登録日:2021/02/28 Sun 15:36:09
更新日:2025/04/15 Tue 18:44:06
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ここでは、
ライトノベルを中心とした小説媒体作品における打ち切りについて、背景事情や具体的な様相について紹介する。
概要
漫画雑誌における打ち切りと似ているが、毎回書き下ろしで単行本を発売する形式のラノベもなかなかシビアである。
俗に「発売から一週間の売上」と「一巻と二巻の売上差」が基準となって続刊が決定される事が多いと言われ、
そのためかどうか余程一巻の売上が低くない限り(そして単巻
読み切りを除いて)大体の出版社では最低三巻までシリーズ展開してもらえる事が多い。
その一方、たとえ長寿シリーズだろうが新人賞受賞作だろうがコアな人気を持つ作品だろうが、売上が低迷してしまえば、
あとがきや帯で続刊の発表もあり打ち切りの気配もなかったシリーズ途中なのにバッサリと打ち切られてしまうことも良くある。
加えて作者がどんなに続きを書きたくても、企画が通らず放置されてしまったり、
あるいは出版したいあまり無理な企画を通してしまって作者が書けなくなってストップ。
結果的に長期間放置されて実質打ち切り状態というケースもある。
というか、雑誌に連載している等の場合を除き、そもそも打ちきりかどうか読者視点だとさっぱりわからないのも悩ましい問題である。
雑誌掲載で定期的に最新話の出る漫画と違い、単行本がベースであるライトノベルの出版間隔は「大体〇ヶ月毎に新刊が出る」といった感じに不定期で、その期間も作者によってまちまち。
単純に遅筆だったり他の作品を書いたりしてるせいで刊行が止まり、年単位で間を空けた後に新刊が出るなんてのもよくある事。
それにごく一部ではあるが、時間を置いて別レーベルに移籍し続行する作品も存在。こっちでは主に「諸事情でそのレーベルで展開出来なくなったため移籍」か「レーベル自体が消滅したため他に移籍せざるを得なくなった」ケースが殆ど。
また打ち切りが決まった後の展開も、雑誌掲載作品とは大きく違う。雑誌なら打ち切りの旨を記す等した上で締めの回を掲載したりもするが、単行本主体だと既刊のみで展開は終了、以後の出版は音沙汰無しとなるのが殆どなのだ。
作者がSNSやブログ等での近況報告にて「続刊がもうない」報告をする場合もあるが、新刊報告に比べるとやはりそれも稀である。
『
小説家になろう』などWeb小説からの出版がメジャーになっているのはこれらの背景事情もあり、
「既に固定ファンが一定数ついている」事と「作品自体がある程度(数冊分)ストックが確保されている」という2点、場合によっては「一定以上のペースで書き続けられるのが実証されている」点もから、出版社の頼もしい味方となっている。
ただ如何せん粗製濫造になりつつある感も否めず、
弱小出版社が新規に立ち上げたレーベルなどでは、とりあえず適当に出版させた挙句に売上が見込めずあっさり途中で打ち切りなんてケースも多々発生している。
また作者が素人なのを良いことに作家としてはありえない(安すぎる)原稿料で契約をさせたり、
ひどい時には編集も「Web小説サイト見てランキング上位作品に声をかけるだけ」の素人まがい、というか素人の人物な事もあり、トラブルに発展することもしばしば。
これらの場合、そのほとんどが完結ではなく投げっぱなしでの中断で幕を閉じる。
念のため付記しておくが、これらはWeb小説を書籍化した出版社や編集部の中のごく一部でしかない。
幸いWeb小説だから書籍化が打ち切られてもネットで連載を最後まで読める……と安心はできない。
出版社との契約によって既刊分がダイジェスト化されたり、削除されたり、打ち切りのショックから作家が執筆を放棄したり、
あるいはこれら全部がまとめて発生した結果、まったく作品が読めなくなってしまう事も少なくないのだ。
特にWeb版と書籍版とで大幅改稿されていた作品だと悲惨である。
しかも恐ろしい事に某大手ラノベレーベルでは「スリーアウト制」があるとの噂が実しやかに囁かれている。
つまり「打ち切りが3回発生したら二度とその出版社で本は出させてもらえない」という事である。
もちろんそうでない出版社の方が多いだろうし、あくまでもネットで流布されている噂レベルの話ではあるが、
作家志望者や新人作家が戦々恐々としているだろう事は想像に難くない。
余談だが、一部ではコミカライズはライトノベル版とは別の書籍化作品という扱いになっている出版社もあるらしく、たまに
ライトノベル版が打ち切られたのにコミカライズは連載続行なんてパターンも見られる。
場合によっては
ライトノベル版の少し先でWeb版の更新が年単位で途絶えたのにコミカライズはWeb版最終更新分の手前あたりから独自要素を加え始めてそのまま話が進んでいるケースもある(『
航宙軍士官、冒険者になる』)。
ある意味ライトノベル版とは別にWeb版という原作が存在する特殊な形態だからこそ発生しうる現象と言えなくもないだろう。
その一方で『終末なにしてますか?』や『この恋、その未来』のように打ち切りが決定していたにもかかわらず、
読者側からの続刊希望のファンレターが多かったためシリーズ続刊が再決定されるなどのケースもある。やはりファンの力は偉大であるといえよう。
全部が全部そんな奇跡に恵まれるとも限らないのが厳しいところではあるが……。
なお一般(?)小説の部類に入るが『家畜人ヤプー』も最初は打ち切り作品であり、70年代までは「未完の名作」として扱われていた。
だがその人気のせいか80年代~90年代初めの単行本で加筆修正され完結、石ノ森章太郎によるコミカライズ版もアシスタントのシュガー佐藤の手によって同時期に完結した。
尤も『家畜人ヤプー』に関しては作者が覆面作家であるため、「連載版と完結編では作者が違うのでは」という説が存在する。最終的に「作者」として完結させた人が故人なので真偽は不明だが。
いずれにせよ応援したい作家や作品シリーズがあれば、新刊発売後になるべく早く購入する事が応援に繋がるので、覚えておこう。
今回のリストには膨大すぎる上、今後も大量に増えていく事を踏まえ「売上不振、人気無しで打ち切り」の作品は記載しない。
◇作者事情によるケース
前述の通り、編集部サイドの都合による打ち切りもあれば、作者の自己都合による打ち切りも多々存在する。
大人の事情による代表例。この手のトラブルとしては、おそらく最も有名。
アニメ化で一躍人気となったが、その後は作者のモチベーション低下に伴い、トラブルを連発していく。極めつけは中文版を発行するとなった際、作者は「
無許可で話を進めた」と主張し、やむなく中文版の出版はお蔵入り。
この騒動により編集部サイドが激怒し、修復不能なまでに関係が悪化。挙句の果てに「他の出版社に原稿を持ち込む」という
社会のルールを無視するどころか、出版社との契約問題にまで発展しかねない暴挙へ走り、重版停止および業界内で干される事態に発展。
作品の成功自体はメディアミックス戦略が大きいものの、あろうことか作者は「自身のみの実力」と思い込み、すっかり天狗になってしまう。これら作者自身の傲慢さが招いた結果のため、編集部サイドはほぼ悪くない。
ひと悶着の末、講談社ラノベ文庫に移籍。再発刊の前置きとして新作『
放課後バトルフィールド』を刊行するが、まったく売れずに第1巻であえなく打ち切り。さらに
コンプライアンス問題まで抵触し、今度は講談社ラノベ文庫からも見限られてしまう。その後、アニメ版権を欲していたオーバーラップ文庫から声がかかり、版権問題もクリアして再発刊となった。
ちなみに、生命線である挿絵のイラストレーターも変更。MF文庫版を基にしたアニメとの差異も大きく、これを機に見限った人も多い。
先述のエピソードが示している通り、作者は
素行がすこぶる悪いことで有名。無責任かつ協調性に欠けた言動が目立ち、各方面から
「プロ意識の低さ」を指摘されている。現在もSNSでたびたび暴言を繰り返しており、まるで反省する様子を見せていない。さらに拾ってもらったオーバーラップ文庫に対し、ブログで見るに耐えない暴言を吐いてる。
肝心の原作本編については、巻を重ねるごとに話のクオリティが低下。最新の第12巻については、コアな読者ですら酷評するほど薄い内容となっている。さらに同巻のあとがきで「次巻で最終巻」と発表したものの、約6年半にわたって発売される気配がなかった。
2024年9月、作者のXアカウント上で
「金にならない」という理由の元、
事実上の断筆宣言をした。
pixivアカウントで投稿していたIS外伝の短編小説も同じく、今後は執筆する意向がないと示した。この発言により本作は、
名実ともに打ち切りとなった。
一連の流れが広く知られるようになって以降、ネット上では
「作者に恵まれなかった作品」と揶揄されている。
2018年度秋に向けてのアニメ化も決定していた作品だったが、在邦中国人ネットユーザーが作内の記述を指摘、旧Twitter等で拡散されたことを発端に原作者がTwitterにて中国・韓国へのヘイトスピーチをしていた事も発覚。
その後騒ぎは中国のネットユーザーを巻き込んで過激化の一途を辿り、メインキャラクター役の声優4人が降板する事態となり、遂にはアニメが制作中止となった上に原作小説既刊分すべて出荷停止となり(電子書籍版の小説は販売を継続している)、原作小説のWeb更新も止まってしまい、2020年11月には作者の退会により原作Web小説そのものが消失するなど事実上の
封印作品と化してしまった(同時に同作者の別作品である「食い詰め傭兵の幻想奇譚」の続刊も出なくなってしまっている)。
「口は災いの元」の典型的な例である。
そもそもの発端となった記述に関しても編集・校閲によるチェックがあれば十分防げたと思われるので、Web小説出版の際の出版社側の怠慢を指摘する声もある。
逆に不適切とされた記述に関して、不適切とする解釈に無理があると指摘する声もあった。
ただし、原作者のTwitterではヘイトスピーチ以外でも様々な著名人への誹謗中傷を呟いていたことも確認されており、仮にヘイトスピーチをしていなかったとしてもどちらにせよ何かしらの騒ぎは起きたのではと指摘する意見も多い。
なお、何故かコミカライズ版だけは2021年まで連載し続け完結を迎えた(これは「食い詰め傭兵の〜」も同様で2024年現在も連載中)。出版社が違うので方針も違うということだろうか。
1995年の第6回富士見ファンタジア大賞受賞作。
今なお語り草となるほどの傑作だが、同時に同大賞の選考基準において禁じ手である「続き物小説」で、「”超大作の一作目”にしか見えないような、ネタフリだらけの話」とも評されるだけに選考では
賛否両論あった様子。
にもかかわらず、1巻のみで以後20年以上にわたって続刊が発売されていない。
あくまでも噂レベルではあるが、本作の著者は原則的に副業禁止となる公務員(公立高校の国語教師)であったらしく、
商業デビューが職場に知られた結果、作家としての道を断念したのではないかという推測がなされている。
今は亡きザ・スニーカーで連載されていた安井健太郎作のアクション
ファンタジー作品。
第3回スニーカー大賞の受賞作で、同賞の募集広告にイラストが使われるなど90年代末期~00年代初期のスニーカー文庫の顔と言える作品であった。
しかし2002年ごろから刊行が遅れがちになり、また作者は2006年からスニーカー大賞の審査員も務めていたが、それと同時期に単行本の刊行が完全にストップ。
その後2011年を最後に作者は審査員から離れるが、翌年にTwitterを開始すると同時に
「スニーカー編集部から絶縁状を受け取った」ことを明かし、
以降本作(および同時に連載していた別の作品)はスニーカー文庫での続刊はないことを表明した。
打ち切りになった原因は作者曰く「自分の遅筆」と「書いたものが到底ライトノベルとは言えない」とのことで、つまり『全面的に自分(作者)が悪い』と言っているに等しく、スニーカー編集部には一切非がないとも釈明している。
その後、作者は同一世界観の別作品『アークIX』を講談社ラノベ文庫から発刊。さらに本作のリブート版『ラグナロク:Re』が「小説家になろう」にて連載開始、オーバーラップ文庫から書籍化もなされることになった。
その『Re』も「小説家になろう」では2020年を最後に止まっているが、2024年に作者がFantiaを開設し外伝を発表。『Re』の続きにも意欲を示している。
なお、スニーカー大賞の大賞は選定されない年が多く、非常に狭き門として有名で、実際に受賞した作品はいずれも名作として高い評価を受けているが
一方で受賞作のシリーズ(および作家)の多くが唐突な長期休止や打ち切りに縁があり、
このため
「スニーカー大賞の受賞者は筆が止まる呪いにかかる」という
都市伝説がまことしやかにささやかれている。
これに関しては『ラグナロク』の休止に前後してその次の大賞受賞作
『涼宮ハルヒ』シリーズが約4年に及ぶ新刊の発表延期となった辺りから噂されるようになったものであるが、
第15回受賞作の『子ひつじは迷わない』(選考時タイトルは『なるたま〜あるいは学園パズル』)は、第6巻で明確にシリーズ休止を表明しており、作者は現在も新作を発表中。
『
涼宮ハルヒ』は(その後も数年置きという長期ブランクを挟みながらも)不定期に発表されメディアミックスもしばしば行われており、『ラグナロク』も前述通り別レーベルで再開しているので、
現在ではそのジンクスが少しずつではあるが打ち破られつつあるとも言える。
荒山徹の小説。
元々は創土社のクトゥルー・ミュトス・ファイルズより上巻が刊行され、後に完結編となる下巻が刊行予定だった作品だった。
が、下巻に登場する史実上の実在人物に対して、今日では事実とは異なるとされる定説に基づいた描写がされていた事で、
その事に対して最低限の注釈を入れるべきと提案した出版社に対して著者がゴネた結果、出版社の判断で下巻刊行が中止される事に。
後にアドレナライズより電子書籍という形で完全版が刊行された。
この一件の影響か、創土社の書籍に作品を幾つか寄稿していた作家の朝松健が、活動の場をアドレナライズに移している事が確認できる。
◇メディア展開終了によるケース
ライトノベルとメディアミックスは切っても切れない関係にあり、やはり頻繁に発生するのがこのケースである。
母体となる作品の展開が終了してしまえば、派生作品であるライトノベルもまた当然終了を余儀なくされてしまう。
初代PS版発売から十年以上刊行が続いた『
高機動幻想ガンパレード・マーチ』のライトノベルシリーズなどは極めて異例のケースである。最終巻はやや尻切れトンボな感が否めないが……。
例えば新
ソード・ワールドRPGリプレイ
ヘッポコ冒険者シリーズ篇を題材にした『輝け!へっぽこ冒険譚』シリーズは、単行本第3巻刊行後に
母体となるソード・ワールドTRPGのバージョンアップが決定。
世界観も何もかもが一新されてしまったため、おそらく打ち切りで間違いないだろうと思われる。
一方、長らく刊行途絶、同様の理由で打ち切りだろうと思われていた『サーラの冒険』シリーズは、2005年に10年ぶりの新刊発売によって全6巻で完結したため、望みが一切無いわけではないが……。
◇イラスト関連によるケース
ライトノベルは出版社、作者、イラストレーターの三位一体で仕事が行われている。
漫画でも原作と作画が別のケースはあるが、ライトノベルは原則として必ずこの三者が存在しており、どれ一つ欠けても作品として成立する事はない。
打ち切りでこそないが、原稿はきっちり仕上がっているにもかかわらず、
イラストレーター側の予定が詰まってしまっていて挿絵が描けず発売延期、あるいは通常より挿絵枚数を減らして刊行……なんてケースはザラである。
特に人気イラストレーターほど顕著なため、皮肉にも有名ライトノベルで多く見られる。
また作者とイラストレーターが直接交流した結果の喧嘩や、編集部の方針との乖離なども発生しかねないため、
基本的には編集部を通してやり取りすることでトラブルを未然に防ぐ事が推奨されているようだ。
『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』などにおいて、作者とイラストレーターが頻繁に会って交流する光景が度々描かれているが、実際には有り得ない(有り得てはいけない)事だと思って貰った方がいい。
とはいえ挿絵が減ったり遅延しながらも刊行されるならまだ良い方で、
ひどい時はトラブルが発生してイラストレーターの差し替え、最悪は打ち切りになってしまう事もあるのが困り者。
せめてもの救いとして「イラストレーターの急逝で挿絵が用意できなくなったため刊行を止めるしかなくなった」は今のところ広く知られているケースでは存在しない。性質上、できるかできないかの二択なら、とはいえ権利・契約面の調整さえ済んでしまえば後任を指名できる性質ではあるのだが。
1997年から富士見ファンタジアで刊行されていたライトノベル。
世界の
気象操作を担当する気象精霊の少女たちが様々なトラブルを解決していく、あるいは一人前の気象精霊を目指して勉学に励む姿を描いて人気を博したが、
編集部が第二部連載開始をイラストレーターに連絡しなかったという大ポカを発端に連絡の行き違いが次々と発覚。最終的に2006年をもって打ち切りとなってしまった。
イラスト関連のトラブルによる打ち切りの典型的な例と言える。
幸い2014年9月から、Kindleにて自費出版が開始。富士見版の再録や未収録作書籍化の他、ペースは遅いが過去編『気象精霊ぷらくてぃか』の新作も発表されている。
実際は売上が原因による打ち切りだったと思われるが、直前に三者間でのトラブルが発生、炎上したので記載する。
本作のイラストレーターは『
艦隊これくしょん』の
金剛型を初めとした艦娘のデザインを多数手がけている人物だった(双方で別名義であるため伏せる)ため、
著者が出版社を通さずイラストレーターに宣伝を懇願するという行為に及んだのである。
挿絵担当者名義での宣伝をしてくれたものの、艦これ担当名義ではなかったのが著者は不満だったらしくさらに催促。
しかし(前述通りトラブル原因となるので当然の処置として)出版社からイラストレーターとの接触を禁止され、
イラストレーターは艦これ側のスケジュール進行で
新規イラストが出る度に「またかっぱ寿司の地下でキュウリを報酬に働かされている」とネタにされるほど多忙となり、そして打ち切り決定となったため、著者はTwitterなどで不満を爆発させてしまった。
繰り返しになるが、このようなトラブルの原因となるため、多くの出版社では作者とイラストレーターの直接交流を避けるような方針が取られている。
ちなみに本作は後になってKindleなどで自費出版(イラストレーターは新規)という形で出版が開始されているものの、
当の著者がその後もTwitter等で数々の問題ある行動や発言を繰り返した事で悪評頻々となってしまい、現在はほぼ誰からも顧みられていない状況に陥っている。
一方、当初のイラストレーターの方はこの件が原因か不明だが、現在艦これの運営であるC2機関所属になっている事が確認されている。
こちらも売上が原因による打ち切りだと思われるが、作者に非が一切無くイラストレーターのみの不祥事という極めて稀なケースとなっている。
本作では挿絵にとある同人イラストレーターを起用したのだが、その挿絵の全体的なクオリティの低さに加え、発売から数日後に特定個人に対する差別的発言を行ったことにより大炎上。
その後の対応でさらに火に油を注ぐ事になり、最終的には作品にまで飛び火。評価を大きく落とす結果となってしまった。
繰り返すが作者に非は一切無く、物語自体は好評であった。
- 女勇者に自分の性奴隷にならないとパーティを追放すると脅されたので離脱を選択します
著者がTwitter上で自作品のイラストレーターに対する誹謗中傷を展開。
結果、刊行が予定されていた3巻以降の続刊、並びに連載予定のコミカライズ版が中止される事が発表された。
元々著者はTwitter上で問題発言の類を常習的に発しており、編集部も早い段階で警戒態勢を取っていた事を声明している。
一応、著者の他の作品は打ち切りにはなっておらず、現在も本作品以外は「小説家になろう」で連載している。
アニメ化もされた「最弱無敗の神装機竜」などで知られる明月千里のラブコメ作品。
2020年4月にTwitterにて著者より「編集からイラストレーターが音信不通になったとの連絡を受け、今後のスケジュール調整の兼ね合いから作品を完結とする」旨の発表が出された。なお2020年12月現在、版元のGA文庫からの公式な声明は出ておらず、イラストレーターの変更ではなく打ち切りという点や、発表直近に音信不通とされていた件のイラストレーターのTwitterに投稿(当件とは無関係の内容)があった点、同じイラストレーターが挿絵を担当している他の作品は普通に続刊している事などが一部読者の物議を醸している。
minoによるライトノベル作品。ファミ通文庫より2015年から2019年1月まで10巻まで刊行。ヤングエースUPにおいて原作イラストの和武はざのによる漫画版も連載していた。(コミックスは未刊行)
作者により、2020年6月にKADOKAWA側に出版契約の解除を申請したと表明され打ちきりとなった。
KADOKAWA側編集部(ファミ通文庫編集部・ヤングエースUP編集部)がイラスト・コミカライズ担当者との連絡が途絶したと作者に伝えられたため、代わりとして新たなイラスト担当者と仮イラストを含めてを作者に紹介され、作者は快諾したところ、それ以降1年以上放置される。
放置後、編集部に問い合わせたところ新たなイラスト担当者に発注せず作者に連絡を放置していたことが謝罪とともに発覚。信頼関係が崩壊したこと、新刊出版が見込めないことから出版契約を解除したようである。
なおイラスト変更前のイラストレーターはアニメ化もされた自身のオリジナル漫画作品の連載を抱えており、編集部にイラスト・コミカライズ担当の降板を伝えていたことは確認されていないが、打ち切りに至った経緯としてはファミ通文庫編集部の責任が大きいと見込まれる。
◇不祥事によるケース
ライトノベル作家が逮捕にまで発展した事例は確認される限りほぼ無いが、他作品の「盗作」が発覚して打ち切りになってしまう等のケースは存在する。
一方、用語や単語が似ている、被ったなど些細な点をあげつらってパクリだ盗作だと声をあげ、打ち切りを狙うアンチや野次馬も多いので、なるべく冷静な判断を心がけていただきたい。
盗作で有名な例として、第16回電撃小説大賞最終選考作品から出版された『
俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長』は、本文の多くの描写を『バカとテストと召喚獣』などを始めとする
他社有名ライトノベル作品から抜粋、改変して掲載していた事が発覚。
1巻で打ち切り、回収される騒動となった。
他にもメディアワークス文庫から出版された『思い出したくもない人生最悪の96時間』は、ミリタリーFPS『Call of Duty: Modern Warfare』のストーリーやキャラ設定が
知らずに読んだらノベライズかと思ったと言われるレベルで模倣されており、やはり問題となった。こちらもさすがにというか絶版処置。
また、盗作以外にも不祥事というものは起きるもので、(ライトノベルではないが)角川から出版された『からくり同心景』は
あろうことか担当編集者が二巻の原稿を無断で書き換えており、ほぼ別物になっていたため、大激怒した作者の意向で発売を中止し、刊行済の一巻も絶版となった。
編集側の不手際によるトラブルの常連として有名だったのがフェザー文庫で、『攻撃魔術の使えない魔術師』は編集側との対立を理由に続刊とweb連載双方の凍結を作者が宣言し、その後2022年に改めてリブート連載が始まりそっちはMFブックスから書籍化。
『
ウォルテニア戦記』に至ってはキャパシティを超過した仕事をイラストレーターに強要し、案の定難色を示されたので交代と相成り、
それ以降もトラブルを起こした編集に愛想が尽きたのか作者が契約を解除したため結局3巻で打ち切りになった挙句、作者と縁が深かったHJノベルスに掠め取られてしまった。
こういった数々の所業が響いたのか、フェザー文庫は2015年を最後に新刊が途絶えており、レーベルとしても実質的に息の根が止まっているのが現状である。
◇作者逝去によるケース
漫画と同じく作者の病気や死亡によって続行不可能となる場合もある。
『トリニティ・ブラッド』(2004年作者逝去)、『
風の聖痕』(2009年作者逝去)、『
えむえむっ!』(2011年作者逝去)、『
ゼロの使い魔』(2013年作者逝去)、『はてな☆イリュージョン』(2016年作者逝去)などアニメ化にもなった有名作・有名作者の作品ではあるが、やはり作者の急逝によって絶筆状態となってしまった。
ただし『トリニティ・ブラッド』は最終巻末に作者の構想ノートが掲載され今後のプロットが多少把握できる。
また『
ゼロの使い魔』は、逝去の要因となった病気が比較的時間の猶予があるガンであったこともあり、作者が自身の病状の進行から完結まで生きられないと判断してプロットを遺していた。
作者および遺族の意向により残された2巻分(最終巻含む)のプロットを元に、(代筆者に降りかかる不都合回避の意味合いもあり)実際の作者不詳・
ヤマグチノボル氏名義として最終刊までの刊行を目指し、
2016年2月より刊行が再開され、2017年2月に最終刊が発売され無事完結した(後に代筆者は公開されている)。
同様に『はてな☆イリュージョン』も、作者が関わっていた「StoryWorks」が執筆を引き継ぐ形で、タイトルを「はてな☆イリュージョンR」と改めて2019年より
再スタートされている。
このようにある程度猶予があると判断した作者がプロットを遺すことで「完結できなくともなんとかはできるように…」と手を打っておくケースはライトノベル作品でも珍しくない。
作者が「誰かがこの物語を引き継いでくれればいい」との意向を生前に示しており、それによって続いている珍しいケースもある。
栗本薫執筆の『グイン・サーガ』シリーズなどはこの典型例で、氏が執筆していた130巻の途中以降の物語は、
複数の作者がそれぞれ作品の世界観を咀嚼し、執筆する形で小説を紡いでいっており、今なお続巻が出ている。
他にも、架空戦記、SF、漫画原作など幅広い分野で活躍し、コアなファン層を獲得していた佐藤大輔氏が2017年に虚血性心疾患で急逝したことで、
氏の代表作である『レッドサン・ブラッククロス』や漫画原作を務めていた『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』などは未完・打ち切りとなった。
特に『
皇国の守護者』に至っては続刊がなくなるだけでなく、伊藤悠氏が作画を担当した漫画版が絶版・電子書籍化もされないことが決定した。
ただし佐藤氏の場合、作品が途中で中断され、音沙汰が途絶えたあとに別作品の連載が始まることがほとんど(というより『征途』以外の長編すべて)であったため、仮に急逝がなくても何作品が完結したかは定かではないのと、「作品を引き継ぐことになる人々の判断で打ち切りを選択」はそもそも『学園黙示録』も同一の対応がとられたことから、小説のみ(佐藤先生が単独で制作する)作品でそういった「これは佐藤先生にしか書けないため打ち切る・佐藤先生への配慮としていったん封印する」判断がなされてもおかしくない作家ではあった。大サトー先生がそれだけ熱心なファンやフォロワーの多い作家であったからこそと言えるか。
珍しい例としては、一般小説の部類に入るが2010年に急逝した北森鴻が挙げられる。
氏が執筆していたジャンルは
ミステリーであり、亡くなった当時、映像化もされた人気シリーズ『蓮丈那智フィールドファイル』の長編が雑誌連載中だった。
当然ながら作中で用いられたトリックの答えは作者の頭の中にしかなく、誰かが引き継いで完結させる事は不可能に思われていた。
……ところが、作者の遺品であるノートの中に、作中に登場した暗号の解き方を記したメモ書きが発見された事で事態は大きく好転する。
担当編集者、北森氏の婚約者であり同じく作家の浅野里沙子の両名は暗号の答えから逆算してトリックと事件の真相を解き明かし、
協議を重ねた結果浅野氏が後を継いで執筆、北森氏の逝去から1年以上を経て完結に導いている。
上述した通りこれは
「作者がたまたまトリックの解き方に繋がるヒントを残していた」「作者の事をよく知る近しい人物が後を継いで書くだけの筆力を持っていた」お蔭で未完から完結へ至ったという非常に珍しいケースである。
その後、単行本未収録の短編と生前に残してあったプロットを浅野氏が清書した新作を併せた新刊が作者の死後4年以上経過してから発表され、読者を驚かせている。
作者が自分の死期を悟り事前に完結までの構想を練っていた場合は代筆者による完結の希望も残されているが、急逝であった場合はもう本当にどうしようもない。
作品を世に出せる唯一の存在がもうこの世におらず、直面したファンの叫びは悲痛なものとなる。
追記・修正は、未だ続刊が出ないままの作品達に想いを馳せつつお願いします。
作者に対する誹謗中傷・人格否定を書き込む行為は絶対におやめください。発見次第規制されます。
最終更新:2025年04月15日 18:44