劇場版 機動戦士ガンダム

登録日:2012/03/29(木) 02:33:50
更新日:2024/09/05 Thu 23:06:56
所要時間:約 6 分で読めます





『劇場版 機動戦士ガンダム』とは、1981年3月14日に松竹系で全国公開された邦画作品。

1979年に産声をあげたアニメ『機動戦士ガンダム』は本放送時、就学児童をメインターゲットに放映されたが、
視聴者層が噛み合わない点と玩具展開の迷走により、翌年初めに打ち切りとなり放映は終わった。

だが、モビルスーツという巨大兵器を取り扱うキャラクターが織り成すリアルな群像劇は当時から注目を浴び、
その後の再放送やプラモデルの好調な売れ行きにより人気が高まった。
この流れの中で映画化が決まり、公開に至る。

総監督は富野喜幸(現:富野由悠季)。
TVシリーズから引き続き担当している。
が、製作側の日本サンライズが本格的な"劇場用作品"を手掛けるのは初めての事であり、実写作品の経験がある人間を監督に就かせての製作を計画していた
(当時の同業界の慣習でもあった)。
しかし、"アニメの事を何も解っていない場違いの人間を呼んで何になるのか。だったら自分が責任を持ってこの仕事をやる"と
富野氏が上層部に掛け合い、続投が決まったという。


◆あらすじ

人類が宇宙に移民するようになってから半世紀が過ぎた宇宙世紀0079…。
地球から最も離れたスペースコロニー・"サイド3"は"ジオン公国"を名乗り、地球連邦政府の管理下からの独立を果たすべく、宣戦を布告。
8ヶ月余りの戦いで膠着状態に陥った戦争は、総人口の半分を失う凄惨な状況となっていた。
スペースコロニー"サイド7"を偵察するシャア・アズナブル率いるジオン軍部隊と、サイド内で運命的な出逢いを
果たした一人の少年とモビルスーツ……全てはここから始まった。

……とここまで書いたが、基本的に後はTV版と同じキャラクターとストーリーなので割愛。詳しくは項目で。

ジオンのザクがサイド7へ侵攻→
ガンダム初戦闘→
主人公アムロ達は成り行きでホワイトベースに乗り込み戦う事に→
大気圏突入→
キャルホルニアベースのガルマ隊との死闘→
ガルマ戦死→
難民キャンプでアムロと母との再会と別れ→
地球に降下して来たランバ・ラルのグフとの初戦→
ガルマ国葬とギレン総帥の演説→
エンディング

大まかな流れは大体こんな感じ。


◆劇場版の製作手法

富野監督がまず手掛けたのは"再構築"である。
大まかなストーリーの流れは変えず、

新規作画を要所に作成
→そこにTV版の話数違いの旧来のカットを色々な順序で繋いで一連の流れを作る
→演出の矛盾面をカット(エピソード単位で削る事も含む)

こうした作業を繰り返し行い、一つの作品としてまとめている。
単なるダイジェストでは無く、シナリオの面白さを含有させつつこのような手法・演出を行う事は当時画期的であり、
後に『富野マジック』と呼ばれた。

尚、アフレコは新規録音となっている。


◆TV版との相違

タイトルロゴを一新。台形をかたどったシャープなデザインに変更。

ストーリー展開で無くても困らないと判断したエピソード(ボトルショー)の削除。これは上映時間と演出の関係。

旧ザクでガンダムに挑むガデム少尉の奮闘や、ジオン軍の脱走兵ククルス・ドアンとアムロの交流、
戦死したガルマの恋人イセリナ・エッシェンバッハが残存するガウ隊と共にホワイトベース隊に敵討ちを挑むエピソードは
全面カット、もしくは作画の流用のみになっている。
これらの再編集の影響により、アムロの実家の位置が日本から北米に変更されている。

また、ガンダムは合体しない

ガンダムが使う武器はビームライフルとハイパーバズーカ、バルカン砲。白兵戦に装備されているのはビームサーベルのみ。

ハンマーとビームジャベリンは今作品を含む劇場版3部作では無かった事にされ、一切登場しない。

これは、TVシリーズ製作の際、スポンサーの意向で無理矢理ねじ込んでいた低年齢向けの演出を廃し、
作中の『モビルスーツ』という存在を兵器的側面や戦術的な考察からよりリアルな描写を試みたからである。

声優も一部変更。
ナレーションの永井一郎を始めとしたメインキャラクターは据え置きだが、初っ端のガンダムの咬ませ、
ジーンは曽我部和行から若本規昭(現:若本規夫)に。
ブライトに出し抜かれるへたれなリード中尉は玄田哲章から石森達幸に。デギン・ソド・ザビ公王は永井一郎から藤本譲に。

アムロの母・カマリアの声を大女優の倍賞千恵子が担当している。今作では腰の据わった上手い演技でいい感じに溶け込んでいる。
え?ハウルの動く城でのソフィーは若い姿の声が婆臭いまま?気にするな!


◆今作の影響

元の作品自体の人気に加え、TVシリーズの単なる焼き直しではないという姿勢は観客に広く伝わり、評判は上々であった。
興行や動員人数をそれなりに稼いだ事で劇場版3部作の残り2作『哀・戦士編』『めぐりあい宇宙(そら)編』を公開する足掛かりを作ることに成功した。

本作品公開前には富野監督も交えたファンイベント"アニメ新世紀宣言"が開催され、反響を呼んだ。
参加メンバーの中には重戦機エルガイムそしてファイブスター物語で有名になるデザイナーの永野護、
声優デビュー前の川村万梨阿が(彼女はなんとララァ・スンのコスプレをして来た)がいた。
この二人は後に結婚することに。
なんというめぐりあい…。

劇場版の公開をきっかけに、『ガンダム』は人気が爆発し、世間一般に名前が浸透するに至ったとも言われている。


◆余談
富野監督は自伝『だから、僕は…』の中で、70年代に公開された"宇宙戦艦ヤマト"を超える作品にする事を目標にしていたが、
実際は興行収入も動員人数も"ヤマト"には勝てず、非常に悔しい思いをしたと記している。

カマリア・レイ役で特別出演した倍賞千恵子のクレジット位置を"一番上"にしようという話が制作側から挙がった。
それを聞いた主演声優の古谷徹や鈴置洋孝が「本職の者を差し置いて彼女に対してだけそういった扱いをするのはおかしい」と詰め寄り、
悶着寸前になった。
だが、こうした動きがきっかけで声優のギャランティなど待遇の改善に繋がったとされている。

主題歌は『砂の十字架』。あのやしきたかじんが唄っている。歌詞に"ガンダム"という固有名詞が無い事を条件にオファーを受けた。
この曲でたかじんは人気歌手になるが…。

声優の若本規夫は先述のジーン役に加え、ルナツー内の補給物資搬入のアナウンス、
ニューヤークの晩餐パーティーの司会進行役などのモブもいくつか演じている。若本好きは要チェック。


…さて。

この作品には後に公開される2作のようにナンバリングや"哀戦士編" "めぐりあい宇宙(そら)"といった副題が無い。
興行次第では、この一作のみで劇場版は終わる可能性があったため…なのだが、
逆に松竹のお偉いさん方があまりの好調っぷりに「すぐ次の作品を作れ!!」とGOサインを出してきたという。





予告編

人が 宇宙に 移民する様になってから

半世紀が過ぎた頃

地球に住む人々と 宇宙移民者との間に

戦争が 起こった
♪〜♪〜♪〜♪〜♪
機動戦士ガンダムII
MOBILSUIT OF GUNDAM
哀戦士編







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