登録日:2022/05/14 (Sat) 22:58:20
更新日:2025/03/19 Wed 18:07:28
所要時間:約 10 分で読めます
『
銀魂』の登場人物。
モデルは言わずもがな、幕末の長州藩で多数の維新志士を輩出した松下村塾の
吉田松陰。
【概要】
銀時・
桂・
高杉達の師匠。
孤児であった銀時にとっては育ての親でもある。
本編開始時点では故人。
『紅桜篇』にて初めてその存在が語られるが、この時は後ろ姿のみだった。
その後、『紅蜘蛛篇』で銀時との出会い、『一国傾城篇』で別離、『将軍暗殺篇』で桂・高杉との出会い、そして死別が描かれた。
とある地方の田舎で私塾『松下村塾』を開き、銀時らをはじめ貧しい子供達に無償で剣術と手習いを教えていた。
淡い灰色をした長髪に中性的で整った顔立ちをした、一見女性と見まがえそうほどの美青年。
シルエットだけだと成長後の弟子を含めこの漫画に似たようなのが大勢いるだろうとか思ってはいけない。
常に笑顔を絶やさず敬語で話すどこか掴みどころのない飄々とした人物だが、桂が握ったおにぎりを勝手に食べたり、「巨人みたい(な強さ)だ」と銀時から言われた際「私は
阪神派です」とずれた返答をしたりとかなり天然な一面を見せる。
周囲の武家からは国家転覆を目論んでいるなどと警戒され疎まれていたが、当人としては
「侍とはそれぞれの生き方である」「人は生まれながらに弱さを抱えているがそれに抗うこともできる」(いずれも意訳)という信条を実践した程度のものであり、さして特別な事を教えているつもりはなかった。
だが、そうした普段の温和な様子に反してすさまじく剣術の腕が立ち、すれ違い様に相手数人の刀を粉砕するほど。
さらに素手でも軽い拳骨で相手を地面にめり込ませるなど、少ない描写で底知れない強さを見せつけた。
その実力たるや銀時をして一度も一本とる事が出来なかったほど。
また、学舎に夜討ちをかけようとする大人達と弟子達が衝突しそうになった際は、普段の穏やかな口調はそのままに凄んだ表情で大人達を畏怖させ一蹴した。
私が目障りならどこへなりとも出ていきましょう ですが…
剣(それ)を私の教え子たちに向けるというのなら 私は本当に国家位転覆しても構いませんよ
しかし、寛政の大獄が始まると松下村塾もその煽りを受け、とうとう松陽も捕らえられてしまう。
恩師を取り戻すため、攘夷戦争に身を投じる銀時らであったが...。
弟子達の奮戦も虚しく、攘夷運動は衰退の一途を辿り、遂には銀時を除き幕府軍に捕らえられてしまう。
天導衆に連れられ戦場に姿を現す松陽だったが、そこで天導衆は銀時に、仲間を犠牲に師を救うか、師を犠牲にして仲間を救うか究極の選択を突き付ける。
結果、銀時はかつて松陽と交わした「仲間」を守る約束を選び、自ら師を手にかける。
首を刎ねられる寸前、自分との約束を守ってくれた弟子に「ありがとう」といつもと変わらぬ穏やかな表情で感謝を告げ、その命を散らした。
これにより、銀時達三人は命を救われたものの、以降道を違える事となる。
また、この出来事がその後の銀時の「師弟関係」「約束」に強く拘る人間像に影響を及ぼしたといっても過言ではない。
このほか、投獄中見張りを担当していた
骸に手習いを教えていたほか、
朧と言葉を交わす様子も見られた。
そして月日は流れ、かつての弟子であった銀時と高杉は、それぞれ亡き師への想いを胸に刃を交える———。
以下、本編最終盤の
ネタバレを多分に含みます。
さらば
真選組篇以降のストーリーを未読・未視聴の方はご注意ください。
万事屋・
真選組・桂一派連合軍、見廻組、奈落による三つ巴の戦局により混迷を極める黒縄島に現れた天導衆の直属暗殺組織「天照院奈落」の増援部隊の船から突如漆黒の外套と編み笠、
烏の仮面を纏った一人の男が降り立つ。
『
虚』と呼ばれたその男は人外じみた力を振るい、剣技の達人である
沖田や信女、夜兎族である
神楽を同時に相手取っても容易く蹂躙する。
やがて銀時と対峙するが、化け物じみた強さを放つ虚の太刀筋に、無意識ながら銀時はギリギリで食らいついていく。
競り合いの最中、銀時は遂に虚の仮面を打ち砕く。しかし、ついに露わになったその素顔は…
登録日:2022/05/14 (Sat) 22:58:20
更新日:2025/03/19 Wed 18:07:28
所要時間:約 10 分で読めます
君は 私の剣をしっているな だとしたらそれは恐らく ぬぐい難い 敗北の記憶
松陽の中にあった別人格。
正確には後述の理由から虚が主人格であり、松陽はそこから派生した人格である。
同じ肉体故に容姿こそ松陽と瓜二つだが、常に凍り付いたような不敵な笑みを浮かべ、瞳も自身の名を表すが如く虚空を見つめるかのように光を宿していない。
髪型もオールバックとなっている。
黒縄島での闘いが終結した後、信女の口から真実が明らかとなり、さらに洛陽での戦いで朧からその目的が語られる。
虚は、星々を流れる巨大なエネルギー・アルタナ(地球人からは龍脈と呼ばれる)の影響を受け誕生した変異体で、膨大なエネルギーを抱えたその肉体は、老いず朽ちない
不老不死の力を宿していた。さしずめ
人間の形をした超エネルギーの塊といったところだろうか。
しかし、その力から虚はかつて周りの人々から「鬼」と恐れ疎まれ迫害を受け、あらゆる手段で殺されたものの決して死ぬ事はなく、やがてその苦しみから逃れるため
無数の人格を形成することとなる。
そして果てにはその報いを返すかのように殺戮を繰り返し捕縛されるが、朝廷は彼に死神の仮面を与え利用するようになり、権力の裏で暗躍するようにった。これが天照院奈落の興りであった。
しかし、殺戮の日々の中にあって運命に抗おうとする人格が現れ、これがのちに松陽としての人格になる。
そして当時まだ少年だった朧との出会いをきっかけに虚は奈落から逃亡、朧の
自己犠牲もあり追手から逃げおおせると吉田松陽と名を変えて、銀時らと出会った事で人間として生きようとする。
その経緯から朧や信女もまた、松陽の弟子たる存在である。
だが、松陽の処刑後、火葬されていたその肉体は再生し、虚は松陽を含む他の人格全てを消滅させ復活。(この経緯から信女には「松陽(という人格)を殺したのは銀時ではなくあの男」と語られた)
その後、不老不死の力に目を付けた天導衆を逆に懐柔、さらに春雨の元老院を排除し掌握。
永き時の中で死ぬことのない苦しみと人間への
絶望を味わっていた彼は自身の運命に終止符を打つべく、洛陽での戦いの裏で別動隊を動かし他の星々のアルタナを暴走させ多数の犠牲を出すことで、その怒りを天導衆や地球に向けさせ宇宙規模の戦争を引き起こすという、まさに超規模の
自殺を企てる。
【能力】
超人的な身体能力から繰り出す剣技と体術が武器で、数百年かけてこれを独自の暗殺術へと昇華させた。
このためかアニメでは戦闘中の残像に虹色のエフェクトが加えられている。
その戦闘力は銀時や
星海坊主をはじめとした作中の猛者達を同時に相手どっても圧倒できるほど。
だが、それ以上に厄介なのが先述したように肉体に宿したアルタナによる驚異的な生命力と再生力。
たとえ斬られようが潰されようが焼かれようが、核である心臓が存在する限り無限に再生を繰り返す。
また、心臓はアルタナの結晶体に変化させることもできるため、体内から肉体の一部に瞬時に移しそこから再生する芸当も可能。
その能力故時には自分諸共砲撃させたり自分の身体ごと刀で相手を貫く描写もみられる。
また、自身の血を与えることで他人にも同様の能力を与えることが可能だが、普通の人間では再生を繰り返すうちに力を失っていき、適合できなかった場合は肉体が崩壊を引き起こす。
そして最悪の場合、体内を巡る因子によって人格を乗っ取られてしまう。
弱点として、肉体を巡るアルタナは彼の生まれた星である地球の物なので、
他の星で採掘されたアルタナの結晶を体内に入れられてしまうと、拒絶反応を起こして傷の再生に支障が生じてしまうことが挙げられる。
そのため星海坊主は、自身が集めた異星のアルタナ結晶石を持って知人の技術者に依頼し、特別な刀、爆弾、大砲などの武器を製作していた。余った結晶は自分用の育毛剤として使った。
【結末】
用済みとなった天導衆を始末したうえ自身の血を与え
ゾンビ同然の状態にした奈落に解放軍を襲撃させ、全面戦争を引き起こすべく暗躍する。
万事屋や江戸の人々によって解放軍が撤退させられると、自ら地球のアルタナの暴走を引き起すべく現れ、それを阻止しようとする定春らを襲撃する。
万事屋、
真選組、第七師団の面々を無尽蔵の再生力で蹂躙するも、定春や江戸の人々によってアルタナの供給を阻害され再生が停止し、何度倒されても挑んでくる「人間」の達の姿に思わず怯えを抱く。
そして再び斬り掛かる銀時の姿にかつて見た少年時代の彼の影を見出し、自分の中にまだ松陽の人格が残っていたことを悟りながら、銀時、
新八、神楽、
近藤、
土方、沖田、星海坊主、
神威の8人に全身を貫かれて敗北する。
しかし、なおも銀時達に対し彼らが吉田松陽を救えなかった事実を突き付けながら、アルタナの渦の中へと身を投げ消滅したかに見えた。
虚の復活を予見した銀時は全国にある龍穴を2年近く巡り、その中の一つから赤子の姿で再生した虚の体を発見する。
一度はてにかけようとするも躊躇ってしまい、その後しばらくはかつての自身と師のようにしばらく二人で放浪していたが、急成長するその肉体に現れた人格は松陽の記憶を受け継いだものだった。
だが、なおも不老不死を手に入れようとする天導衆の生き残りが結成した教団『星芒教』が指揮する奈落の残党に狙われ、核である心臓をアルタナの結晶石に変え銀時に託し自らは囚われてしまう。
しかし、実際は復活した天導衆は虚の因子に操られていたに過ぎず、彼の完全復活を手助けしていたに過ぎなかった。
ターミナルを舞台に江戸の人々と星芒教の最後の戦いが繰り広げられる中、消滅した元の心臓に代わり吸い上げたアルタナで仮の心臓を作り上げたことにより虚の肉体は復活を遂げる。しかし、そこに宿っていたのは松陽の意志であり、瞬く間に天導衆のリーダーを葬る。
だが、復活は一時的かつ不完全なものに過ぎず、自身の命が尽きる前に自らのために起こった騒乱を沈めようとする。
かけつけてきた高杉と再会するも、朧の遺骨を使い一時的に不老不死となっていた高杉の肉体に天導衆の返り血が混じったことで現れた虚からの一刀で松陽は重傷を負うも、高杉と朧の意志により松陽は追撃から逃れる。
そうとは気付かず、虚は遅れて現れた銀時と対峙するが、既に高杉の中の不死の力は枯れており、自分を抑え込まんとする高杉の意思と揺るがぬ銀時の意志の前に自分の刃は全く当たることなく銀時に一方的に切り伏せられ、「人は虚を知るがゆえに人を受け入れ人の中に生き、死別を持ってさえ滅ばず魂に有り続けられる」と悟り最期を迎えた。
一方、満身創痍でターミナルのコントロールルームを目指す松陽は、途中で新八達万事屋の面々と合流。
彼らの助けによりコントロールルームへたどり着くと、自身の心臓をくべて吸い上げ過ぎたアルタナを逆流させ暴走を防ごうとする。
身体が徐々に結晶となり崩壊が始まる中、仲間達に導かれ現れた銀時達三人に支えられながら遂に暴走を阻止。
成長した銀時と万事屋の姿を見届けてこの世を去った。
…あの日、永遠を生きる鬼が君と…君達と出会って人になれたように…
…あの日、悲しい目をしていた小さな鬼も…人に…なれたのだな…
【余談】
そのキャラ性から松陽への人気は高く、劇場版『新訳 紅桜篇』以降に開催された
人気投票では他のレギュラーに負けず劣らずの高順位を記録している。
一方、不老不死という能力の都合上ストーリーが必然的にシリアスかつ更なる長期化にならざるを得なかったとする原因だと指摘する声もある。
故にかアニメでは原作では虚の登場以降ギャグ回なしに一貫した長篇シリーズ同士の合間に未消化のギャグ回を挟むといった手段上述の放火未遂時の台詞や獄中で「奪うことしかしてこなかった」と語っていたりと普通の人間ではないことを示唆する台詞が幾つか見られる。
また、虚が用いていた刀の鍔は卍型の形状だが、これは史実の
吉田松陰の家紋と同じであり(五瓜に卍)、恐らくは「虚=松陽」の伏線の一つであったろうと考えられる。
また、アニメの『将軍暗殺篇』前半のED『グロリアスデイズ』で歴代長篇のボスと対峙する銀時が映るシーンで、高杉の次に映るのが松陽で、このカットだけ銀時が微かに動揺している。
上述の通り、名前など大まかなモチーフは吉田松陰となっているが、一方で、
- 美青年であった
- 厄災の権化と畏敬の象徴の二つの側面を持つ
- 信仰(宗教)により崇められた
- 身内に対しては情が厚い
- 坂田金時がモチーフの銀時により倒される
など、
酒呑童子の要素も含んでいると思われる点が見受けられる。
映画『銀魂 THE FINAL』のオマケコーナー『銀八先生』ではまさかの生徒役で登場。自称永遠の時を生きてきた留年生。
主に連載の引き延ばしに関するスレスレの質問を勝手に近藤に代わって代弁したり、別人格の通称「偏差値虚くん」と一人漫才を繰り広げていた。
その後のノベライズシリーズにも登場している。
担当声優の山寺氏は劇場版『新訳紅桜篇』への登場を前提としてキャスティングされた事がパンフレットの
高松信司監督のインタビューで明かされている。なお、松陽として出番のなかった『
劇場版 銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ』では時間泥棒役で出演している。更に言えば、以前はジャンプ原作のアニメへの出演が意外にも少なかったが、松陽を演じたのを境にジャンプアニメへの出演が増えていった。
追記・修正は弟子の成長を見届けてからお願いします。
- 最初に虚の正体判明した辺りは虚無感と絶望感が凄まじかったな -- 名無しさん (2022-05-14 23:33:01)
- アニメ版では声でネタバレしてるけど松陽と虚で全く別の印象を与えるのは安定の山ちゃんである。 -- 名無しさん (2022-05-14 23:53:04)
- 首斬っても再生 声が山ちゃん ゼノサーガのアルベドかな -- 名無しさん (2022-05-15 08:52:41)
- 虚は別に改心して善人になるわけでもないけど何かを悟って散るっていう最期なの好き。もう一人の最強候補は神楽の母親かな? -- 名無しさん (2022-05-15 15:51:05)
- 『銀魂 THE FINAL』で銀さんを松陽先生と再開させるために奔走する近藤さんと土方さんと沖田とお妙さんの場面が胸熱で好きだった -- 名無しさん (2022-05-15 16:05:39)
- 宇宙坊主と戦ってるときに何度か殺されてるっぽいからさすがに単純な戦闘能力だけだと夜兎最強には劣る感じ? -- 名無しさん (2022-05-15 17:11:09)
- 龍脈とかの設定がイマイチ分からなかったけど、知り合いが「エルガイムのオージのバイオリレーションシステムみたいなもん」と答えたから納得したな。あと、少なく見積もっても劇中で1000年くらいは生きてるのか? -- 名無しさん (2022-05-15 18:42:24)
- 「 バナナはオヤツだ!」「バナナは印税だ!」....アレは笑った。↑因みに空知先生が質問コーナーで語ってたらしいですけど「虚は” 不老不死 ”という訳で無く、「 再生能力は超速いが、肉体の成長は超遅い人間 」。」とのこと....。 -- 名無しさん (2022-05-15 21:13:33)
- ↑3星海坊主は正直二度目に皆で戦った時には、大砲は他の誰かに使わせて自分は前と同じような感じで戦って引き付けた方が良かったかもな -- 名無しさん (2022-05-16 00:58:31)
- ターミナルのコントロールルームで松陽先生と万事屋3人と1匹(最終訓(第704訓)と『銀魂 THE FINAL』では定春も松陽先生を支えて松陽先生の最期を見届けた)の場面は本当に感動する -- 名無しさん (2022-07-08 17:54:39)
最終更新:2025年03月19日 18:07