ギブソン(音楽メーカー)

登録日:2022/01/01 Sat 02:41:34
更新日:2025/01/30 Thu 12:15:33
所要時間:約 24 分で読めます




ギブソン(Gibson)とはアメリカ合衆国テネシー州ナッシュビルに本社を置く楽器メーカー。



エレキギターの黎明期から現在に至るまで、ライバルであるFenderと共にエレキギター界の二台巨頭として君臨し、数々の名機を世に送り出しながら数々のやらかしと迷走を繰り返すギターメーカー界随一の萌えキャラとして愛される老舗である。




歴史


楽器メーカーの中でも特に歴史が古く、その始まりは19世紀末、ミシガン州カラマズーにて楽器職人オーヴィル・ヘンリー・ギブソンがマンドリンの製作を始めたところから始まる。

1902年the Gibson Mandolin-Guitar Mfg. Co, Ltd. を設立。

ギブソン氏自身はほどなくして経営権を他人に譲って、ブランド名と特許の使用料だけを受け取り、製作上のアドバイスをするアドバイザー的なポジションに収まる。

1918年にギブソン氏死去。

その後、ポピュラーミュージックにおけるギターという楽器の地位が向上するのと合わせて数々の名機を発表。業界内での地位を確立していく。

1944年シカゴ・ミュージカル・インストゥルメンツの傘下に入る。

1952年、ジャズギタリストであるレス・ポール氏と協力し、伝説的名機「レスポール」を開発。

1958年にはそれまでのギターの形状を遥かに逸脱した変形ギターの元祖とも言える「フライングV」「エクスプローラー」を発表。

同年には「エレキギターにアコースティックなサウンドを加える」事をコンセプトに開発されたセミアコースティックギターの代名詞「ES-335」を発表するなど、後のギター界に大きな影響を与える。

1959年、「エクスプローラー」「フライングV」生産終了。

1960年「レスポール」生産終了。


あれ?


1961年「SG」発表。

当初は前年に生産終了したレスポールのフルモデルチェンジ、つまり「新型レスポール」として発売されたが、レス・ポール氏の意思や意見をガン無視して開発されたため、レス・ポール氏が自身の名前を冠する事に苦言を呈し、1963年に氏との契約を解除。以後は「SG」という名前で発売される事となる。

同年カーデザイナーのレイ・ディードリッヒ氏によるデザインで「ファイヤーバード」が発表される。Fender社が「左右非対称のボディシェイプはうちのジャズマスターのパクリ」という米国しぐさをしてきたため、1966年左右を反転させて再発売する事になる。そんなんでいいのか。

1968年、生産を終了していた「レスポール」を著名ギタリストが愛用した事で人気爆発。すわ稼ぎ時と再発売を決定し、以後Fender社のストラトキャスターと並ぶギター界のアイコンとして愛される事となる。

1969年、Ecuadorian Company Limited(後のNorlin社)に買収される。

1975年、他社が似たようなデザインのギターで儲けている事に感づいたため「フライングV」「エクスプローラー」を再発。

1970年代から1980年代にかけては、ポピュラーミュージック市場の目まぐるしい変化に合わせたり合わせなかったりしながら、様々なモデルを出しちゃスベり出しちゃスベりしながら駆け抜けていく。

1977年、ギブソンのコピーモデルを生産していた日本の楽器メーカー複数社を相手に訴訟を起こす。が、敗訴
一応和解に至るが、訴えられた日本の各メーカーはこれを機にコピーモデルからの脱却を図り、オリジナルモデルの開発に邁進していく事になるので、日本ギター史においては結構重要なエピソードである。すごいぞギブソン。

1986年、ヘンリー・ジャスコヴィッツ、デイヴ・ベリーマンらによって買収される。

1990年代には93年にまた日本の楽器メーカー・フェルナンデス相手に裁判を起こしてまた敗訴するものの、その他は大きな動きも無く過ぎていき、2000年代以降はかつての名器の復刻で糊口をしのぎつつ、八つ当たりか親の仇のような勢いで企業買収を繰り返していく。

2010年代に入ると、ロックミュージック自体がポピュラーミュージックの主役から退き始めた事を受けて売り上げが激減。

それでも何とか持ちこたえていたが、上記の企業買収を機に始めた新規事業が軒並み赤字というポンコツ企業あるあるをやらかし、負債がムクムクと膨らんでいく。


2018年、破産

負債の総額は最大5億ドルに上るのでは無いかと言われているが、再建の可能性アリとの事で、日本で言うところの民事再生法が適用されることに。


その後、性懲りも無く復刻と微妙なニューモデルを発表しつつ、今に至る。





特徴


一言で言うなら「伝統」と「革新」。そして「癖者

古豪の楽器メーカーらしく、レスポールやESシリーズなどのモデルは伝統的なギターのシェイプに近く、木目を生かした塗装やお家芸のアーチトップ加工など保守的な側面を持つ一方、前述のフライングVを始めとした変形ギターや自動チューニング機能搭載の「ロボットギター」など、常に時代の斜め先を行くチャレンジ精神を感じさせる、二面性のあるメーカーである。


また操作性や汎用性、生産性を重視するライバル・F社と比べると、一癖も二癖もある機種が多く値段も高め。

重い重いと言われるレスポールや、いわゆるヘッド落ちするギターの代名詞となった「SG」、音が独特過ぎて使用用途が限られる「EB-3」など、その例は枚挙に暇がない。
しかしながら、裏を返せばその機種にしか無い独自のトーンがあるという意味でもあり、その音を求めて使用するギタリストも多いのもまた事実である。
中にはギブソンの特定機種ばかり使い続ける演奏者も多いため「○○○と言えば○○○」というイメージがつきやすい。

特にアコースティックギターや、セミアコ/フルアコといったいわゆる「箱モノ」に関しては間違いなく世界一のシェアを誇るトップブランドであり、Fナントカと比べれば月とスッポン、ボールとグレンラガンくらいの差をつけている。


一方、同一機種でも個体差のバラつきが大きく、質的にもコスパが悪いとよく言われ

ギブソンはネットで買うな。楽器屋で試走してから買え
15万のF○nderと同じクオリティが欲しいなら25万出せ」等

ギタリストからは厳しい評価を下されがちなのも特徴か。



主な製品

エレキギター

個性派揃いのギブソンギター達。
良くも悪くも挑戦的で短命なモデル・仕様も多いが、それ故に後のギター界に多大な影響を与えたギブソンくんの軌跡を紹介していく。

なおサウンドや仕様については、年代やモデルによって多種多様なので、ここでは各機種の最も一般的なものを記載していく。

レスポール

言わずと知れたエレキギターの王様。

前述の通りジャズギタリストのレス・ポール氏との共同開発によって生み出され、一時の生産中止を挟んだものの、今日においてはエレキギターのアイコンとして君臨している。

「重い」「厚い」「ハイポジションが弾きにくい」と欠点をあげつらう声も聞こえるが、それを覆して余りある程に魅力が詰まった名機である。その辺については項目にて。

ライバル機種であるレオさんとこのストラトキャスターが汎用性や操作性を重視していることもあってか、相対的に使い勝手が悪そうな印象を抱かれがちだが、ギター雑誌や機材好きの方ならご存知の通りトップミュージシャンや名うてのスタジオミュージシャンともなると、その多くが1本くらいは質の良いレスポールを持っている。
理由は色々あるだろうが、ストラトキャスターの繊細で歯切れの良い音は、同時に線が細くアンサンブルに埋もれやすいため、どんな楽曲でも存在感を出せるハイパワーのレスポールが用いられる。という事情もある模様。


ちょっとめんどくさいセクシー系ヒロイン。


《主な使用者》
ジミー・ペイジ(LED ZEPPELIN)
ジョー・ペリー(Aerosmith)
スラッシュ(GUNS N' ROSES)
ゲイリー・ムーア
PATA(X JAPAN)
松本孝弘(B'z)
斉藤和義
平沢唯(けいおん!)
後藤ひとり(ぼっち・ざ・ろっく!)


SG

新型レスポールとして発売されるも、前述の都合により新たにSG(Solid Guitar)の名を冠される事になったカブトムシ

レスポールの項目に書かれた欠点を補いつつ、○ender社のテレキャスターの様に生産性を高めたモデルで

  • メイプルとマホガニーの合板だったレスポールから、マホガニーのみに変更。
  • ボディを薄く、身体に当たる部分の角を削り快適性をアップ。
  • ネックが完全にボディから飛び出す22フレット接着という狂気のネックジョイント

価格を抑えつつ演奏性を高め、一見してそれとわかる独自性も獲得。レスポールに比べ低音成分は減ったものの「中音域に独特のガッツがある」と評される独自のトーンで特にロックミュージシャンから愛される事となる。

ギブソンも「ロック・アイコン」「世界一速く弾けるギター」と喧伝しているが、その軽量ボディと飛び出したネックのせいで、ストラップで保持した状態で手を離すとネックが下に下がる「ネック落ち」が顕著なギターとしても有名。
滑りにくいストラップを使う、トレモロユニット等を増設してボディ側の重量を増やす等で解決出来るが、気になる人は何やっても気になる。


王道のツンデレ幼馴染。


《主な使用者》
アンガス・ヤング(AC/DC)
トニー・アイオミ(BLACK SABBATH)
デレク・トラックス
和嶋慎治(人間椅子)
坂本慎太郎(ゆらゆら帝国)
ユイ(Angel Beats!)


フライングV

兄弟機エクスプローラーと共に、後の変形ギターの嚆矢となった伝説の名機。

名前の通りのV字ボディに矢じりのようなヘッドを持つ。

余りにも特異な形状のため座って演奏することが難しく、当初こそ売上は苦戦したが、ブルース三大キングの一角アルバート・キングや伝説のギタリスト、ジミ・ヘンドリクスが使用した事で人気を獲得。

その後のハードロック・ヘヴィメタルブームにおいては、そのトンガった見た目もウケて使用者が急増。

今では多くのメーカーから(主にメタラー向けに)フォロワー機種が販売されている。

確かにギブソンお得意のハイゲインサウンドを受け継いでいるものの、いざサウンドを聞いてみると存外甘みを感じさせる音で、オリジナルに限ればゴリゴリのメタルというよりブルース〜ハードロックくらいがベストマッチ。

2007年にはこれのボディとヘッドの向きを上下逆にしたReverse Flying Vというモデルが世界限定400本で販売された。誰得

意外と家庭的なヤンキー女子。


《主な使用者》
アルバート・キング
マイケル・シェンカー(MSG等)
ルドルフ・シェンカー(Scorpions)
カイ・ハンセン(HELLOWEEN)
橘高文彦(筋肉少女帯)
ナオ太(フリクリ)


エクスプローラー

元々はフォーチュラの名前で発売されていたフライングVの兄弟機。

ある意味シンプルなデザインのフライングVと違って、稲妻のような左右非対称ボディが特徴的。
一目でそれとわかる個性は強烈で、なかなかこれを初めてのギターとして買う人はいないだろう。
しかし突飛なデザインの割にボディバランスは優秀で、ボディも薄いため取り回しはギブソン系列でも随一。
その代わり、そんな形なので純正のハードケースがバカデカくクソ重い。

あと形が形なので、メタル以外の現場でコレを使うと「ああ、エクスプローラーの人だ」と一発で認知される利点(難点?)もあったり。

サウンドの方はと言うと、シャープで歯切れの良いサウンドが特徴的で、標準装備のハムバッカーとの兼ね合いもあって、パワーと切れ味のバランスが良く、U2のエッジの様な軽やかなカッティングからメタリカのジェイムズ・ヘッドフィールドのようなザクザクの刻みまで対応可能。


おっぱいのついたイケメン系女子。


《主な使用者》
エッジ(U2)
ジェイムズ・ヘッドフィールド(METALLICA)
マティアス・ヤブス(Scorpions)
TAKUMA(10FEET)


ファイヤーバード

カーデザイナーがデザインしたギター。言わばギブソンのターンエーガンダム。

Fの字とのすったもんだの末、低音弦側にホーンが伸びたシェイプ(ノンリバース)だったものが、高音弦側のホーンが伸びた独自のシェイプ(リバース)に変更されている。

つまりどういう事か分かるか?ヘッド落ちするんだよ。

普通のギターはヘッドとボディは別パーツになっており、それを接着なりネジ止めするのが普通なのだが、当機種はヘッドの先からボディエンドまで一枚の板から削り出しという「スルーネック」を採用。

ネックに致命的なトラブルを生じた時は取り替えが効かないため、修理代が高くつくか最悪まるっと買い替えになるリスクを孕んでいるものの、弦の振動をしっかり伝えられるため伸びやかなサスティンを獲得している。

また、レスポールの一部機種にも採用されている小ぶりなハムバッカー「ミニハムバッカー」が標準装備され、ハムバッカーの特性を持ちながらもよりシャープな音を実現。

この2つの独自性から生まれるトーンは独特で、ロック、ブルース系のギタリストに長く愛されている。

余りにも独特過ぎる仕様から、他の機種と違い仕様のバリエーションやインスパイアされたモデルが少なく、ある意味オリジナルが完成品とも言えるギターである。

ギブソンが炎上することとなった、廃棄のために大量のギターが重機で踏み潰される動画で潰されていたのはコイツのバリエーションモデル

男装の麗人。

《主な使用者》
ジョニー・ウィンター
小野瀬雅生(クレイジーケンバンド)


レスポール・ジュニア/スペシャル

レスポール高過ぎぃ!というお客様からの声を真摯に受け止め、木材はマホガニーのみ!ピックアップもP-90一発のみ!装飾も減らしてシンプルに!という男らし過ぎる雑な発想によって生まれたいわゆるスチューデント(初心者)モデルが「レスポール・ジュニア」

薄くて軽くて安い、が売りではあるが、そのヤンチャ極まる仕様とサウンド、キャラクターから地味に人気があり、特にロック・パンクアーティストに使用者が多い。

スペシャルはジュニアの上位機種。なんだその女体化コンテンツキャラの男装みたいなのは。

2018年の破産後、初めて出されたニューモデルのラインナップの中にもジュニアのモデルチェンジ版といえる「Gibson Les Paul Tribute DC」というモデルがラインナップされていたあたり、ギブソン的にも稼げる機種だと思っているフシがある。

もちろん、2021年に生産終了しているが。

これを更にシンプルにしたメロディーメーカーというモデルもある。2022年現在はEpiphone Les Paul SLという名前で購入可能。


メスガキ中学生。

《主な使用者》
ビリー・ジョー・アームストロング(GREENDAY)
真島昌利(THE BLUE HEARTS等)
藤原基央(BUMP OF CHICKEN)
喜多郁代(ぼっち・ざ・ろっく!)

L-5

ギブソン社のフラグシップと呼んでも差し支えない、ギブソンの最上位最高機種。

いわゆるフルアコースティックギター(ボディ内が完全に空洞)のギターで、大元を辿れば創業者ギブソン氏が亡くなってすぐの1922年まで遡れるギブソンギターぶっちぎりのババア歴史を誇る。

アコースティックギターと大差ない大型の豊満ボディから生み出される豊かなエアー感、囁くような甘いトーンはまさに極上の一言。

アーチトップギターの旗手としてトップを走り続けて来たギブソンの、歴史と誇りを一身に背負ったQueen of Gibson、それがL-5である。


爆乳デカ尻妖艶人妻


《主な使用者》
ウェス・モンゴメリー


ES-175

L-5の普及品、ミッドプライスモデルとして開発がスタートしたフルアコースティックギター。

L-5に比べるとボディがひとまわり小さくなり、ホーンの先がとんがったフィレンツェ・カッタウェイになっているなど、見た目の違いは明らか。
サウンドのキャラクターもL-5と比べればいくらかエレキ感が強い。

L-5同様ジャズ/フュージョン系ギタリストに愛用されたが、プログレッシブ・ロックバンドYesのギタリスト、スティーブ・ハウは「ロックバンドでは誰も使ってなかったし、『フルアコでロックとかwww』って言う奴らを黙らせたかったんだ」との理由からこのモデルをメインに使っていた。


あらあら系正統派お姉ちゃん。


《主な使用者》
パット・メセニー
スティーブ・ハウ(YES)


ES-335

世界初のセミアコースティック(ボディの半分くらい空洞)ギター。

「アコースティックギターにソリッドギターのタイト感を与える」事をコンセプトに開発され、薄型幅広のホロウ(空洞)ボディの真ん中にセンターブロックを入れるという発想でそれを実現。
柔らかさとタイトさ、甘さとシャープさがバランスよく並び立つギブソン随一のオールラウンダーとなった。

実際ES-335と言えば、ブルース三大キングの1人B.Bキングや、「Mr.335」の異名を持つフュージョンギタリスト、ラリー・カールトンなどが思い浮かぶが、一方でFoo Fightersのギターボーカルドラムおじさんデイヴ・グロール*1のようなロック系のギタリスト、更に言えばペッパー・キーナンのようなメタル系ギタリストに至るまで愛用者は多い。

ギブソン的にも思い入れが強いようでバリエーションや兄弟機も多く

  • ソリッドボディの335-S
  • ひとまわり小ぶりな339
  • フルアコースティックの330
  • 上位機種でバリトーンスイッチ搭載の345
  • その更に上位機種355

などなど、細かい仕様の違いを含めれば膨大な数の兄弟がいる。


世話焼きな年下のお姉ちゃん。


EDS-1275

「12弦ギターはコードの鳴りが美しいけど、ソロには向かないよね。とは言えライブ中に持ち帰るのもなあ」

ギブソンくんの答え》「1つのボディにネックを2本生やして12弦と6弦を持ち替え無しで弾けるようにしました。

という非常にシンプルな発想によって誕生した世界初の普及品ダブルネックギター。

ギブソンSGを基に作られたボディは当然馬鹿デカく、当然使いこなすだけの技量と用いられるシーンが限られるため、ギブソンお得意の短命トンチキモデルに……なるかと思いきや、レッド・ツェッペリンの「天国への階段」イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」というロック史にその名を残す超名曲で用いられた事から知名度がぐんと上がり、今日においては『ダブルネックギター=EDS-1275』と呼べる地位を確立している。

マッドサイエンティスト系女子。


ビクトリー

時は70年代末、折りからのフュージョンブームやメタルブームの中で、「ストラトの演奏性とレスポールのハイゲインサウンドが欲しい」というプレイヤーが急増。

ストラトシェイプのギターを改造して、ハムバッカーを搭載した「スーパーストラト」が誕生する。

各メーカーもこれを受けてオリジナルのスーパーストラトを出すようになると、当然ギブソンも「乗るしか無いこのビッグウェーブに」とばかりに新機種の開発をスタート。

そうして1981年に生み出されたのが、パッと見ストラトに近いけどよく見ると全然違うストラトもどきビクトリー」である。

基本的な仕様はハムバッカー2発。ブリッジはレスポール等と同じチューンオートマチック。コントロール系はワンボリューム・ワントーンにピックアップセレクターのみという漢仕様。
後にフロントとリアの間にストラトから引っこ抜いてきたようなシングルコイルが増設されたモデルも発表され、後に流行るHSH配置の先駆けとなったりもした。

しかしながら、こんな「コロシテ…コロシテ…」と聞こえそうなキメラモデルで市場を独占出来るはずも無く、僅か4年の生涯を終えた。

ちなみにベースも発売されたが、こちらはこちらでハムバッカーがスラント(斜め)配置されたそこそこ変態仕様になっている。


勝ち気な転校生女子。


RD

何とも言いがたい、いつもの変な形ギター。
強いて言えば、ファイヤーバードを縦に潰した感じと言うか何と言うか……

シンセサイザーのゴッドファーザーとして知られるロバート・モーグとの共同開発した機種で、ギブソンでは珍しい25 1/2インチ(ストラトと同じ)という色んな意味でツッコミどころ満載のギターだがやっぱりわずか2年で生産終了。

主な使用者としては椎名林檎が有名で、彼女のアルバム「三毒史」のジャケットでその姿を拝む事が出来る。

ベースも存在し、こちらはNirvanaのクリス・ノヴォセリックが使用。
地味にリイシューされたりギターより扱いが良い。


たぶんメンヘラ地雷系女子


マローダー

メイプルネック・メイプルボディのレスポールスペシャルに、ピックアップはフロントにハムバッカー、リアはストラトのようにスラント配置されたシングルコイル。
おまけにネックはギブソンには珍しいボルトオン(ネジ止め)でヘッドはフライングVのような菱形ヘッドと、これまた妙な仕様の珍品。

にくいF畜生をはじめとした他社のお株を奪うためにマローダー(略奪者)と名付けられたものの碌な成果も無く生産終了。

世界的に見てもドマイナー機種なのだが、本邦においてはASIAN KUNG-FU GENERATIONのギターボーカル後藤正文が使用していたため、一定の知名度があったり。


メガネのサブカル女子


モダーン

幼稚園児の描いたフライングVのような、ちょっと湾曲した奇妙奇天烈ギター。

何この……なに?という声が聞こえてきそうな見た目ではあるものの、木材や仕様はフライングVやエクスプローラーに近い。
それもそのはず、実は特許の出願自体は上記の両者と同期であり、他の2つが華々しくデビューする裏で、何故かモダーンだけは一緒にカタログにも載らずひっそりとデビューしたのである。

ただでさえヘンテコシェイプなギターな上にそんな出自とあっては当然まともな人気を得る事も出来ず、兄弟たちと一緒に生産終了した後、復刻は82年まで待つ事に。

一応他ブランドから何度かリイシューモデルが発売されたりしている。


不思議系女子。


L6-S

レスポールを平たく潰したような全身メイプルの幅広薄型のギター。ギブソン初の24フレット。
サウンド・ルックス共に微妙というイジリもツッコミもし辛いギターなので、案の定生産期間は短い。

主な使用者は無し……と言いたいところだが、ごく初期のプリンスが使っていたりする。


あだ名が「地味子」の女の子。


その他

  • 潰れたパックマンのような形の「カーヴァス」
  • アリゾナ州にお住まいのFくん版ES-335「Starcaster」を逆コピーしたような「Vegas Highroller」
  • 薄型レスポール……と思わせておいてリアがスラント配置のハムバッカーという「ナイトホーク」
  • Jackson、Charvelのスーパーストラトを丸パクリしたような「Q」シリーズ

などなど……多数の短命モデルが存在する。



エレキベース

エレキベース(以下ベース)のスタンダードとなったスェンダー社のプレシジョンベース、ジャズベース等とは違い、ギター同様キワモノ癖モノ揃いのギブソンベース達。

ギター以上に独特のサウンドが多いため、用いられるシーンは限られるものの、そのサウンドに惚れてしまったプレイヤーはそのベースしか使わない事もしばしば。

人と同じがイヤなあなたに送る魅惑のギブソンベースを紹介していく。

EB-0/EB-3

SGシェイプのエレキベースで良くも悪くもギブソンベースの代表格。つまりヘッドが落ちる

EB-0はフロントのどデカいハムバッカーが印象的。EB-3はリアにシングルコイルが追加されている。
モコモコとした独特のごんぶと低音が特徴的で、一聴してそれと分かるブーミーな低音にメロメロになってしまうベーシストが多いものの、そんな音ゆえに音抜けする音作りが難しいのが難点。

Creamのジャック・ブルースやFreeのアンディ・フレイザー等、60〜70年代のアーティストに使用者が多いため、主にオールドロックやサイケデリックロック界隈でやたら愛される印象。

肝心のアプリがギブソンギター並みの短命に終わったバンドリ!版SideM「アルゴナビスfrom BanGDream」の的場航海がEB-3を使用しており、本家バンドリ!同様彼のシグネイチャーも出ている。そんなベースで大丈夫か?


たぶん、マイペースな天才肌男子。


サンダーバード

ファイヤーバードのベース版。

ギブソンベースには珍しい34インチ(ロングスケール)のネックで、ヘッドがやたらデカいため、エレキベース全体で見ても大型の部類。誰の頭がデカいって!!?

「サンダー」の名の通り、雷鳴にも喩えられるゴロゴロとした豊かな中低音域はロックアーティストに好まれる反面、高音が立たないのでスラップを多用するベーシストからは敬遠される。

実際主な使用者もMotley Crueのニッキー・シックスやTHE YELLOW MONKEYのHEESEYなど、いかにもなロックベーシストが多い。

スケットダンスのライブ回でボッスンが弾いてたのもコレ。

オレ様系ヤンキー男子。


リッパー/グラバー

平たくて大ぶりな姿が愛らしい兄弟機種。

リッパーはヘッドが四角くてハムバッカー2発でロータリースイッチ付き。
グラバーはヘッドが小ぶりな菱形タイプで、ピックアップはハムバッカー1つだけだが、何とコレがフロント〜リアの間を外す事なくスライド可能!!すごい!!



………………実際弾いてみた人曰く「あんまり変わんない」そうです。やっぱりな。



使い勝手が悪いからか、スプリット+シングルのPJ配置やシングル3発の仕様もあるんだけどね。

若い頃のジーン・シモンズ(KISS)や、またもや登場Nirvanaのクリス・ノヴォセリックが使用している。


人懐っこいわんこ系男子


EB-1

ヴァイオリンベースというと、ポール・マッカートニーが使用するHofner製のものが真っ先に浮かぶが、節操無しで有名なギブソンさん、やっぱり作ってました。

一応ギブソン初のエレキベースで、濃いブラウンのヴァイオリン型ボディにフロントに大型ハムバッカー1発の漢気仕様。
図太い低音はもはや「もんもん」といった具合で、輪郭のぼやけた音というより圧。

オリジナルはマニアの間で高値で取引されている。


白髪混じりでダンディなイケオジ。


EB-2

セミアコースティックギターの名機ES-335をそのままベースしたセミアコベース。

セミホロウのボディから鳴る柔らかな音はロックバンドよりも、ジャズやアコースティック系アーティストに愛されている。
しかしながら、ぶっちゃけ一般知名度の高い使用者は少なく、上記のEB-1ともども現在は生産していない。


優しくて包容力のあるオネエ系男子。




この他、最近EB Bass4という新興メーカーのジャズベースフォロワーのような2ハムベースもあったりなかったり……ギターに比べると弾数は少ない。





関連企業・メーカー・ブランド

Fender (フェンダー)

アリゾナ州スコッツデールに本社を置く、ギターメーカーの顔役。
ギブソンが日産ならこっちはTOYOTA。ギブソンが豚骨ならこっちは醤油。

楽器職人のギブソン氏が興したギブソン社とは違い、ギターの弾けない電気屋さんレオ・フェンダーが1938年に設立した「フェンダー・ラジオ・サービス」が前身で、元々ラジオや音響機器の修理を請け負っていたついでに、エレキギターの電装部品も直していた。

その後「修理出来んなら製造も出来んじゃね?」という事でエレキギターの開発に着手。

1949年に現在のテレキャスターの原型機となるソリッドギター「エスクワイヤー」を発表し、以後エレキギター界を席巻する名機を次々発表していく。

良くも悪くも職人気質なギブソンと比べると、操作性や生産性を重視したモデルが多く、安価で使いやすいモデルが多いのが特徴か。
また、毎度毎度根本からデザインが変わるギブソンとは違って、製品の殆どがテレキャスターストラトキャスターをベースにアレコレしたモデルが多い。

ギブソン同様、買収やら流行に翻弄されてそれなりに苦労しているが、楽器メーカーとして、というよりも製造業としての王道を行かんとする姿勢のお陰か、ギブソンの凋落を尻目に比較的安定した経営とクオリティを維持している。

こう書くと優等生的にも見えるのだが、ギブソンが破産したばかりで参加出来なかったギターショーにて、レスポールをテレキャスターの形に押し込めたようなクソ煽りモデル、その名も
トラブルメーカー
をぶち込んで来るなど、意外と畜生なところがある。



Epiphone (エピフォン)

ギブソンの廉価モデルを販売する下位ブランド





…………では無く、かつては数多くの革命的発明と質の高い製品で名を馳せながらも、諸々あってギブソン社に買収されたメーカーである。

現在当たり前のように存在している
  • トラスロッド(ネックの反りを補正する部品)
  • ボリュームペダル
  • ワウペダル
  • 電子チューナー
などを開発したエレキギター界の革命児であり、アーチトップギターではギブソンと覇を競う強豪メーカーであった。

ギブソン社に負けず劣らず数奇な運命を送ったメーカーでもあり、1970年代には日本の楽器メーカーにOEMしていたこともあり、アメリカのメーカーなのに一部は「ジャパンヴィンテージ」扱いされているなど少々風変わりなところもある。

ビートルズが使用した事で有名になった「カジノ」をはじめ、特大ボディのフルアコ「エンペラー」シリーズや、チープな見た目が可愛らしい「ウィルシャー」「オリンピック」など独自機種も多く、買収から半世紀以上経った今でもギブソン内の独自ブランドとしての地位を築く、快楽責めにも負けない女騎士のようなメーカーである。


調教が進んだのか現在ではギブソンの廉価モデル製造がメインではあるものの、ギブソンでは製造を中止した仕様や、エピフォンでしか出していないシグネイチャーモデルも数多く存在している。


ちなみに、エピフォンと言えば角ばったギブソンのヘッドとは違い丸みを帯びたヘッド、通称「チン○ヘッド」が有名(?)である。

先が丸く山が2つ並んだような先端が上から見たシンボルに似ている事からそういった尊称(蔑称)を勝ち得た訳だが、何故かコレを理由にエピフォンを敬遠する層も少なからず存在する。

それを言ったらテレキャスターのヘッドも横から見た姿に見えるのだが、コチラはあまり騒がれない。何故だ。



スタインバーガー

「ギターってさ、木製である必要ある?」「ヘッドとかいらなくない?」「エレキギターにあんなデカいボディいる?」

という逆張りオタクかひろゆきのような言いがかりトンデモ発想から生まれた超小型ボディにヘッドレス、ボディとネック材は「グラファイトカーボン」という特殊な素材という革命的なギターで80年代に隆盛を極めた変わり者メーカー。



現在ではギブソン社に買収され、デザインそのまま素材は木製に変更されたモデルを販売している。



ちなみに、単なるヘッドレスギターなら、スタインバーガーよりも先にレス・ポール氏が開発していたりする。すげえぜポール。





オービル

かつて存在したギブソン公認のコピーモデルメーカー。
日本市場向けに国内で生産された、言わば「日本製ギブソン」

安価ながらそれなりのクオリティを誇り、ブランドが消滅した今でも中古市場ではそれなりの評価を勝ち得ている。



追記・修正はギブソンを破産の淵から救える人がお願いします。


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • Gibson
  • ギター
  • エレキギター
  • ベース
  • エレキベース
  • 企業
  • アメリカ合衆国
  • 萌え
  • レスポール
  • SG
  • フライングV
  • エクスプローラー
  • ギブソン
  • ポンコツ
  • 老舗
  • 楽器
  • 楽器メーカー
  • メーカー
  • 現実の企業
最終更新:2025年01月30日 12:15

*1 彼が使っているのは正確には335のバリエーションモデルのトリニ・ロペスモデル