ベネット(コマンドー)

登録日:2015/08/15 Sat 20:37:22
更新日:2025/05/04 Sun 20:46:57
所要時間:約 9 分で読めます







てめえなんか怖かねぇ!


……野郎ぶっ殺してやあぁぁぁぁる!!!!!!!



ベネットとは、知る人ぞ知るアーノルド・シュワルツェネッガー主演のアクション映画『コマンドー』に登場する名キャラクター。
同作の実質的なラスボスであり、ジョン・メイトリックスシンディと並ぶ名言&迷言製造機。
ネット上では石田太郎氏が日本語吹替を担当したベネットが有名である。

演:ヴァーノン・ウェルズ
日本語吹替:故・青野武(TBS版)/故・石田太郎(テレビ朝日版)/若本規夫吹替の帝王版)

◆概要

ジョン・メイトリックス大佐率いる特殊部隊・コマンドーの元メンバーの1人で、当時の階級は大尉。
バルベルデの革命の際にも活躍したが、殺しを楽しむ残忍な性格が災いして部隊を追い出されたという経歴を持つ(ベネット曰く「殺しは大佐から教わった」とのことだが)。
以来、漁師で生計を立てる一方でメイトリックスの事をずっと恨み続け、復讐を果たす事だけを考えていた。


映画冒頭で漁船に乗ったところをアリアスの部下であるクックに爆破され、他の元コマンドーメンバー同様に死んだと思われたが、
実は彼もアリアス側の人間であり、メイトリックスへの復讐の為に10万ドル☆PON☆とくれたアリアスに協力していた。
かつての同胞達の情報をリークし、敵に売ったのも彼の仕業だと思われる。


コマンドーのメンバーだけあってその実力は確かなもの。
劇中でやりたい放題、無敵を誇っていたメイトリックスに手傷を負わせ、タイマンで渡り合う程。
また、自らをプロと称する程の冷静さと客観性も持ち合わせており、
メイトリックスの化け物ぶりを油断することなく警戒して卑怯な手段も厭わない。
まあ最終的には例の名言と共にまんまと挑発に乗せられてしまったわけだが。


ヴァーノン・ウェルズの熱演と各吹き替え声優陣によるそれぞれ違った味のあるセリフ回しも合わさり、
ネット上では映画本編を見たことない人々にもある程度名が知れている人気キャラクターとなっている。


◆劇中での活躍

上述したように自らの死を偽装してコマンドーの元トップであったカービー将軍を動かし、メイトリックスの居場所を割り出す。
アリアスの部下たちに捕らえられたメイトリックスの下に姿を現し彼を驚愕させると共に、
長年の復讐をようやく果たせる事に喜びながらメイトリックスを麻酔銃で撃つ。


アリアスの部下達に連れられてバルベルデへと向かうメイトリックスに必ず戻ってくるぞと凄まれながらも、
ベネットはこれに対して満面の笑みで楽しみに待っているぜと答えて姿を消した。


その後はアジトの孤島にてアリアスと彼の私兵と共に待機、
口先ばかりで素人同然の兵達に呆れを見せるような一幕も。


メイトリックスがアジトに乗り込んできた時には流石だと称賛しながらも、
直後に人質に取っていたメイトリックスの娘・ジェニーにまんまと逃げられた事に憤慨しながら彼女を追跡。
その果てにジェニーを捕らえ、他の敵を粗方片付けてきたメイトリックスの右肩を不意打ちで撃ち抜く。


圧倒的優位に立ちながらも、メイトリックスによる「来いよベネット!銃なんて捨ててかかってこい!」に始まる挑発の数々に乗せられ、
人質も銃も全部かなぐり捨ててナイフ1本によるメイトリックスとの最終決戦を開始。
利き腕を負傷して本調子ではないとはいえ、メイトリックス相手に互角の死闘を演じる。


自身もメイトリックスに腕をナイフで切られ、電熱線に叩き込まれて感電し、遂に倒れる……かと思いきや、逆に意気揚々と復活。
(通称:ベネットチャージ)
形勢逆転しメイトリックスに連打を浴びせて高笑いを上げるも、直後にブチギレたメイトリックスにフルボッコにされる。
逆上して隠し持っていた銃でメイトリックスを射殺しようとするも、引き金を引く前にメイトリックスのぶん投げた極太の鉄パイプが腹部を貫通。
多量に噴出するガスと共に呻き声を上げながら毒気を抜かれて地獄へと落ちていった。


◆ヴァーノンと愉快な吹替仲間たち

『コマンドー』という作品が長年親しまれる人気映画になった理由の一つと言えば、洒落の効いた独特のセリフ回しである。
勿論、メインキャラクターの1人であるベネットも例外ではない。
ここではそんな魅力溢れるベネットというキャラクターを形作る演者たちそれぞれによる違いを紹介しようと思う。


・原語版:ヴァーノン・ウェルズ

ネタ性の強い吹き替え陣に押されがちな印象があるが、
元々の演者であるヴァーノン・ウェルズによる英語音声も十分に必聴物である。

普段はプロの兵士らしく冷静沈着、落ち着いた声色が印象的だが、メイトリックスとの最終決戦では渾身の顔芸と共に豹変。
あまりにも狂った声と共にナイフをぶん回す姿は吹き替えには無い独特の魅力がある。

本人が後年語ったところによると、彼は代役として急遽キャスティングされたとのこと。
そのため、オーストラリアからアメリカまで渡って翌日から即撮影という超突貫スケジュールだった他、前任者に合わせていた衣装を彼が来た結果、異様にピチピチなチェーンメイルという独特な格好になった。
印象に残るベネット像は、偶然と勢いの影響から生じた産物でもあるのだ。


・TBS版:青野武

通称「屋良版」においてベネットを演じたのは嘗ての『ちびまる子ちゃん』のさくら友蔵でお馴染の青野武
しわがれた高音ボイスによる冷徹な声の数々は、ベネットの復讐に燃える狂った兵士としての印象をより強くさせる。少し翻訳が固いが、慣れればそこもまた良し。

因みにメイトリックスを演じる屋良有作氏もちびまる子ちゃんの父親・さくらヒロシとして有名な事から、
2人の対決がさくら家の親子喧嘩とか呼ばれたりすることも。


・テレビ朝日版:石田太郎

ベネットと言えばこの人、ネット上でも最も有名な10万ドル☆PON☆でトリックでただのカカシな石田太郎。

TBS版以上にジョークに満ち溢れた数々のセリフと、悪役ながらもどこか小物臭と愛嬌のある声に
熱演のあまり顔芸シーンにおけるあの空耳などでベネットというキャラクターの知名度を一層高めた御人。

ネタばかり取り上げられてしまうものの、彼もまた冷徹な復讐鬼ベネットを見事に演じきった1人であることを忘れてはならない。


・30周年記念新録版:若本規夫

2015年にコマンドー30周年記念に発売されたディレクターズカット版には、完全新規の第3の日本語吹き替えが収録されているが、その際にベネットを演じたのがまさかの『サザエさん』の穴子さんこと強力若本である。
確かに『マッドマックス2』でもヴァーノン・ウェルズの声を吹き替えていたが…
新たなベネットボイスを吹き込んだ彼の演技はとにかく色んな意味で凄まじい。

セリフの内容自体はテレビ朝日版の物とほぼ同一であるが、こちらはこれまで以上にラスボスとしての貫録が全開。
各所に紛れる若本節と共に、ベネットに更なる魅力とキャラクター性を植え付けた。


◆ベネット語録

それぞれ紫色は原語版青色は青野版赤色は石田版緑色は若本版
なお、若本版が書かれてないセリフは石田版とほぼ同じ。

"Dead? You thought wrong. Ever since you had me thrown out of your unit, I've waited to pay you back. Do you know what today is, Matrix? Payday..."
「はずか?生憎だったな。おめえに特殊部隊を放り出されて以来、俺は復讐を誓ってたんだ。借りを返すぞメイトリクス。今日こそな…。」
「残念だったな、トリックだよ。てめぇに隊を追い出されてからずうっと復讐を想い続けてきた。漸くその日がやってきた。長かったぜ。」
「トリックだあ、残念だったな。てめぇに隊を追い出されてからずうっとぉ、復讐を狙い続けてきたぁ。漸くその日がやってきた。長かったぜぇ…。」

漁船ごと爆破された…と思わせてからメイトリックスの前に姿にを現した時の台詞。
トリックの具体的な内容は不明だが原語版では「引っ掛かりやがったな」程度。吹き替えの訳のセンスが光る。

"Tranquilizers... I wanted to use the real thing!"
「麻酔弾だよ…。本当は実弾をぶち込んでやりてえんだ!」
「麻酔弾だよ…。本物の弾使いたかったぜ!」
「麻ぁ酔弾だよぉ…。実弾をぶち込みたかったぜ!」

麻酔で昏倒したメイトリックスが、一味のアジトで目を覚ました直後に。

"They offered me a hundred grand. Wanna knows something? When I knew I'd get my hands on you, I said I'd do it for nothing."
「10万ドルってとこだが、教えといてやる。相手がおめぇだとわかった時、タダでいいと答えたさ。」
「10万ドル☆PON☆とくれたぜ。だけどな大佐、お前をぶち殺せと言われたら、タダでも喜んでやるぜ。」
「10万ドルポーンとくれたぜぇ、だけどな大佐ぁ、お前をぶっ殺せと言われたら、タダでも喜んでやるね。」

「アリアスに幾らで雇われた?」と問われての返答。笑いながら答えてはいるものの強い恨みを感じさせる。
ちなみに石田版と若本版では10万ドルを受け取ったという言い方だが、原語版のニュアンスに一番近いのは青野版だったりする。
※石田版は「☆PON☆」、若本版は「ポーン」である、ここ重要。

"Put the knife away and shut your mouth."
「いいから仕舞っとけ、ついでにその口もな。」
「ナイフは仕舞ってろ、その口も閉じとけ。」
「ナイフを仕舞ってろ、その↑口も↑閉じとけ。」

勇むヒヨッコ兵士を冷静沈着に戒める場面。
青野版、石田版と比較してやはり若本版は妙に上がり気味なイントネーションが気になって仕方がない。

"I love listening to your little pissant soldiers trying to talk tough. They make me laugh. If Matrix was there, he'd laugh too."
「口だけはいっちょまえのヒヨッコ兵士にはまいりますな、お笑いだぜ、メイトリクスも大笑いするな。」
「口だけは達者なトーシローばかりよく揃えたもんですな、まったくお笑いだ、メイトリックスがいたら奴も笑うでしょう。」

"Your soldiers are nothing. Matrix and I could kill every one of them...(snap) in the blink of an eye. Remember that."
「だが使い物にならん。メイトリクスと俺で皆殺しに出来る(バチーンッ)あっという間にね、覚えとくんですな。」
「ただのカカシですな。俺達なら瞬きする間に(パチン)皆殺しにできる。忘れないことだ。」

石田版(と、ほぼ同じな若本版)におけるご存知名言の一つ、カカシ発言。
この辺りの発言からも彼がメイトリックスの実力を侮っておらず、またどうにかして監視の目を掻い潜ってここまでやって来ると確信すらしているのが窺える。
だがそれ以上に特徴的なのが青野版において途中で挟まれるデカすぎる指パッチンの効果音。
どうでもいいが、新録版でアリアスを演じる大塚芳忠は若本ベネットに対して半ギレである。

"Of course I'm smart. But I have an edge, I have his daughter."
「勿論さあ、馬鹿じゃねえから。だがこっちが有利、娘を押さえてる。」
「勿論です、プロですから。しかしこちらには、切り札があります。」
「もぉちろんですぅ、プゥロですかるぁ。しかしこちらにはぁ、切ぃり札があります。」

「メイトリックスを恐れてるのは君の方だろう」と言われての返し。
新録版はまたしても若本節。ラスボス感満載の低音ボイスで唐突にこれだから本当に腹筋に悪い。

"Welcome back, John. So glad you could make it."
「やっぱり来たな、流石だぜメイトリクス。(メイドX)」
「やっぱりやって来たか、流石だメイトリックス。(ムエタイX)」
「やっぱりやって来たか、流石だメイトリックス。」

宿敵の登場に焦るどころか逆に喜んでいたり。
ちなみにこのシーンも空耳でメイドXだのムエタイXだの言われたりする。

"You little bitch!"
「あぁの小娘がぁ!ちきしょーめえ!」
「小娘め、くそう逃げたか!」
「小娘めえ、逃ぃげやがったか!」

で、直後に逃げたジェニーにキレて扉と逃亡防止用の板をタックルで粉砕。
メイトリックスの無双の方に気を取られがちだが、コイツもコイツで大概である。

"John, stick your head out! One shot, right between the eyes. I'll make it quick. Just for old times' sake."
「ジョン、顔出せ!眉間を一発で仕留めてやらあ。昔のよしみだ、楽に死なせてやるぜ。」
「大佐、顔出してみろ!一発で、眉間をブチ抜いてやる。古い付き合いだ、苦しませたかねえ。」
「大佐ぁ、顔出しなよぉ!一発で、眉間を撃ち抜いてやる。古い付き合いだ、苦しませたかぁねえ。」

最愛の娘ジェニーを人質に銃を片手に。
相手のメイトリックスは疲労困憊、武器はナイフ1本、加えて不意打ちが見事に命中して利き腕を負傷。
これほどまでの好条件が揃っていたのだが……

"I can beat you. I don't need girl. haha, I don't need the gun, John. I can beat you. Aha aha, I don't need no gun! I'm gonna kill you nooooooooow!!!"
「俺が勝つんだ。子供なんていらねぇや、ハハハハ、子供なんているかーい!へへへへへ、銃も必要ねぇぜ・・・俺が勝つんだ、アハ、アハ、アハ、こんな銃なんかいらねぇよ!……貴様を殺してやるぁああああ!!!」
「ぶっ殺してやる!ガキなんて必要ねぇ!イッヒッヒッヒ・・・ガキにはもう用はねぇ!アハハハハ・・・ハジキも必要ねぇやぁハハハ・・・誰がてめぇなんか!てめえなんか怖かねぇ!……野郎ぶっ殺してやあぁぁぁぁる!!!」
「ぶっ殺してやる!ガキなんて必要ねぇ!フッフッフッフッ・・・ガキにもう用はねぇ!フッフッフッ・・・ハジキも必要ねぇやぁハハハハハ・・・誰がてめぇなんか!てめぇなんか怖かねえ!……ぃぃ野ぁ郎、ぶっ殺してやぁるぅぅぅ!!」

……だってのに、まんまと挑発に乗せられて顔芸と共にこれである。言葉と裏腹にメイトリックスへの恐怖に怯え切った表情は必見。
そして石田版はどう頑張っても「野郎オブクラッシャアアアアアアア!!!」に聞こえてくる喜劇悲劇。

"I feel good! Just like old times! What's it feel like to be a dying man? You're a dead man, John!"
「最高にいい気分だぜえ!昔を思い出すぜ!くたばるのはどんな気分だあ!?これで貴様も最後だ!!」
「気分いいぜ!昔を思い出さあ!これから死ぬ気分はどうだ大佐ぁ?テメエはもう終わりだァ!」

高圧電流を浴びて死なないどころか逆にパワーアップしてメイトリックスをフルボッコ。
このしぶとさもベネットの魅力の一つである。

"John! I'm not gonna shoot you between the eyes. I'm gonna shoot you between the balls!"
「ジョン!目の間を狙うのはやめだ!それより股の間撃ってやらぁ!」
「畜生ぉ!眉間なんか撃ってやるものかい!ボールを吹っ飛ばしてやる!」
「畜生ぉ!眉間なんか撃ってやるもんかい!玉ァ吹っ飛ばしてやぁるぅ!」

ブチギレたメイトリックスに逆にボコボコにされて往生際悪く銃を拾いながらこの言い草。
だが吹っ飛ばされたのはメイトリックスの大事なタマタマではなく、自分自身の(タマ)だったというオチ。


◆余談

演者のヴァーノン・ウェルズは奥さんが日本人(2015年時点)。日本における『コマンドー』人気も知っているよう。
30周年記念ブルーレイ発売時にメッセージを依頼すると快諾してくれた上、日本語混じりの英文台本を送ると「奥さんに発音を確認するから全文日本語の台本もほしい」との要望がきたという。
吹き替え版の名台詞や空耳を交えた台本メッセージに追加して撮影中の思い出も語ってくれており、ファンサービスに満ち満ちていることがよくわかる。

また、メイトリックスを演じるシュワルツェネッガーには兄弟の様に親しみを持てたらしいが、
時々本気でぶん殴りたくなるようなこともあったのだという。

更に余談だが、『コマンドー』で主人公を演じたシュワちゃんは『ジングル・オール・ザ・ウェイ』というクリスマス映画で『パワーレンジャーシリーズ』をモチーフにした劇中劇のキャラ・ターボマンの衣装を着ているが、
ヴァーノン・ウェルズ氏は後に本家『パワーレンジャー・タイムフォース』(日本における『未来戦隊タイムレンジャー』)で敵首領ランシックの役を演じている。
パロディと本家、正義のヒーローと悪役という見事な好対照だ。



10万ドル☆PON☆とくれたぜ。
だけどな大佐、お前の項目を追記・修正しろと言われたら、タダでも喜んでやるぜ。


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