」だと勝手に自称しだす。
それこそアスターテは実質的には2個艦隊を失い100万人以上(原作では200万人、OVAでは150万人)の戦死者を出した惨敗で、ヤンの戦術的勝利の結果なんとか一矢を報いて防衛に成功した程度なのだが、フォークはヤンの活躍は完全に無視していた。

補給担当のキャゼルヌは補給線が長すぎるとすぐ物資不足に陥ると危険性を訴えるのだが、ここでもロボスが「占領地から物資を出させれば良い」と、最初から略奪現地調達することを前提した発言をする上、それは無茶すぎると反論するキャゼルヌに「そこを何とかするのがお前の仕事だ」と、無理難題をこれまた無責任にも押し付けてきた。

フォークは対策や解決案も出さず「敵は弱い。自分たちは強い。自分の作戦が正しい。黙って従え」と言わんばかりにヤンら反対者を拒絶するが反対者側も負けじと「敵の指揮官は戦争の天才であるラインハルトになるだろうからもっと慎重になるべきだ」と意見を述べる。

敵がラインハルトであるという話題になるとさすがに他の提督達の顔色も変わり、フォークの旗色が悪くなりかけるがそこに参謀長のグリーンヒルが「まだラインハルトは若いから失敗することもある」と発言する。
危機的状況で一か八かの戦いを仕掛けざるを得ないなら、敵の失敗に期待してでも戦わなければならない、と言うのも一理ある。
だがこの時点では、同盟がイゼルローン要塞を奪取したことで、とりあえず帝国が急に攻撃してくることのない小康状態にある。そんな中で具体性のない敵の失敗に期待するという希望的観測でフォークの主張を擁護してしまった。
そこはヤンの方をフォローし、ラインハルトが指揮官にならないか、同盟側がラインハルトを上回ることができるという具体的な勝算を提示させるべきなのに……。
実際ヤンも「それはそうです。しかし勝敗とは結局相対的なもので彼が犯した以上の失敗を犯せば結果は自ずと明らかではないでしょうか?」と、「ラインハルトを同盟が上回る」根拠の提示が回答となる質問を提示する。

フォークにとってはある意味助け船とも言える質問だったのだが、グリーンヒルの横槍でますます調子に乗り「ヤンの心配は予測に過ぎない」と断じるばかりか、「敵を過大評価して必要以上に恐れるのは武人として恥だし、それが味方の士気を削いで利敵行為になる」とはっきり侮蔑。
このあまりに失礼なフォークの言葉にはビュコックがデスクを叩いてブチ切れる。

「貴官の意見に賛同せず慎重論をとなえたからといって、利敵行為呼ばわりするのが節度ある発言と言えるか!」

しかし本人は全く反省の色もなく「一般論を言っただけ。個人に対する誹謗じゃない。そう思われるのは逆に迷惑だ」と言い返していた。
いや、明らかにあなたの個人的な敵対心でしょうに。

ヤンもビュコックも「ダメだこりゃ」と反論する気が無くなり、ロボス以外の提督達も白けきってしまった。
しかし、そんな周りのことなど眼中になくお構いなしと言わんばかりにフォークは勝手に演説を続けていく。
この席にもしもロイエンタールがいて「黙れ下衆!」と言ったらヒステリーを起こして叩きだされただろう。

「そもそもこの遠征は専制政治の圧政に苦しむ銀河帝国250億の民衆を解放し救済する、崇高な大義を実現するためのものです」

「これに反対する者は結果として帝国に味方する者と言わざるを得ません。小官の言う所は誤っておりましょうか!?」

「たとえ敵に地の利あり、あるいは想像を絶する新兵器があろうともそれを理由として怯むわけにはいきません!」

「我々が解放軍として大義に基づいて行動すれば帝国の民衆は歓呼して我々を迎え、進んで協力するに違いないのです!!」

「さすれば、この戦いは……(以下略)


……もうお分かりだろう。フォークの立てた侵攻作戦とは作戦の「さ」の字もないような本人の薄っぺらいエゴイズムに満ちた願望と誇大妄想の塊でしかなかったのだ。
「テキニショウリスル」というオウムの声真似レベルのフレーズのことしか考えておらずその「勝利」とは何なのか、最終目標はおろかその過程さえも全く無いお粗末にすら値しないレベルである。

まさしく、「ぼくがかんがえたさいきょうのさくせん」


フォーク的には

高度な柔軟性で臨機応変に対応 → お前らが自分達で考えて敵に勝って私を喜ばせればいい

帝国の民衆は歓迎して協力するに違いない → 我々は英雄なのだから賞賛されて当たり前だし、相手も協力するのは当然

今攻めるのが好機で、これを逃せば運命に逆らうことになる → お前(ヤン)を追い越すために、自分が今やりたいから

敵を過大評価して恐れるなんて恥 → ヤン程度に負けた帝国軍なんてみんな弱いに決まっている

と、いうものだったのだろう。無茶も大概にして欲しい……。
要するにフォークは敵はおろか味方も、敵側にいる民衆の都合さえも全く考えておらず単に自分が出世するための道具としか見ていないのである。
ライバル視するヤンに至っては完全に邪魔者扱いしていることが分かる。


こうして作戦会議とは名ばかりな、フォークのロマンチズムのみに満ちた演説が虚しく響き続ける一人舞台だけに終わってしまったのであった。

なお、新アニメ版では上記のフォークの自分勝手極まりない妄想の演説を聴いていたヤンは内心で…

「それこそ予測ですらない。一方的な期待に過ぎない。帝国人民が現実の平和より空想上の自由と平等を求めているとどうして言える?遠征計画そのものも無責任なら、運用も無責任極まりない」

フォークの作戦ですらない妄想とそれを真に受けた政府、そしてそれに対するロボスの姿勢を侮蔑した。帰宅後に一部始終を聞いたユリアンも…

「止めちゃえば良いのに」

そう、止めてしまえば良いのだがこの無謀な上に杜撰で無責任な作戦を認めたのは同盟市民が選んだ政治家なのである。
むしろ軍部の主流派の多数は反対であったのに、ピンポイントで実施を左右できる地位に就いている有力軍人が推進派に回ったために通ってしまったのだ。
民主主義の腐敗の最たる例であろう。


そして肝心の侵攻作戦では何をしていたかと言うと、前線での活動はヤンやビュコックら主要な提督達に任せきりで何もせず、司令部である後方のイゼルローン要塞にて遠征軍のナンバー2である参謀長のグリーンヒル大将を差し置いてロボスと共にふんぞり返っているだけだった。

帝国領侵攻作戦・作戦の経過と破綻……

戦術目標は事後的に決められたのか、遠征軍は帝国軍の反撃もなく次々と惑星を占領下に収めていき、一応フォークの見込んでいた現地住民からの歓迎もあって作戦は順調に進んでいるかに見えた。
道原かつみ版ではこの時のフォークの心境が明確にされており、「英雄の名は私にこそふさわしい!」とすっかり自惚れきっていた。

実際は、この時の帝国軍はラインハルトによる焦土作戦によって占領される惑星からは食料や物資が取り上げられており、同盟軍は自分達の物資を民衆に提供せざるを得なくなっていた。

おまけにフォークの占領政策自体が無策無計画であり、占領地をどんどん広げていったためにその供給量は瞬く間に増大し、イゼルローン要塞の貯蔵と生産能力では対応できなくなってしまう。

補給担当である後方支援のスペシャリスト、キャゼルヌは元々無茶な出兵にもかかわらず3000万の将兵を飢えさせない補給計画をしっかり立てるという凄腕ぶりを見せていた。
だがそこから更に5000万人もの民衆が増えてはいかにキャゼルヌが凄腕でもどうしようもなく、前線でのヤンと同じく敵の作戦に危機感を覚えてロボスに直談判を行う。そもそも全軍の二倍にも上る捕虜を食べさせる補給計画など、現実問題として立案不可能である。

しかし、ロボスは相変わらず無気力・無責任な対応しかせず、フォークも「敵は補給部隊を襲って補給線を絶つ」とキャゼルヌの意図を一応察してはいたのだが、「最前線までは我が軍の占領下にあるから何も心配はない」とこれまた楽観論と敵を過小評価。更には新アニメ版では補給計画の破綻を危惧したキャゼルヌを鼻で嗤い、「大義のための戦いで、リスクを支払わずして勝利を得ることなどできない。」と侮辱した。自分は絶対に死なない安全な後方で現場の苦労を理解せず、自分を偉く見せることしかせず、しかもこの上官侮辱罪をグリーンヒルは窘めすらしない。
新アニメ版ではロボスでさえ「お前の臆病に付き合っている暇はない」とまともに取り合わず、この期に及んで危険な前線よりも安全な後方である自分達の保身を考えて、補給部隊の護衛も30隻にも満たない数しか用意しなかった。
盗賊相手の護衛ならともかく、まともな軍に襲われればひとたまりもないのは明らかである。これに対し、グリーンヒルさえ意見しない有様で、もはや司令部がまともに機能していないのは明らかであった。

申請を受けたハイネセンではこのまま際限なく占領地が拡大すれば、いずれはイゼルローンどころか本国の供給も追いつかずに財政破綻を来すと見据えたレベロは真っ先に撤兵を主張し、ルイもそれに同調した。
軍人ではない財政政治家のレベロの指摘もあながち的外れではなく、ただでさえ社会システムが停滞している上に財政も破綻寸前の状況下で、際限のない補給物資の調達は財政破綻をより悪化させるので、正論であった。
しかし、選挙しか頭にない上に申請書の文面をまともに理解できていないサンフォードとウィンザーを筆頭にした政治家達は無謀な遠征を強引に継続させた。彼らは、自分達の選挙のためだけに三千万の将兵に戦死どころか飢え死にを命じたのである。

はたして、政治家たちが激論の末に送り出した追加の補給部隊はラインハルトの腹心キルヒアイスが率いる数万隻の大軍勢に抑えられてしまう。
鈍重な輸送船と数十隻の護衛を数万隻で潰すなどキルヒアイスでなくとも楽勝な任務であり、ラインハルトもここまで同盟軍が補給軽視な対応を取るとは想定外だったのかもしれない*3
その上、補給計画が失敗したことを棚に上げて無責任にも「必要な物資は現地調達せよ」と略奪まで行わせて責任を押し付けてくる始末。
略奪など行えば自由惑星同盟の掲げた正義は地に堕ち、フォークが勝手に見込んだ「帝国の民衆は歓呼して我々を迎え、進んで協力する」などますますあり得ないことになる。
そもそも現地には物資がないから提供を余儀なくされた状態であり、仮に略奪したところで軍を賄うほどの物資などありっこないのである。当然、前線の提督達はこの無茶苦茶な命令に憤慨し、苦渋の決断で略奪を命じた結果、どうなったのかは言うまでもない。
さらに道原版では物資が足りなくなったことから占領地で暴動が起きると、


「何故私の作戦の足を引っ張る!?」

「何故私の予定通りにしない!?」

「役立たずめ!」

と、逆ギレしていた。
そもそもあなたの立てた作戦に予定すらないでしょうに。

その後、全軍撤退せざるを得ないとヤンやウランフといった前線主力の意見が一致するが、一応現に敗戦しているわけではない以上、勝手に撤退するは敵前逃亡で重罪である。
この話を聞き入れてロボス元帥に面談を申し入れてきたビュコックにフォークは呼ばれてないのに応対し、「お前を呼んだ覚えは無いから早くロボスを呼べ」と言われても、


「ロボスへの進言は全て自分を通してもらう」

「どれほど地位が高くても規則には従え」


勝手に自分が決めたルールを押し付け、あまつさえそのまま通信を切ろうとしていた。
恐らくフォークとしては戦果の報告以外は聞く耳を持たないつもりだったらしい。
准将と中将では地位からしても中将の方が大分上であり、フォークの対応は露骨なヒエラルキーの無視である。
まして、前線から中将自ら元帥に軍事上の直言を求めるともなれば、それだけの緊急事態である。

しかしつないでもらえなくては物理的にどうしようもないので、仕方なくビュコックはその場で用件を伝えて撤退をすべきだと進言するのだが、


「ヤン中将はともかく、勇敢をもってなるビュコック提督までが戦わずして撤退を主張するとは意外ですなぁ?」

「小官なら撤退などしません。帝国軍を一撃に屠り去る好機だというのに何を恐れていらっしゃるのです?」


何とこの場では関係ないはずのヤンを引き合いに出して侮辱した挙句、ビュコックにまで堂々と嫌味をぶつけてきたのである。
さらに道原版ではこの時の心情が描かれており、


「味方のくせにみんな私の邪魔をしようとする……!」

「私が名声を得るのがそんなに妬ましいか!?」


まるで叱られる子どものような心境である。こんな時に至っても自分を一方的な被害者としか考えていないのだった。

ビュコックはご立派なフォークの意気込みに対して「それじゃあ代わってやるからお前がイゼルローンから前線まで来い」と皮肉をぶつけるが、


「……できもしないことを仰らないでください」


たった今、口にした大言壮語はどこへやら、前線に出るのは嫌だと気まずそうにフォークは答える。
このあまりに自分勝手な発言にとうとうビュコックの堪忍袋の緒が切れ、


「不可能なことを言い立てるのは貴官の方だ! それも安全な場所から動かずにな!」

「小官を侮辱なさるのですか……!?」


フォーク自身もついにキレ始めるが、老害と化したロボスと違って70歳に近づいてなおも前線で戦い続ける百戦錬磨の古強者であるビュコックは全く動じない。


「貴官は自己の才能を示すのに弁舌ではなく、実績をもってすべきだろう」

「他人に命令することが自分にはできるかどうか、貴官自らやってみたらどうだ!」


さらに藤崎竜版ではこれに加え、


「ヤン中将に対抗意識を燃やして戦略家を気取るのもここまでだ! 貴様にはヤンほどの才能などない!」

と、フォークにとって最も聞きたくない(言われたくない)であろう一言を言い切っている。

実にごもっともなダメ出しと、ぐうの音も出ない正論で叱り飛ばされてプライドを傷つけられたフォークは突如、(藤崎版では顔を奇怪な形に歪ませ、道原版では悲鳴さえ上げて、Die Neue Theseではこれら二つを一度に起こして)卒倒してしまう。
何事かとビュコックも呆然とするがヤマムラ軍医(道原版では女性)は挫折感が異常な興奮を引き起こして癲癇性ヒステリーによる神経盲目を発症したと宣告した。
実はこれが俗に言う「火病」と呼ばれる症状である。

で、その病気を取り除くにはどうすれば良いのか軍医曰く、

●逆らってはいけないし、挫折感や敗北感を与えてはいけない
●誰もが彼の言うことに従い、あらゆることが彼の望み通りにしなければならない
●提督方が非礼を謝罪し、粉骨砕身して彼の作戦を実行して勝利を得て彼が賞賛の的となる
●ぶっちゃけ、善悪関係無しに自我と欲望を満足させることが重要

と、いうもの。要は、「フォークの作戦が思い通りに行けば治る」というものである。
これにはビュコックも「チョコレートを欲しがって泣き喚く幼児と同程度のメンタリティーしか持たん奴が3000万人の将兵の軍師などと知ったら、帝国軍の連中が踊り出すだろう」と呆れ果ててしまった。

当然、最初から無理のあった彼の作戦を実行して勝利なんてことができるはずもなく、結論として治療にはフォークが辞めてしまえば済むこと。
軍医少佐も困惑あるいは呆れた様子でビュコックのぼやきを聞いており、要塞勤務の医師でさえフォークには思うところがあった模様。

結局、ロボスへの面会は本人が昼寝をしていた上に「敵襲以外で起こすな」という任務放棄にグリーンヒルも律儀に付き合い、お役所仕事な対応しかしなかったので無駄な時間を浪費するだけになってしまった。
OVAに至ってはビュコックとの通信より遥か前に既に輸送部隊が文字通りに敵襲によって全滅しているという最悪な事態が起きているにもかかわらず、グリーンヒルは何も行動を起こそうともしなかったのである。
ここでグリーンヒルがなんとしてもロボスを動かすよう働きかけるか、任務遂行能力の喪失などを根拠にロボスを更迭するよう動いていればその後のアムリッツァ集結だけは回避できただろう。
後者の場合軍法会議沙汰になるかもしれないが、実際のロボスの実務内容と同盟軍を二分する派閥の一方が完全に崩壊・シトレ派に統一されることを考えれば大きなペナルティもなかった可能性は高い。

しかし、グリーンヒルは動かず、本物の利敵行為の共犯者になるという愚行を犯してしまい、信用を大きく損なう羽目になる。
奇しくも、これは理性と良識を持ったグリーンヒル自身も本質的な意味では腐敗した同盟軍人と同じ穴の狢である証明にもなってしまった。

こうして病院送りにされて予備役となったフォークであったが、最終的にラインハルトの総反撃によって遠征軍は壊滅的な打撃を受け、散々憎んでいたヤンやビュコックの奮闘によって辛うじて全滅は免れ、無残に撤退したのであった。

しかし、この無謀な遠征によって同盟軍は動員者3000万人中2000万人以上の戦死・行方不明及び投降20万隻もあった艦艇の8割以上を喪失、到底回復し得ない致命的な戦力低下を招いてしまったのである*4

ロボスが辞任したために後ろ盾を失い、この最悪の事態を引き起こしたフォーク自身も同僚達からも遠慮なく罵倒され、「アムリッツァで2000万人の将兵を殺した低能」という悪名を残したのだった。

ただしフォーク准将自身は先の癲癇性ヒステリーの発症で倒れたことや、少なくとも公式には一介の作戦参謀に過ぎなかったこと、そもそもこの作戦実行を決定したのが最高評議会であったことなどから、軍法会議等での処罰は行われず、予備役に編入されて病院送りになっていた。
(ノイエ版では病室に閉じこもって、パソコンをいじっていた。恐らく、また何の実体も伴わない作戦計画書を政府に提出する気でいたのだろう。反省という概念すら全く知らないこの男の事だから、この失敗は恐らくヤンとビュコックのせいということになっているのは想像に難くない。)

クブルスリー本部長暗殺未遂事件

その後、病院から抜け出した彼は新しく統合作戦本部長に就任していたクブルスリーに現役復帰を願い出てきた。
しかしその方法は統合作戦本部で移動中にアポなしで呼び止めて立ち話を行うという、無礼極まりない行為。
ただでさえフォークのせいでボロボロになった同盟軍の立て直しに忙殺されているのに、少し怪訝な顔をしつつも対応したクブルスリーはぐう聖である。

病気は治ったと主張するフォークに対してクブルスリーは「人事部に行って正式な手続きをしなさい」と至極全うな対応。
しかし、それでもしつこく食い下がるフォークはロボスのようにクブルスリーの権限で今すぐ何とかしてくれと頼み込むが……。
前にどんなに地位が高くても規則は守れ、と言ったのはどこの誰だっただろうか? まさにおまいうである。


「フォーク予備役准将、君は何か勘違いをしているのではないかね?」

「私の権限は手順を守らせるためにあるのであって破らせるためにあるのではない」

「どうも君は自分を特別扱いする傾向にあるようだが、私の見た限りでは病気が完治したとは言いかねるようだな」

「まず君は守るべき手順を守ることから始めることだ。そんなことでは復帰したところで協調を欠くだけで、君にとっても周りにとっても不幸なことになるだけだろう」

「悪いことは言わんから出直しなさい」

あまりに身勝手な懇願に対してもクブルスリーは毅然と諭すように、フォークにぐうの音も出ない正論を叩きつけたのだった。
だが正論は時に悪手となる。エゴイストの極みだった上にそもそも病気自体も治っていない狂人のフォークはまたヒステリーを起こす。
しかも神経性盲目で失神し自滅した前回と違い、今回は隠し持っていたレーザー銃でクブルスリーを襲撃するという最悪の形で。
幸いクブルスリーは一命を取り留めたが、長期の療養に入ることになったために本部長代行に就任したのが、レベロからも後に小役人と称される程の低能であるあのドーソンである

結果、アムリッツァの愚行に続いて有能な軍人をまたも失い、残ったのは素人や実戦経験など乏しい階級だけの低能ばかりで、自由惑星同盟は凋落の一途を辿っていくことを余儀なくされた。

実はこの時フォークは裏でクーデター勢力、救国軍事会議に参加しており、クーデターの前に本部を弱体化させるためにクブルスリーを暗殺しようとしていた。
会議のメンバーの多くは殺せなかったことに使えない奴と非難してたが、一時的にせよクブルスリーを職務不能に追い込んだことから「最低限の仕事はこなした」と評価する者もいた。
どちらにせよ救国軍事会議のメンバーにとってのフォークは「使い捨ての鉄砲玉」でしかなかったのだが。

事実、誰もバックに誰かいるとは考えず狂人がやらかした最悪の行動として処理された。クーデターが起こると考えていたビュコックでさえ、自分が言ったことが遠因と思い多少後味の悪さを感じただけで裏があると勘を働かせることはなかった。
こういうところばかりで上手くいってしまうあたり本当に同盟にとって疫病神である。

なお、自白剤など非合法な取り調べ対策にフォーク一人で実行したと暗示をかけておいたのだが、フォークの幼稚な精神だったからこそ容易かつ強固な暗示をかけられたという。
会議のメンバーはフォークは精神病院で狂人で生涯を終えるだろうと予想していた。そのことに対して同情する者はいなかった。そもそも彼らが行動を起こしたのは、フォークのやらかした帝国領侵攻作戦が原因なのだから。
しかし、そのフォークのやらかしを後押ししたのは、救国軍事会議のトップなんだからとんだ責任逃れである


ちなみにクーデター決行前の会議では一応参謀らしく「ヤンの元へ同志を送り込んで監視し、敵対行動に出た時は暗殺できるようにしておくべき」という意見を出して採用されているのだが、ヤンを(知略と軍民双方への人望、配下のイゼルローン駐留艦隊の戦力などから)できれば同志に加えたいというメンバー達に対して、「あんな男なんて必要ない」とある意味ではごもっともな正論だが拒絶している。憎きヤンへの敵対心が完全に露わになっており、グリーンヒルからは「個人的感情で言うな」とダメだしされる始末であった。
ただヤン提督の思想信条を考えると、仮に同志に加えようとしても間違いなく拒否したであろうことから、フォークの言い草も「偏見に基づいてこそいたが、結果的に正鵠を射ていた」といえるであろう。

軍のトップを殺人未遂するという凶行をしでかしておきながら、フォークは救国軍事会議の予想通り銃殺刑にされることはなく、精神病院送りにされて事実上の永久牢獄入りにされることとなり、軍人生命はおろかその生涯すら終わった……わけではなかった。

万が一にでも、クブルスリーが復帰を承認していたらどうなっていたかは不明だが、救国軍事会議の情報を売り渡して英雄に祭り上げられ、本当に同盟の軍上層部に着くという悪夢が実現していただろう。
そうなった場合は考えるまでもない。二度のラグナロック作戦より先に、第二、第三のアムリッツァをやらせて同盟は自滅していた。

ヤン・ウェンリー暗殺事件

数年後、もはや誰からも存在すら忘れ去られ自由惑星同盟も滅亡し、皇帝となったラインハルトがイゼルローン要塞に立て籠もったヤンと決着をつけようとしていた頃、フォークが押し込められていた精神病院が焼失するという事件が発生。

犠牲者の中にはフォーク自身も含まれていた……かと思いきや、密かに地球教団によって拉致されており、大主教のド・ヴィリエは未だ狂人のままでいたフォークを洗脳してヤンを抹殺するように仕向けた。


「フォーク准将、君こそは民主共和国政治の真の救い手になれるだろう」

「ヤン・ウェンリーは専制支配者ラインハルト・フォン・ローエングラムと妥協し、講和して彼の覇権を容認し、その下で自己の地位と特権を確保しようとしている」

「ヤン・ウェンリーを殺せ。彼は民主共和政治の大義を売りわたそうとする醜悪な裏切者だ」

「フォーク准将、いや、本来なら君こそがいまごろは若き元帥となり、同盟全軍を指揮して、宇宙を二分する決戦に臨んでいたはずなのだ。ヤン・ウェンリーは君の地位を盗んだのだ」

「全ての準備は我々がととのえる。ヤン・ウェンリーを殺して民主共和政治を救い、かつ君の正当な地位を回復したまえ」




「そうだ……私こそが……民主共和制の英雄なのだ……私こそが……」

「ヤンめ……ヤン・ウェンリーめぇ……!」

憎きヤンを殺して、本来英雄の自分のものである元帥の地位を取り戻す等という荒唐無稽な妄執に憑りつかれたフォークは武装商船を強奪してラインハルトとの会談に向かおうとしていたヤンたちを襲撃*5
だが、それは地球教によるヤンを確実に抹殺するためのであり、帝国軍に偽装した本命の暗殺者たちをヤンの元に送り込む*6ために逆にフォークの武装商船を撃墜した。


「何故だあああああああぁぁぁっ!?」

そして、地球教の計画通りに油断したヤンは暗殺されてしまうことに……。
最初から最後まで、自分の矮小なプライドのために味方の足を引っ張って迷惑をかけるどころか、害悪しかもたらさないどうしようもない輩として生涯を終えるのだった。

最後の断末魔が裏切られた事なのか、それとも英雄である自分が死ぬ事が理解できないのかは闇の中である。

【人物】

アッテンボローにも「嫌なヤツ」呼ばわりされていた非常に陰気かつ陰険であり、そのくせ無駄にプライドや虚栄心だけは異常なまでに高いという厄介な性格。
後に、アッテンボローからは「フォーク自身が死ぬのが、文明と環境のため」と存在自体を全否定されているが、正にその通りである。

いずれ同盟軍の元帥となって頂点に立つ野心を抱いているのだが、同じく陰気で傲慢な性格である「七都市物語」のユーリー・クルガンとは異なり本人が思うような才能は皆無で、総合作戦本部長のシドニー・シトレ元帥からの評価は極めて低いばかりか「こいつは危険だ」と危険因子としては第一に警戒される始末。

基本的には自分自身の出世欲しか頭にないエゴイストで他人のことなどお構いなしであり、目上の人間であろうが平気で嫌味を吐いて侮辱するのはもちろんのこと、自分の出世の邪魔になるような功績や能力を持つ人間を妬んで一方的に敵視するなど器量も低い。
せめてその敵視が帝国軍に向いていれば、やる気のある軍人になれたと言えなくもないが、彼は肝心の帝国軍を侮るばかりで敵を同盟軍内部に求めてしまう始末。

そのくせに自分は安全な場所から前線で働いている人間に無茶な命令を平気で指示し、自分自身の才能を実績では示そうとせずに大言壮語な弁舌や空虚な演説によって認めさせようとする。
自分に反論する者には上記と同じくさりげなく貶めて封じ込めたりする下衆なことも平然と行う。

どちらかと言えば軍人より政治家に向いていると言えなくもないが、それでも結局はヤンが嫌う「安全な場所にいながら主戦論を唱える無能な政治家」と同レベル程度といったところだろう。

また極度にプライドを傷つけられたり、自分の望み通りにならず挫折感を味わったりするとヒステリーを起こすという幼児未満のメンタリティしか持っておらず、挙句の果てにはそれによって勝手に卒倒してしまったり、逆ギレして暴走して周りの人間に危害を加えたりと、とてもではないがまともな精神を持ってはいない。

どのような家庭環境かは不明だが、相当に甘やかされて何でも思い通りになるような人生だったのは間違いない。
机の勉強はできても、実践する能力は皆無なのにそれさえ理解できないのも挫折知らずのエリート故…というのなら、まだ同情の余地があったかもしれないがそんな範疇ではない。
何せ、上手くいかなければ自分に問題があったという事さえ理解できないのである。
度しがたいまでに自己中心的で、宇宙が自分を中心にできていると思い込んでいるような体たらく。

挙げ句の果てには、自分こそが民主共和制の英雄という妄想に入り浸り、めぼしい戦果は全てが自分のものであるかのように思い込んでいた。
そもそも、ドヴィリエに洗脳された際に『君こそが民主共和制の真の救い手』、『ヤンが自分の元帥の地位を盗んだ』、『今頃は君こそが若き元帥として同盟全軍を指揮している』とフォークの妄想と願望を徹底的に煽られてその気になっている。
この時点で既に同盟は滅亡している上に、最初から持っていない元帥の地位をヤンが盗んだ等と煽てられて、しかもヤンを殺す事ができてもフォークの名誉の回復に繋がるわけでもないのに、その気になるのがこの男の疫病神としての最大の特徴。
或いは、『同盟が既に滅亡しているという事さえ、理解していない』のかもしれない。

イゼルローンで失神した彼を診察した軍医はその精神性について「ワガママいっぱいに育って自我が異常拡大した幼児と同じ」とコメントしており、
私的なコネクションで軍幹部どころか国の議会にまで作戦案を持ち込めた点からして、上流家庭で相当に甘やかされて育ったのだろう。

その肥大化したエゴイズムや人間性の低さは帝国の門閥貴族のバカ息子たち、幼いのを差し引いても自制というものを知らないエルウィン・ヨーゼフⅡ世と多くの共通点を持っており彼らと同レベル、あるいはもっと酷いものであった。
これで士官学校の首席入学・首席卒業を果たせるだけの能力があるだけ周囲に与えた被害のほども同様に酷いものになったが…


【能力】

作戦参謀を務めているというだけあって、一応それなり以上に作戦立案能力はあり、第六次イゼルローン要塞攻略戦ではヤンにも「悪くはない」と評される作戦を立てている。
ただし、これは作戦参謀でもない前線指揮官、しかも良く言って猪武者レベルのウィレム・ホーランドが考え付くような内容であり、最終的にラインハルトにより作戦を見極められた結果、ほんの数秒の反撃で艦隊は壊滅しホーランドは戦死、失敗に終わっている。やっぱり敵のリアクションを考えてない作戦に過ぎる。

救国軍事会議によるクーデター決行前の作戦会議では「ヤンの元にスパイを送り込む」という策を出しており、全員一致で即採用されるなど、アムリッツァの愚行ばかり取り上げられて完全無能扱いされているが、かなりハイペースな昇進ができているため力量自体はそれなりに有していた模様。
ヤン艦隊副参謀長のパトリチェフは「マニュアルがあり、答えのある問題を解決させるなら手際よくやれただろう」とコメントしている。
むしろそういう能力が高ければこそ、答えのある士官学校の問題を解く能力には優れており、曲がりなりにも主席になれたと考えるのが素直である。
マルコム・ワイドボーンはじめこの世界では士官学校首席がかなりのやらかし組である。

逆に言えばそういったどこかに存在する答えを求めるタイプの能力しか持ち合わせていないという事であり、敵のリアクションや思考を想定し作戦を立てるタイプの参謀としては不向きだったとみるしかない。
おそらく自身が献策するタイプの参謀より、他者の提案した作戦を元に必要な戦力の策定や準備を行う補佐として参謀の適性の方が人格以外は高い。
いっそキャゼルヌと同じ後方勤務なども適任だっただろう。それはそれでキャゼルヌを陥れていた可能性もあるし、本人の自己英雄志向とはかけ離れているが。

前記のように本人の異常なまでのプライドの高さやヤンへの対抗心から高望みをした結果、正常な思考や判断力を失ってあの頓珍漢な作戦を立案してしまい、結果的に同盟を滅亡させる要因を作ってしまった。
とはいえ、既に社会システムが瓦解していたのも事実であるし、アムリッツァ集結はロボスの指示によるものでフォークは卒倒していたため指示や提言は反映されていないが卒倒していなくてもやりそうではあるが、遅かれ早かれ同盟は口先だけの無能で腐敗した政治家とそれにへつらう軍人で埋め尽くされ、自滅していた可能性もある。

また、ロボスのような実力者に取り入るのも上手く、それによって生まれたコネを利用して自分の思い通りにする等、迷惑極まりない行為も平然と行う。
実家のコネでも取り入りでも使えるものは何でも使うという図太さは上に立つ者としてときに必要だが、それが肯定されるのは組織のためになるという大義名分とその裏付けあればこそ許されるある種の必要悪で、フォークには大義名分も裏付けもあったものではない。ただ、『自分こそ英雄で、自分は特別な存在』という妄想で動いている。
地位や実力者の傘を着て威張るという点では帝国の門閥貴族のバカ息子とほとんど同類に等しい。

どの道、軍人としての才能はシトレ元帥が言うように本人が思っているほど高くはなく、所詮はコネだけで伸し上がり実力者の後ろ盾があって威張っているような低能に過ぎない。

その辺を考慮してか、ゲーム系でのステータスは内政系ステータスである「運用」はむしろ優秀である反面、戦闘系ステータスは軒並み低く、実況動画では「コスモだけ燃やしててください」とか言われる。

他方、一部では「自信と行動力はすごい」と皮肉を込めて言われることもある。
会議の言も作戦が成功裏に終わっていれば何が成功か定めていないという問題はさておき英雄の演説と言えないこともないし、抵抗勢力の言う事を安易に聞いた結果肝心なことが実行できないまま機会を逃すのもままある。
そう見れば実行力や断行力という点については侮れないものがあると言えるかもしれない。
問題は、そういう実行力や断行力は確かな裏付けがなければただの害悪でしかないと言う事なのだ…

【評価】

作中目線でも読者目線でも、まっとうに評価すべき点が見当たらない人物。
口先だけの同盟の悪役キャラと言う意味では、ヨブ・トリューニヒトという似たキャラもいるが、あちらは少なくとも先見の明はあり(具体的な行動には出ていないので結局役には立ってないが)、良くも悪くも怪物染みた生命力で何度でも返り咲くだけの政治的能力とカリスマ性も備えているためフォークよりはまだファンがいる。

むしろ一周回ってネタキャラとしての評価はそれなりにある。

【同盟の腐敗】

しかし、フォークの人格以上に根深い問題はどうであれ、こんなやつが重要ポジションについて、明らかに無謀な計画を誰も止められない同盟軍の状況である。

確かに同盟は末期症状を呈してはいたが、イゼルローン要塞の奪取で帝国からの急な攻勢は想定しがたい状態になっていたのであり、真っ当な国家運営に注力していれば何らかの状況の変化を待つ程度の余力はあっただろう。
そういう機会を全部潰してしまったのは、同盟側が組織的にどうしようもなかったからである。

自分では軍事についての見識などほとんどないにもかかわらず、戦果を望む同盟市民の声と支持率のために、フォークの示した安い餌に飛びついて、大規模な軍事行動を起こさせる政治家。
失敗を悟っても高度などころか最低限の臨機応変な対応ができず、自らの地位のために遠征の続行をさせてしまう。

明らかにおかしい作戦計画に対して強く反対することもできず従うばかりの司令部。
問題点すら見抜けない司令官、問題に気づいても意見具申もできない部下たち。
実績もなく、初歩レベルの戦略目標すら立てられないような者がトップのお気に入りになって、ヒエラルキーも無視することができてしまう。
敵側の情報不足、占領後の見通しの甘さ、補給の軽視などといった軍事的な諸問題ももちろんだが、こうした問題点は主要な軍上層部は気づいており、上記の問題点がなければ改善も見込めた事項であった。

議会で決まった以上は作戦の実行拒否ができないにしても、議会の側ではあくまでも侵攻を決定したと言うだけで具体的な内容はほぼ丸投げであり、作戦をより現実的なものに練り直す機会はあったと言うことである。
仮に遠征の目的を「同盟市民の人気取り」と評議会の内心通りに設定するだけでも、ただ行けと言われるよりかは遠征の目的が具体的になり、内容に検討の余地が生まれる。
例えばイゼルローン回廊の帝国側で一戦して一勝できるだけで、自由惑星同盟建国以来の初戦果としていくらでも宣伝ができる*7
ビッテンフェルトやミッターマイヤーと言った帝国の主力将帥も当初は帝国側に出てきた同盟軍との早期決戦を考えており、ここでの1勝を目指すのであれば兵站問題は顕在せず、戦いに負けるとしても被害ははるかに小さく済んだであろう。
実際にはラインハルトの焦土作戦で帝国軍が戦闘を放棄していたが、それなら「帝国軍は同盟軍との戦いを恐れ逃亡した。我々は不当に物資を奪われ飢餓に陥った帝国民を救済した」とでも言えば、戦果を臨む同盟市民への宣伝材料にはなっただろう。
要は致命的反撃を許さない程度の侵攻にとどめておけば、焦土作戦の弱点である現地住民への負担を突くことも見込めたのである。*8

また、フォークが士官学校で首席になれてしまった点も見逃せない問題点である。
首席になどならなければ、フォークも昇進意欲を暴走させず、分を弁えて地位相応の能力を得ながら成長するチャンスがあったかもしれない。え、やっぱ無理?
かつて帝国を翻弄した730年マフィアは士官学校の同期組であり、その首魁だったブルース・アッシュビーは首席で、軍事でも文句のない実績を残していた。
ところが、作中年代ではフォークはもちろん、マルコム・ワイドボーンも首席で10年に1度と言われた逸材評価だったが、ラインハルトの戦術に為す術なく敗退したやらかし組になっている。
次席はフレデリカ・グリーンヒルやスーン・スールで、副官としては十分以上な能力を有していたが、それ以上の存在ではない。
むしろ士官学校を出ていないたたき上げのビュコックや、士官学校卒ではあるが成績は平凡だったヤンが末期の同盟を支えていた。
このことからは、高級士官の育成において、士官学校の評価・教育システムや同盟軍内部での昇進システムがまずい状況に陥っていた可能性も窺える。


もちろん、フォーク個人の能力と人格的問題は擁護しようがない。
だが帝国遠征作戦の失敗の責は能力どころか最低限のフィルタである階級すら超えて一部の人間が権力を振るえてしまう環境一個人に権限を集中させた組織それ自体の罪も考えるべきであろう。
たとえフォークが個人的にまともだったとしても、あるいはフォークをあらかじめ除いていたとしても、同盟の政府・軍部・そして市民の状況が同じなら、いずれフォークのような存在が何人も出てくるのは時間の問題だったと言えるかもしれない。

【主な関係者】

◆ロイヤル・サンフォード
最高評議会議長。
「政界の力学がもたらす低級なゲームのすえ、漁夫の利をえた」人物で、人望が無く精彩を欠くため、一周まわって逆に議長に選出された。
ところがやらせてみてビックリ、次の選挙に勝つことだけを目的にフォークが発案した帝国領侵攻作戦の実行を決定し、アムリッツァの悲劇を引き起こした。
フォークとは個人的なコネがあったが故に個人で不正に持ち込まれた作戦を軍部の作戦として承認してしまうなどロボスと同様に事実上、フォークの傀儡と化している。
当時はトリューニヒトは閣僚の一人に過ぎず、フォークに至っては多数の参謀の一人に過ぎなかった事を考えると、彼こそが自由惑星同盟滅亡の真の元凶と言える。
帝国領侵攻作戦の失敗の責任を取って辞任し、その後は登場しない。


◆コーネリア・ウィンザー
最高評議会議員の一人で情報交通委員長。当時の同盟最高評議会で唯一の女性議員であり、作中通しても珍しい女性の大人物である。
前任者の贈収賄事件により帝国領侵攻作戦の出征を決める議会のわずか一週間前に議員の一員となった新参者であるが、トリューニヒト同様の主戦派で最高評議会議長の座を狙う野心家。
原作地の文で「40代前半の、優雅で知的な美しさをもつ優雅で魅力的な女性で、声には音楽的なひびきがある」と評されており、レベロが警戒している。
しかし、トリューニヒトのような先見の明*9は皆無な上に、「犠牲が大きすぎる」と帝国領への侵攻を反対するホワン・ルイやジョアン・レベロに対して「どれだけ犠牲が多くとも、たとえ全国民が死んでも成すべき崇高な大義がある」と、過激な主戦論を口にする、ある意味ではトリューニヒト以上に危険な存在。
ジェシカ「あなたはどこにいますか?国民に犠牲の必要を説くあなたはどこにいますか?」
彼女の安っぽいヒロイズムと支持率上昇を狙う政治家たちの野心が合わさって帝国領侵攻への採決を強行させることになり、無謀な出征は決まってしまった。

しかし、いざ侵攻作戦が始まるとラインハルトの焦土作戦と遠征軍の無思慮な占領地拡大により、ひたすら支出ばかりが増えて浪費していく最悪な状況となってしまった。
追加物資の検討会議に「軍は何をしているのか」「サンフォード議長が余計なことを言ったから…」と責任転嫁の怒りと恨みが渦巻く状態で参加。
「もはや撤兵するしかない」と内心では考えつつも、自らの野心と責任追及を恐れる保身を優先して「せめて少しでも軍事的成果をあげてもらおう」と遠征継続に賛成した。
藤崎版に至っては「自分達が地位を失うから何とかしろ!」とはっきり開き直る始末である。
結局、帝国領侵攻作戦は得るもののない大失敗に終わり責任を取って辞職。
道原版においては責任を追及してくるマスコミに対して「人命以上に尊重するべきものがあるのが分からないの?」「自分なりに責任は取ったんだから満足でしょう?」と、この期に及んで逆ギレして逃げ出す醜態を見せつけた。

その後はサンフォードと同様に一切登場しない。
後にオーベルシュタインの草刈りと呼ばれる政治犯の逮捕があり、さらにはその政治犯が収監されたラグプール刑務所で暴動事件が起きているが、どちらにも彼女やサンフォードの名は出てこない。


◆ラザール・ロボス
宇宙艦隊司令長官を務めるピザデブなボケ老人初老の元帥。
数年前までは優秀だったが、老いてなお現役で活躍し続けるビュコックと真逆で近年急速に能力が劣化した老害ボケが始まったのでは。参謀長のグリーンヒルとは名コンビだったというがもはやまともに指揮もできていない。
ただ単に無能と化しているだけならともかく、職務への誠実さまでも失っている。

実績も能力も上なグリーンヒルよりも自分に取り入る低能なフォークを溺愛するというアホなことをしでかし、
結果として彼の言いなりになって完全に傀儡同然と化してしまっていた。

帝国領侵攻作戦でも同様に本人は無気力で、フォークに何もかも丸投げした結果、司令部ではフォークが我が物顔で好き放題に振舞い、当の本人も味方が危機に陥っているのに知らん顔で敵襲以外は起こすなと昼寝を決め込み、
挙句の果てには帝国軍の反撃でもはや惨敗であるにもかかわらず無責任にもグリーンヒルの撤退進言を拒んで無意味な会戦を指示する等、とことんまで味方の邪魔ばかりして最悪の結果を招いた。
藤崎版ではさらに「上の命令にただ黙って従っていればいい。そうすれば政治家になれる」とまで言う始末。

侵攻作戦後、敗戦の責任を取って本部長のシトレ元帥と一緒に辞任するが、シトレは巻き添えを食らったと周りから同情されたのに対して誰もロボスのことを気にかける者はいなかったという……。


◆ドワイト・グリーンヒル
統合作戦本部次長兼宇宙艦隊総参謀長で、フレデリカの父。
本来は良識的な軍人の一人としてヤンを含め数多くの軍人達からも信頼される有能な人物。

……なのだが、無能なフォークや無責任なロボスと同様に実際はアムリッツァの大敗の元凶の一人。
良くも悪くも真面目過ぎる性格で、しかも人を正しく評価したり裏を読む識見が欠けており、かつては幕僚として自分の元に置いていたヤンが不真面目な態度をしていたのもあったが、それだけで評価を落として一時的に麾下から外してしまったほど。

帝国領侵攻作戦でも作戦会議では慎重論を述べるヤンをフォローするどころか、逆に敵の失敗を期待することを前提した発言をしてフォークを擁護するという、参謀長とは思えないようなアホなことをしてしまう。
士気高揚を考えたにしても、慎重論を打ち消すことで士気高揚が必要なのはせいぜい一般市民や下級兵まで。将官級の高級将校が慎重論だけで士気がダダ下がりして戦局に影響を及ぼすなら、根本的に人選ミスと言える。
司令部で好き勝手にするフォークを上司として諫めたり先輩としてフォローすることもしなかったためにさらに増長させた上、ロボスの無責任な訓令や無謀な命令にも愚直に従い、全軍撤退を具申してきたビュコックにもお役所仕事のような対応しかしなかったために呆れられ、彼からの信用も失ってしまった。
皮肉にもフォークが称した高度な柔軟性を持ち合わせてはいなかったようだ。

そもそも参謀部隊のトップである以上、政府の提示した(フォーク発案の)アイデアしかないような作戦の中身を整える責任者であり、はっきり言ってたかが一参謀にすぎないフォークよりもはるかに責任は重い。

作戦前の会議で「ローエングラム伯にも若さゆえの過ちがあるだろう」と敵指揮官の若さを侮る発言をしていたら、自軍のバカ者若者と老指揮官がセットで盛大にやらかしたのは皮肉としか言いようがない。
本質的にはフォークやロボスと違って善良な人物ではあったものの、逆に言えば善良過ぎたが故に小人や悪人といった良識を持たない人間が理解できないお人好しだったと言える。

侵攻作戦後は統合作戦本部次官から査閲部長へ左遷となるが、グリーンヒルは後にまた誤った人物を信用し活躍の機会を与えてしまうことになる…


◆グレドウィン・スコット
帝国領侵攻作戦でイゼルローンから占領惑星に物資を運ぶ輸送艦隊の司令を務めた人物。
同盟政府が必死の思いで送り出した補給部隊であったがスコットは護衛任務を楽観視しており、補給担当のキャゼルヌの心配する声を聞き流してイゼルローン出発後は艦橋を離れて個室で三次元チェスを楽しんでいた。
チェックをかけるタイミングで敵襲が入るも「前線で何かあったのか?」と間抜けな発言をして部下から呆れられる始末。
知らせを受け慌てて状況を把握しその圧倒的大軍に驚愕するが、キルヒアイスが指揮する4万隻を相手に護衛艦がたったの26隻ではどうすることもできなかった。その後護衛艦は全滅とあるので戦死したものと思われる。
フォークと合わせて同盟軍の末期ぶりと司令部の侵攻作戦楽観を象徴する人物の一人。

後にヤンはこのキルヒアイス艦隊と戦闘に入り、ケンプ艦隊との連戦かつ4倍の戦力差がありながらも1割の損害*10でどうにか撤退に成功している。
しかし低速の輸送艦隊を守りきるのは至難の業。キルヒアイス率いる4万隻が相手では、仮にヤンやビュコックが1個艦隊1万隻*11で護衛していたとしても物資は諦めざるをえなかったであろう。
だからといってスコットの無警戒楽観ぶりが許されるわけではないが。


◆ウィレム・ホーランド
外伝に登場する人物。ロボス元帥麾下の軍人で、救国軍事会議が擁していた第11艦隊の前任の司令官。
第六次イゼルローン要塞攻略戦では彼が立案した作戦とフォークの作戦が似ていたという理由から採用された経緯があり、アッテンボローからは「作戦の内容じゃなくて、提案者の名前で決まるのかよ?」と呆れられた。
そもそも彼は前線指揮官であって、参謀ですらないにもかかわらず自信満々に自分が考えた作戦で軍全体の行動を制御しようとしており、こちらも完全にヒエラルキーを無視した越権行為に及んでいる。

フォークと似たり寄ったり、というか脳筋にしたような人物で極めて自信過剰で自己中な性格。
自分を勝手にブルース・アッシュビーの再来」とのたまって英雄視したり、ビュコックやウランフといった先任の名将達にも礼節を尽くさず逆にはっきりと侮辱するなどフォーク以上に尊大な男。
ロボスの余計な訓令を忖度して軍が民間人を守らず逃げたグランド・カナル事件では民衆からの批判に対しても「軍事のわからない奴の発言」と吐き棄てて自分達を正当化しようとしたことすらあるほど。

第三次ティアマト会戦では先覚者的戦術と、いうよりただ無秩序に暴れ回っているだけに等しい。で帝国軍を翻弄していたがビュコックからの後退命令も全く聞き入れず自分勝手に進撃を続けた結果、後方で機を窺っていたラインハルトの反撃で一瞬にして自分の旗艦もろとも艦隊を総崩れにされた。ざまあ
彼に付き合わされた11艦隊の生き残りは辛うじてビュコックとウランフによって救助されたので、フォークのように同盟全体に迷惑をかけることはなかったのが幸い。

協調性もなく勝手に自滅したアホでしかなかったものの「敵陣を抜けて帝都オーディンを直接攻略する」と一応、目標を立てていた点だけはフォークよりわずかにマシかもしれない。

藤崎版では部下たちが信奉するカリスマある指揮官として見られ、「先覚者的戦術」も艦隊ドクトリン*12に沿って力を生かす手法であり、また部下たちがついてくるからこそそれが可能になっていた。
また、ラインハルトが機を窺っているのを理解しており、後退命令に従って後退しようにも出来ない*13為、
エネルギー切れの前にラインハルト艦隊に喰らい付く事で反撃を抑える事を企図しての特攻を行うも届かず立ち往生した所に反撃を受けた形に改変された。
ラインハルトも「敵ながら評価すべき点が多々あった」と評するなど、「良将ではあったが、相手が悪かった」という形になっている。


◆ド・ヴィリエ
地球教団の大主教。
回廊決戦が始まる直前、フォークが押し込まれていた精神病院から彼を拉致してヤン暗殺のための刺客として送り込んだ。

……のではなく、本命の暗殺者たちを送り込むための囮として使い捨てにされて良いように利用されただけで、
ド・ヴィリエ本人からも「実力もないのに栄光を望んだ愚か者は、忘れ去られるよりは悪名を残した方が遥かにマシ」と吐き棄てられた。

また、かの帝国領侵攻作戦におけるフォークの一連の暴走も、地球教が一枚絡んでいたことが示唆*14されており、
同盟を破滅に近い大きく衰退に追いやった真の黒幕であったようである。



◆スーン・スールズカリッター(スーン・スール)
フォークとは同期で次席だった人物だが彼がフォークをどのように思っていたかは不明生徒総代として名前を呼ばれなくて安心した
初登場はフォークよりもだいぶ後のラグナロック作戦頃、ビュコックの副官のファイフェルが心臓発作で倒れたことを報告し
ビュコックに名前を聞かれそのままファイフェルに代わる副官として登用。
この時ビュコックに呼びにくいからと「スール少佐」と略称されたことを気に入り、後にスーン・スールと正式に改名している。
ビュコックの副官として彼をサポートし復帰した彼から最後の土産を託される。

その後はヤンの部下となり地球教の暗殺から唯一生還、ヤンの死後もアッテンボローの部下となりイゼルローン軍解体まで生存するなど運には恵まれている。
士官学校次席だったということは相応に優秀だったのだろう*15が、いかんせん比較対象となる主席がフォークな上に本人も初登場の遅さや地位の点であまり活躍に恵まれておらず、実際の能力は不明な点が多い。
とはいえ、明らかな失敗をしたことはなく、責任感もあってフォークよりまともな軍人である点については衆目の一致するところだろう。

【高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処する】

フォークの迷言として名高い「高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処する」というのは軍事においては重要な考え方である。
軍事、特に前線においては、物事が予定通りに行くことはまずあり得ず、敵軍にも自軍にも予想外の事態が生じることはしばしばである。
相手の抵抗が想像以上に堅固だったので戦果はほどほどで撤退する、逆に相手の抵抗が想像以上に弱いので一気にケリをつけに行く、というような臨機応変な目標変更も視野に入れておくというのは軍事的に見ればむしろ必須の考え方であり、決して間違ってはいない。
というか、現場では予想もしないトラブルが起きうるからこそ 事前の作戦立案ではありとあらゆる指摘に耐えうる腹案を作っておくのが軍の士官であり それが求められる場で前述の言葉を放ったといえばわかってもらえるだろうか。

ということでどんなトラブルが予想される状態でも、戦略目標だけでも定めておかなければ、前線は何を目標に行動したらいいのか分からなくなって右往左往してしまう。
大軍になればなるほど、連携を取って動くことは難しくなるのだから、その意味でも合流点ともいえる戦略目標の設定は欠かせない。
むしろ戦略目標が明確だからこそ、ではそこに至るために現在の状況でどうすればいいのか、と各指揮官が考えた結果が臨機応変な対処というものである。
フォークの場合は暫定的な戦略目標すら定めずに「高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処する」の一言で押し切ろうとした上、「負けそうなときには撤退」という一番肝心な「臨機応変」が全くできなかったために、屈指の迷言となっているのである。

【余談】

作品及び諸々のキャラのファンからは嫌われているのはもちろんのこと、
上記のようにOVAアニメで声を担当した古谷氏も「自分が今まで演じて来た役の中でも特にイヤな奴で嫌い」と笑っていいともに出演した際にコメントしている。
また舞台版に出演が決まったと喜んでいた演者もフォークを演じることになると知った時には「何だ、フォークかよ……」と愚痴をこぼしたとか。

ちなみに古谷氏は新アニメ版ではフレーゲル男爵を演じている。
こちらも相当に無能な嫌われ役であり、人物としてフォークとどちらがマシかは微妙。2人の差は大局に影響を与えたか否か程度。

また、一部のゲームではIFストーリーとして何と、キルヒアイスとアンネローゼを殺そうとして返り討ちにされるという実に惨めな最期を迎えたりもしている。
……しかも、それ自体がヤン暗殺の時と同じく地球教がキルヒアイス達を確実に抹殺するための囮に過ぎず、結果二人は暗殺されてしまう。
これにブチギレたラインハルトは宇宙の半分を破壊してでも自由惑星同盟を数十億の民衆と彼らの住む惑星もろとも完全滅亡させるために暴走するのだった……。

戦略ゲーム『三國志14』では銀河英雄伝説とのコラボが行われており、名だたる登場人物たちを差し置いてフォークもおまけ武将として登録されている。
戦闘能力は並以下のうえ戦闘に関わるマイナス個性を3つも持っており、ついでに自由惑星同盟の面々からは悉く嫌悪されているが、
知謀と政治は高めなので計略や内政はそつなくこなし、部隊の運用を任せなければ普通に有能である。腐っても主席ということだろう。
ちなみに、登山家に(一方的な)親愛感情を抱いている。





追記・修正は高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変によろしくお願いします。

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最終更新:2024年03月20日 19:16

*1 シトレはヤンの士官学校時代の校長という関係で面識があり、その能力や人格を評価し色々支援している。第13艦隊新設とヤンの司令官抜擢、さらに肝心のイゼルローン攻略作戦もシトレ派が主導していた

*2 リップシュタット戦役発生の直接原因は帝国内での皇帝崩御であり、同盟の遠征と因果関係はない。

*3 敵地であり、本隊も極めて大規模、さらに自分たちが防戦で利用していた距離の防壁に挑むのだから輸送艦隊の護衛に千隻単位の護衛が居たり、輸送艦隊は囮で帝国軍の釣り出しを狙っている…というような罠であってもおかしくはない。だからこそ、帝国軍トップクラスの名将キルヒアイスに大艦隊を率いさせて慎重に当たらせたが、結果的に簡単な任務だった…と考えることができる。

*4 後年のランテマリオ星域会戦、バーミリオン星域会戦の参加隻数を数えれば、最大まで回復した同盟軍の機動戦力は最大6,7万隻程度でしかない。これはアムリッツァにおいて温存された第一艦隊1万~2万隻を含む。

*5 この件に関しては読者からいくつもの謎や疑問、矛盾が指摘されている。回廊の入口で待機している帝国軍の警戒網をどうやって掻い潜ったのかが全く不明である。身も蓋もないことを言えば、相変わらず帝国軍がザル警備すぎたから見逃したということにもなりそうだが……。

*6 かいつまんで説明すると、フォークを偽帝国軍が排除→「テロリストは排除されました、ここから先は私どもが護衛致します。ところでせっかくなのでヤン提督に直接ご挨拶したいのですが…」→挨拶と称しヤンの座乗艦に乗り込み暗殺実行という流れ

*7 事実、自由惑星同盟と銀河帝国の戦争は基本的に「進攻してきた銀河帝国軍を、自由惑星同盟軍が迎撃する」のが一般的であり、自由惑星同盟軍がイゼルローン回廊より銀河帝国側の宙域に進攻した事例は、今回の帝国領進行一回きりである。

*8 実際、焦土作戦が国民を苦しめる作戦であることはラインハルトも理解しており、キルヒアイスも異議こそ述べないが内心反対しているのだろうと推測している。また、現地を奪還するや否やすぐさま食糧提供を行うよう指示している。

*9 トリューニヒトは「今の状態で帝国に侵攻するのは無謀である」ことを読んで反対票を入れただけでレベロのように異議を出していない。しかも出兵評決の前にホワンが提案した軍縮には反対している。

*10 しかもこの損害も司令部の無茶な集合命令で隙ができたことが大きい

*11 とはいえ護衛増強を求めたキャゼルヌもせめて100隻と主張しており、数万の大軍に襲撃されるとはさすがに想定しなかったようだが

*12 帝国側なら「呼吸する破壊衝動」ビッテンフェルトの黒色槍騎兵艦隊の攻撃・破壊力重視、「疾風」ミッターマイヤーの機動力重視、「鉄壁」ミュラーの防御重視といった艦隊能力の特色。

*13 後退の隙を突かれると確信していた

*14 フォークを拉致した際、フォークのことを『以前に使った古い道具』と称している

*15 非常に優秀だったフレデリカ・グリーンヒルも士官学校次席である。