SCP-1727-JP

登録日:2020/07/16 Thu 22:12:28
更新日:2025/04/23 Wed 20:07:53
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SCP-1727-JP「宅配されるものは」とは、怪異創作コミュニティサイト『SCP Foundation』に登場するオブジェクトの一つ。
JPのコードが示す通り日本支部の管轄にある。

オブジェクトクラスKeter。収容困難または収容不可能ということである。
だがぶっちゃけこのオブジェクト、本体の異常性はほとんど皆無と言っていい。言っていいのだが……



概要

SCP-1727-JPは、ある日突然見知らぬ送り主から宅配便で届けられる銃器及び銃弾のセットである。


以上


……いや、本当に「正体不明の存在が銃を贈ってくる」だけなのである。
財団もこれらの銃器を箱や届け先状も含めて厳重に検査したが、「送り主の不透明性」以外の一切の異常性は確認できなかった。
ミーム的ななんかや認識災害を起こすような要素も無いと結論づけられている。

贈られるブツは現在の所、拳銃、自動小銃、サブマシンガン、散弾銃、[編集済]などが確認されている。おい最後。
これらの種類には特にパターン性は発見されておらず、色んな物が贈られているらしい。

とはいえ、前述の通り贈られてくる銃器類に異常性は一切無い。
過去や未来に存在する相手を狙撃することはできないし
未来から過去に向けて放つことで異常存在を一撃必殺できるわけでもないし
撃った人が弾として飛び出すことはないし
自分を撃ったら勤め先が皆殺しになることもないし
一番近くにいる海賊を問答無用で殺すわけでもないし
平行世界にいる自分を全員殺したりはしないし
人に向けて撃ったら必ずジャムるわけでもないし
撃たれた対象の愛する存在を身代わりにしたりもしない
ついでに撃ったらお昼ご飯が飛び出すこともない、ごくごく普通に買える銃器と同じである。
財団世界に異常な銃器が多すぎる
ただどの銃器も製造番号などは刻印されておらず、どこの工場で作られたものなのかはわからなくなっている。

分かっている唯一の異常性である送り主の情報は、基本的に某は大手通販サイトを騙っている。
だがこれも個人や中小企業、故人や架空だった場合も多く、完全にパターン化はされていない。

メッセージのようなものも一切添付されていないので、「送り先の選定やその目的も完全に不明であること」も異常と言えば異常ではある。
とはいえこれも特にパターンは無いようで、財団は「送り先もランダムでは?」と推測している。

だが「送り主も送り先もランダムとかじゃあどうやって発送されてんの?」とはなる。
ということで財団が調査したところ、どうも運送会社の記録を改竄しながら集積所に突如として出現するらしいとまでは判明した。
だがこれも結局法則性などは見いだせていないようで、阻止する方法も見つかっていない。またこの出現数は年々増えているようである。


超法規的組織な財団が手を尽くしても送り主を特定できないのはそれだけで十分な異常事態。
さらに現象を阻止できず、当然収容もできないのでKeterは至極当然であろう。

だが、逆に言えばそれだけである。
「何を目的としているのかわからない」「どういった法則性で送り先を決めているのかわからない」というのは別段際立った異常性とは言えないだろう。


とはいえ、異常性が薄くとも阻止できないのは厄介。
特別収容プロトコルでは、集積所の段階で発見できた部分については回収。
実際に届けられてしまった分についてはカバーストーリーを展開して対処する、という後手後手の対応に留まっている。



インシデント

本オブジェクトは「まったく心当たりが無いが本物の拳銃らしきものが知らない会社から送りつけられてきた」という通報がきっかけで財団に発覚。
当初は「銃器密売の失敗」と考えられていたが、同様の異常事件が相次いだことからオブジェクトとして認定された。

まぁ「収容不可能」とはいえ、所詮は単なる銃器。
世界を滅ぼしたり滅ぼさなかったり、精神汚染したりしなかったり、それこそ死にたくても死ねなかったりするようなヤツらとは比べものにならない。
そんな常識外れのバケモノと常日頃から接している財団にとってみれば……

発生日時および場所: 20██/██/██ 茨城県███市の海岸

武器: 自動小銃(AK-47

概要: 茨城県███市の海岸沿いの水中で自動小銃が遺棄されているのが発見される。その後の捜査の結果、群馬県██市在住の男性が3日前に送付されてきたSCP-1727-JPを遺棄したものと判明。警察の取り調べに対し男性は「自分は元左翼活動家であるため、『委託テロ』で銃が送りつけられてきたと説明しても警察が信じてくれないと思い込み、怖くなって海に捨てた」と供述している。

大した危険性は……

発生日時および場所: 20██/██/██ 高知県██郡██町 コンビニエンスストア「██████」█████店

武器: 短機関銃(MP5)

概要: 午前2時頃、短機関銃で武装した男がコンビニエンスストアに押し入り、店員を銃で脅しレジの中の金銭を奪い逃走。その後の捜査により鳥取県██市在住の男が浮上、逮捕される。男の自宅からは犯行に使われた短機関銃が発見された。供述によると事件6日前に知らない住所から送付されてきたとのことであり、当該短機関銃はSCP-1727-JPであると判断された。

収容できないだけで……

発生日時および場所: 20██/██/██ 青森県██市 個人宅

武器: 拳銃(マカロフPM)

概要: 犯人である夫は不倫をしていた事により妻(当時別居中)と離婚調停中だったが、離婚の協議のため弁護士と共に犯人宅を訪れていた妻を射殺。弁護士も撃たれ重傷を追う。犯人は直後拳銃を使い自殺。当初は暴力団の関与が疑われたが、その後の捜査により使用された拳銃は事件2日前に送付されてきたSCP-1727-JPと判明した。

異常性のない銃器が……

発生日時および場所: 20██/██/██ 東京都██区の路上

武器: 拳銃(ワルサーP38およびグロック18)

概要: ██区を本拠地とする不良グループにより、対立していた別の不良グループメンバー2名が射殺された他、居合わせたホームレスに流れ弾が命中し死亡した。その後警察が駆けつけたところ犯人グループは逃走を図り、警官隊へ発砲、銃撃戦に発展した。結果犯人グループは5名中銃を所持していた2名が死亡。警察側も1名が重傷を負った。その後の捜査により、使用された銃は死亡したメンバー宅に事件4日前に送付されてきたSCP-1727-JPと判明した。

一般人に送り届けられるだけの……

発生日時および場所: 20██/██/██ 栃木県██市 有限会社[編集済]本社屋

武器: 自動小銃(M16)

概要: 待遇に不満を感じていた従業員が自動小銃を本社内で乱射。これにより同社代表取締役社長および人事部長、人事課社員3名、犯人の上司だった営業課長が殺害される。犯人は警察到着後も社屋内部に人質を取って立てこもり、警察に向けて発砲を繰り返した。警察側に死傷者は出なかったものの、この攻撃によりパトカー1台が破損。最終的に犯人は警官隊により射殺された。その後の捜査により、使用された自動小銃は事件の4日前に犯人に送付されていたSCP-1727-JPと判明した。

本当にそれだけの……

20██/██/█、アメリカ合衆国████████州█████において無職の男がショッピングモールでサブマシンガンを乱射する事件が発生、██名が死亡、██名が負傷しました。
犯人は警官隊に射殺されました。その後の犯人の家宅捜索および用いられたサブマシンガンの調査の結果、SCP-1727-JPである可能性が非常に高いと判断されました。このためSCP-1727-JPの捜査・確認範囲の拡大が決定されました。

……………




なお元記事において、アメリカの銃乱射事件以外はSCP-1727-JP関連事件例(20██年██月分)から引用したものである。
つまり、ここまでの5件は全部ひっくるめてたった1ヶ月間に起きた出来事ということになる。

また、ある年にはこのオブジェクトで贈られて銃器による殺人・殺人未遂事件がいずれも2桁、自殺(未遂含む)は3桁発生。
しかもその数は贈られる数の増加に合わせて年々増えていることが調査で明らかになっている。


SCP-1727-JPは「一般人に銃器がプレゼントされる」だけの、本当に大したことのないオブジェクトである。
だがあなたは、その銃器が持つ危険性を軽視してはいないだろうか。

単に人を殺すだけなら、首をへし折ってくる彫像も人類を憎む不死身の爬虫類も認識を破壊して死に至らしめる鳥も必要ない。
そんな特級の危険物に慣れ親しんでいると忘れがちだが、人間は銃で撃たれると死ぬのである。

そして例え不可思議な力など宿ってないとしても、銃器は「引き金を引くだけで人を殺せる」という、シンプルだがこの上ない危険性を抱えているのだ。

銃を握った者に殺意を起こす異常性?
必要ない。

殺人を起こしそうな人物に狙って送り届けられる異常性?
必要ない。

自殺を誘発させる異常性?
必要ない。

ただひたすらに送り続ければ、いつかどこかで殺意ある誰かの手に渡り、引き金を引いてしまうのだ。
それは冷酷な確率論で説明できる単なる現実であり、ファンタジーの介入する余地はない。


人を殺める勇気がない?
まともな人間なら撃つはずがない?
そりゃあそうだろう。だが……

もしもあなたの手元に「引き金を引くだけで"済む"」道具があったなら……
あなたはそれを、人に……気に食わないアイツや頭痛の種のアイツ、いつもうるさいアイツに向けずにいられるだろうか?

職場や学校で大失敗した時、
投資やギャンブルでスッカラカンになった時、
公私ともに追い詰められた時、
首吊りロープやナイフ、睡眠薬よりもお手軽かつ一瞬で"済む"シロモノが手元にあったなら……
口に突っ込んで引き金を引くだけで「もう何も考えなくてよくなる」その道具を、あなたは手に取らずにいられるだろうか?

そして上記のようなことを考えているタイミングで“たまたま”SCP-1727-JPの抽選に当たり、手ごろな銃器が家に届いたとしたら……?
届いたそれを見て、この銃が贈られてきたことには何か意味がある、と思ってしまうのも無理からぬことだろう。
本当は何の作為性もなくランダムに配られているだけなのに。


そうした一線を越えるか越えないかの分岐に立たされたとき。
そこで持ち主に「殺す」という解決策を与えてしまうところに、銃器……ひいては、このオブジェクトの怖さがある。

以前読んだある小説の、世界は火薬と火のような危険が内在していて、ただ運良くそれらが出会ってないだけではないか、という文章を思い出す。さしずめこいつはその火薬に銃…すなわち火器を、fireするものを放り込もうとしているのだろうな 。
──小松博士

これは、「形のない殺意」にきっかけを与えるオブジェクト。

だが、その火種はいともたやすく燃え上がる。

世界中に火薬はいくらでも貯まっているのだから




追記と修正、それから銃の配達をお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1727-JP - 宅配されるものは
by sugoitakaiBILL
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1727-jp

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最終更新:2025年04月23日 20:07