マルチャミー(遊戯王OCG)

登録日:2024/09/12 Thu 17:19:53
更新日:2025/04/19 Sat 10:48:58
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マルチャミーとは『遊戯王OCG』に登場するカテゴリの一つである。


【概要】

第12期のパック「INFINITE FORBIDDEN」から登場したカテゴリ。
属するモンスターは全てレベル4で攻守も共通しているが、属性と種族はそれぞれで異なっている。
イラストはどれもサンリオキャラクターのような可愛いモンスターがなんか大量にいるというもの。

カテゴリではあるものの、その扱われ方としては今のところ
「このカードの効果を発動するターン、自分はこのカード以外の「マルチャミー」モンスターの効果を1度しか発動できない。」
というデメリット効果でしか参照されていないという稀有なカテゴリである。
一応数少ない前例には「フィッシュボーグ」なんかが存在する。

だが逆に言うと、コイツらはそんな制約を付けなければならない程の強力な効果を持っているのである。
このカテゴリのモンスターは、共通して以下の効果を持っている。

このカードの効果を発動するターン、自分はこのカード以外の「マルチャミー」モンスターの効果を1度しか発動できない。
(1):自分・相手ターンに、自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードを手札から捨てて発動できる。
このターン中、以下の効果を適用する。
●相手が(特定の場所)からモンスターを(召喚・)特殊召喚する度に、自分は1枚ドローする。
●エンドフェイズに、自分の手札が相手フィールドのカードの数+6枚より多い場合、その差の数だけ自分の手札をランダムにデッキに戻す。

見ての通り、この共通効果はあの手札誘発の代名詞とも言える《増殖するG》の調整版なのだ
ドローの対象となる召喚行為が限定されている点では明確に弱体化しているが、それでも大量ドローが狙える強さは折り紙付きである。

ただし、それに加えていくつかのデメリット効果も持つ。それらを改めてピックアップする。

自分・相手ターンに、自分フィールドにカードが存在しない場合のみしか発動できない。

まず発動条件として自分フィールドがガラ空きの場合にしか使えない。つまりほぼ1ターン目にしか使えないと考えていい。
とはいえこの点は《ライトニング・ストーム》や《無限泡影》《拮抗勝負》のような名だたる後攻用カードと同じなので、そこまで致命的ではない。


この効果を発動したターンのエンドフェイズに、自分の手札が相手フィールドのカードの数+6枚より多い場合、その差の数だけ自分の手札をランダムにデッキに戻す。

そして相手の展開でこちらがいくらドローしたとしても、残せる手札に制限がある
とはいえこれも相手フィールドのカード数+6枚は残せる。
ドローが沢山できているなら相手フィールドにもカードが複数並んでるはずなので、10枚前後は残せるだろう。そうでなくとも最低6枚は残ってくれる
この効果自体はある種の制約として設定された物と思われるが、デッキを引きすぎないという意味ではメリットとも捉えられる。
特にデッキにカードを残しておきたいギミックを扱う(素引きしたくないカードがある)場合は意外と便利。
ただし戻すカードはランダムなので、狙ったカードを残すような使い方はできないので注意しよう。


このカードの効果を発動するターン、自分はこのカード以外の「マルチャミー」モンスターの効果を1度しか発動できない。

そして改めて取り上げるが、発動したもの以外の「マルチャミー」モンスターの効果を1度しか発動できなくなる
しかしながら、「マルチャミー」がカテゴリ化して間もない現状ではぶっちゃけほぼ問題は無い。
また逆に捉えると「マルチャミー」であれば2回まで使えるし、他のカードの効果はいくら使っても構わない。
更に言うなら現状存在する「マルチャミー」はこの制限以外にはターン中の同名カードの発動制限を持たない。
つまり同じ「マルチャミー」を2回発動するという事も可能。手札にダブっても安心というわけである。3枚来たら知らん。
《墓穴の指名者》にチェーンしてもう一度同じ「マルチャミー」を発動してやると面白いことになるだろう。相手が。


総じて《増殖するG》から問題点の一つである「展開した後に《増殖するG》を使うことで妨害数をかさ増しできる」という部分が調整されている
完全に「相手の先攻制圧を抑止する」という用途に特化しているというわけだ。

また《増殖するG》と異なり、発動時は「墓地に送り」ではなく「捨てて」発動する
これによりディメンション・アトラクター》や《次元の裂け目》等のモンスターが除外される状態の下でも問題なく使うことができる
この部分に関しては《増殖するG》よりも明確に優れている、「マルチャミー」モンスターならではの長所である。

加えてモンスター自体のステータスも《増殖するG》とは大きく異なる。属性・種族・レベル・攻撃力・守備力での差別化点も多岐にわたる。
特にレベル4という点は、デッキによるがレベル2よりは使いやすいことが多い。
ランク4のエクシーズ召喚やシンクロ召喚メインのデッキではこれを理由に優先することも考えられる。
このカテゴリが登場した2024年での例としては【ライゼオル】がその用途も兼ねて使用している。

ここまで差異ばかり取上げてきたが、勿論《増殖するG》と併用することもできる
併用すれば片方が《灰流うらら》や《墓穴の指名者》等で止められたとしても、もう一方は通しやすくなる。両方止められたら知らん。
なんなら「マルチャミー」が通ったのを確認した後に《増殖するG》も追加で投げる倍プッシュ的な運用も可能。
場合によっては1回の特殊召喚で手札が2~3枚増える状況も作れる。
ただし「マルチャミー」のデメリットで最終的な手札枚数が思ったほど増えないのと、セルフデッキデスが起こりやすくなるのには注意が必要*1


【各モンスター】

2024年11月現在、3種類のモンスターが存在している。

《マルチャミー・プルリア》

効果モンスター
星4/水属性/水族/攻100/守600
このカードの効果を発動するターン、自分はこのカード以外の「マルチャミー」モンスターの効果を1度しか発動できない。
(1):自分・相手ターンに、自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードを手札から捨てて発動できる。
このターン中、以下の効果を適用する。
●相手が手札からモンスターを召喚・特殊召喚する度に、自分は1枚ドローする。
●エンドフェイズに、自分の手札が相手フィールドのカードの数+6枚より多い場合、その差の数だけ自分の手札をランダムにデッキに戻す。
「INFINITE FORBIDDEN」で登場した最初の「マルチャミー」。
この1種だけの登場だったが、既にデメリットの「自分はこのカード以外の「マルチャミー」モンスターの効果を1度しか発動できない」は書かれていた。
ここから新たな「マルチャミー」モンスターの登場が予測されていた。

ドロー対象となる召喚行為は「手札」からであるが、なんと通常召喚にも対応している。
今まで《増殖するG》をただの虫に成り下がらせていたあの鳥達にも、やっとこさ大量ドローの恐怖を味わわせることができるのだ。

現代遊戯王でも手札からモンスターを召喚しないデッキはほぼ存在しないので、とりあえず最初に投げてもいいといえる。
というか通常召喚はチェーンブロックを作らないので、特別な理由がなければメインフェイズに入る前に先打ちは必須である。
もっと言えば手札からの特殊召喚もチェーンブロックを作らないものが少なくないため、やっぱり早めに使っておきたい。

一方で展開で行う特殊召喚はリクルートや蘇生ばかりというデッキも全然珍しくは無い
そういったデッキ相手の場合、1ドローは安定するものの展開されたのに1~2ドローしかできないという覚悟も必要。

ぶっちゃけ普通のデッキでは通常召喚は1ターンに1回限りなので「通常召喚でもドローできる」は優位点としてはちょっと地味。
ちょうど同時期に隆盛した環境テーマが手札からの特殊召喚を必要としない【デモンスミス】だったのも不幸である。
とはいえハマった時は強力なため、現環境でもサイドによく入っている。

非常に強力な《霊王の波動》のデメリットである「以後のデュエル中モンスターの効果を発動できなくなる」に引っかからないのも利点といえる。

イラストは可愛らしいクラゲのような感じ。
レベル4の水属性なので、クラゲ先輩デッキのアイドル枠に入れても面白いかもしれない。


《マルチャミー・フワロス》

効果モンスター
星4/風属性/鳥獣族/攻100/守600
このカードの効果を発動するターン、自分はこのカード以外の「マルチャミー」モンスターの効果を1度しか発動できない。
(1):自分・相手ターンに、自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードを手札から捨てて発動できる。
このターン中、以下の効果を適用する。
●相手がデッキEXデッキからモンスターを特殊召喚する度に、自分は1枚ドローする。
●エンドフェイズに、自分の手札が相手フィールドのカードの数+6枚より多い場合、その差の数だけ自分の手札をランダムにデッキに戻す。
というわけで「RAGE OF THE ABYSS」にて続いて登場した「マルチャミー」。

ドロー対象となる召喚行為は「デッキ・EXデッキ」から。

プルリアで「現代遊戯王でも手札からモンスターを召喚しないデッキはほぼ存在しない」と述べたが、デッキやEXデッキなら殊更同じといえる
そもそもEXデッキを使わないデッキ自体が少なく、さらにリクルートも行わないデッキというのは相当稀。
展開されてもドローできずに終わるということはかなり少ないので、プルリア以上に重要視されている。

一方でプルリアには召喚に対応できるという独特な利点があるのに対し、フワロスの方は結局特殊召喚にしか対応できない。
前述の通りモンスターが除外される状況下でも発動できるとはいえ、カバー範囲では《増殖するG》の下位互換にはなってしまう。

だが、それを差し置いても《増殖するG》並にドローができる手札誘発が増やせるという利点は大きい。
現環境ではフワロスをメイン採用、相手によってサイドのプルリアと入れ替えるという形で使うのが主流となっている。

イラストは可愛らしい鳥のような感じ。
「ふわんだりぃず」と雰囲気は似ているが、こちらはより「風の精霊」らしい出で立ちとなっている。


《マルチャミー・ニャルス》

効果モンスター
星4/地属性/獣族/攻100/守600
このカードの効果を発動するターン、
自分はこのカード以外の「マルチャミー」モンスターの効果を1度しか発動できない。
(1):自分・相手ターンに、自分フィールドにカードが存在しない場合、
このカードを手札から捨てて発動できる。
このターン中、以下の効果を適用する。
●相手が墓地・除外状態のモンスターを特殊召喚する度に、自分は1枚ドローする。
●エンドフェイズに、自分の手札が相手フィールドのカードの数+6枚より多い場合、
その差の数だけ自分の手札をランダムにデッキに戻す。
「SUPREME DARKNESS」で登場した3種目の「マルチャミー」。

ドロー対象となる召喚行為は「墓地・除外状態」から。
またこれにより「マルチャミー」で反応する特殊召喚手段はほぼ網羅した事になる*2

遊戯王は「墓地は第二の手札」と言われるほど墓地から特殊召喚する手段が豊富であり、EXデッキほどでは無いがどんなデッキでも活用されている。
除外状態からの特殊召喚も【M∀LICE】といった除外を扱うデッキでは基本戦術として使う事が多く、そういったデッキにはかなり効果的である。

しかし墓地や除外状態からの特殊召喚を使わないデッキもまた珍しいものでは無い。つまり相手によって効きやすさが変わりやすい。
こちらもまたプルリアと同じ様にサイドデッキ向けと言えるだろうか。

イラストは可愛らしい猫のような感じ。
なお現在コイツのみ設定画が公開されているが……彼女(?)達は卵から生まれて成長と共に姿を変えるという、獣族だが哺乳類ではない存在らしい。
また無邪気ゆえに残酷な面もあるという、なんというか遊戯王OCGらしいダークな設定も持っている。


【余談】

おぞましいイラストの《増殖するG》と比べて可愛らしいイラストなのも特徴的。改めて考えると黒いアレが必須なカードゲームってなんだよ。*3
ただ遊戯王において可愛い動物系基本ヤバイというのが通例なので、それが完全な利点と言えるかは微妙ではあるが……。
一部では表に出しづらいであろう《増殖するG》の反省を活かし、グッズ化などを見越したデザインではないかという考察も存在している。
現代遊戯王を取り扱う漫画『遊戯王OCGストラクチャーズ』でも
「必須カードなのはわかってるけどGなので入れたくない(意訳)」「(寿司屋の跡取りなので)食品衛生上入れたくない
というプレイヤーも登場していたりする。
イラストの影響はバカにならない例といえよう。可愛くて衛生的(?)な「マルチャミー」なら彼女達も安心だ。

明らかに《増殖するG》を調整した様な性能だったため「海外と同じく《増殖するG》禁止化への布石ではないか」と噂されもした。
しかし「マルチャミー」が登場した2024年は《増殖するG》の再録が2回行われており、しかもその内1回はあの「TACTICAL-TRY DECK」である。
同製品の目的などから、《増殖するG》もすぐには禁止にはならないだろうという見方が主流となっている。
……しかし、禁止とまではいかなかったが2024年10月のレギュレーションで準制限にはなった。

新たな手札誘発の候補としてトーナメントクラスでも採用率が上がっており、注目度の高いカテゴリである。
現状全ての「マルチャミー」は初収録時は通常のレアで収録されており、1ボックス買えば1~2枚は確実に入っている
汎用性のある手札誘発の中では入手しやすい方*4である。
……とはいえ、特に汎用性の高い《マルチャミー・フワロス》に関してはその状況でも下手なスーパーレアやウルトラレアよりも高値で取引されている
そのため特に複数のデッキを組むデュエリストのサイフポイントにダメージを与えがちになっている。
《増殖するG》の規制後は相対的に更に需要が増すこととなり、単なる字レアなのに収録パックのカードの中でもトップクラスの値段に上り詰めた*5
幸いにもこの時点で「TACTICAL-TRY DECK」の登場で《増殖するG》《灰流うらら》等は大幅に値下がりしており、手に入りやすくなっている。
これがなければ遊戯王OCGは格段にサイフに負担のかかるゲームとなっていただろう。
逆に言えばせっかく再録でハードルを下げたのに「マルチャミー」のせいで元の木阿弥とも言えるが。
そしてドローに厳しい海外では当然の様にシークレットレアに。《増殖するG》が禁止で需要の高いのも相まってとんでもない高額カードと化している。

遊戯王マスターデュエルでも《マルチャミー・プルリア》と《マルチャミー・フワロス》が同時実装。特にフワロスの実装は比較的早めでデュエリストを驚かせた。
その後案の定《増殖するG》が準制限となった…のだが、「マルチャミー」の本質はマッチ戦で相手のデッキを読み切った後に取り捨て選択をするという事なので、シングル戦主体のマスターデュエルでは余り使用率は伸びていない。
強力なカードには間違いないのだが、OCGとMDの違いを表す例と言えるだろうか。




追記・修正は「マルチャミー」2枚と《増殖するG》を投げた後に相手が【花札衛】で絶望した方がお願いします。

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最終更新:2025年04月19日 10:48

*1 仮に《増殖するG》と併用した場合、20回前後特殊召喚された時点でデッキ切れによる敗北の可能性が出てくる。昨今の展開力に長けたデッキであれば意外と達成できる回数である(《増殖するG》を使った相手のデッキデスをサブプランとしているデッキすらある)。

*2 残っているのはモンスターゾーンに直接現れるモンスタートークンの特殊召喚と魔法・罠ゾーンからの特殊召喚。

*3 遊戯王OCGはこれに限らず《励輝士 ヴェルズビュート》や《G戦隊 シャインブラック》と言ったG系カードを妙に強くしたがる変な傾向がある。ただし「クセの強いデザインのキャラクターを強めに調整する」ことでデザインの忌避感()を跳ねのけてプレイヤーからの人気を集めるという手法は他の作品でも度々見られるものではある。

*4 例として《増殖するG》は初出時ノーレア、《灰流うらら》他妖怪少女シリーズは初出時スーパーレアである。

*5 25thシークレットレアとシークレットレアを考慮しない場合。