バルトス(ダイの大冒険)

登録日:2024/01/21 Sun 12:41:31
更新日:2025/04/02 Wed 08:01:34
所要時間:約 5 分で読めます




ヒュンケル…想い出を…あ…り…が…と…う……


バルトスとは漫画『ダイの大冒険』に登場するキャラクター。

CV:平野正人(1991年版)、渡辺いっけい(2020年版)

目次

【概要】

魔王ハドラーが禁呪法で創った禁呪生命体*1
地獄の騎士*2という6本腕の骸骨のモンスターで、(旧)魔王軍の幹部の一人。別名サンテレビ*3
判明している中ではハドラーが最も早く生み出した禁呪生命体。

魔王軍一の剣士で魔王の間へと繋がる地獄門の番人。
部下は多数の骸骨剣士、ギガンテス(アニメではボストロールに変更)、オーク達で構成されている。

新生魔王軍の六団長の一人であり、後に勇者ダイの仲間となるヒュンケルの養父。
戦場で赤ん坊のヒュンケルが捨てられているのを見つけ哀れに思い、彼を地底魔城内で育て始める。
人間を育てるなどという酔狂をハドラーから許されていたのも、バルトスが魔王軍の重鎮であるがゆえ。


【人物】

上述の肩書きに似合わず彼の気性は穏やかで優しいもの。
戦火の中で捨てられていた人間の赤子を拾い、魔界の伝説の剣豪の名である「ヒュンケル」と名づけ、わが子同然に数年間、地底魔城内で大切に育てていた。
ある時ヒュンケルが作ってくれた紙製の首飾りは、彼が肌身離さなかった宝物。


【その最期】

暖かな日々が破局を迎えるのは、ついに勇者アバン一行が地底魔城を攻略する段になってのこと。
ヒュンケルを隠れさせ、彼は地獄門を守るため決死の覚悟でアバンと対峙するも敗北。
アバンが魔王ハドラーを倒した後、ヒュンケルが駆け寄った際には頭の半分が砕けた無残な姿であり、ヒュンケルに最後の言葉を残した後、その場で灰となった。
ヒュンケルは、バルトスはアバンに殺されたのだと思った。
(禁呪生命体であるバルトスは創造主であるハドラーが死ぬと同時に死ぬが、核を破壊されても死ぬ。頭が砕けたことが致命傷になった様である)

◆死の真相

だが、その死はアバンによるものではなかった。
アバンとの戦いで敗北したバルトスだったが、アバンはバルトスの首に下げられた飾りを見て、彼に「大切な誰か」が居ることを知り、止めを刺さなかった。
だが禁呪生命体であるバルトスは、ハドラーが倒されその魔力が断たれれば結局死んでしまう。そう説明し、後に一人残されるヒュンケルの世話を頼んだ上でアバンを進ませた。

やがてハドラーとアバンの決着が付くものの、彼の最期は魔力切れによるものではなかった。
戦いに敗れたとは言え最後まで戦ったり妨害せずアバンを通したことから、彼に激昂しながら現れたハドラーによって殺されたのである。
ハドラーが休眠に入るために姿を消した直後、隠れていた場所から出てきたヒュンケルは崩れゆくバルトスを発見。しかし彼はアバンに後を委ねた旨を伝えられず、力尽きて死んでいった。

ヒュンケルは、愛する父親はアバンに殺されたのだと誤解。
そしてこの恨みが後に魔王軍六大団長の一人、不死騎団長ヒュンケルを誕生させる。

なお、バルトスの魂は地底魔城の隠し部屋に安置された宝物に宿っている。*4いつかヒュンケルがその声を聞き、アバンへの間違った憎しみが氷解することを願って。
ぶっちゃけこれの場所をアバンに教えていれば、ヒュンケルとアバンの関係がこじれなかった

一方、バルトスを破壊したハドラーは憤慨するあまり「次の魔王軍にはお前のようなヤツは作らん!」と言っていたものの、本人がバルトス同様の武人になったのはある意味皮肉と言えなくもない。あるいは、彼も同じ禁呪生命体であるフレイザード親衛騎団同様、ハドラーの奥底に眠っていた武人としての心を受け継いでいたのかもしれない。

なお、彼の死はハドラーの八つ当たりと称されることもあるが、ハドラー視点では裏切り行為に間違いないので、怒りのあまりの制裁ではあるが、たとえハドラーがアバンを倒したとしてもバルトスが処刑される結末は変わらなかったと思われる。
後述するそれまでのハドラーとバルトスの信頼関係を考えればなおさらである。
「ハドラーがバーンに命を救われた時点でバルトスは非常に危険な存在になっていた*5ので後顧の憂いを絶つという意味でもこの処刑はやむを得なかったのでは」という指摘も。
バルトス自身も最後までアバンに感謝しつつ、ハドラーに対しても敬称は使わずとも恨み言は一切言わなかった。
…実のところ、ハドラーに処刑宣告されて「なぜ…!?」と驚いたり、失態を指摘されても「そ…そんな…!」と言ってたりと恨み言を言ってないだけで、自分のやらかしを理解してなかったようにも見えるが。
アニメ新版ではやはり制作陣もおかしいと思ったのか、処刑宣告された際に「ワ、ワシを?」、執行された際には「ぐわーっ」と違和感を無くしている。
本編の過去を描いた勇者アバンと獄炎の魔王では本編と同じ言葉を発しているが……詳しくは後述。


勇者アバンと獄炎の魔王


我が名は 地獄の騎士バルトス!
魔王ハドラー様の御前である地獄門の番人だ!

本作ではフード付きのマントを纏い、6本の剣を背中に背負っている。
アバンがハドラーと初対決した時点で既にヒュンケルを育てている。*6
新参者のブラスを出口まで案内したり、体の治っていないキギロが無理に出撃しようとした時に引き留めるなど紳士的な人格者。
門番ということでキギロやガンガディアのように前線に赴くことはなく、戦闘シーンは地底魔城でのアバンとの戦いのみ。

同僚であるブラスも人間の子供を育てている事を恥じるバルトスに対して素直に敬意を示しており、バルトスとヒュンケルの関係を羨ましがっていた模様。
その後のブラスの人生を考えれば、次代の勇者誕生に間接的に関わっていたと言える。

上述の通り地底魔城最強の剣士なこともあり、人間であるヒュンケルを育てることについてもハドラーから「酔狂をする」笑って許されていた
後にバルトスにブチ切れた時の発言からわかるように、元々ハドラーは人間の情愛や騎士道精神といったものを好ましく思っていなかった。
ましてや魔王軍幹部たる立場の彼が人間の子供を育てるなどやったら下の者に示しがつくはずもなく、本来は厳しく咎められて当然と言える。
しかし、そんな逸脱した行為さえ笑って許すほどハドラーはバルトスに全幅の信頼を置いており、同時に当時のハドラーは自信に溢れ豪胆であった。

本作の終盤では、ハドラーから魔王としての自信が失われ、そんな彼に対してバルトスの忠誠心も揺らいでいく過程が描かれている。
アバン一行との決戦時のハドラーは、人間であるアバンに一度ならず二度までも敗れた上に、凍れる時間の秘法で約1年も封印されたことで心が恐怖心に強く捕らわれてしまった。そして魔界の神の助けがなければどうにもならなかった事実からメンタルがガタガタになっていた。

バルトスがアバン達に近い正義感や騎士道精神を持っていること、ヒュンケルがアバンに似た“強い意志を秘めた目”をしていたこと等から嫌な予感がしていたのか、バルトスに「お前は俺のために死ねるか?」と忠誠心を疑うような問いかけをしている。
バルトスは当然その問いかけに対し、「無論でございます」「あなた様のために捨てることになんのためらいがございましょう?」と命を懸ける気でいた。

だが、バルトスだけに守りを任せておけなかったハドラーが禁呪法でグランナードという新たな魔物を生み出したことが、バルトスに自分が信頼されていないことを確信させてしまう*7
またグランナードの下劣で品がなく凶暴な物言いに対しても、禁呪生命体には創造主の人格が反映されるため、かつて自分を創った主がこんな魔物を生み出したことが信じられないといった様子だった
ただし経緯を知っていたため、やばいぐらい理知的なガンガディアのみならずバルトスもハドラーの心情をなんだかんだちゃんと理解も納得もしていた。

その後はダイ大で語られていた通りアバンと対決。
他の仲間はアバンを先に進ませるためにそれぞれ魔王軍の幹部を相手にしていたため、やはり地獄門に辿り着いたのはアバン一人だった。

一度はハドラーとの戦いに備え体力を温存するために空裂斬でバルトスを倒そうと考えたアバンだが、首飾りを見て彼の帰りを持つ家族(ヒュンケル)がいることを悟り命を奪わずに無力化することを決断。
激闘の末、大地斬で勝利を収める。

アバンが自分の命を取らなかった理由を知ってバルトスはアバンの高潔さに感服。
人間達と魔物の精神力の差を痛感し、薄々ハドラーが敗れることを予感した上でアバンにヒュンケルのことを託す。
ハドラーが倒れれば自分も死んでしまい、それを防ぐ手立てを持っていない事をアバンは謝るが、ヒュンケルを人間の世界に帰してやれるのであれば悔いはないとしてアバンを見送った。


息子さえ人間の世界に帰れるのならば
もはや一片の悔いはない

そう……悔いはないとも


そして、アバンと対峙したハドラーはバルトスのみならずハドラーのために命を懸けて戦ってきた幹部全員を「我が配下に相応しい奴らではなかった」と言い捨てるのであった。
なお、ハドラーはアバンとバルトスの対決の途中からバルトスに失望して観戦をやめており、バルトスが自分から道を開けた事までは知らなかった。
知っていたら弁明も聞かずに殺していそうだから仕方ない。




【戦闘能力】

本作における地獄の騎士とは、一つの戦場において最強の剣士の亡骸をベースとし、その他の有力な剣士達の亡骸から腕をかき集める、邪悪な呪法によって生み出された存在と設定されている。

元々の腕の持ち主である剣の達人達が鍛え上げた、突き・力・斬り・払い……と系統の異なる剣術を巧みに操り、六刀流の波状攻撃を仕掛けてくる。
「まるで6人の達人を同時に相手取るかの如し」と例えられる変幻自在な太刀筋のみならず、そこにバルトス自身の研鑽も積み重ねられたことで、鋼鉄のような皮膚を持つドラゴンの首や海の波さえ切り裂く高速の剛剣をも体得している。
アバンとの戦闘では、後のヒュンケルの必殺技「ブラッディースクライド」の原型のような技も披露した。

当初は翻弄されたかに見えたアバンだが戦いの中でバルトスの太刀筋を見切り始め、バルトスに「腕が6本では足りん」と言わしめるほどに押し返していく。
そのためバルトスは長期戦になると倒し切る前に全ての腕の戦術を見切られ尽くした末に自分が押し負けると察して、短期決戦で勝負を決めようと戦法を変え下記の迎撃の構えを取った。


  • 不動・地獄剣
剣を3本に絞り(それぞれ両手で構え)、一撃の威力を増した三段構えの型。
一撃で相手の剣を弾き、二、三撃目を食らわせるという若干天地魔闘の構えを思わせる戦法を取る。
しかしアバンが「二、三撃目を放つ事が出来ない程の超威力」で放った大地斬には備えていた全ての剣を防御に費やさねばならず、
一瞬動きが止まった所で間髪入れずに放たれた海波斬により所持していた剣を全て払われて突破されてしまう。



【余談】

どちらも相手の必殺技を受け止め、その上でカウンターするという点は同じ。
アバンは「不動・地獄剣」のガードを力づくで突破するという方法で攻略したが、これは「天地魔闘の構え」の突破方法の一つでもある。
天地魔闘の構え」は、基本的にフェニックスウィング等で敵の攻撃を受け止める・勢いを止めることを大前提としているため、フェニックスウィング等で攻撃を止められないような恐ろしく強い相手(ふつうはまずいないが)では意味がない。
そのため、真バーンも「両腕があっても(天地魔闘の構えがあっても)、竜魔人ダイには勝てない」と判断していた。

  • バルトスの変心
地底魔城での最終決戦直前、ハドラーの「お前は俺のために死ねるか?」という問いかけに対し、バルトスが「無論でございます」「あなた様のために捨てることになんのためらいがございましょう?」なんて即答するもんだから、この後の結末を知る読者からの評価が急転直下して底地を割ってしまった。
しかしそこからアバンと対峙するまでの間、ハドラーの言葉とグランナードの誕生によるハドラーに対する不信感をおぼえる姿、アバンの優しさと強さに感服し自分の死を覚悟してでもヒュンケルが生きることを望んだバルトスの心の内が更に詳しく描かれることになった。



  • 原作への布石
なおこの「勇者アバンと獄炎の魔王」においては他キャラ達のやり取りでもしばしばある事だが、このバルトス最期の場面もダイの大冒険本編への布石となる描写が多い。


おまえをアニヲタと名付けよう かつて項目を追記・修正したという伝説のヲタクの名前だ…

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最終更新:2025年04月02日 08:01

*1 なおバルトスが禁呪生命体であると明言されたのは『勇者アバンと獄炎の魔王』が初で、それまでは「ハドラーが創り出したアンデッド」としか説明されていなかった。

*2 ゲーム版ドラクエⅢにも登場する、「がいこつけんし」の上位種

*3 地上アナログ放送停波によりNHKと四国放送以外の電波を拾えなくなった結果、ろくに深夜アニメを見れなくなってしまった徳島県のテレビ事情を解説する漫画コラ。

*4 わざわざ隠し部屋に置いていたと明言している辺り、主君のハドラーからも許され、同僚のブラスもそれを咎める事無く敬意を以て接していたとは言え、元々人間の子供を育てている自分の立場の危うさを理解していた模様。

*5 バルトスが生きているという事はハドラーも生きている事になるのでアバンに見つかるとハドラーの生存がバレてしまう。

*6 ヒュンケルは赤子の頃にバルトスに拾われているので特に本編と矛盾はしていない。

*7 ただ当のグランナードはバルトスを「兄貴」と呼び「番人ならこの先に立派な奴が立ってるぜ」と敬意を払っているため、ハドラーの「バルトスを信じたい」という一心が影響していたのかもしれない。

*8 実際ハドラーが眠りについた事で魔物達がその影響から解き放たれたので違和感も薄い。

*9 ハドラーの肉体は既に朽ちかけており、大魔王バーンの救済を拒絶すれば間違いなく死に至る状態だった