軍歌

登録日:2021/1/21(木曜日) 23:58:00
更新日:2021/03/04 Thu 11:36:43
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軍歌とは文字通り軍隊が歌う歌のことである。

概要

戦に赴く軍人が士気を高め、己を鼓舞するために歌われるが
かと思えば故郷や家族への想いを綴り、
戦地で亡くなった戦友を偲ぶ為にも歌われたりと様々な側面がある。

士気を高めるのが目的の歌だがそれだけでなく、
それぞれの国の民族のルーツや神話・伝承の一部が歌詞に入った古典的なものも存在する等、
その国の国民性や民族のルーツを知ることができる内容の軍歌も多い。

現代においても他国同士の合同演習や式典などでも歌われることがあるがその際は沈黙して聞くように。
勿論国歌と同じく前もって歌詞を覚えてきて一緒に歌うのはその国や民族に敬意を表す行為なのでOKではあるが。
国歌同様国民性にもよるが特定の国家の軍歌をバカにしたり笑いものにするのは
国や民族を侮辱するに等しい行為なので絶対にしてはいけない。

主な軍歌

ここでは純然たる軍歌とは厳密には異なる戦時歌謡曲戦時流行歌も纏めて取り扱う。

アジア

日本


  • 「抜刀隊」
外山正一と日本に招かれたフランス人、シャルル・ルルーによって作られた軍歌。
明治10年に発生した内戦である西南戦争では、(当時士族出身の者が多かった)警察官や新規に徴募された巡査による「警視隊」が編成、戦地や都市部、軍内部の治安維持を行った。
まあようは憲兵ってものが当時の日本には無かったので、大慌てでそれに類する部隊を作ったと言うべきなのだが
一方、高瀬での野戦に敗れた西郷軍は、包囲する熊本城へと向かう街道途上の田原坂に陣地を築き陸軍を迎え撃つ。
守備側に有利な地形の田原坂で大日本帝国軍は西郷軍に白兵戦を挑まれ攻めあぐねる中、警視隊の中から特に剣術に優れる者を選りすぐった少数精鋭の「抜刀隊」が編成され、田原坂攻略に一役買ったことが由来。
後に大日本帝国軍の軍歌に正式に採用されており、現代においても自衛隊や警察の式典で行進曲として使われることがある。
わが国には他にも下記の軍艦行進曲や日の丸行進曲など様々な軍歌が存在する。

  • 軍艦行進曲
明治26年に鳥山啓作詞の「軍艦」に曲を付けたものとされる。明治33年に海軍の公式行進曲として採用され、専ら進水式・出港式でよく使われていた。
戦時中になると戦意高揚目的でラジオからよく流されたことで一般にも普及し、戦後になってもどういうわけかGHQが歌詞なしのこの曲をパチンコ屋のBGMとして使うことを認めてしまったため、現代日本人的には「パチンコ屋の曲」のイメージがあるとか。
明るくノリの良い曲なため使い勝手がよく、校歌にアレンジされたり、テレビ・映画などで流されたりすることも結構ある。
現在は海上自衛隊でも引き続き公式の行進曲として使用されているほか、ミャンマーでもほぼそのまま軍歌として使われている。海外でも台湾や東南アジアではBGMなどとして現在でも広まっている。一方中国や韓国では公式に流してはいけないことになっているが、曲調から軍歌と気づかない事は(特に若い世代に)多いらしく、中国の幼稚園の卒園式で流したことで問題になったことがある。

  • 雪の進軍
明治28年に永井建子によって作詞・作曲された曲。
明るく呑気な曲調に反して、歌詞は全体的に湿っぽく、最後の「どうせ生かして返さぬつもり」という一節から、
勇猛というよりヤケクソ、どちらかと言えば厭戦気分を喚起する歌である。
実際反戦的であるという理由で検閲されて「どうせ生きては返らぬつもり」に変更され、不退転の覚悟を示すような元とは真逆の歌と化した。

  • 月月火水木金金
海軍の軍楽隊出身の江口夜詩によって作曲された。
曲名は元々は海軍のスローガンで、休日返上で訓練に励む様子を表現したもの。
コント番組『ドリフ大爆笑』の初代オープニングテーマはこれの替え歌。ザ・ドリフターズは軍歌も多数レパートリーとしており、アルバムもリリースしている。

  • 同期の桜
海軍軍楽隊出身の大村能章によって作曲された。
その内容からまず生きて帰る事ができない特攻隊員の間で人気を博し、この時代を描いた戦争映画などで歌われるシーンが入ることが多い。
戦後、鶴田浩二がこの曲のレコードを出すことになったが、レコード会社間の権利調整の問題で原曲の歌詞で歌ったレコードが出せず、特攻隊員の心情を綴った詩を自ら作詞。それを伴奏を流しながら静かに語るという形でリリースした。
このバージョンは今も全集CDなどで聞くことが出来る。

ちなみに上で触れた「原曲」というのは西城八十作詞の「二輪の桜」のこと。
実はコレ、「少女倶楽部」というティーンエイジャー向け雑誌で発表された今で言うBLモチーフの歌
戦前おおいに流行した「エス」*1を大っぴらに発表できない→なら男同士にしてやれば問題ないね!
ということなのだが……それでいいのか、そしてどうしてこうなった

  • 空の神兵
映画のタイトルにもなった落下傘部隊『挺進連隊』をモチーフにした曲。
軍歌にしては曲調や色彩表現が独特であるが元は軍歌ではなく戦時歌謡である。
作曲者は「あんな歌詞を付けられ迷惑」という発言もあれば「歌詞を見て曲を作った」もあるため真相は不明。
陸軍本部が作詞に関わった「陸軍落下傘部隊の歌」という曲もあるため戦中はこちらが公式の隊歌であった。
戦後元挺進連隊の関係者によって陸上自衛隊内に第一空挺団が編成されこの部隊が公の場で空挺降下を実施する場合
空の神兵を流すことが通例となっており、現在はこちらが隊歌となっている。
なお曲は音楽隊による演奏で歌詞なしもあれば、年初めの「降下訓練始め」や新田原基地などでは原曲をそのまま流すこともある。


インド


  • 「kadam kadam badhaye ja」(進め進め前へ)
オーケストラ調の勇ましい旋律から始まる軍歌で男女混合の合唱で歌われている。
元々はインド国民軍の指導者チャンドラ・ボースによって歌われていたもの。


トルコ


  • 「ceddin deden」ジェッディン・デデン(祖先も祖父も)
後述する理由から日本でもよく知られたトルコの軍歌。
元々は西アジアの諸民族の伝統音楽とテュルク系民族の伝統音楽を融合させて発展させた音楽で
オスマン帝国のイェニチェリと呼ばれる兵士が敵国へ攻め入る際
敵国を威嚇し、自軍を鼓舞するために演奏しながら行進していたことが背景にある。

この音楽はそれぞれペルシア語由来でメフテルと、演奏する音楽隊はメフテラーンと呼ぶ。
また、オスマン帝国と同じくメフテル自体の歴史は非常に長いのだがこのceddin dedenはオスマン帝国末期に作られたもの。
現代でもサッカーで応援団に歌われたり、民族衣装を着た音楽隊が世界各国でパレードを披露することもあれば
トルコの軍隊がパレードを行う際に流すことも。
近年ではロック調やメタル調にアレンジされたりしている。

日本においてはNHKドラマ「阿修羅のごとく」のOPに使われたことがきっかけで有名となった。


サウジアラビア


  • 「サウジ軍」
名前の通りサウジアラビアの軍隊の歌う軍歌。
同国は宗教上の理由で楽器を使った音楽が禁止されている事情があるため、
なんと全てアカペラやボディパーカッションで演奏されているのが特徴。
歌詞が「堕落した者どもを撃滅せよ」、「攻撃には攻撃で報いよ」と
苛烈だが先述の通りアカペラで歌われた旋律はカッコよく、
嫌でも燃え上がること間違いなし。


イスラエル


  • 「銀の翼に」
イスラエル航空宇宙軍の軍歌。
曲名はイスラエルの所持する戦闘機がかつては銀色だったことに由来している。
歌詞を翻訳すると旧約聖書から引用していることがわかる。
様々なバリエーションがあり、男性が歌う軍歌らしい勇ましいものから
女性が歌うフォーク調のもの、さらには男女混合で歌うポップ調にアレンジされたものも存在する。



ヨーロッパ


イギリス


  • 「Scotland the Brave」(勇敢なるスコットランド)
バグパイプが奏でる勇壮にして優雅な主旋律が印象的な曲で、スコットランド人にとっては非公式ながら、「国歌」にも位置付けられている曲。
NHKの連続ドラマ「マッサン」でも使用されていた。
1950年代以降、主旋律に歌詞をつけてアレンジしたものが登場している。



  • 「The British Grenadiers」(ザ・ブリティッシュ・グレナディアーズ)
作曲者は不明だが歴史の長い軍歌であり、17世紀当時もっとも勇敢とされた擲弾兵の武勇を歌ったもの。
擲弾兵とは手榴弾を投げることが役割の兵科。当時の手榴弾は大きく重く不安定だったので、それを投げられるパワー、敵軍に肉薄する度胸、火薬取り扱いの知識を備えていなければなれないエリート部隊だった。
現在でもロイヤル・フューリジアーズ連隊*2が行進する際に使われることがある。

今日の日本ではユーキャンのCMのBGMとしてもよく知られている。
ガルパンでダー様グロリアーナのBGMになぜ通信教育の旋律が?と思われた方もいるのではないだろうか?


フランス

  • 「La Marseillaise」(ラ・マルセイエーズ)
フランスの軍歌にして国歌であり、フランス革命の象徴。
元々革命軍の曲だったこともあり歌詞が滅茶苦茶過激であり、長年国歌としては如何なものかと国歌変更論が湧き上がったりしているが結局そのまんまである。

  • 「La chanson de l'oignon」(玉ねぎの歌)
曲名が何故玉ねぎの歌?という人もいるかもしれない。
曲名通りひたすらに玉葱を称える歌詞が特徴のこの曲は作詞作曲共に不明であり、誕生した経歴も謎…なのだが有力なものがある。
それは兵士が何かを必死に刷り込んでいるのを疑問に思っていたナポレオンが何をしているのか問うたところ、その兵士は玉ねぎを擦り込んでいた。
その後オーストリア軍を撃退しえた…というものである。
ここまで読めば意味不明に思えるかもしれないが実はこの曲、有名な童謡の「クラリネットを壊しちゃった」と一部の旋律が全く同じであり、
実際に元になった歌と言われているのだ。
なお、「クラリネット~」の当該部分「オ、パッキャラマドパッキャラマド、パオパオパ……」は、
フランス語で「Au pas camarade, au pas camarade,Au pas, au pas, au pas.」と歌っている。
スキャットなどではなく、「さぁ戦友よ、共に行こう」といった意味である。


ドイツ


  • 「Panzerlied」(パンツァーリート)
1933年に作られた軍歌。
ドイツ語でパンツァーは「戦車」、リートは「歌」を意味しており、直訳すれば戦車の歌となる。
第5番まであり、4番までは勇ましいが5番は「命運は尽き、故郷には帰れない。戦車は我らの墓標となる(要約)」といった内容であり、非常に縁起が悪い
映画「バルジ大作戦」で1番の歌詞が延々リピートされるシーンで有名。

アニヲタ諸兄にはガルパンの黒森峰女学園のテーマとして有名か。

  • 「Erika」(エーリカ/エリカ)
1939年作曲。
戦場に咲く小さな花を愛でる歌だが、これは花のエリカと女性人名のエリカを掛けたもので、故郷とそこに残した恋人を想う曲である。
勇壮というより情熱的かつ物凄い甘ったるい歌詞でよく知られる。
フィンランドなど他の国に合わせた替え歌も複数存在する模様。

ストライクウィッチーズエーリカ・ハルトマンに合わせた日本語かつ替え歌版のキャラソンも存在する。

  • 「Das Engellandlied」(ダス・イングランドリード)
作曲は1939年だが、詩そのものはは第一次世界大戦前に"Matrosenlied"(水兵の歌)として発表されたもの。
旋律は軽快だが、詩は「憎っき英国野郎を討ちに行くんだ、もし死んでも悲しまないでくれ」と、出征する兵士と恋人の別れの様を描いた歌。

HELLSINGで空母に乗り込むリップバーン・ウィンクルが口ずさんでいるのがコレ。
OVAでも4巻に収録され、しかもこの巻のEDにも採用されている。

ソ連・ロシア


  • 「Катюша」(カチューシャ)
上記エーリカと同じく女性人名がタイトルの歌だが、こちらは逆に故郷に残った女性視点の歌。
「乙女カチューシャは川辺で彼を思う。カチューシャの歌よ戦地の彼に届き給え、彼よ祖国を守り給え」といった内容で、非常に情熱的。
元々は2番までしかなく、後に3、4番が追加された。
ガルパンでプラウダ高校の二人が歌ってたのが有名。他にはロッテ時代の西岡の応援歌は長いことこれだったり。何故か近鉄特急の車内チャイムで使われていたこともある。

  • 「航空行進曲」
1923年に作曲され、1933年にはソ連空軍歌に定められた由緒ある曲。現在でもパレードなどで耳にする機会も多い。美しく軽快なメロディーと希望に満ちた歌詞が特徴。現在のアエロフロート・ロシア航空の社歌にも、間奏としてこの曲の旋律が用いられている。


南北アメリカ


アメリカ合衆国


  • 「陸軍は進んでいく」
数あるアメリカ合衆国における軍歌の中でもよく知られたものの一つ。
1908年にエドモンド・グラーバーという人物が作曲した曲であり、
陸軍が弾薬を積んだ車を馬に引かせたことからまたの名を弾薬輸送車の歌とも。
勇ましい歌詞でありながらもミュージカル調の旋律が特徴である。
ガルパンおじさんには、「アメリカ野砲隊マーチ」の原曲と言った方が通じるだろうか。

  • 「The Battle Hymn of the Republic」(リパブリック讃歌)
南北戦争で北軍の曲として使われたもの。諸説あるが原曲はウィリアム・ステッフの「Say,brothers,will you meet us」とされている。
日本では権兵衛さんの赤ちゃんヨドバシカメラの曲としておなじみ。
他だとロッテ時代のホセ・フェルナンデス・ホセ・オーティズの応援歌として使われたり、NHKの『ともだち讃歌』もこの曲の歌詞を変更したものである。
その他探せば星の数ほど替え歌がヒットする。
海外でもマンチェスター・ユナイテッド含む多くのサッカーチームのチーム曲に使われており、ぶっちゃけ全世界的に原曲より替え歌のほうが有名
サンドロットのサクションゲーム『地球防衛軍4』ではNPCの隊員がたまに替え歌を歌う。PVのラストに使用された為印象に残ったユーザーも多いはず。
歌詞は複数存在して「青い地球を守るため~EDFの出動だ~」と前向きなものもあれば「空軍海軍全滅だ~陸軍壊滅寸前だ~」と絶望的な戦局を自嘲するものなど様々
地球防衛軍4.1ではプレイヤー自身も歌えるようになった。


  • 「When Johnny Comes Marching Home」(ジョニーが凱旋する時)
同じく南北戦争当時の歌で、北軍の人間によって作られた曲だが南軍でも歌われた。
映画「博士の異常な愛情」のB-52パートではBGMとして必ず流れ、以降も「ダイ・ハード3」で犯罪者グループが金塊強奪を働くシーンや、
ガールズ&パンツァー 劇場版のT-28登場シーンなどでBGMに流れるなどこの演出は様々な作品でパロディされている。
またGuPでは主要キャラの秋山優花里が度々鼻歌で歌いながら作業しているシーンがある。

  • 「Marines' Hymn」(海兵隊讃歌)
アメリカ海兵隊における公式の軍歌。作詞作曲者は不明。
歌詞の主な内容としては海兵隊が合衆国に忠誠を誓い、常に全軍の先頭に立ち場所を選ばず戦うこと、過去の戦争における功績を謳うもの。アメリカ海兵隊の軍人にとっては非常に神聖な軍歌である。マーチ曲などとしても使われ、アニヲタ諸兄の中にはリズムだけなら知っている、という方もおられるかもしれない。


アルゼンチン


  • 「El Uno Grande」(エル・ウノ・グランデ)}
1924年に作曲された軍歌でアルゼンチンの精鋭部隊である第一歩兵隊の軍歌として歌われている。
ところどころが甲子園のテーマにちょっと似ている。







追記・修正は自身を鼓舞してからお願いします。



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※追記の際は文化を尊重し、中立的な視点で書きましょう。また、他国や他民族を侮辱する軍歌は追記を禁止します。


最終更新:2021年03月04日 11:36