キルバーン(ダイの大冒険)

登録日:2012/06/22 Fri 14:36:09
更新日:2025/07/05 Sat 13:53:33
所要時間約 30 分で読めるよォ…


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ウフフフフッ!! ボクの名はキルバーン

クチの悪い友達は“死神”なんて呼ぶけどね…



ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の登場キャラクター。
CV:田中秀幸(1991年版)/吉野裕行(2020年版)

【概要】

『魔王軍の死神』の異名を取る、大魔王バーン側近中の側近。
仮面を被っており地肌の露出もなく年齢・種族ともに不明。
8巻の初登場まではハドラーすら会った事がなく「大魔王の意にそぐわぬ者を葬る」との噂だけが知られていた暗殺者。
魔王軍の一員ではあるもののハドラーの指揮下にはなく、独自に行動を取る自由気ままなトリックスターとして描かれるのがコイツ、キルバーンである。
時にはそのフットワークの軽さを活かし、バーンからの命令を直に伝える役割を担うこともある。
作中で直接殺せた相手が1人もいないのは秘密

死神」の異名に相応しく大鎌を携えるが、見た目はどこか“不気味な道化”のようでもある。
素顔を隠す“笑い”を象った仮面もその印象を強めている。
仮面のバリエーションは結構あるようで、彼の部屋には今までに集めた仮面のコレクションが並んでいる。
コンビニコミックスでは、この仮面を使った占いも披露していた。


【人物】


見たいでしょう!!?
目の前で仲間が燃え尽きていくのに手も足も出せない…!! そんな時の彼らの…
絶望と! 苦悩と! 悲しみに満ちた表情をっ…!!!

…ねぇ〜っ!? いい表情(カオ)するでしょう? 人間って…!!!


大魔王相手であろうと物怖じしないキザな態度とブラックジョーク、人を喰った陰気かつ軽薄な台詞回しが特徴。
ノリの軽さ故にユーモラスさが目立つが、その実態はザボエラフレイザードを大きく突き放すほどのド外道

上記2人が基本的には出世欲や虚栄心などで卑劣な手段も辞さないのに対し、コイツは相手の絶望する様を眺めて楽しむのが本懐という凄まじく悪趣味なサディスト。*1
特に人間の絶望が好みらしく、本編中でも「面白いですよォ死に瀕した時の人間の表情は…!! 寿命が短いから魔族とかよりもさらに深刻ですもんねェ…!」と嘲笑った。
これにはバーンをして「さしもの余も残酷さだけはお前に及ばん…おそらく魔界一だろうな」と言わしめている。

一方で存外にリアリストな面もあり、中でも他者への評価は非常にシビアかつ的確。
人間を軽んじるバーンの発言には「人間をナメちゃあいけません」と返し、中でもポップには「勇者一味(パーティ)の中でも真っ先に死んでいただきたい」「成長度だけで言ったらダイ以上」と賛辞を送る。
ダイに対しても「進化する小さな魔神」と称えて「もうわずかな戦いをも経験させない方が得策」と真っ先に諫言したのがキルバーン。
実際これらの言及はことごとくが的中しており、バーン敗北への道筋の一つにもなっている。

作中屈指の強者かつ、相手を弄ぶ側でありながらその相手への分析および警戒は誰よりも怠らない。
これが最もキルバーンを厄介たらしめている点だろう*2。単なる悪趣味で残酷な卑怯者というだけでは、バーンの側近は務まらないのである。

逆に欠点といえば、地位や権力などには拘らないわりに自尊心は思いのほか高いこと。
暗殺に失敗したポップには「ちょっと許しがたいね」と苛立ち、その上を行ったアバンには「この手でいたぶり殺してやるっ…!!!」と殺意をむき出しにする。キザ男気取りも返上というわけですね
また後述のとおり嗜虐趣味もわりと狂気の域に至っており、原作での敗北はそれが原因となっている。

魔王軍における本編以前からの知り合いはバーン、ミストバーン、そして相棒のピロロのみ。
ミストバーンとは性格こそ正反対ながら不思議と気が合うようで、互いを『キル』『ミスト』と呼ぶ友人関係が続いている。
バーンに対しては一応は敬語を交えつつ、どこか一物を抱えた態度で接しているが……


【作中の活躍】


「…グッドイブニーング! 鬼岩城のみなさん…!!」


死神の笛を吹きながらハドラー達のいる鬼岩城に登場。
当時戦績の奮わなかったハドラーは自分を処刑しに来たのかと恐れたが、実際は鬼岩城の場所を知る裏切りがいるので移転するようバーンに命令と鍵を与えられて来ただけだった。*3
とはいえハドラーが失敗続きなのは知っており、「バーンさまは寛大なお方だけど限度があるよ」と警告している。

魔王軍内で「勇者ダイは竜の騎士ではないか」という疑惑が持ち上がった際には、超竜軍団からドラゴン複数を借り受けてダイたちの滞在するベンガーナ王国を襲撃。
ドラゴン達が倒された後、救われた人々が逆にダイを恐れてしまう光景を「勝手な奴らだよねえ」とあざ笑いながら姿を現した。
ただの使い魔だと名乗ってすぐに帰還したものの、このとき軽く触れただけのドラゴンキラーを灰にしてみせた*4不気味さはダイたちを戦慄させる。
ダイが竜の騎士である確証が取れるとそれを魔王軍内およびバーンに伝え、さらに超竜軍団長バランの息子でもあると判明させたうえで寝返り工作を提案。
「ダイの懐柔に成功したならバランに魔軍司令を任せてもよい」との言質を取り、現・魔軍司令であるハドラーの立場を風前の灯とした。

結局バラン、ハドラーどちらもダイに敗れて戦線離脱したあとは鬼岩城によるパプニカ襲撃編で登場。
鬼岩城を壊されて逆上したミストバーンが、闇の衣をとり払い真の力を見せようとした際に背後から大鎌をつきつけて静止する。

はいスト~~~ップ

そこまでにしておきたまえミスト…

キミの本当の姿は いついかなる場合においても バーン様のお許しがなくては見せちゃいけなんじゃなかったっけ?

それを破ったら…いくら親友のキミでもただじゃすませられない…

無事ミストバーンをなだめ終えると、ダイたち一行に軽口を叩いて挑発しつつ撤退。*5
逆上して追ってきたポップを魔王軍の本拠地である死の大地におびき寄せ、本来の仕事を実行すると宣言。
その仕事とは……

フフフフフッ…キミもうすうす気付いているだろう?

ボクのこのファッション…"死神"という異名… そして今までの言動を見ていれば…

ア・ン・サ・ツだよ…!!

死神の笛でじわじわと痛めつけてポップを窮地に追い込むものの、とどめを刺す寸前でダイに阻止されてしまう。
同時に死神の笛が破損したことで膠着状態になるが、超魔生物となったハドラーの乱入によってダイは撃破され、残ったポップを追う展開に。
今度こそ仕留めたかと思われた瞬間クロコダインに邪魔をされ撤退を許し、「狙った獲物を2回も逃すなんて初めてだ」とポップを殊更敵視するようになる。

アバンの使徒がハドラーの標的として手出し無用になった後は、離反した竜騎将バランの暗殺を担当。
死神の笛も通じずあっさり胴斬りという返り討ちに遭うが、キルバーン自身はピロロの使用した謎の粉によって瞬く間に復活。
そしてバランはキルバーンを斬ったことでその血液により剣が腐食し、これが巡り巡ってバランの死の遠因となっている。
キルバーンもこれを死神による「呪い」と表現し、直接殺害できたわけではないにしろ面目は保てたと言えよう。
バーンですら「お前でも殺れるかどうかは分からん」と任命していた以上、相当な金星ではある。

バーンとの決戦時にハドラーが離反した際には、加勢しようとしたアルビナスの背後を取り動きを封じた。*6
予想外にハドラーが優勢になると、相討ち覚悟の反撃をほのめかされて逆に動きを封じられ「チッ…人形の分際でっ…!!」と毒づきながらも静観する羽目に。



大魔宮編


フッフッフッ…

諸君 気に入ってくれたかなァ…

この曲はボクからの鎮魂曲(レクイエム)

互いの死力を尽くして名勝負を見せてくれた2人に対する…ね…!!

最終決戦ではハドラーとダイの戦いが決着した瞬間を狙い、両者を殺しの罠(キル・トラップ)『ダイヤの9』に閉じ込めた。
ポップの妨害とハドラーの執念によってダイにだけは脱出されてしまうものの、ポップの死は確実としてそれを肴にピロロと乾杯するというゲスな所業を見せる。
ポップを軽んじているバーンはどこか不満げであった*7が、結局は復帰したアバンによりポップも救出されてしまう。

即座にアバンを仕留めに向かうが、横槍に憤ったハドラーに心臓をブチ抜かれて失敗。
のちほど復活して死神の笛をアバンの首元につきつけ勝利宣言するものの、それでもアバンは余裕綽々。
1人残ってキルバーンを引き付けることにより、他のメンバーを安全に魔宮まで進ませることが狙いだったとの説明を受ける。

…切れるね 中々… 想像以上に危険な男のようだ

…つまらん雑談はやめにするよ 今すぐ死んでもらう…!! そしてすぐさま新たな死の罠(キル・トラップ)でダイ君たちをも全滅させる!!
死の罠(キル・トラップ)の過半数は城の中にあるんだからね…!!

…ほう それはいい事を聞きました 今後の参考にさせていただきますよ!!


……黙れッ!!!!


アバン流口殺法 煽りに耐えかねて死神の笛を引こうとしたキルバーン…その胸元には、倒れている間に仕掛けられていたアバンのゴールドフェザーが。
半身の動きを封じられ、つきつけた鎌もアバンの顎先を擦る程度にしか動かせない。いつも罠に嵌めてきた自分が逆に罠に嵌められるという屈辱的な状態に。
アバンは悠々と距離をおいて剣を抜き、戦士としての誇りを汚されたハドラーの一撃だとして"笑い"の仮面を両断した。
プライドをズタズタにされたキルバーンは、今までに見せたことのない底冷の怒りをアバンへと差し向ける。

…キミだけはボクが殺す…!

絶対に…絶対に……ボクの この手で殺すよ……


……絶対に…だ…!!!


その後はしばらく姿を見せなかったが、『白い宮庭』(ホワイトガーデン)にてアバンがミストバーンと戦おうとした際に乱入する形で登場。
魔界の遺物にして機械人形『ジャッジ』を使ってアバンを異空間に招き、その顔には"笑い"の仮面に代わる“怒り”の仮面が。
「見ての通り この仮面イコール ボクの胸中だ」として、誰の邪魔も入らない一対一の決闘を仕掛けた。

その強さはバーンが「ハドラーと同格あるいはそれ以上」としただけあり、最初こそ圧倒していたが次第に様子が変わってくる。
まず超魔生物どころか初期のハドラーにすら劣っていたアバンの戦力は、姿を隠していた間の鍛錬によって飛躍的にレベルアップしていたこと。
もう一つは、ずっと罠で嵌める戦法ばかり取ってきたキルバーンは正面からの戦闘で決定打を与える能力に欠けていたこと。
同レベルの素早さで動く相手には、いくら圧倒できてもトドメを刺しきれない…という判定勝ちしか出来ないボクサーのような弱点をアバンに看破されてしまう。

キルバーンは決して勝ちきれず、アバンはいずれ勝ちうる。
そう宣告されたキルバーンは剣を下げ、なぜ自分がこのような戦い方をするようになったのかを零す。

罠にはまって 狼狽している相手を見るのは最高さ…!!

一途に努力を重ねてきた奴であればあるほど 堕ちた時の表情が楽しめるっ…!!

一度それを味わってしまうと……


他の殺し方なんてバカらしくなってしまうんだよ…!!


百戦錬磨のアバンをもって「おまえほど非道な敵には出会った事がないっ!!」と言わしめる残酷ぶり。
激怒し振り上げたアバンの剣は、ところが不自然にも空中で真っ二つに折れてしまう。
それは決闘中に密かに仕掛けられていた、13本の不可視の刃にしてキルバーン最後の罠・ファントムレイザーだった。
動けば動くだけ切り刻まれていく刃の檻にアバンは手も足も出なくなり、やむなくメガンテを仕掛けようとするがそれも『ジャッジ』が阻止する。
本来は決闘を終始静観し、敗者の首をはねて自爆するはずのジャッジはキルバーンが危うくなったら相手を拘束して自爆するよう改造されていたのだ。

プライドを傷つけられ決闘を選んだと見せかけ、そもそも最初から決闘をする気が無かった。
これにはアバンも打つ手を失い、悪あがきでキルバーンの足を掴んだ手も斬り落とされ、ジャッジのメガンテによって二人の因縁は幕を引く。


……復讐完了…!!!


……と思われたが、現実空間に戻ったキルバーンのもとにアバンがまさかの帰還を果たす。
足を掴んで斬られたのは手袋だけであり、その中には合流呪文(リリルーラ)の目印となる魔法の粉が仕込まれていたのだった。

武芸百般のアバンはジャッジの鎌の残骸を槍のように操り、第二ラウンドが開幕。
想定外の事態に動揺しながら追い詰められていくキルバーンは、いよいよ自らの腕を切断して燃やし大火球とする切り札・バーニングクリメイションを選択。
アバンストラッシュで対抗しようとするのを「太刀打ちなどできるはずがない」と嘲笑うが…

…よく言う! 生まれて初めて真剣勝負をするような男がっ…!!

…!!! 許さんぞっ侮辱はっ!!! ボクはあらゆる者の生と死を統括できるっ…


死の神なんだああっ!!!!


やはりアバン流口殺法 逆上するままクリメイションを放ち、アバンはそれに真正面から飛び込む。
まさに自殺行為だと、炸裂し大炎上する光景を前に高らかに笑うキルバーン。
しかし次の瞬間、燃え尽きることなくクリメイションを突破したアバンが目前に迫っていた。



まっ… まさっ… かァッ!!!

…やはり やりなれない事はするものではなかったな!!

さらばだ死神!!


アバンストラッシュ!!!!!


ついに必殺技の直撃を受けたキルバーン。
なぜ、バーニングクリメイションに耐えられたのか?
なぜ、そもそもジャッジのメガンテにすら耐えられたのか?
疑問を抱きながらも倒れる瞬間、アバンの身体から何か塵のようなものが舞い上がるのが目に入る。

その塵は偶然なのか奇跡なのか、一瞬だけ……ハドラーの形を成した。

塵の正体は、アバンの腕の中で息絶えたハドラーの遺灰だったのだ。
アバンはハドラーの起こした奇跡だと解釈するが、キルバーンは魔炎気を発する超魔生物細胞の灰による副次効果にすぎないと憤慨する。
しかし立ち上がる暇もないまま、アバンストラッシュのさい纏っていたクリメイションの炎がそれを受けたキルバーン自身に引火。
火だるまとなり、あわや自分が火葬(クリメイション)という事態になってしまう。

うわぁあっ!!! 大変だ 大変だよぉ〜〜っ!!!

これには、どこかで見ていたらしいピロロも大慌て。
血相を変えて飛び出し、ヒャド系呪文を連発するが仮にもバーニングクリメイションと同等の炎。その程度では消しようもない。
どうにもならなくなったピロロはアバンへと向き直り、跪き、手を組んで懇願し、涙を流した。


ねえ お願いだよ!!! 力を貸して!!!

………………

このままじゃキルバーンが灰になっちゃうよ〜〜〜っ!!
もう悪い事はしないように頼むから…!!

お願い!!

お願いだよォ〜〜っ!!!

アバンは目を伏せると…燃え盛るキルバーンにフェザーを投擲して鎮火させ、その場を後にする。*8
九死に一生を得たキルバーンだったが、すぐさまピロロに補充させた不可視の刃・ファントムレイザーをアバンの周囲に配置。形勢逆転だと得意がる。
まさに外道、さすがの外道、あまりにも外道なムーブを見せつける主従だったが…


…言ったはずだ 100%こうなる事はわかっていた と
だから私は もうすでに おまえにひとつの罠をしかけてある

なっ…!!?

せっかく拾った生命を失いたくなかったら…その場を動かない事だ

ハ…ハッタリだぁっ!! おどしに決まってるよ!!

………まったくだ…!
このボクに逆に 罠だとっ……!!?


笑わせるなぁあっ!!!!



次の瞬間、ファントムレイザーがキルバーンの首を刎ねた。




ファ…ントム… レイザー………

………なぜ… こんな位置に……!!?

当然、いまキルバーンが仕掛けたファントムレイザーではない。
異空間で使われたファントムレイザーのうち、アバンに刺さったまま現実空間へと持ち込まれていた1本だった。
ゆえにキルバーンも把握できず、動けば首を刎ねるようアバンが配置していたのにも気付けなかった"14本目の見えざる刃"である。

慌てて復活用の粉を振りかけるピロロだったが、首の落ちたキルバーンは沈黙したまま動かない。

………ダメだ もう……直らないっ…


いかに不死身でも 首がちぎれて生きていられる生物はいない

"敗者は首をはねられる"………か

………残酷だが… 彼が決めたルールの通りだ……!!


自らが最も得意としている罠にはまり、14本目の刃…トランプ14番目の存在であるジョーカーによって敗れ去る。
『策士策に溺れる』を体現したかの様な皮肉な最期であった。


あとには一人情けを掛けられ見逃されたピロロの、切ない慟哭が木霊していた…。


【戦闘能力】

正面からは戦わず罠や小細工を駆使して相手を嵌める戦術を得意とするが、罠に依らない素の技量や素質自体も実は超一流という才気ぶり。
ただし上述したような趣味嗜好が災いして、同格相手との直接戦闘は結局のところ不得手。

体内に流れる血は魔界のマグマと同じ成分でできており、かなりの高熱と酸性および可燃性を持つ。
オリハルコン製かつ自己再生能力まで持つバランの真魔剛竜剣でさえ、この血に触れると切れ味が落ちて短期間では再生しないほど。
加えて「死神が殺されちゃあシャレにならない」と言う通り、上半身と下半身を分断されようがピロロの粉ひとつであっさりと復活可能。
他にも壁や空間から突如出現する、自らの影を操るなど、超魔力を用いた数々の呪法にも詳しく手札の多さは作中でも屈指。

装備

  • 死神の笛
持ち手の部分に管楽器のような小さい穴が複数空いている大鎌。終盤近くまでのメインウェポン。
振るうと高周波の音を放ち、聞いた相手は五感を乱されていき最終的には全身の感覚を奪われて動けなくなる。
「暗殺には まさに最適」と嘯くキルバーンお気に入りの武装なのだが、繊細な作りゆえ耐久性には難があり少々ヒビが入った程度でも高周波の効果が失われる。
麻痺もずっと続くようなものではなく長期戦にも不向き、あくまで暗殺用の武器といったところ。
全身麻痺するまで気付かなかったポップには「あと数秒早く気付けば良かったのにね」と言っており、バランは何かしらを察知したあと普通に動けているため、分かっていれば対応も可能らしい。*9

素材については特に明言されていないが、耐久力の低さから流石にオリハルコン製ではないと思われる。
一方で物理無効のミストバーンやオリハルコン製のアルビナスにも脅しとして突きつけてる以上、彼らにも何らかのダメージや効果を与えられる可能性がある。

  • ジャッジ
魔界の遺物である機械人形。骸骨めいた頭部に、浮遊する上半身と鎌を携えた両腕だけという不気味なデザイン。
キルバーンが入手したのもそのデザインに惹かれた為だったが、元々は作中で語られた通り任意の相手と異空間で決闘するための代物。
まず携えた鎌で標的を異空間に引きずり込み、異空間での戦いを見守り、決着がつくと敗者の首を刎ねて勝者を帰還させたあと自爆する…というのが本来の流れ。
ただしキルバーンの使ったものは上述した通り卑劣な改造が施され審判(ジャッジマン)とグル」という最悪の罠と化している。
古来から完全決闘用として使われているマシーンをここまで改造できる辺り、技術の高さと今更ながら性根の腐り具合が伺えるというもの。
ちなみに決闘の様子を、本家ドラゴンクエストのゲームめいて「○○の先制攻撃」「○○のダメージ」などと実況する機能も持つ。

余談ではあるが、最後のアバンストラッシュに用いられた武器はこのジャッジの鎌の残骸。
あの一撃には、望まぬ改造をされて「審判」の名を汚されたジャッジの無念も込められていたのかも知れない…。

  • レイピア
アバンとの決闘で突如出現させて使った細身の片手剣。
その細さでアバンの攻撃をたやすく受け止め、切断もでき、魔界のマグマに等しいキルバーンの血液に塗れても崩れ落ちることなく形を保った。
素材や性能に関する具体的な言及はないものの、かなり高品質の業物であることは間違いない。

  • ファントムレイザー

見えざる13本の刀身による刃の檻!!!
これがキルバーン最後の(トラップ)!!!

ファントムレイザー!!!!!


キルバーンの頭部に計13本収納された、空間に設置できる不可視の刃。手で引き抜いて使うがノーハンドでも射出できる。
設置した刃はキルバーン自身にも見えている訳ではなく、自分で設置したから覚えているだけ。他者に回収されてしまうと把握できない。*10
もっぱら標的の周囲に配置することで"刃の檻"として用いられ、うかつに動くだけで切り刻まれていく相手を嘲笑うのが常套手段。
使いきったあとでも、ピロロの手によって補充できる。
またキルバーンが死んだ後、アバンは悠々とその場を立ち去っているのでキルバーンが死ぬと消滅するのかも知れない。*11

  • 黒の核晶(コア)
悪名高い伝説の超爆弾。
魔界の奥地に存在する黒魔晶(こくましょう)という、魔力を無尽蔵に吸収する石を呪術で加工すれば完成する。
手に収まるサイズの物でも大陸1つを吹き飛ばせるその破壊力から、禁呪法を平気で使う悪人ですら恐れて使わない程の代物。
ある目的のために彼の主から与えられており、本作のラストでは重要な働きをする。

殺しの罠(キル・トラップ)

バーンの居城である『大魔宮』の各所にトランプの枚数と同じ数だけ張り巡らされた、大小様々なキルバーン特製のトラップ群。
作中で発動したのは下記の♢の9(ダイヤ・ナイン)のみだが、「確実に敵の戦力をそげる逸品ばかり」と豪語するほど凶悪なものが揃っている模様。
しかも♢の9(ダイヤ・ナイン)がそうであるように魔力でしか破ることが出来ないらしく、(ポップ)さえいなくなればボクの超魔力の罠を突破できる者はいなくなる」とポップが罠にかかったのを喜んでいた。
実際、破邪の秘法および呪法に詳しく罠への対処法*12も心得ているアバンが合流しなければ、ダイ達は間違いなく殺しの罠(キル・トラップ)全滅していた事だろう。

魔力による発動指令が必要なため、キルバーンの手がふさがっていると敵が罠にかかっても作動しないというのが一応の欠点。*13
結局アバンとレオナによって他の罠はあらかた破壊されてしまったが、どんな内容だったのかは気になる所。
ハートのクイーンとか、スペードのエースとか……ポップのカンストした「うんのよさ」で突破できるのかとか…

  • ♢の9(ダイヤ・ナイン)
花火みたいに最後は切ないのがいいんだ…

…ジンとくるよね!

殺しの罠(キル・トラップ)の1つにして、キルバーン自身が「究極の呪法」と言いきる最高の自信作。
魔力による指令ひとつで瞬時に魔界最強の炎を召喚し、8本の火柱がドーム状に変化して相手を完全包囲。その熱量で焼き尽くすという物。
最高限に高まった炎は中央の♢部分から魔界へと還っていき、それに伴い全体が低く縮まって最後は灰すら残さない。

炎は魔法力以外のエネルギーをまったく受け付けない性質を持ち、ヒュンケルのグランドクルスですらもあっさりと弾いてしまった。
魔法もレオナヒャダルコでは歯が立たず、ポップのヒャダルコで何とか勢いを抑えられる程度。
流石にメドローアなら一時的に吹き飛ばすことは出来るが、それでもすぐに炎がせり上ってきて修復されてしまう。
キルバーンの魔力で動いている以上は彼を倒せば解除可能なのだが発動後にさっさと撤退するガチムーブを見せており、ダイたち一行を完全に絶望させた。
ただし地面に設置される罠のためかトラマナの呪文の効果対象であり、アバンの破邪の秘法によって極大化されたトラマナで消し去られた。

  • バーニングクリメイション
自分に流れるマグマの血を利用した、キルバーン正真正銘の切り札。
腕など身体の一部を切り離して着火し、出来上がった巨大な火球をぶつける火葬(クリメイション)そのもの。
彼なりに相当の自信を持っていたようだが、ハドラーの遺灰をまとったアバンを焼き尽くすことは出来ず突破されてしまった。

【主な人間関係】

  • ピロロ

ね!ね!だから言ったでしょ!!ハドラーの軍団はガタガタだって・・!!

CV:江森浩子(1991年版)/???(2020年版)

キルバーンの相棒で、いつもキルバーンの肩などに乗っている腰巾着めいた小柄な一つ目ピエロ。
他者を小馬鹿にする言動をふりまき、キルバーンと合わさると余計に人を苛立たせる典型的ないたずら小僧。
ヒャダインなどそれなりの呪文を使いこなし、ファントムレイザーの補充も担当しているが戦闘に直接参加することはなく、傍でヤジを入れるか隠れている。
ピロロが見聞きしたものはキルバーンも共有可能*14なようで、アバンとの決闘時はピロロが現実空間に残って情報を提供していた。
またキルバーンが戦闘不能になっても、彼が持っている謎の粉を振りかければ復活する。

対極の性格ながらも妙に気が合うらしく、お互いに「ミスト」「キル」と呼び合う仲。
いきなり大魔王バーンと相対して一歩も引かず、あまつさえ堂々とバーンに対する暗殺者(後述)であることを告げるその図抜けた態度に感心したとの事。
偽物のキルバーンに「自分たちの友情は嘘だったのか」と詰め寄られた際にも真面目に弁明しているあたり、本当に憎からず思っていた模様。
また弁明の内容からして、キルバーンがバーンの「秘密」を把握していることには気付いていなかったようだ。

キルバーンの方が内心どう思っていたのかは不明だが、少なくとも所々で親友としての配慮を見せている。
ミストバーンが鬼岩城を破壊された失態をぬぐうため勝手に正体を明かそうとした時は、制止しつつ「ちゃんと あやまれば許してもらえるさ」と宥めたり。
ハドラーがバーンに殺される覚悟で謁見せんとする際には、心中ハラハラしているミストバーンを「なぁに心配ないって おほめの言葉をもらって終わりだよ」と気遣ったり。*15
そもそも会うたび親しげに談笑しているなど、少なくとも険悪さを感じさせるような描写は一度もなかった。
ただし、お互いに相手の正体を探ることだけは禁じている。

バーンの指示で動く側近…という体だが実情は異なる。
キルバーンはそもそも魔王軍でもバーンの配下でもなく、バーンの仇敵『冥竜王ヴェルザー』により差し向けられた刺客だからだ。

「キルバーン」という名も「殺しのバーン」ではなく「バーンを殺せ」の意味であり、初対面のとき適当に名乗ったものである。
刺客といっても表向きは協力者であり「地上侵攻に協力するが、失敗すれば自分があなたを殺す」という形。
加えて実際は「殺せるようならさっさと殺せ」と命令されており、協力者として振る舞うのも殺す機会をうかがい近くに侍り続けるための方便でしかない。
これをバーンが面白がって受け入れた結果、現在のキルバーンの立ち位置が形成された。
同時に、以前から仕えていたミストを「ミストバーン」と名乗らせるようになる。
なお初対面でのどちら様が(・・・・・)…、バーン様で?」という言葉から、バーンの「秘密」についても知っている模様。*16

暗殺の標的ではあるものの、バーンに対しては器の大きさなどを評価しており義理程度の忠誠心はあるらしい。
バーンが軽視しているポップの危険性を説いたり、ダイたちを罠で撃退しようとしたり、自発的に協力することも多々あった。*17
傍からも、互いに悪趣味で気の利いたジョークを交わすそこそこ気の合った上司と部下っぽく見える。

失敗続きなのを小馬鹿にしたり、立場を危うくさせたり、覚悟をたびたび踏み躙ったりした為もっぱら怨敵扱い。
とはいえ魔軍司令時代はともかく、超魔生物になってからのハドラーには案外気を使っている場面もあったりする。
  • 標的のポップがすぐ近くにいるのに「今は一応休戦中だ ハドラー司令の顔を立ててね」と、ダイとの勝負に専念させる。
  • ポップが加勢しようとすると「うけてやる義務があると思うけどね」と、魔族に戻れなくなったハドラーの現状と覚悟のほどを説く。
  • アバンの使徒抹殺を命令されると思うと「ハドラー君にまた嫌われちゃいそうだしなあ…」と遠慮する。
どれもハドラーは知るよしもないが、もし知っていても遥かにヤバい踏みにじり方を散々やるので大差ないだろう。
面と向かって言った「バラン抹殺の手柄を譲る」も「お前がオレに塩を送るなど信じられん」で一蹴されてるし。*18
結局ずっと嫌われっぱなしなのも、後にアバンとの対決で助力されてしまう羽目になるのも、むべなるかなといった感じである。

魔王軍の中では珍しくポップを高く評価しており、その殺害には早くから意欲的だった。
理由として「こういう弱いヤツが成長したタイプはチームのムードメーカーになる」と挙げており、後の展開を見ればまさにその通りなのが分かる。
その高い魔法力と知恵は殺しの罠(キル・トラップ)にも対抗しうる…という点でも、最後まで警戒していた。

終盤で突如現れた怨敵。
罠を看破し、打ち破り、逆に罠まで仕掛けてくるという最も腹立たしい相手。あとアバン流口殺法
当初ポップに執心だったキルバーンも、アバンに一杯食わされてからは「師匠の方のムカつき加減はそれ以上だ!」と標的を変更している。
原作者によればこの対立は意図したもので「ジョーカーに対抗できる者はジョーカーのみ」と、キルバーンの搦め手に対抗できる者としてアバン復活を決めたという。

  • 冥竜王ヴェルザー
本当の主君。
バーンが地上を完全破壊しようとしているのに対して、こちらはあくまで残したまま侵略しようとしている。
相容れないバーンの計画を協力者として監視し、あわよくば抹殺するための刺客としてキルバーンを送り込んだ。
本来は「ダメで元々」な布石の1つでしかなかったようだが、ヴェルザーがバランに敗れて動けなくなっている本編中ではまさに最後の希望。
バーンに「お前の送ってきた死神は死んだぞ」と知らされた際には、中々のショックを受けていた。

ダイ達との初対面では「軍団長?…ウフフッ ボクはそんなに偉かないよ …ただの使い魔さ」と言っており、確かにヴェルザーの使い魔である。
そのヴェルザーに対しては「あの方は(ドラゴン)らしくないんだ 人間みたいだよね…!」と揶揄っている一方、きちんと敬ってもいるしヴェルザーが無力化されてもなお危険な任務を続行している。
トリックスターを気取りながら他人を気遣うことがあったり、プライドを傷つけられれば激昂もしたりとキルバーンもまた「人間みたい」な所があるので、気が合うのかも知れない。
ヴェルザーが地上を欲しがる理由も「知るもんか」で済ませている辺り、もっと別の理由で従っているようだ。



【余談】

  • 「ハドラー」というプロ野球選手がいることは原作者にも知られているが、実は「ケヴィン・キルバーン」というアイルランド出身のサッカー選手が実在していたりする。

  • 他キャラと同じく2度のアニメ化でそれぞれ担当声優が異なるが、キルバーンはその中でも特に印象が異なることで有名。
    田中秀幸氏が担当していた1991年版は、抑揚の少ない低く無機質な喋り方。物静かな中にも冷酷さを湛えた演技である。*19
    吉野裕行氏が担当した2020年版は、打って変わって陽気かつ胡散臭い。とにかく相手を煽ることに長けた「道化」としての演技になっている。
    普段の吉野氏の声質とはかけ離れた声色であり「事前にキャストを知っていても混乱する」と評判。

  • 当初ポップの死亡退場を編集部の偉い人が望んでいたのは有名なエピソードだが、これは序中盤のキルバーンの方針と被っている。
    そのため「この編集者こそがポップを殺したいキルバーンの変装だったのでは」などという珍説でネタにされる事がある。




じゃあ みなさん そういうことで ボクたちはお先に失敬させてもらうよ!
項目を追記・修正するとは キミたちも中々たいしたもんだ
アニヲタにも“記事の完成オメデトウ”ってつたえておいてくれ
では……シー・ユー・アゲイン!






























【以下、本編の結末に関わるネタバレ】













バーンが倒れ、皆が戦いの終わりを満喫している最中のこと。
ダイの帰還と無事を喜びあう大団円の中…地上の戦士達に近付く影があった。



…ボクにも一声……
祝福の言葉を言わせて下さいよ…!



斬り落とされた頭部を抱えたキルバーンである。

絶命を確信していたアバンは驚きを隠せず、「ほ…本当に不死身なのか…貴様…!!」と問い正した。


"首がちぎれて生きていられる生物はいない"…か…
君のセリフだったねえ

たしかにそうかもしれない


…生物だったら……ね


いつものようにピロロを肩に乗せ、平然とした様子で頭部を首に接合しながら回答するキルバーン。
この時、アバンの中である違和感が生まれた。

バーンパレスでの決着時に確かに発した自身のセリフ。しかしそれは死神に向けて発したものではない。
あの場にいたのは自分と、死んでいたはずの死神と、そして………



今の言葉をっ…あの時 聞いていたのはっ…!!!
























…………そう…!



……ボクが…本当のキルバーンだ……!!






ピロロキルバーン

CV:吉野裕行(2020年版)



【本当の概要】

キルバーンの正体、それは使い魔だと思われていたピロロが腹話術の要領で操っていた機械人形。
謎の不死性も、人形なので単に「元から生きてない」というだけだった。
前述の「もう直らない」も、誤字ではなく伏線だった事に気付いて度肝を抜かれた読者も多いだろう。
あれから急いで修理したのか、動かせはするようだが剣すら持っておらず戦闘は無理なようだ。

キルバーンとピロロの情報共有も、操縦者であるピロロがキルバーンから情報を入手していただけ。
しかも大破邪呪文(ミナカトール)の影響下にあった大魔宮(バーンパレス)や、ジャッジにより現実空間と異空間に分断されている状態でも接続が切れないという高性能ぶり。
キルバーンの戦闘中にピロロは隠れていることもあれば傍にいることもあるので、具体的な操縦方法は不明。
何にせよ危険な場面でもピロロは普通に姿を現すことが多い*20以上、本体なのを見破るのはメタ的にも困難だったろう。

バーンがこの「秘密」を知っていたのかは定かでないが、人形の死をキルバーンの死としてヴェルザーに通達しているため知らなかったと思われる。
あるいは初対面時の「そういう貴様は…?」「貴様こそ本体はどっちだ」の意味で、上記の通達も「人形を失ったピロロには何も出来ない」と解釈できなくもないか。*21
ハドラーが初めて謁見した際も「おまえたち二人にしか見せたことのない余の素顔」と、何気にキルバーンとピロロを2人で1人扱いしてたりするし。*22

ちなみにこの人形、顔面を叩き割れば一応倒すことが出来る。
何故なら人形の顔面には、あの超爆弾『黒の核晶』が仕込まれているからだ。倒すというより心中である
ヒャド系呪文で止めようにも、血液…もとい動力源である魔界のマグマ成液が高熱で弾いてしまうという鬼畜仕様。
ほぼ使い手のいないメドローアで消滅させる*23、とんでもなく広い被害範囲が及ばない所で爆発させるなど、手の打ちようは極めて限られる。
冥竜王が大魔王を倒すために送り込むだけの事はある…という訳だ。



【正体の伏線】

実は「直らない」以外にも色々と張り巡らされている。
  • キルバーンとピロロの会話は、いつも息がピッタリと合っている。*24
  • アバンに仮面を割られた時、キルバーンよりピロロの方が慌てている。*25
  • 新しい仮面を選ぶ場面で、感情を出しているのはピロロだけでキルバーンは無感情。*26
  • ファントムレイザーはピロロがいないと補充できず、また残数を頭部のランプでわざわざ外部に知らせている。*27
  • 「決して自分の身は傷つけない主義」と言いながら、腕を切り落としてバーニングクリメイションを使っている。*28
やや強引な所もあるが、伏線として解釈可能なのはこの辺りか。

また新アニメでは連載が終了している事もあって正体を踏まえた上での演出が取り入れられており、ピロロの声優が伏せられているのも同じ人物ゆえ。
キルバーンとピロロが同時に喋るシーンは1つもなく、シリーズディレクターの唐沢氏いわく「腹話術なので意図的に」とのこと。
最終回にて満を持して正体を明かした際の、甲高く陽気なピロロの声色から冷たく落ち着いたキルバーンの声色へのグラデーションがかった変化は、吉野裕行氏の怪演が光るアニメならではの名演出だろう。



【作中の活躍】

全てが終わった後のダイ達に話しかけ、帽子を脱ぎつつ真のキルバーンとして名乗りを挙げた。
続いて人形に仮面を外させると、その内部には忌まわしき『黒の核晶』
バーンを倒してくれたのは良いが、倒した存在であるダイ達はより危険なため今すぐ消えてもらうと宣言。*29
爆発までわずか10秒だと告げ、「無人の荒野になってから… また遊びに来るよ…!!」と魔界へ逃げようとするが、瞬時に反応したアバンとマァムの連携であっけなく仕留められる。

ち…ちくしょう…
…だが…もう……アウト…だ…

しかし、ピロロの死とは無関係に時間は進む。
ダイとポップは命と引き換えにしても地上への被害を避けるため、キルバーンを抱えて空へと飛び立って行く……


普通に考えればダイ達に隠れてこっそり爆発させた方が良いと思える場面だったが、腑に落ちる点もいくつかある。
  • バランはヴェルザーが使った黒の核晶を喰らっても生き延びており、同じく竜の騎士であるダイを殺せる保証がない。
  • しかし本編の通り、超至近距離で喰らわせれば竜魔人バランだろうと殺せる。
  • ダイの「いざとなれば自分が地上を去ってでも地上を守りたい」という旨の発言をピロロは聞いている。
これらを鑑みれば、バーンを倒した存在=ダイを確実に殺すなら意外と理にかなう行動だったとも言えるだろう。殺せなかったけど
またピラァへの誘爆に関しても、ダイが本編のような形で対処するしかない以上は問題なくなる。

ピロロの失敗は、そそくさと退散せず爆発を前に絶望する人間たちの顔を見ようとしたこと。
上記通りの狙いがあったとしても、正体を明かしたり勝ち誇ったり最後の最後まで目の前に居座ったりする必要は全くなかったので、自業自得としか言いようがない。

とはいえ、本編を見直すとピロロはいつもこんな感じである。
バーンとの初対面からして、爆弾人形を傍に置きながら「あなたを殺しに来ました」と実質的に宣言している。
使い魔だからと無礼討ちを受けるかも知れない中でハドラーを散々挑発し、ポップやダイとの戦闘時もすぐ近くでヤジを入れる。
バランとハドラーの戦闘に横槍を入れた際も、敵対しているバランの前で堂々とハドラーを治療している。紋章閃の一発でも撃たれれば即死だったろう。
キルバーンがアバンに燃やされた時も、そりゃあそのままだと黒の核晶が爆発するんだしヤバかろうが、鎮火はおろかキルバーンの死を偽装した後もアバンから逃げようとしない。

保身よりも騙す、からかう、陥れる、そしてそれらを眺めることを優先する。
そんなピロロのスタンスは単なる卑怯者という一線を完全に超えており、もはや豪胆の域にあると言ってもいい。
ミストバーンは彼の正体を知らないままだったが、その度胸に対する感服は全くもって正しかったのだ。
また「正体を隠しながら主のために身体を張る」「直接戦闘力に乏しい本体が代わりの戦闘手段を用いる」など、奇しくも似た者同士だったと言えよう。
もっともキルバーンが人形であった以上、彼の罠や呪法に用いられる超魔力はピロロの自前だったという事になるが。

無論、最後の最後でその豪胆さが仇となったことは言うまでもない。
しかし2020年版アニメでは、原作のように死亡して溶解するのではなく服を残して消え去るような描写に変更。
後のトークイベント「ダイ!感謝祭」においてリリルーラで魔界に逃げ帰ったと明言され、生存していることが判明した



【本当の余談】

舞台や物語の用語として「作中の人物ではどうしようもなくなった事態に対し、何の脈絡もなく現れた人物を使って問題を解決させる手法」などを


機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)


と皮肉って呼ぶことがある。

それを踏まえた上でピロロの最期を見ると、こちらは「ダイ達が自力で大団円を迎えた所にしっかり伏線を張った上で現れ、最後の最後で全てをぶち壊し」にしようとしたのである。
上述の“機械仕掛けの神”とは、あらゆる意味で対極だったと言える。

さらにこのシーンの中核をなす小道具としてキルバーン、つまり文字通りの『機械仕掛けの“死”神』が使われているという事実。
原作者が意図していたかはともかく、なかなかに洒落の効いた演出ではないだろうか。





さあ お別れだ
ボクは一足早く荒らして帰るよ
アニヲタたちはとても危険だ 記事とともに消えてくれたまえ

あと10秒…! もう荒らしを防ぐ手はない!!

さよなら みなさん
そして愛しい項目よ!
追記・修正されたら…また遊びに来るよ…!!

ドゥッ!!

ち…ちくしょう…
…だが…もう…ログアウト……だ…

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最終更新:2025年07月05日 13:53

*1 ザボエラやフレイザードも相手の狼狽などを楽しむが、あくまで副次的なものでありそれを目的としている訳ではない。

*2 そんな彼も『勇者アバンと獄炎の魔王』時代はまだ人間を軽視しており、アバンがハドラーを打ち破ったのを見て大きく認識を変えたようだが、同じく観戦していたバーンはその後も変わらず人間を軽視している。

*3 仮にも正体不明の制裁役だった彼がこんな気軽に姿を現していいのかという気もするが、この時点ではバーンの最側近ということを隠しているミストバーン以外で「鬼岩城の移動機能およびその起動アイテム」という軍団長たちも知らなかった重要機密を任せられるのは、落ち目のハドラーを除けば彼くらいしか居なかったりする。

*4 他にも「キルバーンの血液によって腐食した」「直前に使ったダイの竜闘気によって崩壊した」などが考えられるが、前者は血液の触れていない箇所も腐食しているため該当せず、後者は仮にも最高級の武器であるドラゴンキラーがアバンストラッシュどころか何の技でもない只の一撃ですぐさま崩壊するとは考えにくいため、やはりキルバーン自身の手によって灰にされたと考えるのが妥当だろう。

*5 アニメ版では特にポップを挑発する台詞が加わり、元からポップを標的にしていたというこの後の展開に説得力が足されている。

*6 パプニカのナイフ相手ですら破損してしまう死神の笛でどうやってオリハルコン製のアルビナスを傷付けるのかという問題になるが、作中ではたびたび硬度で劣る物質によってオリハルコンを傷付ける描写が存在しているため、何らかのやりようはある…のだろう。

*7 ポップの殺害にさほど価値を見出していないのもあるが、もともとバーンは合理的手段として暗殺のような搦め手を選択および命令することはあれど基本的には挑戦を真正面から受けて立つスタイルであるため、独断による暗殺とその悪辣さを誇らしげに語る様子には多少の嫌悪感なり何なりがあったのかも知れない。

*8 特にアニメ版だと一瞬で消し飛ばしているため、バーニングクリメイションも同じ方法で攻略可能だったのでは? と疑問になる。まぁクリメイションは回避不能らしいのでフェザーを避けられるとか、まず火球の中にある腕の位置が分かりにくいとか、すでに腕自体は殆ど燃え尽きていてフェザーを当てようがないとか、何かしらの理由があるのだろう…多分。

*9 作中ではザキ系呪文も、耳を塞いで気をしっかり保てばそれなりに抵抗できる。バランが耳を塞いでいる様子はなかったが、『戦いの遺伝子』を持つ彼なら無防備に見せかけたうえで対抗する手段を知っていてもおかしくはない。そもそもキルバーン自身やピロロが、間近で音に晒され続けてるはずなのに平気だし。

*10 かといって触れれば斬られてしまう以上、本来は勝手に回収できるはずもない。異空間で使った際はアバンに向けて投擲した1本が、のちに足へと突き刺さり、結果として回収されてしまったことが描写から伺える。キルバーンとしても想定外のレアケースだったのだろう。

*11 アニメでは、キルバーンが倒れると同時に落下したと思わしき金属音が響いている。

*12 特に『ミエールの眼鏡』とかいう、呪法で隠されているであろう罠も全て看破できるチートアイテム。

*13 もっとも彼はリリルーラでいつでも撤退できるうえ、作中では侵入者を待ち構える立場。奥に引っ込んで適宜発動させ続けていれば良いだけの話である。

*14 逆もそうなのかは不明。少なくともキルバーンがバランに返り討たれた時、キルバーンの視界からは自身が胴斬りにされたのが見えているのだが、ピロロは洞窟内に踏み入るまでその状態を知らない様子だった。たまたま共有してなかったとか、念のための演技だったとか考えようはあるが。

*15 加えて、ハドラーが謁見の間に入るまでは姿を隠していた。今生の別れのつもりで会話する2人を慮っていたとも取れる。

*16 その時の構図が「玉座に腰を掛ける魔族の老人」と「その傍らに控えるローブの男」というものであり、どちらが主君かは文字通り一目瞭然なため。

*17 もっともバランに対してバーンの地上破壊という目論見を伝えることで両者がぶつかるよう仕向けるなど、しっかりヴェルザーの使いとして暗躍することもあったが。

*18 ここで手柄を譲ったこと自体が、好意でも何でもなく「黒の核晶による心中に巻き込まれないため」なうえ、そもそもハドラーはキルバーンのおこぼれでバランに勝つことなど全く望んでいなかったので当然ではあるが。

*19 ちなみに田中氏はアバンと兼役なので、物語後半までアニメ化されていたら「田中秀幸vs田中秀幸」の対決が見られたかも知れない。

*20 いざとなればリリルーラ等で撤退できるとはいえ、一歩間違えれば相手の機嫌および対応次第で即座に殺されていてもおかしくないシーンが非常に多い。使い魔だからといって都合よく見逃されるとは限らず、むしろ使い魔ならと軽々に殺される可能性は常にある。

*21 どちらにせよ黒の核晶が入っていることは知らなかったようだが、バーンは溜めなしで魔法を放てるため唐突に爆発させたとしてもその威力を受けきる前にリリルーラ等で逃げられてしまう可能性が高く、キルバーンとしても長年チャンスを伺い続けるしかなかったのだろう。

*22 あそこでピロロをカウントすると読者的にも混乱しそうだからとか、バーンは使い魔のピロロなど最初からカウントに入れてないとかいった可能性も当然ある。

*23 有効かどうかは言及されていないが、ヒャド系呪文で凍結するしメラ系呪文などで誘爆もする以上、メドローアも吸収されたりせず通用すると考えるのが妥当だろう。要するに最終局面ではポップをシルバーフェザーで回復させてメドローアを撃ち込めば良かったという事になるが…まぁ本当に有効かどうかなんて分からないうえ、直前に大魔宮の魔力炉でメドローアを吸収されたばかりなので万一を考えると無理もないか。

*24 意思疎通に手間取ったり、軽口程度ならともかく決定的な衝突や食い違いを起こすことが一切無い。腰巾着の使い魔が適宜合わせていると解釈できるため自然。

*25 ここ以外でも、2人が一緒にいるとき咄嗟にリアクションを見せるのは大体ピロロの方。

*26 いわゆる「静かな怒り」の表現に見えるため自然。

*27 謎の粉による復活も含めて、キルバーン本人の技能ではなくピロロの呪法か何かによる補助と解釈できる。

*28 傷つけないだけなら、リリルーラで一旦撤退するなど方法はある。追い詰められて止むなく使ったという演出に見えるため不自然さが薄い。

*29 この時、近くのピラァオブバーンにある凍結したばかりの巨大な黒の核晶へ誘爆する可能性について「なんとか地上が平らになる程度で済むだろう」と言及しているが、バーンの言っていた通りなら1つでも誘爆すれば他の5つも全て誘爆し、地上は消し飛ぶはずである。アニメではこの言及はカットされている。