行政特区日本(コードギアス)

登録日:2023/01/15 Sun 17:03:00
更新日:2025/01/30 Thu 20:27:10
所要時間:約 25 分で読めます





私、ユーフェミア・リ・ブリタニアは、富士山周辺に、行政特区日本を設立する事を、宣言致します!

この行政特区日本では、イレヴンは日本人という名前を取り戻す事になります

イレヴンへの規制並びにブリタニア人の特権は、特区日本には存在しません

ブリタニア人にもイレヴンにも、平等の世界なのです!




かつて、特区日本では不幸な行き違いがありましたが、目指すところは間違っていないと思います

等しく、優しい世界を


行政特区日本(にっぽん)とは、『コードギアス 反逆のルルーシュ』に登場する用語。
続編『R2』を含め、2回に渡り提案され、結果的には2回とも失敗に終わっている。




【概要】

まず前提として、この時代の日本は世界の大半を支配する「神聖ブリタニア帝国」による植民地となっており、
日本は「エリア11」、日本人も「イレヴン」と呼称され、物理的な弾圧と「名前の剥奪」という精神的な弾圧、
二つの圧政の中で細々と暮らす事を強いられていた。

厳格な階級社会であるブリタニア帝国に於いて、植民地市民「ナンバーズ」の地位は最底辺であり、
皇族や貴族は勿論、ブリタニア一般臣民からも日常的に差別され、虐待され、時には否応なく虐殺すらされ、それでも文句を言えない立場に甘んじていた。

「行政特区日本」とは、特区に指定された地域内に於いてイレヴンへの不利な扱いとブリタニア人の特権が停止されるという政策である。
つまり、地域限定とはいえ、イレヴンは「日本」の「日本人」という権利と名前と誇りを取り戻す事ができる

身も蓋もない言い方をしてしまえばイレヴンへの懐柔策であるが、本政策を実施しようとした2人のブリタニア皇族は、
どちらも「政策」ではなく「思いやり」としての提案であった。


【ユーフェミアの行政特区日本】

アッシュフォード学園の学際にお忍びで参加していた第3皇女にしてエリア11副総督、ユーフェミア・リ・ブリタニアは、
ひょんなことから学園内でその正体が明らかになってしまうが、衆目を集めた流れでそのまま特区日本構想を発表した。
多少の戸惑いこそあれ、富士山麓に建設される事となる特区日本の建設は順調に進み、
参加希望者はあっという間に20万人に達するなど、好調な滑り出しを決められたと言える。

尚、エリア11総督コーネリアは反対していたものの、ブリタニア宰相シュナイゼルはエリア11の平定に貢献すると見て賛成していた。
後述の通り、エリア11に根強く残る抵抗勢力はこれに参加しようが無視しようが無力化できることを見抜いていたのだろう。
また、エリア11の平定によって自分が進める研究も進めやすくなると考えていたようだ。

その他、細かな影響として、ブリタニア内部にもエリア11内の抵抗勢力を裏で支援し利益を得ていた者がまま居たが、
特区日本構想の発表により浮足立った所で尻尾を掴まれ、一掃されるという事態も起こしている。



一方、当時抵抗勢力としては最大規模になっていた黒の騎士団にとって特区日本構想の公表は緊急事態となった。

  • 「レジスタンス組織……言い換えればテロリスト集団である黒の騎士団の戦いとは違い、特区日本に参加する事には危険が無い」
  • 「『正体不明の仮面の人』と『大帝国の皇女様』では求心力が違いすぎる」
  • 「地域限定とはいえ、あれほど渇望した『自由と平等』が与えられる」

これは散々ブリタニアの横暴に苦しめられて来たイレヴンにとっては抗い難い魅力であり、実際黒の騎士団にすら参加者が出始めていた。
ユーフェミアからも黒の騎士団にも参加を打診されていたのだが、彼らとしても対応は割れる事となった。

もし参加すれば、平和を名目に武装解除を要求される可能性は高く、そうなればブリタニアの打倒と真の日本独立の芽は完全に潰える。
日本人の権利を回復する地域が作られるとは言ってもあくまでブリタニアの支配の元での日本という形でしかなく、ブリタニアの軍事的な支配はそのまま維持される。
そもそも「あの」ブリタニアが本当に自由と平等など与えてくれるのかという疑念も少なからずあった。

さりとて、真っ向から参加を拒否すれば、黒の騎士団は最早『正義の味方』ではなくなり、レジスタンスから『ただのテロリスト』に成り下がる事もまた意味していた。
限定的とはいえ平和裏に「日本」を得られるのであれば必ずしも武力闘争に拘る必要は無く、
それにもかかわらず武力を持ち続ければ、今まで少しずつ勝ち取って来た市民からの信頼と人気すらも失ってしまいかねない。

「参加すれば黒の騎士団は消滅する」「参加拒否すれば黒の騎士団は自由と平和の敵」、どちらにせよこのままでは黒の騎士団はここで潰えるという状況から、
安易に参加する訳にも無視する訳にも行かず、幹部会議は「概ね反対」というスタンスながらもどう対処すべきか悩まされる事となってしまった。

なお、シュナイゼルやダールトン等は上記の理由により黒の騎士団がどう転んでも空中分解するであろう事にほくそ笑んでいたが、
ユーフェミア本人としては、その意思からしてそこまで考えていない可能性もある。
というか間違いなくそんなことを考えているならばこんな政策は出さないと思われるので、そういう意味でも視点的な『ズレ』を感じさせる話である。



最終的に黒の騎士団首領ゼロことルルーシュが出した対応策とは、世界中に中継されている行政特区日本の式典の最中にユフィをギアスで操り、ゼロを撃たせる事だった。
「危険を承知で式典会場に現れたゼロをブリタニアの皇女が撃てば、騙し討ちに遭ったゼロは殉教者となり、騙し討ちしたユフィの信望は地に落ちる」
「生死を彷徨い、奇跡の復活を遂げたゼロは民衆から称えられる」
特区日本の失敗と、ゼロの求心力強化を同時に成し遂げるための作戦であった。

しかし、ユーフェミアは特区日本と引き換えに皇位継承権を返上していた事を明かし、
彼女も貴族すらひれ伏す「皇族様」が、自らの意思で「ただの人」に成り下がる覚悟を持っていた事でルルーシュは彼女の気概を認め、
敗北を宣言し行政特区日本を活かす策を何かしら考えると方針転換する。


「でも私って信用無いのね。脅されたからって私がルルーシュを撃つと思ったの?」

「あぁ、違うんだよ。俺が本気で命令したら、誰だって逆らえないんだ」

「『俺を撃て』『スザクを解任しろ』、どんな命令だってね」

「もう、変な冗談ばっかり」

「本当だよ。例えば『日本人を殺せ』って言ったら、君の意思とは関係無く――」


だが、全てが丸く収まりそうになった事で油断したルルーシュが冗談を口走ったタイミングで彼のギアスが暴走、
ユーフェミアは会場に集まっていた日本人への無差別大量殺人を命じてしまう。
ブリタニア兵士は命令に従い手当たり次第に日本人を殺害し、結果として「日本人を騙し討ちした卑劣なるユーフェミア」は既成事実化、
生き残った日本人のブリタニアに対する憎悪は一気に最高潮に達する事となる。
当然ながら、行政特区日本はそのまま頓挫する事となった。

尚、この事態を受けてシュナイゼルは激しく動揺する様を見せているが、
常に冷静を保っていたシュナイゼルが精神的に衝撃を受ける様というのは『R2』を含めこの時のみである。
己が空虚である事を自覚する故、強い望みを持つ者の行動に関心を寄せる彼にとって、そして強い望みを持つ者の一人と認識していた異母妹の凶行が繰り出す『望みの無差別剪定』は、シュナイゼルにとって流石に受け入れ難い光景だったのだろう……
あまりにも脈絡もない凶行に、理解が追いつかないのも無理はない。

また皇帝シャルルはというと、謎の空間の中で一人高笑いを上げていた
彼の言う「彼奴、やりおったか!」がイレヴンの大量殺戮という凶行を実行したユフィに対してか、それとも野望の為にそれ程の事態を引き起こさせたルルーシュに対して向けられたのかは不明だが、
何れにせよ彼にとって個人の生死とは『最終的には取り返しがつく』ものであり、今回の顛末は『青春時代の子供達の失敗の一つ』程度にしか思えなかったのだろう。



如何にブリタニアと言えども何の理由も無しに植民地民を大虐殺する事など流石に無く、
この事態はブリタニアにとっても史上最悪レベルの大スキャンダルとして世界に報じられる事となった。

最終的にゼロの手で射殺されたユーフェミア自身も、『R2』の時代ではイレヴンからは虐殺皇女の蔑称で忌み嫌われる事となり、
ブリタニア内部からですら軽々に名前を出す事が憚られるような存在と成り果ててしまう。
またその騎士であった枢木スザクもまた、「虐殺皇女に仕えていた裏切者の騎士」として、元々低かった人望*1は更に低下する事となる。




特区における各勢力の思惑

以上のような悲劇的な末路を迎えた特区日本だったが、実際はギアスの暴走が起こらずとも大きな課題を残していた。
ロストストーリーズでの補完も併せると、この特区日本が実現にこぎつけた段階でも様々な思惑が絡んでいる。
当初はルルーシュでさえ内心で「やめろ、そのケースは俺も考えた!」と強く反対していたほど。それほどに実現が極めて困難である事が窺える。


  • シュナイゼル、ダールトン及び官僚
彼らがユーフェミアの案を認めたのは、先述の通り「テロリストの潰滅」に極めて効果的だったからである。
同時進行でキョウト六家を始めとしたこれまで抵抗勢力を支援してきた連中(とする容疑)も含めて政治取引を持ち掛け、有力な実行犯などの首を代価に特区への参加を保証するなど、
ここぞとばかりに揺さぶりをかけている。これにはもはや桐原もゼロの動向に頼るしかなく、ほぼ折れたも同然だった。
何しろ、これに応じようものなら自身の安寧と引き換えにこれまで独立に力を尽くしてきた人材を売り渡す事にほかならず、そんな事をすればもはや大義もあったものではないし、
かといって虐げられてきた多くの日本人にとっては救いであり、大勢がそれを求めて特区に押し掛けている事から、特区に参加しろという「呼びかけ」を蹴る事もできなかった。
どちらに転んでも二重の意味で今後のテロ抑止を期待できるし、よしんば撲滅までいかなくとも確実に内部分裂を誘発させる事ができる。
そういった意味で特区の恩恵は極めて大きかった。まさに妙案と言えよう。
「これで黒の騎士団も終わりだ」というダールトンの独り言が全てを示していると言える。
実際、もしこの政策に釣られて恩赦を発表した上で出てきたテロリストたちは裁判に掛けてしまい処刑してしまうつもりであったらしい*2


  • ブリタニア一般人、租界支配層
同じブリタニア側でありながら、総督周辺とは逆に懐疑的、もしくは不満を持っている層
行政特区は租界で暮らすブリタニア人にとって一切メリットがない上に、彼らはナンバーズに対する抑圧・支配が日常的になった生活に慣れ切ってしまっているためである。
貴族層にもなぜナンバーズを庇護するのかという不満が渦巻いており、総督クラスの対テロの思惑が伝わっていない節が見られる。
なお生徒会とスザクの関係のように、ナンバーズとなんらかの接点を持って印象が好転したブリタニア人はこの限りではないが、
学園内でのスザクに対する風当たりを鑑みれば、ニーナのように「スザクは受け入れてもイレヴンそのものに対する感情は良くない」と思われ、
こちらもいかに皇女殿下の案といえど賛成するかと言われれば疑問が残る。


  • 名誉ブリタニア人
普通なら特区日本に賛成しそうな(元)日本人にもかかわらず、否定的な様子が色濃く描写されている。
彼らが租界内で受けているブリタニア人からの差別っぷりは人権すら危ういレベルで熾烈を極めているが、それでも暮らしはひとまず裕福であるため、
租界に入れずゲットーで貧困な生活をするより遥かにマシ、むしろ苦労して名誉ブリタニア人になったのに権益が失われると考えていた。
そもそも、名誉ブリタニア人制度自体が表向き誰でもなれるとされていながら、実際には望んでもなる事ができないという乖離した現実があり、
彼らは特区日本に対して「せっかく名誉ブリタニア人になれたのに」とボヤくほどであった。
特区日本に参加するということは、ゲットーのイレヴンと同じ序列に揃えられるということなのだから当然である。


  • ユーフェミア
当然だがユフィは抵抗勢力の首など求めていないし処罰も望んでいない。求めたのはあくまで協力である。
だがお飾りと揶揄さていた上に地位を返却した彼女の立場では支配層を制御できず、またシュナイゼルらの思惑を見抜く事は叶わない。
いわば彼女の望んだ理念はほとんどが統治者側にいいように利用されている状態で、肝心の彼女の意思は知らないうちに無下にされていたのである。
なんならギアスの暴走によって起きた悲劇すらそのまま現実を知らずに死ねたお陰である種の「被害者」として終われたのは救いと言えなくもないのが困りもの。





【ナナリーの行政特区日本】

ユーフェミアの特区日本が最悪の形で大失敗に終わってから約1年後、エリア11新総督に就任したナナリー・ヴィ・ブリタニアは、
就任演説にて急遽「特区日本の再開を考えている」事を宣言する。
これは本来の就任演説の台本には無い完全なるナナリーによるその場での独断であり、
また「行政特区日本」自体が忌まわしいユーフェミアと大虐殺を想起させるものとなっていた事から、ブリタニア・エリア11共々大きな混乱と動揺を招く事となる。
勿論ナナリーに悪意などあろう筈も無く、これはユーフェミアの凶行が未だ信じられないナナリーが、
「ユーフェミアの思想は間違っていなかった」と証明したいという思いからであった。

僅か1年前に世界史レベルの大惨事を招いた特区日本が、ましてや弱冠15歳にして今まで公に姿を現さなかった、
所謂「ぽっと出」故に市民からの信頼も無いナナリーの宣言で人気が集まる筈もなく、此度の特区日本の進行は低調となる。
また、ブリタニア内部からもこの電撃宣言は「突然突飛な事をやらかす子供」という印象を周囲に植え付け、
一応はナナリーの補佐官という事になるローマイヤからもあからさまに見下される事となる。



またしても参加を打診された黒の騎士団であったが、今度ばかりは誰もナナリーの言う事を信じず、
前回は(個人的な理由もあって)前向きに考えていた黒の騎士団副指令扇要でさえ真っ向拒否の姿勢を取っていた。
だが、ゼロはブリタニアにとっては勿論黒の騎士団にとっても想定外の参加するという判断を下す。

尚、劇中の言によると、行政特区日本再開の宣言からゼロの参加表明に至るまで、
延いてはゼロが参加を呼び掛けてもなお、今回の参加希望者は0人だったようである。
そもそも特区日本への信用が無い事に加え、「どうせ参加した所で強制労働が待つのみ」「仕事が無いイレヴンしか参加すまい」という諦念のようなものが蔓延していた模様。



ゼロは特区日本参加に際して今回は事前に極秘で取り引きを持ち掛け、
100万人の人員を提供する代わりに、ゼロを「国外追放処分」という形で見逃してほしいと提案する。
「テロリストの首領」にして、カラレス総督を殺害した重犯罪者という立場からゼロを国外追放処分にする事は法律上可能であり、
またブリタニアからすればこの提案は、
100万人もの労働力を得られる上、実質ゼロは部下を見捨てて逃げる事を選択した事となり、そうなれば黒の騎士団は崩壊必至、更には未だ残存する他の反ブリタニア勢力も瓦解する……と、
確かに悪くない話ではあった。

だが当然ながらゼロはまともに付き合うつもりは更々なく、これは黒の騎士団の新たな作戦であった。
ゼロはシズオカゲットーにて開かれた特区日本開催式典に集結した日本人達を全員ゼロに仮装させるという奇策に出る。
何の冗談なのか、ゼロの仮面を被った猫の姿も確認できる


全てのゼロよ!

ナナリー新総督のご命令だ!

速やかに、国外追放処分を受け入れよ!


即ち、100万人のゼロ全員(・・)を巨大船で安全に国外退避させ、そこで「新たな日本」を樹立する事を目指した作戦であった。
  • 「日本人」を定義するのが「日本人の心」であるならば、それを持つ者はそこが何処であれ「日本人」である事ができる
  • 特区日本開催に先立ち「ゼロは国外追放」と既に宣言してしまった手前、屁理屈と言えども今になって「ゼロ」を逮捕したり、まして殺害したりすれば約束に反した不当な行為になってしまう
    • ゼロは正体不明なので、こうなってしまっては「本物のゼロ」だけを見つけ出して追放するのは不可能
……ブリタニア軍の指揮官であるスザクの生真面目過ぎる性格を逆手に取った作戦であった。
当然、ローマイヤや会場警備に参加していたギルフォード卿などはこの事態を100万人規模の反乱と見て武力制圧する事を進言しており、
スザク自身も本当にゼロ全員を見逃して良いものか悩んでいたが、最終的には真面目さが勝りゼロを見逃す事を選択するという結果となった。
ゼロにとっては作戦勝ちと言える結果を得られつつも、実際には相手がスザクであり、その性格を熟知していたからこそ為し得たギリギリの綱渡り作戦であった。


最終的にはナナリーの特区日本はゼロに丸々逆利用される形でまたしても失敗に終わる事となったが、
ナナリーは本件にもめげずにイレヴンを思いやる政策を続け、エリア11の平定及び生産性向上に貢献、
最終的にこれまでエリア11を支配していた圧政者には成し遂げられなかった、エリア11の「矯正エリア」から「途上エリア」への格上げを成し遂げるなど、
ナナリーは日本人からも一定の人気と信頼を得る事となる。
最悪の悲劇以外の何物でもない形で終わったユーフェミアの特区日本とは異なり、
こちらは失敗に終わりこそすれ犠牲者など出す事無く無駄にはならなかっただけマシだったと言える。



【反響と余談】

ユーフェミアの特区日本が描かれた第1期22話『血染めのユフィ』は近代、そしてガンダムシリーズ以外に於ける「黒いサンライズ」の代表例である。
本エピソードを切っ掛けにコードギアス1期は一気に急展開を迎え、その後のエピソードや人間関係にも大きな影響を及ぼす等、
複数の意味でコードギアスという物語のターニングポイントと言えるエピソードとなっているため、
もし本件が無ければ、もしくは他の命令だったならコードギアスの物語が如何に転んでいたかは様々な議論の対象となっている。ちなみに、ロストストーリーズの製作陣のインタビューでは成功したその後に待っているのは「ラグナレクの接続が成功するシャルルの完全勝利」となるとの見解がある。他にもコミカライズのシナリオを担当した方からもルルーシュやナナリーは追い詰められる、との見解が述べられており、公式的にはどちらにせよ主要人物にはあまり幸せではない結果、つまり作品全体としては『必ずバッドエンドに繋がる』と決められている可能性が非常に高い。
例えば「出した命令が『今日一日語尾に「にゃん」を付けろ』であったならば、長期に渡って笑いの種にされてしまう可能性はあるものの大量虐殺に比べればはるかにマシであったろう。


特区の前、街でブリタニア貴族の護衛にギアスを掛けた場面は、描写上ルルーシュが正常なギアスを使用できた最後の場面となる。
もしリヴァルが割って入らなければ、その後の運命は大きく変わっていたかもしれない。
またこのシーンに於けるルルーシュの「借り物の力を自らの能力と勘違い」という発言は、
後にC.C.に与えられたギアスの制御に失敗した事で最悪の大惨事を引き起こした事を鑑みると大いなる皮肉と言わざるを得ない。


ユフィがギアスに掛かるまでには数秒の時間差があり、ユフィはギアスに一時的にも抗ってみせた。
これは、今まで一瞬で作用し、まさに絶対的な力を発揮していた絶対遵守のギアスにおいて初めての例である。
次回23話でもルルーシュがその事に言及しており、「おそらく、絶対に許せない事だったのだろう」と推測している。
ちなみに作中でギアスの命令に抗ったのはユフィの他に「R2」最終話のナナリーが該当する*3
なお、本放送では次の話で最終回であり、物語の決着は少々待つことになる。


『血染めのユフィ』が公開されてから約17年後、本作と同じく大河内一楼が脚本を担当した『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の前期最終話は、
その衝撃的展開と脚本家繋がりで、直接的には何一つ関係ないにもかかわらず「血染めのユフィ」までもがTwitterでトレンド入りする事態となっていた。
「いくら平和裏に計画が進みそうで気が緩んでいたとはいえ、ルルーシュも『ユフィがしなさそうな行為』にしても冗談が悪質ではないか」と賛否が分かれる部分はあり、
そういった意味では『逃げ出すよりも~』の方は本件と比べて大分自然かつ致し方ない展開となっている。

更にその後の第19話『一番じゃないやり方』では、平和に向かって行けそうだったのに、平和どころか戦争の引き金となる大惨事が起こるという、
正に『血染め~』を思わせる展開になった事でまたしても「血染めのユフィ」がトレンド入りしてしまった。
なお、こちらは当事者全員にとって不本意極まりない事故だったのに対し、あちらは完全に個人の陰謀だったという点だけは異なっている。


「参加者全員がゼロになる」という第2期8話『百万のキセキ』で描かれた作戦は、後に公式イベントでもセルフパロディされる事となる。
一体感という意味では何より相応しい演出であろう。


更なる余談となるが、ユフィの打ち立てた構想は幾つかの着眼点を見れば誰でも知っているような話として、現実にも似たような政策の例が存在することがわかる。
それが歴史上どのような結果になったかは…自分で調べた上でどのような結果が起きるのか考えるのも面白いだろう。
正直な話現実はそんなに甘くはないのである。



【外部作品での扱い】

  • 劇場版三部作
ユーフェミアの特区日本は第二部『叛道』で再現されている。
後のゼロ追放の件とは異なり、大筋に変化は無し
神根島のエピソードがカットされている関係上、ここで初めてルルーシュ=ゼロと確信した程度の違いである。
ちなみに、このストーリー展開は『スーパーロボット大戦DD』に取り入れられた。

『R2』序盤のエピソードが大幅にカットされている関係上、ナナリーの特区日本についての描写もカットされている。

大量のルート分岐が存在する事でファン間ではお馴染みの作品。
主人公ライの機転によりユフィ生存・日本人虐殺を回避するルートが2つ用意されている。
一つはユフィを含む式典会場の人間全員に「今あった事を忘れろ」と命じる事で、
もう一つはユフィに「誰も殺すな」と命じる事でその場を穏便に収め、
いずれも後にはライとそのパートナーの活躍で平和な時代が訪れるという前向きな終わりとなっている。
ただし、逆に言えばその文章程度での「成功した」という形でしか書くことが出来ないということでもあり、
具体的な道筋を書くことの難易度の高さを感じさせる。
というよりも、『具体的にどうやって成功した』などは書くことが不可能であるという証拠でもある。

  • コードギアス 反逆のルルーシュ外伝 白の騎士 紅の夜叉
枢木スザクと紅月カレンを主役にした1期の空白期間と『R2』の別視点を描いた外伝作品。
カレンサイドにて日本人の少女である朱城ベニオが行政特区日本の式典に参加しており、混乱の果てに両親を失いカレンに命を救われた経緯が描かれている。

この手の悲劇的イベントには救済措置が多く用意されている事でお馴染みのスパロボシリーズであるが、本件に限ってはどうやっても回避不可能
ユーフェミアの特区日本は『第2次スーパーロボット大戦Z破界篇』で発生するが、避けられるルートは存在しない。
一応、破嵐万丈が現地に居た事で犠牲者を減らす事には成功していたが全員を救う事はできなかったとされる。
その一方で後編にあたる『再世篇』ではifルートへと進むとユーフェミアの生存が唐突に判明するが、結局虐殺自体は回避できなかった事や、
ユーフェミアも黒の騎士団へと寝返る形となったスザクを自身の騎士から解任・追放するという決断をせざるを得なくなった事、
世間一般では虐殺皇女の名が知られている事から表舞台にも出れなくなっていると予想される事から良改変とは言い切れない面がある。
何より次作『第3次Z』はユーフェミアが死亡している通常ルートが正史扱いである…。

『第2次Z』世界での他の問題点として装甲騎兵ボトムズウドの街がエリア11のシンジュクゲットーと同一になっているという点もある。アストラギウスの人間をどう扱うのか、同じ日本人として扱うにしてもバトリングを日常的に行うような荒くれ者揃いなので治安の悪化は目に見えている、転移してきた者がスラム街に住み着いているだけで元々の日本人ではないから除外とするなら新たな差別を生むだけになってしまう。

尚、破界篇の続編である『再世篇』では「100万人のゼロ」作戦の方も再現されている。

他、『DD』でも原作通り虐殺が発生して原作通りゼロが始末する事になっており、TVシリーズ終了後の時系列での参戦となる作品でもユフィが故人扱いとなっている等、現時点でのスパロボに於いては一切救済が為されていない
唯一『OE』では虐殺が発生しなかったが、そもそもルルーシュ達が第1期途中から異世界に飛ばされてそのまま『血染めのユフィ』に入る前の時系列で話が終わっただけなので根本的な解決はしていない。
更に『30』では原作と異なりブリタニアによる日本侵略が事実上頓挫している世界観にもかかわらずユフィ(並びにロロとダールトン)は故人として言及されてしまっている。果たして同作がどんな歴史を辿ったのか気になるところである。
前述の通り、彼女の死が後に大きな意味を持ち過ぎてしまっている…というかぶっちゃけここでユーフェミアと平和的に和解してしまうと『R2』に続かなくなってしまうので仕方ないっちゃ仕方ない*4。要は血のバレンタインみたいなものである。

グランブルーファンタジーとのコラボイベントで、血染めのユフィ直前時系列のルルーシュ、スザク、カレン、C.C.、ナナリーといった主要キャラクターがグラブル世界に飛ばさるというコラボストーリー。
最終的にルルーシュ達が グラブル世界に残ること選んだ ため、直接的な描写はないものの元の世界で血染めユフィは回避された*5という考察が根強い。
ただし、虐殺こそ回避されそうなものの特区が根本的に抱える課題は残るであろうことに加え、日本側は黒の騎士団主要メンバー行方不明ということもあり、先行きは若干怪しいところはある。
なおシナリオ中ではルルーシュがスザク&カレンに自身の正体を明かした上で平和的に和解しており、ユフィの一件が無ければ十分あり得た和解であろう等、コラボストーリーのIFを評価する声は多い。
サンライズ完全監修のイベントシナリオであるため実質半公式のIFと見る人もいる。




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最終更新:2025年01月30日 20:27

*1 彼はイレヴンでありながらも限定的にブリタニア人としての権利を得られる「名誉ブリタニア人」であるが、これはブリタニアからは「所詮はナンバーズ(植民地市民)上がり」、ナンバーズからは「ブリタニアに尻尾を振る事を選び祖国の誇りを捨てた者」と、その両方から白眼視される立場にある。

*2 恩赦を与えて、それでもその罪は重いので死刑という算段

*3 一部ゲームではスザクも該当。

*4 なので、『第2次Z再世篇』ifルートのユフィの強引な生還もそれくらいしないと『R2』とユフィを両立できないとも言える。

*5 ユフィはグラブル世界に飛ばされていない