打ち切り(ライトノベル)

登録日:2021/02/28 Sun 15:36:09
更新日:2021/03/08 Mon 18:05:02
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ここでは、ライトノベルにおける打ち切りについて、背景事情や具体的な様相について紹介する。

「打ち切り」という言葉そのもの、および海外ドラマとラジオ番組についての事情は打ち切り(海外ドラマ・ラジオ番組)
テレビ番組は打ち切り(テレビ番組)、漫画は打ち切り(漫画)、ソーシャルゲームはサービス終了で解説する。



概要

漫画雑誌における打ち切りと似ているが、毎回書き下ろしで単行本を発売する形式のラノベもなかなかシビアである。
俗に「発売から一週間の売上」と「一巻と二巻の売上差」が基準となって続刊が決定される事が多いと言われ、
そのためかどうか余程一巻の売上が低くない限り(そして単巻読み切りを除いて)大体の出版社では最低三巻までシリーズ展開してもらえる事が多い。
ただ最近は二巻で打ち切りのケースも増えてきているとか。

その一方、たとえ長寿シリーズだろうが新人賞受賞作だろうがコアな人気を持つ作品だろうが、売上が低迷してしまえば、
あとがきや帯で続刊の発表もあり打ち切りの気配もなかったシリーズ途中なのにバッサリと打ち切られてしまうことも稀に良くある。

加えて作者がどんなに続きを書きたくても、企画が通らず放置されてしまったり、
あるいは出版したいあまり無理な企画を通してしまって作者が書けなくなってストップ。
結果的に長期間放置されて実質打ち切り状態というケースもある。

というか、雑誌に連載している等の場合を除き、そもそも打ちきりかどうか読者視点だとさっぱりわからないのも悩ましい問題である。
単行本がベースであるライトノベルの場合、雑誌掲載で定期的に最新話の出る漫画と違い、その出版スピードは不定期であり、「だいたい〇ヶ月ごとに新刊が出る」といったもので、その期間も作者によってまちまち。
単純に遅筆だったり他の作品を書いたりしてるせいで刊行が止まっているが、年単位で間を空けた後に新刊が出るなんてのもよくある事。
また、雑誌ベースの漫画とは、打ち切りが決まった後の展開も大きく違う。漫画の場合は打ち切りになった場合はその旨を記した上で最終話まで描くのが普通であるが、ライトノベルの場合はそういったものも無く、既刊のみで展開は終了、以後の出版は無しとなるのが殆どなのだ。
作者がツイッターやブログ等で近況報告をしている場合には続刊がもうない報告がある場合もあるが、新刊報告に比べるとやはりそれも稀である。

小説家になろう』などWeb小説からの出版がメジャーになっているのはこれらの背景事情もあり、
「既に固定ファンが一定数ついている」事と「作品自体がある程度(数冊分)ストックが確保されている」という2点から、出版社の頼もしい味方となっている。

ただ如何せん粗製濫造になりつつある感も否めず、
弱小出版社が新規に立ち上げたレーベルなどでは、とりあえず適当に出版させた挙句に売上が見込めずあっさり途中で打ち切りなんてケースも多々発生している。
また作者が素人なのを良いことにラノベ作家としてはありえない(安すぎる)原稿料で契約をさせたり、
ひどい時には編集も「Web小説サイト見てランキング上位作品に声をかけるだけ」の素人まがい、というか素人の人物な事もあり、トラブルに発展することもしばしば。
念のため付記しておくが、これらはWeb小説を書籍化した出版社や編集部の中のごく一部でしかない。
これらの場合、そのほとんどが完結ではなく投げっぱなしでの中断で幕を閉じる。

幸いWeb小説だから書籍化が打ち切られてもネットで連載を最後まで読める……と安心はできない。
出版社との契約によって既刊分がダイジェスト化されたり、削除されたり、打ち切りのショックから作家が執筆を放棄したり、
あるいはこれら全部がまとめて発生した結果、まったく作品が読めなくなってしまう事も少なくないのだ。
特にWeb版と書籍版とで大幅改稿されていた作品だと悲惨である。

しかも恐ろしい事に某大手ラノベレーベルでは「スリーアウト制」があるとの噂が実しやかに囁かれている。
つまり「打ち切りが3回発生したら二度とその出版社で本は出させてもらえない」という事である。
もちろんそうでない出版社の方が多いだろうし、あくまでもネットで流布されている噂レベルの話ではあるが、
作家志望者や新人作家が戦々恐々としているだろう事は想像に難くない*1

その一方で『終末なにしてますか?』や『この恋、その未来』のように打ち切りが決定していたにも関わらず、
読者側からの続刊希望のファンレターが多かったためシリーズ続刊が再決定されるなどのケースもある。
やはりファンの力は偉大であるといえよう。
全部が全部そんな奇跡に恵まれるとも限らないのが厳しいところではあるが……。

なお一般(?)小説の部類に入るが『家畜人ヤプー』も最初は打ち切り作品であり、70年代までは「未完の名作」として扱われていた。
だがその人気のせいか80年代~90年代初めの単行本で加筆修正され完結、石ノ森章太郎によるコミカライズ版もアシスタントのシュガー佐藤の手によって同時期に完結した。
尤も『家畜人ヤプー』に関しては作者が覆面作家*2であるため、「連載版と完結編では作者が違うのでは」という説が存在する。最終的に「作者」として完結させた人が故人なので真偽は不明だが。

いずれにせよ応援したい作家や作品シリーズがあれば、新刊発売後になるべく早く購入する事が応援に繋がるので、覚えておこう。

◇作者事情による打ち切り

前述の通り、続刊の企画が通らない、あるいは通すために無理な企画を作ってしまったため作者が書けなくなるといったケースもあるが、
それ以外の作者事情による打ち切りも多々存在する。

  • 風の白猿神
1995年の第6回富士見ファンタジア大賞受賞作。
今なお語り草となるほどの傑作だが、同時に同大賞の選考基準において禁じ手である「続き物小説」で、「”超大作の一作目”にしか見えないような、ネタフリだらけの話」とも評されるだけに選考では賛否両論あった様子。
にも関わらず、1巻のみで以後20年以上にわたって続刊が発売されていない。
あくまでも噂レベルではあるが、本作の著者は副業禁止の公務員(公立高校の国語教師)であったらしく、
商業デビューが職場に知られた結果、作家としての道を断念したのではないかという推測がなされている。

  • ラグナロク
今は亡きザ・スニーカーで連載されていた安井健太郎作のアクションファンタジー作品。
第3回スニーカー大賞の受賞作で、同賞の募集広告にイラストが使われるなど90年代末期~00年代初期のスニーカー文庫の顔と言える作品であった。
しかし2002年ごろから刊行が遅れがちになり、また作者は2006年からスニーカー大賞の審査員も務めていたが、それと同時期に単行本の刊行が完全にストップ。
その後2011年を最後に作者は審査員から離れるが、翌年にTwitterを開始すると同時に「スニーカー編集部から絶縁状を受け取った」ことを明かし、
以降本作(および同時に連載していた別の作品)はスニーカー文庫での続刊はないことを表明した。
打ち切りになった原因は作者曰く「自分の遅筆」と「書いたものが到底ライトノベルとは言えない」とのことで、スニーカー編集部には一切非がないとも釈明している。
その後、作者は同一世界観の別作品『アークIX』を講談社ラノベ文庫から発刊。さらに本作のリブート版『ラグナロク:Re』が「小説家になろう」にて連載開始、オーバーラップ文庫から書籍化もなされることになった。
以降各話ごとに数か月のブランクが開くことがありつつも、『Re』は現在も連載継続中となっている。

なお、スニーカー大賞の大賞は選定されない年が多く、非常に狭き門として有名で、実際に受賞した作品はいずれも名作として高い評価を受けているが
一方で受賞作のシリーズ(および作家)の多くが唐突な長期休止や打ち切りに縁があり*3
このため「スニーカー大賞の受賞者は筆が止まる呪いにかかる」という都市伝説がまことしやかにささやかれている。
これに関しては『ラグナロク』の休止に前後してその次の大賞受賞作『涼宮ハルヒ』シリーズが約4年に及ぶ新刊の発表延期となった辺りから噂されるようになったものであるが、
第15回受賞作の『子ひつじは迷わない』(選考時タイトルは『なるたま〜あるいは学園パズル』)は、第6巻で明確にシリーズ休止を表明しており、作者は現在も新作を発表中。
『涼宮ハルヒ』は(その後も数年置きという長期ブランクを挟みながらも)不定期に発表されメディアミックスもしばしば行われており、『ラグナロク』も前述通り別レーベルで再開しているので
あくまで偶然の一致であり、現在ではそのジンクスが打ち破られたと言えるだろう。

◇メディア展開終了による打ち切り

ライトノベルとメディアミックスは切っても切れない関係にあり、やはり頻繁に発生するのがこのケースである。
母体となる作品の展開が終了してしまえば、派生作品であるライトノベルもまた当然終了を余儀なくされてしまう。
初代PS版発売から十年以上刊行が続いた『高機動幻想ガンパレード・マーチ』のライトノベルシリーズなどは極めて異例のケースである。最終巻はやや尻切れトンボな感が否めないが……。

例えば新ソード・ワールドRPGリプレイヘッポコ冒険者シリーズ篇を題材にした『輝け!へっぽこ冒険譚』シリーズは、単行本第三巻刊行後に母体となるソード・ワールドTRPGのバージョンアップが決定。
世界観も何もかもが一新されてしまったため、おそらく打ち切りで間違いないだろうと思われる。
一方、長らく刊行途絶、同様の理由で打ち切りだろうと思われていた『サーラの冒険』シリーズは、2005年に10年ぶりの新刊発売によって全6巻で完結したため、望みが一切無いわけではないが……。


◇イラスト関係等のトラブルによる打ち切り

ライトノベルは出版社、作者、イラストレーターの三位一体で仕事が行われている。
漫画でも原作と作画が別のケースはあるが、ライトノベルは原則として必ずこの三者が存在しており、どれ一つ欠けても作品として成立する事はない。

打ち切りでこそないが、原稿はきっちり仕上がっているにも関わらず、
イラストレーター側の予定が詰まってしまっていて挿絵が描けず発売延期、あるいは通常より挿絵枚数を減らして刊行……なんてケースはザラである。
特に人気イラストレーターほど顕著なため、皮肉にも有名ライトノベルで多く見られる。

また作者とイラストレーターが直接交流した結果の喧嘩や、編集部の方針との乖離なども発生しかねないため、
基本的には編集部を通してやり取りすることでトラブルを未然に防ぐ事が推奨されているようだ。
『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』において、作者とイラストレーターが頻繁に会って交流する光景が度々描かれているが、実際には有り得ない(有り得てはいけない)事だと思って貰った方がいい。

とはいえ挿絵が減ったり遅延しながらも刊行されるならまだ良い方で、
ひどい時はトラブルが発生してイラストレーターの差し替え、最悪は打ち切りになってしまう事もあるのが困り者。

  • 気象精霊記
1997年から富士見ファンタジアで刊行されていたライトノベル。
世界の気象操作を担当する気象精霊の少女たちが様々なトラブルを解決していく、あるいは一人前の気象精霊を目指して勉学に励む姿を描いて人気を博したが、
編集部が第二部連載開始をイラストレーターに連絡しなかったという大ポカを発端に連絡の行き違いが次々と発覚。最終的に2006年をもって打ち切りとなってしまった。
イラスト関連のトラブルによる打ち切りの典型的な例と言える。
幸い2014年9月から、Kindleにて自費出版が開始された。

  • アーマードール・アライブ
実際は売上が原因による打ち切りだったと思われるが、直前に三者間でのトラブルが発生、炎上したので記載する。
本作のイラストレーターは別名義ではあるものの『艦隊これくしょん』の金剛型を初めとした多数の艦のイラストを手がけている人物だったため、著者が出版社を通さずイラストレーターに宣伝を懇願するという行為に及んだのである。
挿絵担当者名義での宣伝をしてくれたものの、艦これ担当名義ではなかったのが著者は不満だったらしくさらに催促*4
しかし(前述通りトラブル原因となるので当然の処置として)出版社からイラストレーターとの接触を禁止され、
イラストレーターは艦これ側のスケジュール進行で新規イラストが出る度に「またかっぱ寿司の地下でキュウリを報酬に働かされている」とネタにされるほど多忙となり、そして打ち切り決定となったため、著者はTwitterなどで不満を爆発させてしまった。
繰り返しになるが、このようなトラブルの原因となるため、多くの出版社では作者とイラストレーターの直接交流を避けるような方針が取られている。

ちなみに本作は後になってKindleなどで自費出版という形で出版が開始されているものの*5
当の著者がその後もTwitter等で数々の問題ある行動や発言を繰り返した事で悪評頻々となってしまい、現在はほぼ誰からも顧みられていない状況に陥っている。
一方、当初のイラストレーターの方はこの件が原因か不明だが、現在艦これ運営側の所属になっている事が確認されている。

  • サムライ・オーヴァドライヴ
こちらも売上が原因による打ち切りだと思われるが、作者に非が一切無くイラストレーターのみの不祥事という極めて稀なケースとなっている。
本作では挿絵にとある同人イラストレーターを起用したのだが、その挿絵の全体的なクオリティの低さに加え、発売から数日後に特定個人に対する差別的発言を行ったことにより大炎上。
その後の対応でさらに火に油を注ぐ事になり、最終的には作品にまで飛び火。評価を大きく落とす結果となってしまった。
繰り返すが作者に非は一切無く、物語自体は好評であった。

いわゆる大人の事情による代表例。
アニメ化で一躍大人気になったものの、その後の作者のモチベーション低下やOVAの特典を落とすなど、
出版社側に対してトラブルを引き起こし、他の出版社に原稿を持ち込むという社会のルールを無視した様な行為で重版停止、一時期干される状態になる。
メディアミックス戦略の成功による作品の人気を作者のみの実力だと勘違いして天狗になってしまい、作者本人の自業自得が招いた行為の結果なので出版社側はほぼ悪くない。

その後、MF文庫Jから講談社ラノベ文庫に移籍して『放課後バトルフィールド』を刊行するものの見事に売れず、
ISのアニメ版権が欲しかったオーバーラップ文庫からお声がかかったのに飛びつき、版権問題もクリアしてもらっての再発刊となった。刊行ペースは巻数が増すごとに遅くなっていくが。
なお、ラノベの命とも言える挿絵のイラストレーターも変更となったため、MF文庫J版を元にキャラデザインされたアニメとのイメージ差も大きく、作者は元々ツイッターやブログでの暴言や問題行動も多いので、これを機に見限った人も多い。
もっとも新しいイラスト、キャラデザイン自体は賛否あるもののクオリティは十分高いため、そこは誤解なきよう。

  • 二度目の人生を異世界で
2018年度秋に向けてのアニメ化も決定していた作品だったが、在邦中国人ネットユーザーが作内の記述*6を指摘、Twitter等で拡散されたことを発端*7に原作者がTwitterにて中国・韓国へのヘイトスピーチをしていた事も発覚。
その後騒ぎは中国のネットユーザーを巻き込んで過激化の一途を辿り、メインキャラクター役の声優4人が降板する事態となり、遂にはアニメが制作中止となった上に原作小説既刊分すべて出荷停止となり(電子書籍版の小説は販売を継続している)、原作小説のWeb更新も止まってしまった。
「口は災いの元」の典型的な例である。

そもそもの発端となった記述に関しても編集・校閲によるチェックがあれば十分防げたと思われるので、Web小説出版の際の出版社側の怠慢を指摘する声もある。
逆に不適切とされた記述に関して、不適切とする解釈に無理があると指摘する声もあった*8
ただし、原作者のTwitterではヘイトスピーチ以外でも様々な著名人への誹謗中傷を呟いていたことも確認されており、仮にヘイトスピーチをしていなかったとしてもどちらにせよ何かしらの騒ぎは起きたのではと指摘する意見も多い。
なお、何故かコミカライズ版だけは2021年現在も元気に連載中である。出版社が違うので方針も違うということだろうか。

  • 女勇者に自分の性奴隷にならないとパーティを追放すると脅されたので離脱を選択します
著者がTwitter上で自作品のイラストレーターに対する誹謗中傷を展開。
結果、刊行が予定されていた3巻以降の続刊、並びに連載予定のコミカライズ版が中止される事が発表された。
元々著者はTwitter上で問題発言の類を常習的に発しており、編集部も早い段階で警戒態勢を取っていた事を声明している。

  • お前らどれだけ俺のこと好きだったんだよ!
アニメ化もされた「最弱無敗の神装機竜」などで知られる明月千里のラブコメ作品。
2020年4月にTwitterにて著者より「編集からイラストレーターが音信不通になったとの連絡を受け、今後のスケジュール調整の兼ね合いから作品を完結とする」旨の発表が出された。なお2020年12月現在、版元のGA文庫からの公式な声明は出ておらず、イラストレーターの変更ではなく打ち切りという点や、発表直近に音信不通とされていた件のイラストレーターのTwitterに投稿(当件とは無関係の内容)があった点などが一部読者の物議を醸している。

  • 大東亜忍法帖
荒山徹の小説。
元々は創土社のクトゥルー・ミュトス・ファイルズより上巻が刊行され、後に完結編となる下巻が刊行予定だった作品だった。
が、下巻に登場する史実上の実在人物に対して、今日では事実とは異なるとされる定説に基づいた描写がされていた事で、
その事に対して最低限の注釈を入れるべきと提案した出版社に対して著者がゴネた結果、出版社の判断で下巻刊行が中止される事に。
後にアドレナライズより電子書籍という形で完全版が刊行された。
この一件の影響か、創土社の書籍に作品を幾つか寄稿していた作家の朝松健氏が、活動の場をアドレナライズに移している事が確認できる。


◇不祥事による打ち切り

ライトノベル作家が逮捕にまで発展した事例は確認される限りほぼ無いが、
他作品の「盗作」が発覚して打ち切りになってしまう等のケースは存在する。

一方、用語や単語が似ている、被ったなど些細な点をあげつらってパクリだ盗作だと声をあげ、打ち切りを狙うアンチや野次馬も多いので、なるべく冷静な判断を心がけていただきたい。

第16回電撃小説大賞最終選考作品から出版された『俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長』は、本文の多くの描写を『バカとテストと召喚獣』などを始めとする他社有名ライトノベル作品から抜粋、改変して掲載していた事が発覚。
1巻で打ち切り、回収される騒動となった。
他にもメディアワークス文庫から出版された『思い出したくもない人生最悪の96時間』は、ミリタリーFPS『Call of Duty: Modern Warfare』のストーリーやキャラ設定が知らずに読んだらノベライズかと思ったと言われるレベルで模倣されており、やはり問題となった。

また、盗作以外にも不祥事というものは起きるもので、(ライトノベルではないが)角川から出版された『からくり同心景』はあろうことか編集者が二巻の原稿を無断で書き換えた結果ほぼ別物になったため、
大激怒した作者の意向で発売を中止し、刊行済の一巻*9も絶版となった。

編集側の不手際によるトラブルの常連として有名だったのがフェザー文庫で、『攻撃魔術の使えない魔術師』は編集側との対立を理由に続刊とweb連載双方の凍結を作者が宣言。
ウォルテニア戦記』に至ってはキャパシティを超過した仕事をイラストレーターに強要し、案の定難色を示されたので交代と相成り、
それ以降もトラブルを起こした編集に愛想が尽きたのか作者が契約を解除したため結局3巻で打ち切りになった挙句、作者と縁が深かったHJ文庫に掠め取られてしまった。
こういった数々の所業が響いたのか、フェザー文庫は2015年を最後に新刊が途絶えており、レーベルとしても実質的に息の根が止まっているのが現状である。


◇作者逝去による打ち切り

漫画と同じく作者の病気や死亡によって続行不可能となる場合もある。
「トリニティ・ブラッド」(2004年作者逝去)、「風の聖痕」(2009年作者逝去)、「えむえむっ!」(2011年作者逝去)、「ゼロの使い魔」(2013年作者逝去)、「はてな☆イリュージョン」(2016年作者逝去)などアニメ化にもなった有名作・有名作者の作品ではあるが、やはり作者の急逝によって絶筆状態となってしまった。
ただし「トリニティ・ブラッド」は最終巻末に作者の構想ノートが掲載され今後のプロットが多少把握できる。

また「ゼロの使い魔」は、逝去の要因となった病気が比較的時間の猶予があるガンであったこともあり、作者が自身の病状の進行から完結まで生きられないと判断してプロットを遺していた。
作者及びおよび遺族の意向により残された2巻分(最終巻含む)のプロットを元に、(代筆者に降りかかる不都合回避の意味合いもあり)実際の作者不詳・ヤマグチノボル氏名義として最終刊までの刊行を目指し、
2016年2月より刊行が再開され、2017年2月に最終刊が発売され無事完結した(後に代筆者は公開されている)。
同様に「はてな☆イリュージョン」も、作者が関わっていた「StoryWorks」が執筆を引き継ぐ形で、タイトルを「はてな☆イリュージョンR」と改めて2019年より再スタートされている。

作者が「誰かがこの物語を引き継いでくれればいい」との意向を生前に示しており、それによって続いている珍しいケースもある。
栗本薫執筆の「グイン・サーガ」シリーズなどはこの典型例で、氏が執筆していた130巻の途中以降の物語は、
複数の作者がそれぞれグインサーガの世界観を咀嚼し、執筆する形で小説を紡いでいっており、今なお続巻が出ている。

他にも、架空戦記、SF、漫画原作など幅広い分野で活躍し、コアなファン層を獲得していた佐藤大輔氏が2017年に虚血性心疾患で急逝したことで、
氏の代表作である「レッドサン・ブラッククロス」や漫画原作を努めていた「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」などは未完・打ち切りとなった。
特に「皇国の守護者」に至っては続刊がなくなるだけでなく、伊藤悠氏が作画を担当した漫画版が絶版・電子書籍化もされないことが決定した*10
ただし佐藤氏の場合、作品が途中で中断され、音沙汰が途絶えたあとに別作品の連載が始まることがほとんど(というより「征途」以外の長編すべて)であったため、仮に急逝がなくても何作品が完結したかは定かではないが。

珍しい例としては、一般小説の部類に入るが2010年に急逝した北森鴻が挙げられる。
氏が執筆していたジャンルはミステリーであり、亡くなった当時、映像化もされた人気シリーズ「蓮丈那智フィールドファイル​」の長編が雑誌連載中だった。
当然ながら作中で用いられたトリックの答えは作者の頭の中にしかなく、誰かが引き継いで完結させる事は不可能に思われていた。
……ところが、作者の遺品であるノートの中に、作中に登場した暗号の解き方を記したメモ書きが発見された事で事態は大きく好転する。
担当編集者、北森氏の婚約者であり同じく作家の浅野里沙子の両名は暗号の答えから逆算してトリックと事件の真相を解き明かし、
協議を重ねた結果浅野氏が後を継いで執筆、北森氏の逝去から1年以上を経て完結に導いている。
上述した通りこれは「作者がたまたまトリックの解き方に繋がるヒントを残していた」「作者の事をよく知る近しい人物が後を継いで書くだけの筆力を持っていた」お蔭で未完から完結へ至ったという非常に珍しいケースである。
その後、単行本未収録の短編と生前に残してあったプロットを浅野氏が清書した新作を併せた新刊が作者の死後4年以上経過してから発表され、読者を驚かせている。

作者が自分の死期を悟り事前に完結までの構想を練っていた場合は代筆者による完結の希望も残されている*11が、急逝であった場合はもう本当にどうしようもない。
作品を世に出せる唯一の存在がもうこの世におらず、直面したファンの叫びは悲痛なものとなる。


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最終更新:2021年03月08日 18:05

*1 ジャンプも3回短期打ち切りでバイバイジャンプとか言われていることもあるし…

*2 内容が内容なので

*3 初の受賞者である吉田直は受賞作『ジェノサイド・エンジェル 叛逆の神々』は単巻で完結しているものの、その後連載作『トリニティ・ブラッド』が作者急逝で絶筆。第14回受賞作『シュガーダーク 埋められた闇と少女』は作者が続編の意志を示していたが、ブログで頓挫したことを明かしている。

*4 挿絵担当者名義と艦これ担当名義ではTwitterアカウントが別。さらに当時の艦これの人気から後者の方がフォロワーの数が多かった

*5 イラストレーターは新規

*6 異世界転生前の主人公の経歴に「日本軍人として中国大陸で虐殺を繰り返した」と取られなくもない部分があった。

*7 中国内部では、先に環球時報などで主人公の経歴を「日中戦争参加者だ」と扱う報道があり、事前に炎上していた。

*8 世界大戦中の呼び名が英名に変わったことなどから、相手は中国人ではなく、史実の日中戦争とは無関係と考えるのが妥当。そもそも件の下りは主人公の強さを示すための記述であり、捕虜と民間人を虐殺したという意味なら強さも何もない。

*9 やはり同様の無断書き換えが存在した

*10 著作権継承者の意向による

*11 比較的完結間近だった「ゼロの使い魔」はそれによって完結できたが、「風の聖痕」の場合は死期を悟った作者が『涙ながらに、編集に対し絶筆になる事を謝罪する』という哀しく生々しいやり取りがあった事が、作者死去後の最終巻にて編集サイドからの文章で明かされている。