登録日:2020/12/13 Sun 14:03:09
更新日:2025/04/23 Wed 17:34:18
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知識欲はな、人間の欲の中でも最も汚らしいものさ。
知らない事が許せない、知らない事がおそろしいと知識が無い人間を見下す奴らだ。
お前たちみたいなのを、饕餮って言うんだ。
欲にまみれた最もみにくく汚らわしい化け者だ。
饕餮とは、中国の
道教神話に登場する怪物。「饕」は財産を、「餮」は食物を貪ることを意味し、その名の通り
「あらゆるものを食らう、貪欲を象徴する魔物」として知られる。
羊の体に人の顔を持ち、目が脇の下にあり、歯は虎、爪は人……と、中国神話に登場する他の怪物たちと同じく、様々な生物が混じった外見をしている。この容姿で「嬰児のような声で鳴く」というのだから不気味極まりない。
性格は上記の通り貪欲にして暴虐。おまけに「群をつくる人々を避け、単独で味方のない者を襲う」「強い者には媚びて平身低頭だが弱者には容赦なく襲いかかり、身ぐるみ剥いだ上で食べてしまう」という、非道な卑怯者である。
一方で、他の魔物すら捕食し、魔物たちすら恐れるということから、魔除けとしても用いられてきた。
さらにその貪欲さや狂暴性は「戦争の象徴」として軍神の一種として祀られることもある。
そのため中国では古代から人気のある霊獣でもあり、なんと殷代よりもさらに前、夏王朝の時代には青銅器に祀られている。
さらに源流は良渚文化にもさかのぼれるといい、中国道教の神々や魔獣としては歴史も人気もかなり根強い。
■起源・正体
矛や
戦斧、
盾や
弓矢といった武具を発明し、72人いる兄弟とともに黄帝と敵対としたとされる異形の巨人、蚩尤。その姿は人の体に牛の蹄を持ち、目が四つ、手が六本、頭には角が生え、耳脇の毛が剣のように立っているという。
饕餮は「首はあるが胴体がない」ともされ、その暴虐さから「饕餮は蚩尤の頭ではないか」という説が存在する。
孔子の編纂と伝えられている歴史書『春秋』の代表的な注釈書の1つである『春秋左氏伝』によると、饕餮は縉雲氏の子だという。
堯帝の時代に暴虐の限りを尽くし、同じく偉大な帝王の血を引いていながら生まれつき凶暴であった「
渾沌」「
窮奇」「
壔杌」とともに
四凶として数えられた。
最終的には他の四凶共々堯帝の後継者である
舜帝によって世界の果てに流罪にされ、悪魔が侵入してくるのを防ぐ役目を与えられたという。
龍には適材適所で活躍した九匹の子供がいて、その五番目の子供が饕餮だという。
しかし、上記した性質から他の子供と同様に落ちこぼれとなり、龍にはなれなかった。
■饕餮のメディア進出
四凶の中でも特に露出が多く、基本的に悪役で、
トラウマものの活躍をしたものも少なくない。
逆に、四凶が全員登場することはほとんど無い。
映画や小説、TVゲームでおなじみの神獣・モンスターたちをまとめたPHP文庫の『世界の「神獣・モンスター」がよくわかる本』では、
饕餮だけが個別ページを設けられ、他三体はそこでまとめて簡潔に紹介されていた。
「女神転生シリーズ」
名前はカタカナで「トウテツ」表記。
初出は『
真・女神転生』。この時のグラフィックは魔王アバドンとのコンパチであったが、『
真・女神転生デビルサマナー』において、人の顔を持つ黒毛の羊の如きグラフィックに描き直された。うずくまる小柄なグラフィックが逆に大物感に満ちている。
ちなみに悪魔絵師の金子氏によると、何でも食べるところから
ガッちゃんを羊と合体させたイメージでデザインしたという。
初出以来、種族は邪神(DARK-LAW)。暴虐・貪欲・弱肉強食という伝承の性質からするとCHAOS寄りに思えるがLAW。どう
解釈したものか?
ストーリーに絡むことは少ないものの、中国神話を由来に持つ悪魔の中では比較的出番は多く、『
デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王』ではSFC時代のコンパチ相手のアバドンが帝都にもたらす災いを吸い込んで事態を収拾するという重要な悪魔として登場した。
また、四凶からは壔杌も「妖獣トウコツ」として登場する機会が多く、『デビルサマナー』では上記の「蚩尤の頭」説からかトウテツとトウコツとの合体で魔王シュウを作り出すことができる。
「十二国記」
『
風の海 迷宮の岸』にて、なんと
シリーズにおける伝説にして最強の妖魔として登場。妖魔に育てられた天仙、"
犬狼真君"
更夜をして「誰彼であれ殺す」と言わしめる程の凶暴性を持つ。
様々な姿に変化する力を持ち、相手を恐怖と絶望に追い込む。
作中ではそんな危ない存在ながら、なんと
泰麒の使令に下り、「
傲濫」の
字を与えられた。饕餮が
麒麟の使令となったのはこれが史上初だという。
…がその後、泰麒が記憶と力を喪い生まれ育った蓬莱(日本)に戻ってしまった事で、『魔性の子』では泰麒のお守役汕子と一緒に
泰麒を守るため暴走し民間人に多大なる被害をもたらし、最終的に2匹で
主人の蓬莱での家族を惨殺した挙句、彼が通っていた高校を中にいる人間を巻き込んで倒壊させた。
だが『黄昏の岸 暁の天』ではそれによる怨嗟と血が泰麒を見つける鍵にして「蓬莱でも弱体しない程強い饕餮暴走の阻止」という泰麒再帰還の理由の一つとなり、
最終的に帰還後無辜の民殺害による穢れと泰麒への怨嗟を清めるため汕子共々隔離された。なので続編『白銀の墟 玄の月』には登場しない。ちなみに使令になった後は犬の姿を取っており、『魔性の子』ではグリフィンと勘違いされていた。
少し特殊な例。殷〜周時代にかけて青銅器や玉器に「饕餮文」と呼ばれる模様が用いられており、これが悪役怪人「
テラー・ドーパント」の頭部デザインの元ネタとして取り入れられている。
しかし、この「饕餮文」という呼称は後世での後付けで、当時からこの模様が饕餮を描写したものという証拠は無い。現在では「獣面文」とも呼ばれている。
棲龍館殺人事件で中国の故事「龍生九子」の一体として饕餮が取り上げられている。
事件では「飲食を好む」性質から毒殺事件の見立てとして使われた。
『
第2次スーパーロボット大戦OG』にて、饕餮をモデルとして造られた超機人「饕餮王」が登場。ちなみに他の四凶をモデルにした超機人も造られていたのだが、「窮奇王」以外の二体は本編開始前に破壊されている。
超機人……すなわち
ロボットであるためコックピットはあるのだが、四凶をモデルとした超機人は
パイロットの肉体はおろか魂までも食らうため無人機と化している。
特に饕餮王は原典通り常に飢えており、食べるものが無くなると
自分自身さえも食らうという悪食ぶりである。
その容姿、劇中での暴れぶり、戦闘アニメからくる生理的嫌悪感から、
ペルフェクティオに次ぐ
トラウマキャラとしてプレイヤーを戦慄させた。
『東方鬼形獣』にて登場した、畜生界にて最上位に位置する四大組織の一つ、
剛欲同盟の長、
饕餮尤魔。
袿姫とその配下である埴輪兵団に対抗するべく、同じく四大組織に数えられている
鬼傑組、
勁牙組と一時的に手を組んだ。
ただし鬼形獣の作品中では本人は直接登場せず、配下のオオワシ霊のみが登場している。
袿姫曰く「プライドだけ高くて実力は他に劣ることで有名」。
早鬼に至っては「最悪な奴」「私欲に走る奴」と酷評しているが、
八千慧は「口先だけでないと信じている」と語っている。
後に『
東方剛欲異聞』にて
ラスボスとして姿を現す。鬼形獣での異変の水面下で旧地獄最下層に眠る石油をすべて手中に収め、地上を侵略しようとしていた。
その強欲さゆえに全ての攻撃を吸収し自分の力としてしまう。それゆえ破壊には特殊な能力を以て行う必要があるが、それでも完全に存在を消し去ることはできず、すぐに復活する。完全に存在を滅するには彼女の欲を消さなければならず、実質不死身である。
システムの違いを抜きにしても『鬼形獣』における前評判と裏腹に滅茶苦茶強いと専ら評判。とはいえ、袿姫のことなので罵倒目的の出まかせ、という可能性も否定はしきれないが。
初代より
ライガーの
ゴーレム派生「トウテツ」が登場。ライガーは狼(犬)型のモンスターであり、
ゴーレムの血で岩状の身体になっている。
ぶっちゃけ名前だけ引用されたパターンなのだが、その中でも特に元との関連性が獣型のモンスターである以外に殆ど……というかほぼ無い例。どっちかというと狛犬である。
ライガー・ゴーレム両原種ともに、性格がいいので凶暴になっているということも特にない。
中国の魔獣や神をモチーフにした5周目超絶クエストの一つ、「魔を喰らう暴虐の皇獣」のボスモンスターとして登場。
浅黒い肌の
イケメンな王様という一見は伝承に真っ向から反した見た目だが、背後には大きな牙を持つオーラのような物を従えており、ふんぞり返る玉座にも饕餮文が施されている。
進化後は玉座と一体化して獣の様な形態に変身し、伝承での饕餮に近い姿となる。
クエストでは高い防御と常に相互蘇生するザコ敵の取り巻きを連れており、自身のHPが一定値を切ると全快し攻撃が激化する。
なお、窮奇も大鎌を持つ女性の姿で同系統クエストのボスとして登場している。
本国版では2020年春節、日本版では何故か真夏に始まったイベント「洪炉示歳(エンシェントフォージ)」に連動した人材発掘にて、期間限定実装されたオペレーター「ニェン」が饕餮をモチーフの一つとしている。
出身地、種族、年齢、目的の全てが不明な女鍛冶士だが、人間離れした異様な能力の数々や長い時を生きてきたことを示唆させるセリフが多く、その後のストーリー追加等でマジモンの人外である事が確定。
竜生九子と同じく、「巨大な神から分かたれて生まれたモノ」という出自が判明しており、使用する力は文字通り神の権能とも言える人智を越えたものである事が明らかになった。
彼女が能力で呼び出す武器や装具には饕餮文が刻まれており、本人が非常に大食いな所やたくさんの兄弟姉妹がいる等の要素が饕餮を思わせる。
竜生九子をモチーフとした
幻竜族テーマ「
竜星」の1体として「魔竜星-トウテツ」が登場している。
また、同じく幻竜族のリンクモンスターとして「トウテツドラゴン」も登場している。
SSSランクの緑色の戦車でビーム主砲、単発の主砲と
ミサイル、ドローンといった武装を持つ。
相性のいいパイロットは、五十嵐・レイラ・マリルなど。
饕餮を超改造すると饕餮改となり、戦車から人型バトルメカに変形する。
また饕餮以外の四凶も登場しており
窮奇:SSSランクの戦車
雷神丸:SSランクの戦車で超改造で名前が壔こつに変化。
渾沌:SSランクの飛行器(原文ママ)
いずれも超改造で人型バトルメカに変形する。
リウ協会のリーダーであるシャオとの最終決戦時、本気モードの彼女は竜生九子に由来するスキルや技を用いる。
うち一つが「饕餮」。効果は広範囲への大ダメージと火傷によるスリップダメージ付与。
非常に火力が高く対策無しだとほぼ即死攻撃になり、耐えたとしても火傷ダメージとシャオ自身が持つ火傷持ちへの追加デバフや周囲への伝播ダメージ効果により、気を抜けば一瞬で瓦解させられる。
ポケットモンスター スカーレット・バイオレットにて登場した、通称「災厄ポケモン」や「四災」と呼ばれる
伝説のポケモンの一匹、
ディンルーのモチーフの一つが饕餮と思われる。
呪われた青銅器から生まれたとされるこのポケモンは割れた青銅器の角を持つ鹿や牛といった風貌なのだが、青銅器のデザインは上述した「饕餮紋」に酷似している。
ディンルーは登場した時に「ソソゲー!」と鳴くのだが、上記の通り
青銅器は割れているため、どれだけ注いでも満たされることはない。饕餮が持つ貪欲さの暗喩だろうか?
また、パルデア地方はスペインがモチーフなのだが、その一方で「災厄ポケモン」は名前が中国語かつ戦闘
BGMも中華風となっており、四体の悪しき存在という点は饕餮を含む四凶を思わせる。
信長を殺した男
本作においては
明智光秀を清廉潔白な完璧超人に描く都合で狡猾で貪欲な性格の悪役として描かれる
豊臣秀吉が饕餮に準えられており、饕餮紋のようなオーラを纏うシーンも存在する。
なお同作においては他にも
織田信長が「麒麟」、明智光秀が「獬豸」など中国の霊獣に史実の人物を当てはめた演出がされている。
グレート・ウォール(長城)
中国・アメリカ合作の歴史アクション映画である本作ではメインの敵役クリーチャーとして登場。醜く大柄な体躯で禁軍兵士を次々と喰い殺し、さらに画面を埋め尽くすほどの群体と女王を頂点とした高度な連携をもって長城に押し寄せる。
この作品において、登場した
マスクというキャラクターが着用していた仮面のデザインは饕餮をイメージした事がキャラクターデザインワークスで明かされている。
ナースロボ タイプT
中国のイラストレーター松尾粥氏の音声化されているオリジナルキャラクターで、プロフィールにたまに「饕餮」と呼ばれる。と記されている
追記・修正は饕餮を満腹にさせてからお願いします。
- 仮面ライダーWのテラードラゴンがドラゴンに見えなくて調べてみたら饕餮に行きついた思い出 -- 名無しさん (2020-12-13 14:47:15)
- 腋に目があったらワキ毛が目に入るだろ -- 名無しさん (2020-12-13 15:09:09)
- 霧の水冠 -- 名無しさん (2020-12-13 15:21:23)
- 何が悪いんだよ -- 名無しさん (2020-12-13 15:36:28)
- 最近だとモンスターバンケットでも見たな -- 名無しさん (2020-12-13 15:38:33)
- ロマサガ3の攻略本で存在を知った。リマスターで戦えるようになったんだっけ? -- 名無しさん (2020-12-13 15:48:56)
- アクジキングの元ネタなんかな? -- 名無しさん (2020-12-13 15:50:37)
- フジリュー封神演義の楊ゼンの正体説もある。実力向上に貪欲で、魂魄を食らうスキル持ちなのも一致してる。 -- 名無しさん (2020-12-13 16:09:59)
- 最近だと映画グレートウォールも印象的 -- 名無しさん (2020-12-13 16:40:24)
- スパロボの饕餮王は初登場時に食われる兵士の視点からのアニメーションが入るのがエグイ。性能的には気力ダウンやSP吸収といったいやらしい特殊能力を持つのが厄介。最終話で復活した際には精神コマンドまで使ってくる -- 名無しさん (2020-12-13 18:47:09)
- どうしても一瞬「顰蹙(ひんしゅく)」と見間違える。並べて見たら全然違う字だけど何しろ見慣れない字だし余程拡大しないと潰れて細かい所が読めない字同士だし…… -- 名無しさん (2020-12-13 18:58:06)
- 項目タイトルの(中国神話)っているかな? 中国神話で無い饕餮がイメージとして先に来ることは無いと思うし、単に「饕餮」でいいんじゃないかな。難しい字といえばそうだけど。 -- 名無しさん (2020-12-13 22:21:27)
- ↑中国神話って書かれてないと、中国のマイナーな武将や偉人の事だと間違えられそう -- 名無しさん (2020-12-14 02:10:50)
- まさか…こ う て い? -- 名無しさん (2020-12-14 03:31:04)
- 特徴だけ見ると、見た目と鳴き声以外は人間そのものって感じだな -- 名無しさん (2020-12-14 07:53:09)
- 魍魎少女で知った -- 名無しさん (2020-12-14 08:02:06)
- こいつの同期の渾沌は妙に威厳のない奇妙な立ち姿をしている -- 名無しさん (2020-12-14 14:37:53)
- 初めて知ったのは学校の授業で見た饕餮文で怪物として知ったのはペットショップオブホラーズだったわ -- 名無しさん (2020-12-14 19:23:57)
- 山田正紀の「螺旋の月」に四凶出てくるな 伝承とは全然違うが -- 名無しさん (2021-02-15 23:59:17)
- 東方の話の追記早すぎて草 -- 名無しさん (2021-11-17 02:20:20)
- 項目の内容からは外れるが、冒頭のモラード博士の発言が「マギ」のモガメット学長と見事に正反対の認識になっているのが面白い。 -- 名無しさん (2021-12-10 23:22:39)
- モンスターバンケットでも出てたな -- 名無しさん (2021-12-10 23:46:26)
- 漢字が難しい -- 名無しさん (2021-12-11 00:02:15)
- 悪魔の実だと何々の実になるんだろ、能力はバクバクと同じかな -- 名無しさん (2021-12-11 02:39:39)
- ロマサガ2だと普通に戦えるうえ精神攻撃に長けているので自軍にギャラクシィお見舞いしたユーザーは数知れない -- 名無しさん (2021-12-11 02:48:07)
- 某所にあるまどマギの二次創作で知ったな。魔女同士が互いを食らいあう蟲毒のような状態から誕生し、自分の結界まで食い破って外に出たために大勢の人々に目撃され記録が残ったという設定だった -- 名無しさん (2022-03-25 23:30:20)
- ハイガクラにも出てたな -- 名無しさん (2024-11-23 15:31:38)
- Gレコのマスク大尉のマスクのデザインも饕餮をイメージした物らしい -- 名無しさん (2024-12-06 06:48:23)
最終更新:2025年04月23日 17:34