ザボエラ(ダイの大冒険)

登録日:2014/02/25 (火) 23:59:10
更新日:2021/05/17 Mon 00:57:44
所要時間:約 14 分で読めます




キィ~~~~~ッヒヒヒ!!
しっかしこいつら人間もちょろいのぉ…
殺されるとわかっとるのにくだらん愛などにこだわってなすがままとは…
こいつらの赤い血にもマヌケのエキスかなんかが入っとるんじゃないのか?


ザボエラとは『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』の登場キャラクター。

CV.龍田直樹(1991年版)/岩田光央(2020年版)

【概要】

チビな体躯の890歳の魔族の妖怪ジジイ。
智謀と出世欲を買われて、魔王軍の六大団長の一人に選ばれた。
魔法使い系や悪魔系から構成される妖魔士団の長で、肩書は妖魔司教

読者の多くは「早く●ね」と思っていたのでは?


【人物】

魔王軍の中では珍しく自分の保身を何より第一に考える卑劣漢の狸爺。
その上で強大な魔法力と陰湿な策謀を使って相手を追い詰め、自分の功績と出世を狙っていく合理的で狡猾な人物。
劇中では
  • ダイとクロコダインの再戦時には前もってブラスを誘拐し魔法の筒に封じておき、人質として使うようにクロコダインに渡した*1
  • バランの離反による失態で追い詰められていたハドラーに助力し、戦いで疲れ切ったダイたち一行を魔香で眠らせ色仕掛けまで使って彼らを無力化した(ハドラーも承知の上である)。
  • 超魔生物となった後初のハドラーとダイとの戦いの後、超魔生物ハドラーはべた褒めされるが彼を改造したザボエラのことに上司が誰も触れずスルーされた焦りから弱ったダイを探して倒し功績を立てようとする。
といった策謀を巡らせていた。

しかし、敵を陥れるだけならまだしも、味方を非常に軽視していることも特徴。
  • 上記のクロコダインへの策については友情などではなく、ハドラーに仮にまぐれだとしても手傷を負わせた相手なので保身を第一に考え、危険な役はクロコダインに任せて自身は策略で役に立ったとアピールする腹積もりだった
  • バルジ島決戦では部下をザボエラの姿にモシャスして影武者にし、クロコダインのに殺させている
  • ハドラーとともにダイたちを闇討ちして失敗した際には見捨てて逃走し、そしてハドラーが死んだと思った際に「役立たず」と零す*2
  • 超魔ゾンビを作り出すため、大魔宮最終決戦では部下たちの体に本人たちには秘密で細工をし、瀕死の部下はわざわざ自分でとどめを刺す。

この性格なので人望も壊滅的で、同じ軍団長でもは彼を毛嫌いしている。

またハドラー及び他の軍団長に取り入ることや勇者一行を倒して手っ取り早く手柄を挙げることを優先したため、本来の任務であるベンガーナ王国侵攻を疎かにしていた。
配下の妖魔士団も小競り合い程度の戦闘はしたようだが戦車隊にあっさり撃退される程度であり、超竜軍団や魔影軍団の方が遥かに被害を与えていた。


【科学者としてのザボエラ】

超魔生物となったハドラーがダイたち一行にとってどれほど脅威になったかは、ハドラーの項目を参照して頂こう。
超魔ゾンビも、ロン・ベルクの必殺技がなければ止めることはほぼ不可能だったと言ってよく(後述)、科学者としての彼の頭脳は、最終決戦付近に至るまで存在感のあるものだったのだ。

前回の課題をすべてクリアして初めて“改良”と言う…!!

という、科学者としては見習うべき名言を残している。



【ザボエラの戦闘能力】

老体かつ小柄な肉体相応に身体能力はとても低いようで、魔法・魔力や体内に流れる毒素を使って戦う。
近接戦ではノヴァの剣を躱すのが精一杯で反撃もおぼつかない姿を見ても、後衛や暗殺者向けの能力だろう。
クロコダイン曰く、「かつて六団長が集結した際には絶大な魔力で一目置かれていた」とのこと。
しかし、後述のように他人の力を利用することで成り上がろうとする場面のほうが多い。

初登場ではアバンの残したマホカトールに音も立てず、ダメージを受けずに自在に出入りするという離れ業を披露した。
地味ではあるが、このマホカトール、ハドラーでさえ通るために苦心した代物である。
作中で極大呪文を使う場面は殆ど無いものの、魔力に関する技量はハドラー以上と考えられる。
マホプラウスを使用する時に「ワシとサタンパピー全員分のメラゾーマと発言していたので単独でメラゾーマは使えるようだ。
ヒムとの初対面時に放った呪文がメラゾーマかもしれない。マトリフとベギラゴンを撃ち合っていたハドラーにはベギラマで加勢していたが、不意の攻撃で片腕を失っていたので本来はザボエラもベギラゴンを使えた可能性もなくはない。


【装備】

  • 妖魔の杖
ザボエラが常に持っている杖。
一応他の魔導士キャラ同様、魔法の媒介として用いることができる模様。
もっとも、ザボエラ自身前線に立つタイプではなかったので、使われたのは後述のマホプラウスが唯一。
本人がジジイということもあり、本来の杖として用いられていることの方が多い。
脱獄後はなぜか所持していなかったので、収監された際没収されたか、脱獄の際に失ったものと思われるが、それで別に困っている様子もなかった。


【特技など】

パプニカの老剣士バダックに対して使用。
ただこの漫画のザラキは「相手を死に誘う不気味な声が聞こえ、その声に負けた時に絶命する」という遅効性のものらしく、即死系呪文ではない。
即死でなくとも耳を塞いで耐えている間も相手を無力化できるので、使う状況次第では恐らく戦士系であるクロコダインやヒュンケルなどにかなり有効だったと思われるが、結局バダック爺さん以外に使うことはなく殺すことも出来なかったためパッとしない結果に終わった。
ぶっちゃけバダック程度ならベギラマ一発撃ってれば瞬殺だったろうに

  • モシャス
自分だけでなく他人も変身させられるようで、バルジ島の戦いでは祈祷師を自分の姿に化けさせてクロコダインの攻撃から逃れるための身代わりにした。
テラン王国ではマァムに化け、ポップを騙す際に使用。
ポップも修行を唐突に切り上げて帰ってきたマァムの態度を彼女らしくないと怪しんだものの、未熟さと惚れた弱みでまんまと騙されてしまう。
これにより後述の毒素を注入され動けなくなってしまった。

ザボエラらしい卑怯なやり方とも言えるが、この作戦の立案にはハドラーも関わっている可能性が高い。
(「ポップがマァムに好意を抱いている」事実を確実に知っているのはバルジ島で彼らと戦ったハドラーの方であるため)

  • マホプラウス
敵味方の呪文を受け、それを自らの力として取り込み、自分の魔力と合わせて放つ大技で、彼の使用する技としては最強のものらしい。何気に強力な気もするが、終盤に1度だけの使用に留まっている。
発想は悪くないのだが、威力についてはほとんど他人任せだからか、単行本での必殺技辞典では卑怯な技扱いされた不遇の技。
というか、発想自体は勇者の呪文であるミナデインとまったく同じものなのになんでここまで低評価なのか……。
作中ではメラゾーマ十数発をぶっ放そうとしていたが、割って入ったヒムのオリハルコンのボディには当然の如くノーダメ―ジ。序盤から使えばいいものを…。そして他に使う場面が無かったので凄さがあまり伝わらなかった。

魔法の威力はほぼ手下の雑魚モンスターのメラゾーマによるものとは言え、数が数だけにメドローアすら弾く伝説の武器『シャハルの鏡』を一撃で粉砕したカイザーフェニックスを除けば本作最強のメラ系呪文に値する威力があったはずである。
また、取り込める呪文は術者自身が使えるものに限られるが、性質上敵からの呪文であっても吸収して打ち返すことが出来たと思われる。

  • 光の環(名称不明)
ハドラーが大魔王バーンを追い詰めた際、ザボエラが乱入してハドラーをこの技で縛り付けた。
このときのハドラーは、死の淵から甦って(舐めプしてたらしいとはいえ)あのバーンさえも追いつめるほどの強さだったが、その彼の力をもってしてもすぐには外せず、ブロックが隠された力を発動させて救出しなければ成すすべなくそのままバーンに倒されていた。

  • 体内を流れる毒素
体に多種多様な毒素が流れており、それを体内で調合して、混乱や麻痺、催眠、即死など、様々な効果を持つ毒薬を作り出して爪から注入する。
この毒は大魔道士が扱うキアリー(解毒呪文)でもなかなか治癒できなかった。
そして彼の扱う最上級の毒ともなると、ザオリク級のエネルギーで回復を行わないと解毒出来ない。
上述のようにポップを行動不能にしたほか、最終盤ではクロコダインを操るために用いようとしたが…。


【超魔生物】

「魔力の扱いには長けるが、代わりに肉体面が貧弱」という妖魔士団全体の悩みと欠点を克服すべく考案された技術。
本編で初めて超魔生物として登場したのはザボエラの息子ザムザ
魔族の体に様々なモンスターの長所のみを取り入れ、移植することで作るある種のキメラで、ザボエラの研究の集大成である。
作品が違うが、ドラゴンボールセルが近いだろうか。
ザムザ曰く、その最終目標は竜魔人に変身したバランにも匹敵する力を得ること。
戦闘中に受けた傷が高速再生したり、防御力、攻撃力も変身前とは比較にならないほど上昇する。
欠点は「超魔生物化すると呪文が使えないこと」「生命力を著しく消費し、寿命を縮めること」の2つ。
だが、ザボエラは変身能力として一時的に超魔生物化するのではなく、
体そのものを完全に超魔生物にすれば、魔族に戻れなくなるものの超魔生物になりながら呪文を使用できることを発見し、魔族であることを捨てる覚悟をしたハドラーを強化することに成功した。


【超魔ゾンビ】

ザボエラが部下の死体を魔法で合体させて作り上げた怪物。
屍肉の集合体故に超魔ゾンビ自体には自我はなく、ザボエラ自身がゾンビ内に入って操作する一種のパワードスーツである。

超魔生物への改造は、ザムザやハドラーの例を見ても分かる通り寿命を削るほど凄まじい肉体への負荷を伴う上、閃華裂光拳などの有効な攻撃方法が存在している。
しかし、閃華裂光拳は回復呪文を攻撃に転用する技。
それなら、「既に死んでいるゆえに生体活動が存在せず回復魔法を受け付けない死体を自分が操るならば通じない」と言う逆転の発想から生まれた。

そのスペックは腕力勝負でもクロコダインを圧倒しており、並大抵の呪文も効かない*3
弾力ある肉質故に大抵の物理攻撃に高い耐性を持つだけでなく、数百体のモンスターの屍肉が固まったことで屍肉の毒素が凝縮。
結果武器の刃が肉体に食い込むと武器が腐食し、ゾンビに食い込むだけで打ち抜く事ができず、そればかりか武器が抜けなくなって手放さざるを得なくなるため物理耐久力も並外れている。
更に作中実際に作った超魔ゾンビの体積が大きく、ノヴァの生命の剣のような、多少はダメージを与えられる武器でもそうそうザボエラ本体までは攻撃が届かないという極悪仕様。

ただ、超魔ゾンビの体に邪魔されるからか操作に忙しいからか、呪文を使えないという超魔生物の問題点が復活している。
仮に呪文の使用も可能だったとしても、超魔ゾンビ破壊後にはザボエラですらルーラも使えない程に衰弱していたので、まだまだ改良の余地があった模様。
もっともミストバーンに見捨てられたため、事態を打開するためにやむを得ず見切り発車的に使った感が強かったので、弱点そのものは分かっていた可能性がある。
それに、魔法が使えないという欠点を補って余りある猛威を振るっていた。

「あの古狸め 叩かれてやっと手の内をみせおったわ」

超魔ゾンビはザボエラの理想である「自分の肉体は一切傷つかずに思い通り動かせてなおかつ一方的に敵をいたぶれる能力」を体現したもので、ノヴァは「最低の発想」と戦慄している。
雑魚を数だけ集めても勇者の必殺技や呪文などでまとめてなぎ倒されるような世界なので合理的ではある*4が、
そのために自分の部下に細工をした上に部下が全滅するか、生きている部下を皆殺しにしてにして使いつぶすことが大前提であるため、ノヴァの言った通り下衆の所業でしかない。ノヴァが批判したのはこの欠点であろう。
仮に超魔ゾンビで勝てたとしても、ザボエラは部下たちの信用も失ってしまった可能性が高い。

……ぶっちゃけ「閃華裂光拳対策に全振りしすぎじゃね?」とも評価されがち。
状況が状況だったので猛威を振るったが、仮にポップかマトリフがいたら鈍重な肉鎧などメドローアの格好の的なので一瞬で消し飛んでいただろう。
まぁ状況を読んで的確な手札を切るのも策略のうちと言えばその通りであるし、単にまだ試作段階で完成していなかった可能性も有り得る。



【末路】

一応、ザボエラは味方を軽視はしても、魔王軍そのものは一切裏切っていない。
妖魔師団配下であるダークアイや悪魔の目玉を用いた諜報任務も怠らずに行っている。

しかし、自らが超魔生物へと改造・強化したハドラーがバーンへの謁見を許された場面で、誰一人改造を行ったザボエラ及び妖魔師団の功績について一言も触れなかったことに焦り、自らの手で直接ダイを仕留めて功績を立てようとする。
元同僚であったクロコダインにも居場所がなくなったのだろうと看破されるも、優位に立ちダイを仕留めようとして放った魔法がヒムに止められて失敗。許可なく独断で軍を動かしたということで処罰されてしまう。
それでも、ハドラーは自身を超魔生物に改造した功績と、そのために息子を亡くしたことを踏まえ、頭が冷えるまでの幽閉処分にとどめている。
一皮剥けたハドラーにとってもはやザボエラは重要な存在ではなくなったが、超魔生物改造前に「もはやおまえとオレは一蓮托生」と言っただけあり、対応としてはかなり甘いらしい。

ハドラーとバーンの戦いの際、バーンを一瞬追いつめたハドラーを背後から魔法で拘束し、*5
バーンを救出するという特進ものの功績を挙げ、「魔軍司令補佐」の肩書を得てミストバーンの部下になった

しかし、その後でさえ、ハドラーを貶したことが原因で当のミストバーンにマジギレの末罵倒されている。
バーンを何より優先するミストバーンが、曲がりなりにもバーンの命の恩人を、バーンに逆らったハドラーを貶したという理由でマジギレするのだから、ミストバーンのザボエラに対する評価はこの時点でマイナスに振りきれていた可能性が高い。
まあそれまでの所業が、自身の保身ばかり考え、行動についても敵どころか味方すらも食いものにするものばかりだったので、その評価も当然と言えるだろう*6

そして最終決戦。
ミナカトールを発動しようとするポップに猛毒の鎖を打ち込もうとするが、メルルの妨害を受け、ポップ覚醒のきっかけを作ってしまった。
更に、その後地上に集まったアバンの使徒抜きの軍団に魔王軍の強力な魔物たちが大苦戦してしまう。

ザボエラはミストバーンをぶつけて自分だけ逃げようとするが、とっくに愛想をつかされていたミストバーンにそんな策略が通じるはずもなく、ついにポイ捨てされた。

まだ超魔ゾンビと言う奥の手を残していたが、ロン・ベルクの捨て身の一撃の前に超魔ゾンビも敗れ去った。
一応、ミストバーンと互角に渡り合うロンを戦力として使えなくしたこと自体は、かなりの戦果ともいえるのだが…。

尚もギリギリ生き残っていたザボエラだったが、もはや逃げる魔力も策もなく這って逃げるのが精一杯。そんな彼を見つけたのはかつての同僚クロコダイン。
ザボエラはまだ策があると揺さぶるが、クロコダインはザボエラの性格と今の行動から見てブラフであるとあっさり見抜く。
最早簡単に騙せる相手ではなくなったと悟ると、惨めたらしく土下座の上で助命を哀訴。
流石のクロコダインも、戦う力のないザボエラには手を差し伸べ許すことにした…

(クロコダイン!やっぱりおまえは底なしの愚か者よっ!!)
(ウドの大木!!いやっ…ワシの人生の踏み台を作るための…材木じゃああっ!!)

ザボエラの体内には何百種類もの毒素が流れている。
カスっただけでもクロコダインの意識を奪い意のままに操る猛毒を爪に入れ、ザボエラは最後の反撃を狙っていたのだった。
勝利を確信したザボエラは本性を露わにしてクロコダインに襲いかかった!

そおらああっ!!!!





しかし、クロコダインには読まれていた!!

さっと手を引かれてザボエラの手はあえなく空を切り、更には上に準備してあった斧の柄を腕の上からドシンと落とされ、身動きもとれなくなった。
そして…

頭の悪いオレだがだまされ続けたおかげで、一つ物を知った…
それは……!

この世には、本当に煮ても焼いても喰えぬヤツがいる!
…という事だ!!


まっ…待ってくれェッ!!!クロコダイッ…

闘気弾を食らい、ザボエラは服を残して煙を出しながら溶けて消えてしまったのだった。おそらくは体内の猛毒で自分自身が溶けてしまったのだと思われる。
自身が手掛けた超魔生物と同様、死体さえ残らない末路をたどったのである。

六大軍団の長に選ばれる実力を備え、その頭脳で敵はおろか味方さえも翻弄し続けたザボエラ。
だがその最期は散々侮り利用し続けた「頭の悪い」相手に得意の謀略で負けるという哀れなものであった。
クロコダインは彼を正真正銘のクズと評し、一度は甘言に乗せられた自身のことを顧みつつも、
かつては魔王軍内で一目置かれるほどの強大な魔力を持ちながら、こうして堕落に至ったことには憐れみさえ感じたのであった。


【評価】

作中でも卑怯なキャラとして味方の魔王軍から「ダニ」「煮ても焼いても喰えぬ奴」「ドブネズミ」などなど軽蔑的な扱いをされていたのが目立ち、いい扱いは全くされていない。

ただ、あまりにも作中での評価が低かったせいか、一部の読者で評価しようという声もなくもない。

ザボエラの能力は、先述した通り決して低くなかった。
戦い方次第では、強敵になっていた可能性が高い。
超魔生物や超魔ゾンビを作り出した科学力は、序盤どころか終盤に至るまで脅威であった。

「自分の肉体は一切傷つかずに思い通り動かせ、なおかつ一方的に敵をいたぶれる能力」という彼の理想はその工程と相まってノヴァから最低の発想だと誹りを受けたが、長所だけ見れば兵器開発のコンセプトとしては至極真っ当かつ王道的なものであり、更にザボエラは明らかに体力などに劣るということもあり、最低だが合理的な発想ではある。

他人を利用することを重視しすぎたあまり前線で戦う機会が無かったせいか、実戦における勘が欠落している節が垣間見え、呪文が得意なことは間違いないが実戦は得意ではない様子が伺える。
体力こそないが呪文に関する素質は高く、破邪呪文を破ったりモシャスなどの応用の効く呪文も使用しているため、戦闘経験次第によっては本編とは異なる強敵となり得ていた可能性は高いだろう。

また、魔王軍結成当初はその強大な魔力で一目置かれていたとクロコダインも述べている。
ハドラーもダイとの決戦時に「思えば魔王軍六大団長は最強のメンバーだった」とザボエラを含めて省みて、その敗北の原因を「指揮官であるオレの心に野望と保身以外の感情がなかったからだ」と分析している。
何かが違えばその末路は違ったかもしれないと思わせるだけの能力はあったのだろう。
散々ザボエラを罵倒したミストバーンでさえ、超魔ゾンビを出したザボエラを見て「これで地上は何とかなる」と言っていた点からしても、能力面についての信頼だけは最後まで持っていた節がある。

ザボエラは数少ない、離反しなかった軍団長と言う点は評価はしても良いだろう。
最後にクロコダインに見つかった時にも、本気で降伏しようとは全く考えていなかった。
人格面を評価されたキャラは信念に基づいた決断とは言え、基本的に魔王軍を裏切っている。
…とは言え、どう見ても裏切らなかったのは忠義などではなく、保身を第一に考えていただけ*7なので、強いて評価すべき点とまでは言い難い。

そもそもザボエラが徹底的に不遇な感じに陥ったのは、前述の通り、あらゆる点で、周囲を利用して自分だけ甘い汁を吸おうとしたという精神性が周囲にバレバレであったことが最大の原因であり、
多少見るべきところがあったとしても、敵も味方も彼を軽蔑するのは当然の話である。

また結果だけ見るとザボエラの策略はハドラーを強化したことでバーンを危機に陥らせたり、メルルを傷つけたことでポップの覚醒を促すなど裏目に出てしまったことが殆ど。
特にクロコダインに卑怯な人質作戦を実行させた結果、それを悔いてダイ側につくきっかけを与えてしまったのが致命的である。
クロコダインがザボエラの策に頼らず正々堂々と戦えば勝っていた、というのはヒュンケルのみならず作者も認めている設定だったりする。

ただし、彼にとって不幸だったと言える出来事もいくつかある。
  • 最も意気投合出来そうで、連携も取れそうなフレイザードをはじめ、取り入ろうとした軍団長などが次々離反・戦死し、取り入り先を乗り換えることが必要になってしまった。乗り換えが不要ならば、ザボエラの性格もここまで露呈しなかった可能性はある。
  • 策そのものは感情面を配慮しなかったり、味方のことを気にしなければいずれも効果的ではあったが、いずれも想定以上の実力を相手が発揮して失敗してしまい、それどころか怒りを煽った結果、敵の強化や味方の裏切りに繋がった。
  • 功を焦った独断専行とは言え、ハドラーと戦って消耗したダイを襲ったことを、ハドラーの武人としての拘りから軍規違反ということで握りつぶされた*8
  • 常に保身を考えていて既に評価は落ちる所まで落ちていた状態だったため、マホプラウスが評価されなかった

……同情できる点もあるものの、ここらもよくよく考えれば大体は味方のことを気にしないゲスいことばかり考えたことが巡り巡った自業自得と言える。
信頼を損なうのは簡単だが、取り戻すのは難しいのである。
成功していれば、結果オーライでザボエラが評価された可能性もあっただろうが、不成功に終わってしまえば、例えその原因が不運であろうと「人間関係が破壊される」という最大級のリスクを負わなければならないのがこの手の策謀なのだ。

優れた科学力・魔法力・智謀があったことは確実であるし、周囲の力を借りるという基本戦略も方法によっては十分有りだろう。
例えば力を借りた相手に感謝の念を持って立てることを忘れず、魔王軍のために尽くす姿勢を見せていれば、同じ策を使って失敗しても評価はだいぶ変わっていたはずである。
ザボエラは他者に感謝をしないどころか、味方の神経を逆撫でする言動で味方を怒らせることすらしょっちゅう。
作戦のためやむを得ず他人を怒らせても仕方ない…というのならばともかく、明らかに作戦に関係のない言動でも他人を怒らせまくっており、場の空気が致命的に読めない。
ミストバーンに黒の核晶について問い詰められた時など、「ハドラーに埋めたのはバーン様と思ったので、自分の一存で取り外すことはできない」とでも言えばバーンへの忠誠第一のミストバーンのこと、ザボエラを軽蔑したくてもできなかったはずである。
せめて表面だけでも出世欲を抑えて自身だけでなく味方のことも考えていけばもっとまともな過程・結末を迎えていたことは想像に難しくない。
内部のごたごたが原因で敵が十分に力を発揮できず自滅というのは少年向け作品の王道というか勝利補正として不可欠な存在でもあるのだが

というか、実際の所、自分の立場を本当に把握できていたか怪しい部分がある
ハドラーと戦って消耗したダイを襲った時の事を思い返してもらいたい。この時ザボエラは自分の居場所がなくなっていると思って独断専行に出たが、
そもそもダイを追い詰めるほどハドラーをパワーアップさせたのは誰だっただろうか?ザボエラである
そう、この時点でザボエラは魔王軍の最高幹部のパワーアップに貢献したという立派な功績があるのである
ハドラーもその事をしっかり評価していたし、ザボエラ嫌いのミストバーンにしてもこの時点でザボエラの功績を否定する理由が何もない(この時点でミストバーンはハドラーの体内の黒の核晶を知らない)。
つまりその点をきちんと主張すればここで功を焦る必要などなかったはずである。
何故いつもは甘い汁を吸おうとするのにこういう時だけそれをしないのか…

しかし出世欲が強いとは言え、自分自身が魔王になるくらいの野心もないのに何故?という感じがしないでもない。

クロコダインに命乞いした時の

……でも… 怖かったんじゃよワシは!
他の六大団長に比べ、ワシだけがあまりにも非力!
こうして、策を弄する事以外に、ワシが生きていく道などなかったんじゃっ…!!!

という言葉も、まるっきりの嘘という訳でもなく、本音も混じっていたのかもしれない。
超魔ゾンビの巨体でクロコダインを圧倒した時には「きっと以前のワシはお前から見るとこんな風に見えたんじゃろう」「いい気分じゃぞいっ!巨人の気分というのはなァッ!!」とも発言している。
正統派の戦士たちを「マヌケ」「頭が悪い」と見下すような態度はコンプレックス、ルサンチマンの表れだった可能性もある。

とはいえ、肉体的には非力でもザボエラほどの多才ぶりなら他の面で仲間や軍のために貢献する道はいくらでもあったのだし、他人を踏み台としか考えていない時点で同情の余地はないが。

ミストバーンによるとバーンからはフレイザードと共に出世欲と智謀を評価されて六大団長として選ばれたとのことで、その点については最後までブレることはなかった。
しかしこれは魔王軍の目的である「最強の軍団を作るというバーンの戯れ」のために「強い軍団を作るにはこうした様々な個性が揉み合うことが必要不可欠だったから」であり、要するに切磋琢磨を目的とするものであった。
そのコンセプトを見誤り、自分以外の個性を軽んじ利用し、最後まで生き残ればいいと考えてしまったのがザボエラの最大の過ちなのかもしれない。

【余談】

息子のザムザが生まれた約200年前は人間に換算すれば60歳前後。
別作品のじじい並みのお盛んじじいである。
この時はハドラーもまだ人間でいえば10代の小僧っ子。バーンの地上支配計画も準備段階で、科学者としてならば魔界で比較的穏やかな日々を過ごせていた筈である。
そこから約200年後、魔族とはいえ老い先短い身で、若い五人に囲まれた中いきなり六大団長に抜擢されたのだから、焦る気持ちも分からなくはない。
……まぁ息子のザムザからすらも「オレが死んでも涙も流さないだろう」と断言されていて実際その通りっぽいので、昔からああいう性格だった可能性の方が高い。

魔王軍における卑怯者と言えば、ザボエラの他にフレイザードやキルバーンも当てはまるが、
フレイザードは出世欲のために自らの命を削る事も厭わなかったし、出世とは無縁で目的も異なるキルバーンは基本的に裏方に徹していて魔王軍の邪魔をすることはなかった。
それに対しザボエラは、自らが傷ついてでも結果を出そうとする覚悟を持たず、出世欲から裏方に徹するということもなかった。
その中途半端さも、彼の評価を貶めた要因と言える。

他作品のマッドサイエンティストキャラは、「自分の研究さえ邪魔されなければ他はどうでもいい」「良好な研究環境を与えてくれる組織には感謝するが、別に出世欲はない」というキャラクター設定であることが多いことを考えると、「マッドサイエンティストなのに出世欲の塊」というザボエラはなかなか異色なキャラであると言えなくもない。
その辺の「妙な人間臭さ」も悪役でありながら一種の魅力に繋がっているのかもしれない。

実は科学技術に関しては妙な秘匿癖のようなものを持っていて、あまり自分からは明かしたがらない。
超魔生物や超魔ゾンビの研究では、ハドラーやミストバーンに対し隠れて独自研究しているのにそれが当のハドラー等には見抜かれていて出せと脅されうろたえると言う形になっていて、
これは言うなれば軍団長の職務と合わせると「仕事をせずプライベートで学術的に意味のあるテーマを執筆し、当人はそれを隠せているつもりだったが上官に筒抜けで見透かされている軍人」のようなものである。
そりゃいくら研究が凄くても組織の気風や性質に関係なくその姿勢は評価されないだろう。
研究者としては凄いのに研究職ではなく表舞台の策謀家としての評価を望むザボエラの能力と技術と願望のズレが起こした事態とも。

(恐らくはすでに亡くなっているであろう)奥さんは一体どんな人物だったのか…その辺も興味が尽きないところである。
もっとも昔から性格が変わっていないのであれば真っ当な関係性ではなさそうだが。
(味方だった頃のヒュンケルに対して「魔法でマァムを恋の虜にしてやろうか?」などと持ちかけていたのも疑惑に拍車をかける。なお当然のように彼の怒りを買い、壁に打ち付けられた上に首を絞められた。)

肩書きの「妖魔司教」の立ち位置は作中では全く説明されなかったので、どういう意味合いなのかは不明。
少なくとも作中での振る舞いは科学者・魔道士・策謀家としての側面がほとんどで、宗教家らしい面は皆無である。
ひょっとすると、魔王軍にスカウトされる前に所属していた組織での役職名をそのまま引っ張ってきているのかもしれない。
あるいはもっと単純に「悪魔神官」の上司だから「妖魔司教」ぐらいのあまり深い意味合いのない肩書きなのかもしれないが。
そもそも「一度口を閉じれば数十年は喋らない」とされていたミストバーンが「魔影参謀」なくらいだし

もっとも彼がどうしようもなく小物で、とんでもない下劣で非道な敵だったために、
ダイの大冒険が上手く回った部分も多いので(クロコダインの蘇生などもしかり)、悪役としては彼も重要なキャラだったと言えるだろう。



えらくあの項目が気になっとるようじゃが、ええっ?
…なんだったらワシの呪文で追記・修正してやろうか?
アニヲタどのは腕は立つが追記・修正にはまるっきり奥手じゃからのぉ…ギェッヘッヘッヘッ…!!

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最終更新:2021年05月17日 00:57

*1 言葉巧みに危機感を煽ったとは言え最終的に使ったのはクロコダインの意志である

*2 この際、生きていたハドラーに「俺とお前はもはや一蓮托生だから手を切るなら殺す」と脅される

*3 メドローアやグランドクルスをぶつければ効いただろうが、術者がいなかった

*4 とはいえ流石に魔界の精鋭数百体はコストパフォーマンス的に良いのかと言う疑問は残る。「自軍が」ではなく「自分が」安全と言うのも合理的思想と呼べるか怪しい。

*5 ハドラー視点で見ると「温情で幽閉処分にとどめたにもかかわらず恩を仇で返された」となるが、ザボエラ視点だと「超魔生物に改造してパワーアップさせてやったのに幽閉させられた」という認識になっている。

*6 魔力の刃も維持できないほどバーンが消耗したタイミングでハドラーが裏切った遠因には「黒の核晶に気づいていながら改造を施し、黒の核晶のことをここに至るまで黙っていた」ザボエラにも責任の一端があるとも言え、あくまで結果論なのでミストバーンも直接責めはしていないが、薄笑いを浮かべながら言われたのではハドラーを直接爆破する役を回されたミストバーンがムカついても不思議ではない

*7 なにせバーンは軍団長全員を平気で相手に出来るぐらい非常に強い

*8 ただし、バーンは前述したように侵略そのものは余興に過ぎなかったせいでハドラーの行為もバーン視点からすれば別に咎めるようなことではなく、ミストバーンからの評価も言わずもがな。また、合理的ではあるが、魔王軍視点からしても結局のところ『仲間を利用して美味しい所だけをかっさらおうとする行為』だったと言える。