蝶の短剣-エルマ(遊戯王OCG)

登録日:2022/06/01 Wed 00:08:00
更新日:2025/04/13 Sun 09:02:05
所要時間:約 9 分で読めます




蝶の短剣-エルマ

装備魔法
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。
モンスターに装備されているこのカードが破壊されて墓地に送られた時、
このカードを持ち主の手札に戻す事ができる。


概要

《蝶の短剣-エルマ》とは遊戯王OCGのカードの1枚。
2002年11月発売の「ガーディアンの力」にて初収録。


このカードを一目見たプレイヤーは、まったく同じ感想を懐くだろう。
「弱ぇ…」と。

装備対象に一切の制限なく攻撃力を上げるといえば聞こえはいいが、その数値はたった300。
現代基準どころか当時の基準で言っても、300は「低い数値」であった。
何せ発売時点で攻撃力700アップの《悪魔のくちづけ》、1000アップの《デーモンの斧》が既に存在していた。
加えて《悪魔のくちづけ》はレアリティがノーマルで入手しやすいため、猶更弱い《蝶の短剣-エルマ》を使う理由がない。

それならばもう一つの効果で価値を見出せば…ともいかない。

もう一つの効果は自己サルベージ(墓地のカードを手札に加える行為)。
一見すると「装備しているモンスターが破壊されると一緒に破壊されてしまう」という装備魔法の欠点を克服しているように見える。

問題は「モンスターに装備されているこのカードが破壊されて」という発動条件。
実はこの条件、装備しているモンスターが破壊されたことで《蝶の短剣-エルマ》が破壊されると満たすことができない。
「モンスターが破壊される」→「その時点で《蝶の短剣-エルマ》は『モンスターに装備されている』状態ではなくなる」→「装備先を失った《蝶の短剣-エルマ》は破壊されるが、自己サルベージ効果は発動できない」という理屈である。

なのでこの効果を発動できるのは《サイクロン》などの魔法カードを破壊するカードで《蝶の短剣-エルマ》が破壊された時に限られている。
そしてこれは滅多に起きないシチュエーションである。
何せこの効果は相手も確認できるので「あちゃー手札回収されて除去に失敗したぜ」なんてヘマがまず起きない。
第一《蝶の短剣-エルマ》を装備したモンスターを直接破壊すれば、自己サルベージも許さず除去を達成できる。

結論として「役に立たない二つの効果しかもっていない実用圏外のカード」という評価に落ち着く。

















しかし《蝶の短剣-エルマ》の存在意義は対象不問の強化ではなく、《ガーディアン・エルマ》の使用条件にある。

《ガーディアン・エルマ》が属する「ガーディアン」カテゴリは、モンスターカードと装備魔法の連関がテーマ。
それは装備魔法のサポートだけでなく、特定の装備カードを名指しでサポートすることも含まれる。

そして《ガーディアン・エルマ》は、《蝶の短剣-エルマ》を名指しするサポートカードになる。
その《ガーディアン・エルマ》のテキストはこちら。

ガーディアン・エルマ

効果モンスター
星3/風属性/天使族/攻1300/守1200
「蝶の短剣-エルマ」が自分のフィールド上に存在する時のみ、
このカードは召喚・反転召喚・特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
自分の墓地の装備魔法カード1枚をこのカードに装備する事ができる。

……持ち上げておいてなんだが、何とも言葉に困るカードである。

装備魔法の回収はいいのだが、直接手札に戻さず《ガーディアン・エルマ》に装備させる回収方法が問題。
墓地から回収したところで、その後の動きに繋げることができなくなるからだ。

例えば《デーモンの斧》などの戦闘支援カードは《ガーディアン・エルマ》の素の攻守値が低いため活かしきれない。
《月鏡の盾》ならば《ガーディアン・エルマ》でも戦闘破壊は狙える。
しかしその手のカードは結界像などの維持することに意味があるカード、又は《ハイドロゲドン》などの戦闘破壊で効果を発動するカードに装備したい。
つまり《ガーディアン・エルマ》が装備しても旨味が少ない。

それ以前に、この方法ではフィールド上の《ガーディアン・エルマ》が装備できるカードしか回収できない。
例えばサイバース族しか装備できない《グリッド・ロッド》、墓地のモンスターを対象にする《早すぎた埋葬》系列はそもそも《ガーディアン・エルマ》の効果対象に選べない。

この二つの理由により、回収できるカードと活用法、そして実用性が著しく低下している。

結局、《ガーディアン・エルマ》も微妙な性能だったために《蝶の短剣-エルマ》の価値が上がることもなかった。



















ここまで前座。
ここから本題。

ここまでの内容を読んで違和感を覚えた方も多いことだろう。
「何故そんなに弱いカードの記事なのに、タグに「禁止カード」がついているのか」と。

実際この弱いカード《蝶の短剣-エルマ》は禁止カードに指定されている。


真の相棒

その理由はこのカードにある。


効果モンスター
星4/地属性/戦士族/攻1800/守1600
(1):このカードに装備カードが装備された場合に発動する。
その装備カードを破壊する。

この《鉄の騎士 ギア・フリード》はカードが装備された時、その装備カードを破壊する効果を持っている。
そしてこの効果には「1ターンに1度」の回数制限は無い
つまりフィールドに《鉄の騎士 ギア・フリード》、手札に《蝶の短剣-エルマ》がある場合、以下の動きが可能となる。
  1. 《蝶の短剣-エルマ》を《鉄の騎士 ギア・フリード》に装備
  2. 《鉄の騎士 ギア・フリード》の効果で《蝶の短剣-エルマ》を破壊
  3. 破壊されたことで効果発動、《蝶の短剣-エルマ》をサルベージ
  4. 1に戻り《蝶の短剣-エルマ》を装備

この様に装備と破壊を無限に繰り返すことができる。
そしてこれは「カードの装備」「魔法カードの発動」「カードの破壊」「カードのサルベージ」を無限に行えることを意味している。

勿論このループ自体には、盤面と相手への影響力は無い。

このコンボが真の力を発揮するのは、更に別のカードと組み合わせた時になる。
まずはこちら。

王立魔法図書館

効果モンスター
星4/光属性/魔法使い族/攻 0/守2000
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
自分または相手が魔法カードを発動する度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く(最大3つまで)。
(2):このカードの魔力カウンターを3つ取り除いて発動できる。
自分はデッキから1枚ドローする。

このカードは要約すると「魔法カードを3回発動する度に1枚ドロー」する効果を持つ。
つまり「魔法カードを無限に発動できる」《鉄の騎士 ギア・フリード》とのコンボに合わせれば無限ドローができる。
エクゾディアは勿論、潤沢な手札を贅沢に使って盤石の布陣を築くのも容易。

《蝶の短剣-エルマ》が真価を発揮するのはこのカードだけではない。

魔法吸収

永続魔法
(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、
自分または相手が魔法カードを発動する度に、自分は500LP回復する。

魔法カードを発動する度にライフを回復するカード。

魔法の操り人形

効果モンスター
星5/闇属性/魔法使い族/攻2000/守1000
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
自分または相手が魔法カードを発動する度に、
このカードに魔力カウンターを1つ置く。
このカードに乗っている魔力カウンター1つにつき、
このカードの攻撃力は200ポイントアップする。
また、このカードに乗っている魔力カウンターを2つ取り除く事で、
フィールド上に存在するモンスター1体を破壊する。

魔法カードを発動する度に攻撃力が上がりモンスター除去も行えるカード。

これらのカードと無尽蔵に魔法カードを発動できるエルマコンボがあれば、桁外れのパワーを生みだしてくれる。

必要なカード枚数は多いものの、こうしたループコンボの要となることが発覚し頭角を見せることとなったエルマ。
長い歴史を持つ遊戯王において、無限ループ搭載デッキが環境入りを引き起こした史上初の事態となる。
一方的な1キルを厳しく取り締まるKONAMIも危険視したのか、2003年1月に制限カードに指定。
さらに2005年3月に禁止カードに指定されている。

禁止後のカードプールの変化

禁止から10年以上が経過した現代では、《蝶の短剣-エルマ》に好都合な要素が多くそろっている。

先ずカードプールの増加により《蝶の短剣-エルマ》及び《鉄の騎士 ギア・フリード》へのアクセス手段が増加したこと。


リンク・効果モンスター
◤ ▲ ◥
◀   ▶
リンク2/光属性/戦士族/攻1600
【リンクマーカー:左下/右下】
戦士族モンスター2体
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがリンク召喚に成功した場合に発動できる。
デッキから戦士族モンスター1体を手札に加える。
このターン、自分はこの効果で手札に加えたモンスター及びその同名モンスターを通常召喚・特殊召喚できず、
そのモンスター効果も発動できない。
(2):デッキから装備魔法カードを任意の数だけ墓地へ送って発動できる(同名カードは1枚まで)
墓地へ送ったカードの数と同じレベルの戦士族モンスター1体をデッキから特殊召喚する

特にこの《聖騎士の追想 イゾルデ》であれば《蝶の短剣-エルマ》を含めた装備魔法4枚を捨てて《鉄の騎士 ギア・フリード》を特殊召喚できる。
そして墓地の《蝶の短剣-エルマ》を《焔聖騎士-リナルド》で回収させることでコンボの土台が完成してしまう。

次にエルマのループコンボにてアドバンテージを稼ぐ手段も増加。

サーヴァント・オブ・エンディミオン

ペンデュラム・効果モンスター
星3/風属性/魔法使い族/攻 900/守1500
【Pスケール:青2/赤2】
(1):自分または相手が魔法カードを発動する度に、このカードに魔力カウンターを1つ置く。
(2):このカードの魔力カウンターを3つ取り除いて発動できる。
デッキの魔力カウンターを置く事ができる攻撃力1000以上のモンスター1体とPゾーンのこのカードを特殊召喚し、
その2体に魔力カウンターを1つずつ置く。
【モンスター効果】
自分は「サーヴァント・オブ・エンディミオン」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。
(1):魔力カウンターが置かれているこのカードは直接攻撃できる。
(2):相手ターンに1度、手札を1枚捨てて発動できる。
このカード及び自分フィールドの魔力カウンターを置く事ができるカード全てに魔力カウンターを1つずつ置く。
(3):モンスターゾーンのこのカードが破壊された場合に発動できる。
このカードを自分のPゾーンに置く。
その後、このカードに置かれていた数だけ魔力カウンターをこのカードに置く。

魔導獣 キングジャッカル

ペンデュラム・効果モンスター
星6/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1400
【Pスケール:青4/赤4】
このカード名のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):もう片方の自分のPゾーンにカードが存在しない場合に発動できる。
このカードを破壊し、自分のEXデッキから「魔導獣 キングジャッカル」以外の
表側表示の「魔導獣」Pモンスター1体を特殊召喚する。
【モンスター効果】
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
自分または相手が魔法カードを発動する度に、このカードに魔力カウンターを2つ置く。
(2):1ターンに1度、相手モンスターの効果が発動した時、
自分フィールドの魔力カウンターを2つ取り除いて発動できる。
その発動を無効にし破壊する。

【エンディミオン】【魔導獣】など、《王立魔法図書館》と同じ条件で利益を稼ぐテーマが登場している。
《蝶の短剣-エルマ》が解禁されれば、これらのテーマにて無限のリソース稼ぎとして抜擢されることは想像に難くない。

《鉄の騎士 ギア・フリード》を絡めた無限ループ以外にも「自分のカードを破壊する効果」と合わせることが可能ではある。
例えば【メタルフォーゼ】に属するPモンスターの効果は、自分のカードを破壊するが、デッキから任意のカードを獲得できる。
しかし、その効果のカードは大抵1ターンに1回しか使えず、同じテーマのPモンスターを破壊してペンデュラム召喚でアドバンテージを得るデザインになっていることもあり、わざわざこのカードを使う意味はないが。


禁止になった当時よりも恐ろしいパワーを持ってしまったため、《蝶の短剣-エルマ》のエラッタ無し復帰は起こり得ないだろう。
妥当な制限解除案は「サルベージ効果に『1ターンに1度』の回数制限をつける」あたりだろうか。























   *   *
 *   + いやちょっと待て
  n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´∀`)E)
  Y   Y  *

本当の評価


確かに禁止カードであり、その原因が《鉄の騎士 ギア・フリード》とのループコンボにあるのは疑いようもない。
しかしながら、そのループコンボ自体に以下の様な欠点があり、禁止カード指定される直前の環境と比べればあまり脅威とは言えなくなっているのも事実ではある。

  1. 《鉄の騎士 ギア・フリード》前提の価値
  2. コンボが決まらない場合邪魔になるカードが多い
  3. より脅威的な先攻1キルがある

一つずつ解説していく。

1.《鉄の騎士 ギア・フリード》前提の価値

《蝶の短剣-エルマ》は《鉄の騎士 ギア・フリード》と組み合わせて真価を発揮する。
と言うよりは《鉄の騎士 ギア・フリード》がいなけれぼエルマは何も力を発揮できないと言う方が正しい。
《蝶の短剣-エルマ》の無限ループに欠かせない「無限に破壊してくれるカード」は現状《鉄の騎士 ギア・フリード》しか存在しない。
「自分のカードを破壊するムーブ」が当たり前の今「無限に自分のカードを破壊するカード」が今後出る可能性は極めて低い(血迷ったかと言いたくなるカードを発売した前例はあるにはあるので、一応絶対とは断言できない)。

今の時点では、《蝶の短剣-エルマ》は《鉄の騎士 ギア・フリード》におんぶにだっこの状態になっている。

「《鉄の騎士 ギア・フリード》におんぶにだっこと言っても、《聖騎士の追想 イゾルデ》をはじめとして装備魔法の《蝶の短剣-エルマ》や戦士族の《鉄の騎士 ギア・フリード》のアクセス手段は増えている。だから実用性は上昇している」という話は正しい。
そこで次の問題点が立ちはだかる。


2.コンボが決まらない場合邪魔になるカードが多い

エルマの無限コンボに必要なカードは、最低でも以下の3枚。
  • 《蝶の短剣-エルマ》及びそのサーチカード
  • 《鉄の騎士 ギア・フリード》及びそのサーチカード
  • コンボをアドに変えるカード
安定性のためにサーチ/サルベージカードをメイン/EXデッキに採用するなら、必要なカードは更に多くなる。

コンボ成立のために必要なカードが3枚というのは安定しづらく、成功率はあまり高くはない。
11期環境となれば特定の2枚、ないし1枚で十分動けるデッキはゴロゴロある。
加えてコンボが成立しない場合や相手に邪魔された場合、コンボをアドに変えるカードと他のカードに種族間の相性がなく、邪魔になる。
前述した《聖騎士の追想 イゾルデ》《焔聖騎士-リナルド》を絡めたデッキなら焔聖剣を生かした焔聖騎士のシンクロ召喚など他の勝ち筋を保険として搭載、狙える場合があるが、そこに魔力カウンターを使う魔法使い族を入れても機能しないのである。

また、最終的に手繰り寄せたい《蝶の短剣-エルマ》《鉄の騎士 ギア・フリード》はイゾルデとリナルドで用意できるとしても、アド変換カードは別の手段で調達しないといけない。
その他、《鉄の騎士 ギア・フリード》が手札に来ると《聖騎士の追想 イゾルデ》で特殊召喚できず腐る。


また、《聖騎士の追想 イゾルデ》や《焔聖騎士-リナルド》の代わりに《アームズ・ホール》を使う場合は通常召喚できないデメリットのせいでもっと展開しにくくなってしまう。

ということで、実はエルマコンボ搭載デッキは極めて不安定なものになる。

3. より脅威的な先攻1キルがある


現在では相手の行動を徹底的に封殺し、「事実上の」先攻1ターンキルを仕掛けるデッキが主流になっている。
つまり様々なデッキで「事実上の先攻1キル」を実現できる、及びそのためのリソースを簡単に稼げることを意味している。
その状況下では、無限ループでのエルマのコンボで先攻1キルをしかけたところで、現代の戦い方にあまり差はなく、優位性に乏しい。

更に現代のデッキは安定性もあり、1キルできない場合でも安定した封殺が可能。
先ほど名前を挙げた【エンディミオン】を見ていく。
通常の枠とは別に、魔力カウンターを取り除いて効果ダメージを与える《マジックテンペスター》を採用。
もし先攻1ターン目から魔力カウンターを16個貯められるなら《マジックテンペスター》で1キル。
そして1キルできなければ制圧盤面に切り替えるという二の太刀を用意しており、1キル単体で見ても、全体の戦術で見ても上々の安定性を誇るデッキである。
現にこの【エンディミオン】デッキは10期の環境下で大会優勝などの実績を残している。

つまり、この【エンディミオン】は(1キルでも制圧でも)自前で致死量のリソースを十分に稼げており、《蝶の短剣-エルマ》を解放したところで【エンディミオン】はエルマコンボを搭載する利点が無い。
「無限ループで魔力カウンターを貯められるんだからメリットはあるでしょ」と思うかもしれないが、エルマコンボは前述の通りエルマ以外とのシナジーのない《鉄の騎士 ギア・フリード》を入れないと成立しないので安定性が低い。
更に言えばこの【エンディミオン】というデッキ、魔力カウンターを溜めて展開する必要があるという性質上、Pモンスター、魔力カウンターに関する魔法カード、ドロー加速魔法カード以外のカードは仮に手札誘発や汎用魔法・罠カードですら邪魔になり全く採用しないというかなり特殊でデッキ構築に繊細なデッキである。
つまり【エンディミオン】に《蝶の短剣-エルマ》の無限コンボを搭載すれば、間違いなく弱体化する。

他の比較対象として【植物リンク】を挙げる。
このデッキも先攻1キルと制圧布陣生成を使い分けられることが特徴で、環境トップの一員でもいた。
これは次の二つの理由がある。
  • 先攻1キルの場合、《マスマティシャン》や《BF-朧影のゴウフウ》等、手札1枚の使用で達成できる
  • メインデッキの中に先攻1キルにしか使えないカード(=先攻制圧の時に邪魔になるカード)が少ない

昨今脅威とされている1キルデッキは、こうした「少ない初動札から安定して1キルできる」「妨害などで失敗しても別の盤面を構築できる」という利点がセットになっている。
初動の安定性、妨害された場合の他の勝ち筋の用意など、エルマを用いた動きよりも安定性が遥かに高い。

《蝶の短剣-エルマ》が禁止になった当時は、致死量のリソースを1ターンで賄うことが極めて困難な時代。
確かにその時は「無限ループ」は魅力的であり画期的なことであった。
インフレが進んだ今日では「1キル」「無限ループ」はいいとこ一発芸で、見た目が派手なコンボにしかならない。
先攻1キルが厳しく取り締られているのはゲーム性を損なうからであり、必ずしも脅威だから(ゲームバランスを壊すから)ではない。

ということで「1キル」「無限ループ」の要因になるといってもそもそも需要自体が減っている。
それだけ脅威とみなされていないということになる。


以上、非常に長い文章にはなったが《蝶の短剣-エルマ》が弱いことの理由になる。
  • 強みを活かすための下準備が大変
  • 《蝶の短剣-エルマ》の技能の価値が低下
  • そもそも現代ではもっとローリスクハイリターンな動きが普通にできる
兎にも角にも、インフレって怖いねという話になる。


制限緩和の可能性について

「弱いカードなら制限緩和してもいいじゃん。弱くても使いたい人がいるかもよ?」と思うかもしれないが、それはなかなか難しいところ。
《鉄の騎士 ギア・フリード》が禁止にならない限り無限ループの土台は残っているため、おいそれと《蝶の短剣-エルマ》を解除できないという事情がある。
それは「《鉄の騎士 ギア・フリード》とのループで暴れるから」「仮に解除・再録しても上の問題点からそうしてまでエルマに価値を見出し、再録パックを買う人はそれほどいない=商業的に見て禁止解除して得られる旨味が少ない」というだけの話に留まらず、「今後新しいカードを設計するにあたって、エルマコンボに悪用かどうかをいちいち気にしないといけなくなる(開発の妨げになる)から」という理由もある。
ただ、この点では、同じような理由でパワー不足にも関わらず長い間禁止になっていた《刻の封印》《八汰烏》にも通じる所があるので、こちらも釈放される時が来るかもしれない。

《蝶の短剣-エルマ》の効果に「1ターンに1度」の回数制限をつければ、大幅弱体化は免れないものの、ループコンボに使用される恐れはなくなる。
だが、それをしてしまえば「元禁止だが今は警戒するまでもない装備魔法」「使う価値のないカード」という評価にまで落ちぶれてしまう(似たような問題を抱えている禁止カードは《キャノン・ソルジャー》や《マスドライバー》等がある)。
「今より弱くなってもいいから使いたい!ギアフリードとまた一緒に出したい!」という声がよほど多ければあるいは制限復帰もあり得るかもしれない。
果たして、本来の持ち主である《ガーディアン・エルマ》の庶幾が叶う日は来るのだろうか。

余談

《パワー・ツール・ブレイバー・ドラゴン》に《静寂ロッド-ケースト》*1と《盗人の煙玉》*2を同時に装備すると、《盗人の煙玉》の効果が発動する、という裁定が出たことにより*3「じゃぁ《蝶の短剣-エルマ》ともコンボできるのでは?!」と話題になったことがあった。
しかし、実際にエルマとケーストをPTBDに同時に装備させた場合、たしかにエルマは手札に加わるのだが、その後については「ケーストを装備したモンスターを対象に装備魔法を発動しても、装備状態になることなく破壊される」という裁定により無限ループにはつながらない様になっている。

追記・修正はエルマの禁止解除を願いながらお願いします。

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最終更新:2025年04月13日 09:02

*1 装備モンスターを対象とする魔法カード(装備魔法含む)を無効にして破壊する装備魔法

*2 装備状態で破壊され墓地へ送られるとハンデスする装備魔法

*3 同じ裁定は過去に《ギルフォード・ザ・レジェンド》で出ていた