登録日:2012/01/19 Thu 05:16:38
更新日:2025/03/27 Thu 08:38:23
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“On earth there is not his equal, that is made without fear.”
地の上にはこれに並ぶものなく、これは恐れのない者に造られた。
“He sees everything that is high. He is king over all the sons of pride.”
これはすべての高き者をさげすみ、すべての誇り高ぶる者の王である
「レヴィアタン(Leviathan)」はユダヤ/
キリスト教の伝承にて言及される、巨大な海魔。
“レヴィアタン(レヴィヤタン)”は仏語読みであり、英語読みだと「
FFシリーズ」でもお馴染みの“リヴァイアサン”となる。
現在では「FFシリーズ」を引き合いに出すまでも無く、巨大な海蛇、或いは長大な体躯を持つ龍として捉えられているが、
元来は「海に棲む巨大な生物」と云う発想からか鯨と見なされていたらしい。
……一方で「鱗のある生き物」との発想から
鰐(クロコダイル)である、との意見も出されていたらしく、その起源を
エジプト神話に求める向きもあったらしいが、
いずれも翻訳段階での誤訳、混乱を元にした神学者達の根拠の無い主張が生んだ水掛け論であるとして後代には否定する向きもあった様だ。
歴史あるフランスの町、タラスコンの地名の由来となった怪物のタラスクスの親であるとされている。
【概要】
冒頭にも記した旧約聖書「ヨブ記」のほか、「詩篇」「イザヤ書」等で言及される。
神が天地創造の5日目に造りだしたとされる「最強の被造物」。
陸の
ベヘモット(ベヒーモス)に対し海のレヴィアタンと呼ばれる。
基本的に旧約聖書内ではただ単なる水棲の狂暴な野獣扱い。
ちなみにヨナ書で海に投じられたヨナを呑み込む巨大な生き物はレヴィアタンと見る動きもあるが、
聖書の古代写本にはレヴィアタンとは書かれておらず、巨大な魚と書かれているため鯨や大きな鮫と見られている。
が、その強大な描写が中二心をくすぐったのか、余りの巨大さ故に凡る攻撃が通じないとされ、どんな武器も呪術も無効であるともされる。
ただし、巨大だから普通の武器が通じる訳が無いと云う意味であり、呪術に関しては中世以降にデーモンと誤訳されて以降の後付けである事は知っておくべき。
ヨブ記、41章に因ればその巨体故に海を泳ぐときには巨大な波が逆巻き、口から炎を、鼻から煙を吹く。
くしゃみをすれば光を発し、目は曙光のようであるという。
体全体に強固な鎧を想起させる鱗が隙間無く覆っており、鱗から放たれる光は太陽さえも曇らせるとされている。
その名は古代ヘブライ語で「集まって壁をなす物」「引き出される物」を意味する言葉が転じたとされている。
尚、レヴィアタンは旧来からの伝統によれば雌(♀)であるとされていて、
本来は番(つがい)となる雄(♂)が居たのに、神が繁殖してレヴィアタンが世界を覆うのを畏れて殺してしまったとする説(その替わりに雌を不死身とした)と、
前述の陸のベヘモットが雄で、レヴィアタンが雌であるとされる場合が有力。
更にベヘモットとレヴィアタンは「最後の審判」の日に罪を許されぬ人々を喰らった後に争い、
生き残った方が心の清い人類の食べ物……になる事が約束されていると云う。
……それで良いのか「最強の被造物」の扱い。
……コホン。
起源については諸説紛々があるが、ユダヤ以前の伝承に於ける、神が殺し世界創造の糧としたラハブ龍や、カナーンの神話に登場する七頭龍リタン、
古代バビロニアの女神
ティアマトの伝承との共通点の多さから、それらが起源であると見て間違いないだろう。
聖書以前にもレヴィアタンと言う名の怪物はアッカド神話(紀元前2340年頃)の死の神モートの部下、別名リタン、シャリートという名の巨大な海の竜として登場する。
太陽や月を喰らい日食や月食を起こすとされ、ここから鱗の光が太陽を曇らせる設定が引き継がれたのだろう。
また、七つの首を持つとされ、旧約聖書を記したヘブライ語でレヴィアタンの頭の数が複数系とされるのはこの設定が影響しているされる。
彼等も海の脅威の権化とされる点では聖書の物と同じだが豊饒神
バアルと戦って敗れ命を落とすとされている。
※バアルはバビロニア神話の古代の主神であった。
現在、殺された相手と肩を並べることになった心中は如何許りであろうか・・・
十戒で有名なモーセの所属していた祭司の一族、レヴィ族はレヴィアタンを賢い蛇神として崇拝していたことが知られており、
レヴィ族(Levite)の名はレヴィアタンの子供と云う意を持つとされている。
彼等も自身が崇拝する神が自身が信仰した教えが礎となった宗教で悪魔とされるとは思わなかっただろう。
また、哲学者として知られるトマス・ホッブズの代表的な書籍にそのものズバリ『リヴァイアサン』がある。
この場合は、自然権の行使による混乱=「万人の万人に対する闘争」状態を避けるため、民衆が社会契約の下に指導者へ全権を委任した国家(コモンウェルス)、即ち数多の臣民によって支えられた強大な王権を指す比喩として、最強の被造物たるリヴァイアサンが持ち出されている。
これも後述の悪魔とは異なる、強く理想的なモノとしての扱いの一つと言える。
ちなみに対となるベヒーモスの名を冠した著書もあり、そちらは当時の体制に対する批判的な意味合いが強い。
【悪魔として】
中世の「悪魔学」では「神の創りあげた最強の怪物」とか「無敵なのは反逆と云う驕りの象徴」……等々のフレーズに厨二心をくすぐられた神学者、悪魔学者と云った、
所謂オカルティストによりレヴィアタンは地獄を支配する君主の一人に数えられてしまっている。
これについては、当時から反対意見が多く、批判的な目を向けられている一方で、
レヴィアタンを地獄の入り口とする図版が描かれる等、それなりに浸透もしてしまっている。
本来的にはレヴィアタンは知性の無い怪物でしか無いのだが、悪魔(デーモン)としてのレヴィアタンは驕りの王」として眷属を従える、
七つの大罪の内の「嫉妬」又は「詐欺」を司る悪魔だと云う。
「嫉妬」を象徴するのについては「蛇に似ている」からとか、前述の起源に関わる古い伝承からとされる場合があるが、
これらについても諸説が入り混じり、ハッキリしていない様だ。
「詐欺」を象徴するのはイメージが蛇へと転換したことによりアダムとイブを唆した蛇と同一視した説が有力とされる。
後に嘘をつくのが得意な設定まで出来た。
言い掛かりもいいところである。
【余談】
「陸のベヘモット」「海のレヴィアタン」の他に「空のジズ」と云う概念も一応あるにはあり、古い図版も残されているが、
元々は誤訳が確実な上に人気が無い為か、現在では「無かった事」にされる場合が多い様である。
前述の「雌雄説」からもあぶれるしね。
イスラムではベヘモットとレヴィアタンの名前と設定が入れ替わってしまい、ベヘモットに相当する名前のバハムートが魚で、レヴィアタンに相当する名前から変化したクジャタが牛になっている。
七つの大罪を司るとされる悪魔は
ベルゼブブや
リリス、
アスタロトのようなバビロニア神話で神とされた者が多いが、
前述したようにレヴィアタンはバビロニア神話の中では敵であり、説に因ってはイスラエルの神の一柱とも神の別の姿ともされる。
悪魔としてさぞかし肩身が狭いことだろう…悪魔の中でも最上位クラスに位置しているけど。
【主な登場作品】
クラーケン等のような水棲の怪物として登場することが多い。
だが、作品によっては悪としてだけでなく善玉として配置されることも少なく無い。
また、
イギリスの艦隊や太古に棲息した歯鯨等のネーミングに使われることも多々ある辺り、一応古代の神としての体裁は保てているのだろう。
◆
ゲーム「FF(
FINAL FANTASY)」シリーズ
お馴染み召喚魔法の一体「リヴァイアサン」として登場。
IVでは幻獣王として幻獣神バハムートに次ぐ立ち位置だった。
「大海嘯」が全てを飲み込む。
現在は中堅所。
回が増すごとに扱いが雑になっていく…
XVではちょっと復権。
◆デュエル・マスターズ
個体ではなく種族(クリーチャー・タイプ等)として扱われる。
つまり設定上複数体生息してたり、理論上複数体召喚されたりもする。
詳細は
項目参照。
◆
遊戯王OCG
魔轟神レヴュアタン(
遊戯王)
シンクロ・効果モンスター
星10/光属性/悪魔族
攻3000/守2000
「魔轟神」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、 自分の墓地に存在する「魔轟神」と名のついた モンスターを3体まで選択して発動する事ができる。
選択したモンスターを手札に加える。
レヴィアタンがモデルのカード。破壊されれば三枚まで回収でき、ステータスも高い良カード。
レヴュアタン『('A`)』
◆
ロトの紋章
七海を治める海の王で、
ゾーマすら恐れたとされる。
100年前、大魔王「
異魔神」に激戦の末に敗れて知性を奪われ巨大なゲルのような単純生命体にされる。
◆
ドラえもん
映画『
ドラえもん のび太の南海大冒険』の
ラスボス(作中では「リバイアサン」表記)の巨大な大海龍。
22世紀の悪人・キャッシュとマッドサイエンティストDr.クロンの作り上げた最強のバイオモンスター。
ドラえもんと生みの親であるキャッシュを丸呑みにして大暴れしたが、情けない方法で脱出され、そのまま逃走。
タイムパトロールも捕獲できないまま深海に逃走しUMAとなった。
◆
川上稔作品
「
終わりのクロニクル」、「
境界線上のホライゾン」の作品世界において、
「全竜(レヴァイアサン)」と呼称され、
「全ての獣の相を持つ竜」とされている。
そのため、「全竜」の名を冠した存在や全竜が司る大罪「嫉妬」は、それぞれの作品の根幹に関わる重要な物として扱われている。
ノア/レヴァイアサン
終わりのクロニクルに登場する巨大兵器。十一の異世界全てを敵に回しても勝てるとんでも仕様。
総勢約30万の最高性能メカ軍団と半径500m吹き飛ばす副砲を持つ。さらに概念創造で物理法則も作れる素敵仕様。
そこらの剣を使うくらいのノリで気軽にご利用できます。
◆リヴァイアサン(大塚英志・布谷遊)
5人分の死体を継ぎ合わされて蘇生した男「三溝耕平」。
生前(?)は普通の日本人医師だったが、蘇生後は金髪長身で心霊手術オンリー、決め衣装が黒服のオカルティストと化した。
ある勢力からは「終わった事を忘れた東京に終末を告げる獣」とされるが、彼自身は愛する女性のためそれを拒絶。東京を守る道を選ぶ。
◆
デモンブライド
しふぉんの契約ブライド。
普段はピエロの人形(しふぉんと同じくらいの大きさ)だが戦闘時は巨大な頭と手だけの姿になる。
◆
べるぜバブ
魔界七大罪の一人だが、力を奪われ平凡に暮らしている。
◆
家庭教師ヒットマンREBORN!
ボンゴレファミリー特務師団『ヴァリアー』の雷の守護者「レヴィ・ア・タン」。
こいつのおかげで
ブラックラグーンのヒロインを検索したとたんにゴリマッチョが出てくるという悪夢がネットユーザーを襲う。
見た目は鈍重そうだが、短気で粗暴なボスに褒められることが大好きなかわいいおっさん。
続編のLRでは、企業連合アライアンスが今度こそ制御に成功した状態で基地防衛の為に出撃させるも、これまた主人公によって撃破される。
ECMを展開してこちらのロックを遮り、空中を高速で飛び回りつつ高威力のグレネードを連射するという中々手強い相手。
アライアンス壊滅ルートでは量産型が複数機投入されるが、こちらはECMを持たない上にライフルの連射ですぐに撃墜できるほど耐久が落ちた。
ファンからは
緊急発進☆レビヤたん
の愛称で親しまれている。
◆
TRPG『BEAST BIND NEW TESTAMENT 新約・魔獣の絆』『ビーストバインド トリニティ』
魔界で生み出された『魔界潜水艦リヴァイアサン』の端末「レヴィヤたん」。
飛行帽・ミニな軍服・ロリとガジェットだけなら萌えキャラなのだが、口調が
ケロロ軍曹なぐーたらアニヲタのため完全にギャグキャラ扱い。中の人は本作の原作者・イラストレーターでもある『
中国嫁日記』の井上純弌(男)。
一応過去に精鋭兵器として壮絶な戦いの日々を送って来た反動で、地上に出てからは趣味にはまってしまったという背景設定はあるのだが。
ちなみに本体である潜水艦の中では彼女(?)が多数働いており、艦長の席にはレヴィヤたん女艦長パージョンが座している。また
某ゲーム流行後には
スク水姿も披露した。
◆
SCP Foundation
SCP-169、その名(通称)もズバリの
「リヴァイアサン」というSCPが存在する。
簡単に書くと全長数千km級のクッソ巨大な節足動物。デカすぎて収容できないので財団は「こいつが写った衛星写真を編集・破棄する」くらいしかできない。
◆アトランティス 失われた帝国(レビアタン)
海底に眠るアトランティスを舞台にしたディズニー映画。
物語中盤に差し掛かった辺りで主人公の探索隊に襲撃を掛ける。
見た目は甲殻類を思わせる巨体だが、その正体はアトランティスの技術の粋を集めたロボット。
アトランティスに近づく不埒者を何百年にも渡って沈めてきた海の怪物で、探索隊とのパニックホラーさながらの激闘は見物。
◆小説『ケルベロスの肖像』
検視システム『オートプシー・イメージング(Ai)』用に、アメリカから輸入され新しく建設された施設に導入された医療用大型機器「リヴァイアサン」。
輸送時はデカいため
自衛隊の戦車で運ばれ、実は隠れ戦車
オタクだった主人公の田口公平が軍服コスで先導車に乗るという派手な事に(設定の違う映画版でも作者の希望から再現)。
しかし小説・映画版双方で最終的に犯人の作戦成功により破壊され、特に小説版では「あるミス」が無かったら舞台となる東城大学附属病院が経営的にトドメを刺されてしまいかけていた。
◆Fateシリーズ
Fate/EXTRA CCCで初登場したハイ・サーヴァント、
メルトリリスの構成成分のひとつとして登場。
彼女を含むサクラファイブの構成成分は基本的に女神で統一されているため、魔獣であるリヴァイアサンは少し浮いているようにも思えるが、創造主の
BB曰く「どんなに凶暴でも神性があって女の子なら女神」らしい。
彼女が
Fate/Grand Orderに登場した際使用した
宝具「
大海嘯七罪悲歌
」や、スキル「完全流体」はリヴァイアサンに由来するもの。
◆原神/ヌヴィレット
正確にリヴァイアサンではないが水の龍王であり、命ノ星座が「原海リヴァイアサン座」であることから。
追記・修正は「
神」に頭をカチ割られて、身を引き裂かれてからお願いします。
- 絶対防衛... -- fff (2013-08-02 14:21:57)
- TPぼんで、大きいセミクジラの事をレビヤタンって言ってた。 -- 名無しさん (2013-08-02 15:42:49)
- バウンスはご愁傷様だけどトリさんは帰ってきたからなぁ… -- 名無しさん (2013-10-12 00:09:58)
- モンハンの海竜種は英語版ではリヴァイアサンズ。 -- 名無しさん (2013-11-20 23:19:46)
- 特撮映画の鯨神でも、大型の背美鯨だったな。 -- jg (2014-01-23 20:17:37)
- 「波打際のむろみさん」に出ているリヴァイアさんも忘れずに -- 名無しさん (2014-01-23 20:54:24)
- オーズのメズールもたぶんこいつ。 -- 名無しさん (2014-02-27 15:02:23)
- ギャレス版ゴジラも小説でレヴィアタンと呼ばれてたな。 -- 名無しさん (2015-01-26 12:06:46)
- 確かドキドキプリキュアのリーヴァもコレから取ってたな -- 名無しさん (2015-01-26 12:23:58)
- 今の人類ならば、全戦力の壊滅と引き換えにこいつを倒せるとの事。 -- 名無しさん (2016-10-15 15:09:15)
- 緊急発進☆レヴィアたん -- 名無しさん (2017-08-30 20:52:15)
- 相方のベヒーモスよりは扱いがいいものの、ベヒ側が「バハムート」に呼称を改めた瞬間扱いが天と地ほどにひっくり返ってしまうカワイソウな生き物 -- 名無しさん (2017-09-13 13:21:06)
- 神の最高の被造物のはずなのに、いつの間にか悪魔の大御所扱いされてるの本当に気の毒 -- 名無しさん (2018-03-28 12:18:21)
- 水木さんのレヴィヤタンはかなりかっこいい。 -- 名無しさん (2018-11-12 22:26:46)
- 冒頭の「ヨブ記」の引用を変更しました。また「ヨブ記」41章18節にある「これが、くしゃみをすれば光を発し、その目はあけぼののまぶたににている」という記述から、身体的特徴に追記を行いました。 -- 名無しさん (2020-10-15 12:02:37)
- 詐欺なんて大罪があるのか。某ゲームのイカサマカジノを思い出すね。 -- 名無しさん (2020-11-14 11:46:18)
- 一応原典のヨブ紀にはkilbitという天敵の虫がいて、集団でエラに取りついて窒息死させるらしい……んだけど、全く触れられてないな -- 名無しさん (2022-07-23 00:38:56)
- 21世紀のソシャゲ等では人魚の竜版みたいな美人、美少女で表現される -- 名無しさん (2025-02-23 20:13:02)
最終更新:2025年03月27日 08:38