ポケモンの売買

登録日:2021/09/10 Fri 00:15:56
更新日:2024/11/23 Sat 20:38:13
所要時間:約 9 分で読めます





ポケットモンスター』シリーズにおける、ポケモン世界の食肉事情のように 大きな謎の一つ で、割と不自然なぐらい公式からもスルーされている疑問点がある。

それが、 ポケモンの売買ってありなの? という謎である。

なお、「現実世界におけるポケモンのデータのRMT(リアルマネートレード)*1」については本項で扱うテーマとは無関係なので、ここでは取り上げない。


概要

現実世界で「を飼いたい」「を飼いたい」と思った際、一般的に取る手段といえばなんだろうか?
「繁殖に成功させた知り合いから譲り受ける」「保護団体や保健所から引き取る」というのも一つの手だろうが、一番よく用いられる手法は「ペットショップに行ってお金と引き換えにペットを購入する」だろう。
相応の金額がかかる代わりに、言い方は悪いが「商品」として安定した品質を保っておりサポートも手厚い、というメリットは大きいからだ。

が、ポケモン世界に目をやると、このごく一般的だろう手段があり得ないぐらいスルーされていることに気づくはずだ
そもそも「ペットショップ」ならぬ「ポケモンショップ」が全くと言っていいほど登場しない。

ゲーム版の主人公は基本的に「ポケモンを弱らせてゲットする」という手法を取るし、アニメのサトシも当初はゲーム版同様の手法を、近年は「絆を結んでゲット」という流れが多くなっているが、やはり「野生のポケモンを自力でゲットする」という原則は変わらない。

ゲーム・アニメに共通する描写として、他人から無償で譲渡される、互いに合意の上でポケモン同士を交換し合うのは問題ないのは明白なのだが、 現金を対価に譲渡するのがどうなのかどうかはなぜか不自然なほどぼかされている

可能性としては、
①法律で明確に禁止されており、取引するだけで逮捕
②違法ではないが、マナーとして忌避されており、サトシのような善良なトレーナーが手を出すことはない
③あくまで子供向けのゲーム/アニメなので省略されているだけで、世界観上は普通に存在する
のいずれかだと思われるが……。

無償の譲渡が可能である以上は、①の「法で禁止されている」可能性はかなり低い。
これは、例えばポケモンに首輪をつけて無償でポケモンを譲った後、首輪代としてお金を受け取る、といったやり用でいくらでも回避が可能なので禁止することに事実上の意味が無くなってしまうため。

一応、ゲーム中のトレーナーの庇護下にあるポケモンにモンスターボールを投げると初代より一貫して「ひとのものをとったらどろぼう!」と表示されることから、ポケモンは人間の所有物として扱われていることがうかがえる。
アニメでもポケモンが騒ぎを起こした場合、トレーナーが責任を問われていることがあり、所有権と監督責任の概念があることは共通する。

なお、明らかな事実としては「咎められるのは生体に限られる」事はわかっている。
これは、カメール、パラセクトなどの図鑑の記述の他、ヤドンのしっぽが珍味として取引されていることからもわかる(金銀での採取過程は違法だったが)。
同様の事例についてはポケモン世界の食肉事情も参照のこと。

もし仮にポケモンの売買が可能だとしても、今度は「おや」の問題が出てくる。
ポケモンはおや以外の言うことは聞かないことがあり、主人公はジムバッジ等の権威により従わせている設定である。
しかし作中の表現からしても、ジムバッジの獲得は簡単なことではなく、本格的にポケモンバトルのために鍛えていなければ1つ取得することすらままならない事が分かる。実際、即戦力になるポケモンでも入手してすぐ挑んでも、大概はとても歯が立たない。
ポケモンショップを開くにしても、このジムバッジを持った少数だけを相手にしたニッチな産業なのか、そもそも戦わせる気がない相手にしか売らないのか、言うことを聞かないことを前提に取引しているのかも気になる所である。
おまけに、ポケモン博士がくれる御三家などや下記のコイキング等は、なぜか親が自分になっている。
ポケモンのおやの権利を譲渡し、ポケモンを新しいおやに従わせる手段があるのかもしれないが、そんな便利な技術をなぜ主人公が利用できないのか*2、を考えるとポケモン世界の闇に触れてしまうのかもしれない。*3

メタ的な話で言えば、ポケモンを収集するゲームなのに、お金で解決してしまっては元も子もなくなってしまうが、かといってポケモンの売買は禁止であると明言しようにも合理的な理由もつけられないため、あえてぼかされているとみられ、今後とも明らかになることはないだろう。
おやに関しては基本的に、保護或いは飼育扱いで正式なおやが決まっていないポケモンを譲り受ける場合はおやが主人公、トレーナーが育てたポケモンを交換などで譲り受ける場合はおやが元のトレーナーという扱いで概ね統一されている。
また、ポケモンは完全な野生動物ではなく元人間とされるポケモンや、品種改良されていると思われるポケモンも少なからず存在することが示唆されているため、現金で売買すると倫理的にヤバいという事情もあるのかもしれない。捕まえて戦わせるのはいいの?という疑問は置いておいて

作中で確認できるポケモンの売買に関する描写


怪しいコイキング売り

初代のおつきみやま前のポケモンセンターなどにいるおじさん。 ゲーム中で明確に現金を対価にポケモンを売っている 極めて希少な存在である。
その商売方法は、「秘密のポケモン コイキング」などとさも希少なポケモンであるかのようにセールストークを繰り広げ、実際に買うと雑魚ポケモンの代名詞……という典型的なぼったくり商人。
またブラック・ホワイトでも相変わらず同じ商売をやっているので、(同一人物なのであれば)特に逮捕されたりはしてない模様。
確かにコイキングは雑魚ポケモンであるが、何気に売られている時点では入手方法に乏しく(特にBWは野生の個体がいないため通信無しではここで買って繁殖するしかない)、進化させるとギャラドスとなり非常に強いという、実は売り手も買い手もWin-Winな取引である。
勿論後半になれば滅茶苦茶手に入りやすい*4のでそう考えると損かもしれないが、モンスターボールは200円なので代金を差し引いた場合はなんと300円で購入したこととなる。
モンスターボール自体は無料で手に入ることも多いが、それでも捕まえる手間を考えれば惜しくない。
…まぁそれはあくまで「ポケモンを知っている人間」から見た目線であり、実際のところは超弱小かつすぐ手に入るポケモンを知らない人間に売りつけるというのは問題行為。
おじさんとしても騙して売っている自覚はあるらしく「返品はだめ」と宣ってくる確信犯である。
ちなみにラプラス等と同様に「譲り受けた」扱いになるらしく、おやは自分となる。

彼にまつわる描写でさらに興味深いのは、ニビシティにいるこの詐欺に引っかかったトレーナーの会話である。
「怪しいオッサンに雑魚ポケモンを売りつけられた」ことに憤慨してはいるが、 ポケモンを現金で買った ことそのものにはなんとも反応を示していないのである。*5しかもそのことを特に隠すでもなく初対面の主人公に話しているので、後ろめたい感情は全く見られない。
「強いポケモンと偽って雑魚を売ったこと」はともかく、「ポケモンの売買そのもの」は違法ではない、ことを示唆する描写ともとれるが……。

アニメ版でも同様にコイキング他を高値で売りつけるあこぎな商売人として登場。
こちらでは、サイドストーリー第4話にてオーキド博士が彼の存在に対し 「ポケモンを売るとは何事じゃ!」 と激怒している。
これは公式媒体においてポケモンの売買の是非について触れられた希少なシーンだが、「①違法な行為が堂々と行われていることに激怒した」「②違法ではないが非常識な行為に驚愕した」「③普通に行われていることだがオーキド博士個人の倫理観・価値観として許せない行為だった」のいずれとも解釈可能なので、この発言だけでは「オーキド博士はダメな行為だと考えている」ということぐらいしかわからず、一般的な認識については不明瞭。
また、これに関してはあくまでもサイドストーリーなので現在の公式設定に組み込まれているのかは不明。
なお、オーキド博士とコイキング売りのCVはいずれも石塚運昇氏。
同じアニメのキャラで声優も同じながらポケモンへのスタンスが真逆なのは皮肉だろうか。

ゲームコーナー

現金の代替物でポケモンを手に入れることができる ことが明確に示されている希少な施設。
必要数のコインを現金で買ってしまえば、実質現金で買うのと同じことになる。
ただ、この施設の場合そもそもが ブラックジョークの塊 のような存在であり*6、「違法なポケモン売買を、コインを介することで取り締まりを免れている」可能性も高いため「法的にセーフ」な根拠となるかは微妙なところ。

ポケモンハンター

アニメ版に登場。ポケモンハンターJなどが該当する。
モンスターボールを使わず、ポケモンを無理やり捕まえ、マニアなどに密売する犯罪者 と明確に描写されている。
「ポケモンの売買を行う犯罪者」なのは明らかなのだが、ややこしいことにこの場合 そもそもモンスターボールを使わずにポケモンを捕獲すること そのものがポケモン世界では違法行為であり、「売買そのもの」が法的にどういう扱いなのかは正直曖昧。
少なくとも「顧客」の方がどうなっているのかについては何とも言われていない(顧客の中にはロケット団のようにそもそもの存在そのものが違法なものも含まれているが)。
「仮にモンスターボールを使って捕まえた個体を売り払ったら、違法行為になるのか?」については 明言は避けられている 。そもそも上記のコイキングやポリゴンのケースはボールごと販売されている訳だし。
中には電撃が放たれる檻に入れるケースもあった。ロケット団にも「素人なんじゃないの?捕まえたポケモンを自分で攻撃してダメージを与えるなんて」と指摘された。

ロケット団

「ポケモンなんて金儲けの道具だぜ!」という趣旨の発言をしており、作中では珍しいポケモンを狙っていることもあるので、「どうやってポケモンで金儲けをしているのか?」と考えると、やはり主な活動内容の一つは「ポケモンの密猟と密売」だと思われる。
とはいえ初代のゲーム内で明確なのは「ガラガラの骨を狙ってガラガラを殺す」ぐらいであり、もちろんガラガラの殺害が法的に禁止されているのは間違いないが、「骨の販売」の方は前述のように法的にはセーフな可能性が高い。
アニメでもポケモンのテーマパークの経営やポケモンを労働力としてこき使う、ポケモンを使った強盗などを行うといった活動もしているため、必ずしも売買が目的とは限らない。
なお、他の歴代「悪の組織」はもっとスケールが大きかったり崇高だったりする理念を掲げていることが多く、ダイレクトに「ポケモンで金儲けをしている」ことが示されているのはこのロケット団ぐらいだったりする。

サファリゾーン

直接ポケモンを売っているわけではないが、「入場料を取って、ポケモンを捕獲する機会を来場者に提供する」施設である。
現実のサファリパークなどと結び付けて考えると、サファリゾーン内のポケモンはサファリゾーン所有のポケモンである可能性が高いが、その辺りがハッキリと言及されたシーンはなく、謎は多い。

ポケモンずかん

ポケモンそのものの売買について直接的に示唆されたことはほぼないが、例えばピッピの図鑑では「ペットとして人気がある」「泥棒に狙われやすいので注意」という趣旨の記述がある。
泥棒がファンシーポケモンマニアで盗んだピッピを愛でようとしている可能性はもちろん捨てきれないが、一般的に言えばこれは「盗んだポケモンをペットとして売る泥棒がいる」ということだろう。少なくともそういう商売が(表立ってか裏取引なのかは不明だが)成り立つことは示されている。
この記述だけでは、売買そのものがどういう扱いなのかを読み解くのは困難だが……。*7



秘密の 記事 「ポケモンの売買」が
なんと たったの 500円!

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2024年11月23日 20:38

*1 ゲーム内通貨ではなく現金による取引のこと

*2 一応、貰える経験値の量が増えるメリットはある

*3 譲渡、売買しているのはポケモンの卵で、主人公が手にした瞬間に孵化した可能性もなくはないが、孵化したにしてはレベルはポケモンによってバラバラである。

*4 ボロつりざおを使えばあらゆる水辺で出現する、捕獲成功率が非常に高いためモンスターボール1個でもあっさり捕まる

*5 ちなみに件の彼はそれでも育て上げ、後にギャラドスになった事を喜んでいる

*6 運営がロケット団やギンガ団といった悪の組織である点、ゲームコーナーと景品交換所がわざわざ別の建物に分かれていることなど。ただし、コガネやキンセツ、ロケット団壊滅後のタマムシ等、悪の組織と無関係なゲームコーナーもある

*7 実際ゲーム中でもコワモテトレーナーがかわいいポケモンを繰り出してくる事もある