アレンジ曲(大乱闘スマッシュブラザーズ)

登録日:2022/10/16 Sun 11:33:07
更新日:2024/10/09 Wed 17:47:23
所要時間:約 10 分で読めます




「ニンテンドウオールスター」を冠して12体のファイター達と共に産声を上げたスマブラシリーズは、3作目である『スマブラX』にて突如発表されたソニックスネークを皮切りに任天堂外のキャラクターがサプライズ参戦する「他社参戦枠」が設けられ、DLCキャラを含めた総ファイター数が82体*1に及んだ最新作の『SP』では、任天堂の人気キャラ達はもちろん、
ソニックスネークロックマンパックマンクラウドリュウスティーブソラスーパーマリオの世界で大乱闘」*2なんていうニンテンドウどころかビデオゲームオールスターとでも言うべき絵面すら実現可能な恐ろしいゲームに仕上がっている。

そして、この「会社の垣根を越えたコラボ」はファイターやステージに留まらず、普段はそれぞれお抱えの会社で曲作りを行っていることが多いゲーム音楽家達が大集合していることも、
スマブラの魅力を語るうえで欠かせない要素となっている。

以下では「参戦」する音楽家の規模が一気に拡大した『X』以降に収録されたアレンジ曲をいくつか紹介する。


【大乱闘スマッシュブラザーズX】

●激突!グルメレース
出典: 星のカービィ スーパーデラックス
編曲: 桜庭 統(代表作:テイルズシリーズ、スターオーシャンシリーズなど)

言わずと知れた頭がパーン星のカービィSDXで遊べるモードの1つ「激突!グルメレース」で流れるBGM。*3
原曲(と『64』版)は運動会のリレーを思わせるような軽快な曲だが、このアレンジはメロディこそほぼ原曲通りなものの、
今回は疾走感と重厚感全振りの仕上がりとなっており、数々のRPGを盛り上げてきた桜庭氏の持ち味がふんだんに発揮されている。*4
余談だが、スマブラシリーズにおいて当楽曲は『64』『DX』でもそれぞれ全く違う味付けでアレンジされているので、聴き比べてみるのもオススメ。


●時のオカリナメドレー
出典: ゼルダの伝説 時のオカリナ
編曲: なるけ みちこ(代表作:ワイルドアームズシリーズなど)

『X』以降その数を増やしていったメドレー系楽曲の代表的存在。
「ゼルダの子守歌→嵐の歌→エポナの歌→時の歌→サリアの歌(CMバージョン)」と曲調を盛り上げながら一巡する構成になっている。
『スマブラ』ディレクターである桜井政博氏からは「時の神殿のテーマの曲を中心にしつつ(略)自由にやってください」とオーダーがあり、
ああでもないこうでもないと苦労しながら作り上げたと本人の口から語られている。


●とげとげタルめいろ
出典: スーパードンキーコング2
編曲: なるけ みちこ

スーパードンキーコング2にて屈指の難易度を誇ることで知られる「茨のステージ」にて流れるBGM。原曲の正式名称は「Stickerbush Symphony」または「Bramble Blast」。本楽曲名の「とげとげタルめいろ」は茨ステージで最初にプレイすることになるステージ名である。
神秘的であると同時にどこか不気味で寂寥感と透明感漂う音色がステージ背景と絶妙にマッチしており、同作品でトップクラスの人気を誇る。あとその難易度故に何度もこのステージに挑戦し、結果BGMが強く印象に残ったプレイヤーも多い。

スマブラでは序盤の物静かな曲調から、徐々に盛り上がり最後は勇壮で疾走感にあふれるBGMに仕上がっており、ほぼ原曲の原型がないアレンジとなっている。
そんな大胆なアレンジであるため発売直後は賛否両論であり、なるけ氏も気にしていた様子。
亜空の使者」の「湿地」でも流れるため、いまでは原曲よりこちらの方が印象に残ったプレイヤーも多いのではないだろうか。
余談だが『トロピカルフリーズ』でもこの曲がアレンジされている。更にその編曲者は原曲を作成したDavid Wise氏その人である。


●ワルイージピンボール
出典: マリオカートDS
編曲: 石坂 健太郎(元HAL研究所所属)

背景に巨大なワルイージの胸像があしらわれた超特大ピンボール台が舞台のコースで流れるBGM
実はマリオカートDSではワリオスタジアムでも同じBGMが流れるのだが、スマブラでは曲名がワルイージピンボールのみとなっており、そのためこちらはピンボールらしいハイテンポかつ明るく軽快なアレンジとなっており、また一部にはワリオのファンファーレのアレンジが組み込まれている。*5
因みにマリオカート8ではワリオスタジアムが続投となっており、原曲に近いスローテンポなBGMとなっている。
その後8DXにて有料DLCとしてワルイージピンボールが復活したがBGMはワリオスタジアムのものと同じ。何気に複数のアレンジがなされているコースBGMはレア。
ちなみに当のワルイージは未だ参戦出来ていない。


●アシュリーのテーマ
出典: さわる メイド イン ワリオ
編曲・歌: ササキ トモコ(代表作:NiGHTS、ROOMMANIAシリーズなど)

「さわる」から登場したアシュリーのテーマ曲、「Song of Ashley」のアレンジ。メイドインワリオではほかにもいくつかのキャラソンがあり、一部はスマブラにも収録されているがその中でも屈指の知名度と人気を持つ。
原曲よりホラーチックな楽曲であり、ちょっと不気味なコーラスと編曲者ササキ氏本人による可愛らしいロリボイスのソロパートが特徴。
普段のイメージとは裏腹に「みんなと仲良くなりたい」という彼女の本音が聴くことができ、そのギャップと本人の人気も相まって評価は高くそれ以降も様々な形でその後のメイドインワリオシリーズでも聴くことができる。
因みに日本語版と英語版の2パターンが用意されており、国外版では英語版が収録されている。歌詞の印象がかなり異なり、日本語版は「魔法少女」のような可愛らしい歌詞だが、英語版は「魔女」を連想させるおどろおどろしい歌詞となっている。日米における「魔法使い」のイメージの違いが如実に表れているといえるだろう。
因みに歌詞にアシュリーが呪文をいくつか唱える部分があるがそれをアルファベットにし、逆から読むと「me id oi nw ari o iz un anb awan」となり、「メイドインワリオイズナンバ(ー)ワン」という文が隠されている。


【大乱闘スマッシュブラザーズ for 3DS/Wii U】

●Ryu Stage
出典: ストリートファイターII
編曲: 下村 陽子(代表作:ストリートファイターII、キングダムハーツシリーズなど)

ミスター格ゲー・リュウの電撃参戦と共にお披露目された、作曲者本人によるセルフアレンジ。
原曲の魅力はそのままに、大乱闘のシーンに合うようリッチに肉付けされた本人ならではの丁寧なリメイクとなっている。
下村女史はBalrog Stageのセルフアレンジも併せて提供しており、こちらも必聴。


●ペーパーマリオメドレー
出典:ペーパーマリオRPGペーパーマリオ スーパーシール
編曲: 春日 沙樹 (代表作:ファイアーエムブレムシリーズ、ペーパーマリオシリーズの効果音など)

当時最新作だったペーパーマリオ スーパーシールのアレンジ…と見せかけてまさかのペーパーマリオRPGの「ゴロツキタウン」のアレンジを挟むというメドレー。
それこそ宮本茂氏による「ちゃぶ台返し」が判明した後で、これまでのペーパーマリオシリーズ路線が絶望視されている中でのこのアレンジは当時遊んでいたプレイヤーに衝撃と感動を与えた。

そして再び、あの青春が2024年に帰ってくる…。


●マスターコア
出典: オリジナル(スマブラ)
担当: LindaAI-CUE(代表作:太鼓の達人シリーズなど)

その名の通り主に1人用モードのマスターコア戦で流れる、手に汗握る決戦に相応しい緊迫した楽曲。
オリジナル枠ではあるが『for』メインテーマが随所に引用されている。
盛り上がりの末に突然モールス信号だけを残して曲がブレイクする箇所が印象に残り、
該当部分の信号を解読すると「MASTER CORE」と打ち込まれていることが分かる。
担当者のLindaAI-CUE氏は『太鼓の達人』にて「2000シリーズ」を担当していることでも知られており、
モールス信号をギミックとして曲中に盛り込むことがある同氏の曲を知っていればニヤリとできるファンサービスとなっている。


【大乱闘スマッシュブラザーズSP】

●トキメキ☆ボムラッシュ
出典: スプラトゥーン
編曲: 大谷 智哉(代表作:ソニックシリーズなど)

今作で参戦を果たしたインクリングの出典であるスプラトゥーンからのアレンジ枠。
原曲からテンポをアップさせ、スマブラBGMとしては新鮮なフューチャーポップ調の曲に合わせてアオリちゃんの歌声が響く。
下記のF-ZEROメドレーと同じく『SP』公式サイトの視聴可能曲として紹介され、発売前から人気を博した。


●Snake Eater
出典: METAL GEAR SOLID 3: SNAKE EATER
編曲: 戸田 信子(代表作:メタルギアソリッドシリーズ、ボクらの太陽シリーズなど)

オープニングデモなどで流れる本作の主題歌。ボーカル版のボーカリストはCynthia Harrell(シンシア・ハレル)。名曲と名高く、ゲームをクリアしたのなら歌詞の内容で涙が溢れてしまうこと請け合い。
心に染み渡るような渋く、そして力強い楽曲であり、テロップが蛇の動きのように流れるオープニングデモ(監督の小島氏曰く60年代スパイ映画を意識したという)とよくマッチしている。
オープニング以外でもゲーム中盤の非常に長い梯子を登りつづけるシーン*6や、ラスボスとの戦闘シーンでも流れ、どちらも印象に残りやすい場面場面ということもあり、それだけに心に残りやすい。
因みに日本語版も存在し、そちらはなんとあの和田アキ子氏がボーカルを務めている。
スマブラではテンポアップし、使えなかったボーカル部分はエレキギターに置き換わっている。


●F-ZERO メドレー
出典: F-ZERO
編曲・作詞・歌: 光吉 猛修(代表作:デイトナUSAシリーズ、バーニングレンジャーなど)

「日本一歌のうまいサラリーマン」こと光吉猛修による初代F-ZERO楽曲の歌詞付きアレンジメドレー。
ゲームオーバージングル→WHITE LAND + DEATH WIND→FIRE FILED→PORT TOWN」で一巡。
過去に光吉氏が携わった代表作の1つにセガから1993年に発売されたレースゲーム『デイトナUSA』があり、
全てのBGMが「光吉が作曲して光吉が歌う」という否が応にも強烈な印象を残す作品となっていた。
メドレー冒頭の「エフゼロー!」は「デイトーナー!」とゲームタイトルを高らかに歌い上げるBGM「Let's Go Away」のセルフオマージュであり、
『デイトナ』好きには25年越しの嬉しいサプライズとなった。


●Halland / Dalarna
出典: Minecraft Dungeons
編曲: ACE(代表作:ロボットポンコッツシリーズ、ゼノブレイドシリーズ)

あのマインクラフトのbgmがスマブラに!…は諸事情で出来ず、ダンジョンズからのアレンジとなった。
双方とも原曲はゆったりとした穏やかなbgmだったのだが、スマブラでは疾走感溢れるアグレッシブなものへと変化。メロディー以外はほぼ別物に近い。
でも聞いただけでマイクラだと分かる不思議。

Hallandパートはピアノとギターが使われた軽快な曲調。Dalarnaパートでは原曲に近い静かなものへと移り変わり、そこからまたHallandへと戻る際の盛り上がりが凄い。

実はbgmの展開とステージ「マインクラフトワールド」の時間の移り変わりがシンクロしており、Dalarnaパートに移り変わるタイミングで夜になり、Hallandパートへ戻る際に夜が明ける。



追記・修正はスマブラSP全収録曲の1,068曲を全て聴いてからお願いします。


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最終更新:2024年10月09日 17:47

*1 マルスとルキナ、ピーチとデイジーなどを別々にカウントするなら更に増える

*2 本作ではローカルで8人乱闘も可能なので、「8人全員他社キャラ」という異様な光景も作れてしまう

*3 正確には3つのステージのうちステージ1および3で流れる

*4 『X』当時はグルメレース×メタルで「グルメタル」の愛称で呼ばれることもあった

*5ワリオランドシェイク』の「アヤヤンいせき」のBGMの一節。

*6 ちなみに梯子を登るシーンで流れるのは伴奏の無いシンガーソロ版である