ベヘモット(架空の生物)

登録日:2012/01/22(日) 22:55:40
更新日:2024/11/08 Fri 21:41:31
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“See now, behemoth, which I made as well as you. He eats grass as an ox.”
見よ、ベヘモットを、お前(ヨブ)を造った私は、この獣も造った。これは牛のように草を食べる。

“Look now, his strength is in his thighs. His force is in the muscles of his belly.”
見よ、腰の力と腹筋の勢いを。

“He moves his tail like a cedar. The sinews of his thighs are knit together.”
尾は杉の枝のようにたわみ、腿の筋は固く絡みあっている。

“His bones are like tubes of brass. His limbs are like bars of iron.”
骨は青銅の管、骨組みは鋼鉄の棒を組み合わせたようだ。

“He is the chief of the ways of God. He who made him gives him his sword.”
これこそ神の傑作、造り主をおいて剣をそれに突きつける者は無い
―「ヨブ記」40章 15-19


■ベヘモット■

【概要】

「ベヘモット(Behemoth)」或いはベヒモス、ベヒーモス、ベヒムス、ベヒんもス…etc.はユダヤ/キリスト教の伝承に登場して来る巨大な怪物。
神の造り上げた「最強の被造物」たる海のレヴィアタンと対を為す「最高の被造物」と呼ばれる。
冒頭の旧約聖書「ヨブ記」の一節が有名で、神(Y・H・V・H)自らが最高の賛辞を持って存在を讃えている。
名前の意味は「獣」で、本来は「Behemo」のみで獣を顕すのに、余りに巨大であるが故に一頭に対して複数形の「Behemoth」を用いたのだとされている。

対となるレヴィアタンとは雌雄の関係にあるともされており、現在では似ても似つかぬ姿で描かれる場合が多いが、
元来は共に海に住んでいたのにベヘモットが後に陸に上がったとされる説も残っている(つまり、両者は同一の存在となる)。

レヴィアタン同様、その強大さから造物主である「神」以外には傷つける者は居ないとされている。
……が、この二体の巨獣は「最後の審判」のその日に争い、勝ち残った方が「神」に討たれ、人類の食物となる運命を背負っていると云う。



……だから、それで良いのか「最高の被造物」の扱い。



……コホン。
因みに凶暴と伝えられるレヴィアタンに対して、性格は極めて温厚。
「全ての獣が彼と戯れた」と伝えられる事から「獣の王」とも呼ばれるが、ベヘモット自身は草食性である。

……一応、千の山に生える干し草を貪っても満足しないとされ、これが後代の悪魔化の際の性格に反映されてはいるが、
そもそもが架空の存在なので実害は報告されていない。



【姿】

旧約聖書のレヴィアタンが本来は巨大な魚(鮫や鯨と思われる)を指した言葉が誤訳された事で広まった様に、
ベヘモットもまた単に水辺に棲む巨大な獣(河馬とされる)を指す言葉が一人歩きした存在であると考えられている。

その姿に関しては、本来の河馬の他、象や牛、犀、中世以降には犬や狐、狼、鯨、龍の姿でも伝えられる様になった。

因みに「ヨブ記」での記述は人間の食肉の犠牲となる牛(家畜)を指し示した言葉であるらしく、
それに倣いベヘモットの力の源は腹……特に「臍」であると云う伝承が出来上がっている。



【バハムート】

イスラムの伝承に残る巨大で、かの『千夜一夜物語』中ではイーサー(イエス・キリスト)が目撃したと伝えられている。
イスラムに於けるベヘモットの姿であるが、その性格や容姿は大きく違っており、
その巨体に関して言えば数ある神話伝承中の巨獣の中でも一、二を争う程にスケールがデカい。
何しろ「広大な海を鼻孔に置いても芥子粒程度」にしかならず、
「海を通過するのを見ていたイーサーが途中で気を失い、3日後に目を覚ましても、まだ通過中」であったとされている程である。



……イスラムって。



現在の二次創作では「龍(ドラゴン)」の姿で描かれる事が多くなったが、
これは『D&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)』が初出らしく、日本でも『FFシリーズ』等、でお馴染みの姿。
『D&D』はバビロニアのティアマト女神を「龍」として登場させてもおり、やっぱり現在の二次創作でのイメージを決定づけている。



悪魔として】

最早、悪魔項目シリーズではお馴染みとなった概念だが、中世の「悪魔学」に於いては上記の由来をすっ飛ばして何故か「悪魔」にされてしまっている。
由来、成立過程自体が「眉唾」の七つの大罪ではライバルのレヴィアタンが「嫉妬」や「欺瞞」を司るとされた事に対抗してか、
「暴食」や「強欲」を司るとされたりしているが、苦しいこじつけと見なされる事が多い様である。
※でも「暴食」に関してはベルゼブブより合っているような……?

尚、悪魔(デーモン)としてのベヘモットの姿として有名なのが象頭の巨大な腹を抱えた姿であるが、
これはイメージの類似性から、インド神話のガネーシャ神の姿が取り入れられたのであろうと想像されている。

また、レヴィアタンの項目でも触れたが空の巨獣として「空のジズ」なる概念も過去には存在していた様だが、
中世までには忘れ去られてしまっており、ジズのみは悪魔化していない。


【主な登場作品】

◆ゲーム『FINAL FANTASY』シリーズ(+α)
モンスターの名称やデザインが『D&D』シリーズに影響を受けていた『FF1』にて、イベントで竜王バハムートが登場。
「バハムート」は『FF3』以降に召喚獸として定着しており、最強の召喚獣の代名詞として扱われている反面、それ以上の能力の召喚獣が出てくるタイトルが多い。

一方で、英語名の「ベヒーモス」として、『FF2』以降、高レベルの敵モンスターとしても定番化している。
……まさか両者の由来が同じとは夢にも思わなんだ。
当アニヲタwikiでは『FF8』のもののみ個別記事が存在する
また、その上位種や亜種として「キングベヒーモス」「グランベヒーモス」「ダークベヒーモス」「眠れる獅子」等も登場している。
あとベヒーモスと関係あるかは定かではないが、リメイク版『FF2』の追加シナリオで登場する「アルテマウェポン」が、ベヒーモスの色違いとなっている。

モンスターハンター:ワールド』にも古龍種で「ベヒーモス」というモンスターがいるが由来は同じ。
…というよりベヒーモス自体が『FF14』のコラボコンテンツの一部なので『FF』のベヒーモスそのものである。

◆アニメ『ベターマン(BETTERMAN)
梅崎が生み出したUMAの一体。
巨大な象と人間が融合したような黄色い体色の怪物。特殊な音波を発し人間を催眠状態にしてアニムスの花の苗床にしてしまう。
格闘能力自体も高く、一度はラミアのネブラを倒したが再起しフォルテとなったラミアに倒された。
キングベヘモットという強化体も存在する。

◆学習漫画『ドラえもんの算数おもしろ攻略 続・文章題がわかる
竜王バハムートとして登場。
6500万年前に地球に降り立ったドラゴン型の宇宙人たちの王であり、本来は地球を征服するためにやってきたのだが、
恐竜たちと過ごすうちに考えを改め、飛龍ワイバーン・陸龍サラマンダー・海龍リバイアサンと共に地球で恐竜と共存していた。
しかし、地球征服強硬派のボス「ダークバハムート」はこれを良しとせず、恐竜を滅亡させようとする。
…というやけに作り込まれた世界観であるが、学習漫画のため戦闘は全部算数の問題の出し合いという脱力もののお話。

◆漫画『べるぜバブ
上級悪魔として登場。眼鏡をかけた小柄な老人の姿をしている。
魔王ベルゼバブ3世の長男・焔王に仕える「ベヘモット三十四柱師団」の初代団長。
実力は七大罪(上記魔王に加えサタン、ルシファー、マモン、ベルフェゴール、レヴィアタン、アスモデウス)に匹敵するほど高い。

◆ゲーム『シャドウゲイト
第一話のボスであり、魔王ワーロックが復活させた最悪のタイタン「ベエマス」として登場する。

◆特撮番組『仮面ライダーウィザード
ファントムと呼ばれる、魔力を持つ人間(ゲート)が変化した怪人として「バハムート」が登場。
ウィザードを軽く圧倒するほどの強さを持つ、中盤の強敵。さすがは魔王(竜王)の名を持つだけの事はある。



【名前だけ借りてる系】

◆ライトノベル『境界線上のホライゾン
境界線上のホライゾンの時代であるGENESISシリーズの世界の航空艦の分類に、全長2916~8748mの超大型航空艦を差す「バハムート級」が存在し、
主人公達の生活する航空都市艦「武蔵」は八艦連結式の準バハムート級航空都市艦である。

◆アニメ『デジモンテイマーズ
暴食の魔王ベルゼブブをモチーフとする魔王デジモンベルゼブモンが乗る暴走バイクとして「ベヒーモス」が登場する。

◆ライトノベル『フルメタル・パニック!
巨大AS(アーム・スレイブ)「ベヘモス」として登場。
40メートルもの巨体を誇り、なおかつ素早い上にやたらと固いチートじみた機体だが、武器は太刀が一本と機関砲が4門のみ。ちなみにお値段は巡洋艦二隻分。
後に艦載砲クラスの火砲やミサイルランチャーを装備したタイプが登場した。
その巨体ゆえ、スーパーロボット大戦シリーズでは、作中のロボットパイロット達から他の作品の敵と勘違いされることもある(通常のASは8m程度の大きさ)。

◆ライトノベル『最弱無敗の神装機竜(バハムート)
主人公「ルクス・アーカディア」が操る神装機竜(しんそうきりゅう)の名が『バハムート』。
5秒間でエネルギーや現象を数分の1まで激減させ、後の5秒間でその力を爆発的に解放するという圧縮強化の能力『暴食(リロード・オン・ファイア)』を持つが、ルクスが長い間修練を積んでようやく使いこなせるほど操作が難しく、身体への負担も大きい。

◆ホビー『メタルファイトベイブレード ZEROG』
ベヒーモスモチーフのベイバーサーカーベギラドスSR200BWDが登場。
スタミナタイプ。地属性。

その後、メタルファイトベイブレードシリーズ最後のベイとしてバハムートモチーフのベイグラディエーターバハムディアSP230GFも登場。
バランスタイプ。神属性。

アニメ、漫画ではラスボスの破山キラが使用し、後者ではベギラドスをバハムディアに進化させるという荒業をやってのけた。
『ベギラドスは"卵"なんだ。そしてこの卵は熱いベイバトルであたたまると…、孵るんだよ。』

◆映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
ハリウッドによる怪獣映画シリーズ『モンスター・バース』には神話や伝承由来と思われる名前の巨大怪獣(タイタン)が多く存在し、
3作目であるこの映画にはそのひとつとして「ベヒモス」が登場している。
キングギドラが全世界のタイタンを覚醒させた際にその姿を見せているのだが、「鼻の短いゴリラ体形のマンモス」という異様な外見をしており、
出番こそ短いものの観客に強烈な印象を残すこととなった。



追記・修正は「」に美味しく調理されてからお願いします。

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