登録日:2025/10/01(Wed) 22:32:00
更新日:2025/10/01 Wed 23:43:32NEW!
所要時間:約36分で読めます
ZOIDSとは、タカラトミ(旧トミー)が展開する玩具シリーズである。
ファンは「ゾイダー」と呼ばれる
【概要】
動物や恐竜など、実在の生き物をモチーフにした組み立て式のロボット玩具。
名称は「動物」「動物の生態、または行動に関するさま」を意味する形容詞「zoic」と「androids」を掛け合わせた造語。「動物的アンドロイド」、つまり機械獣というわけである。
架空の惑星「惑星Zi」を舞台とした、共和国と帝国の二大国家による戦争で活躍する、自我を持った金属生命体という設定をバックボーンとし、両勢力の機体をかわるがわる商品展開することで双方のファンの購買意欲を掻き立てるのが販促の基本となる。
登場勢力についてはシリーズを通して幾つかの変遷を経ているものの、基本構造自体はほぼ同じ。
漫画やゲームなどのメディアミックス作品も多数存在し、平成からは何度かTVアニメ化もされたが、中心となるのは児童誌などで掲載された『ゾイドバトルストーリー』、通称バトストである。
一応「共和国が味方、帝国が敵」という体だが、実際のバトストにおいては共和国、帝国の双方にドラマが用意され、一概に善悪二元論で割り切ることのできない、断片的ながらも重厚な物語が展開された。
バトスト自体は平成ゾイドの末期に廃止されたが、以降も児童誌、ホビー誌、玩具パッケージ、公式Webサイトなどで準バトスト作品とでも言うべき多数のフォトグラフストーリーが掲載され、「アニメだけに頼らない商品展開」は常に志向されている。
【魅力】
玩具としての最大の特徴はズバリ「動きを組み立てる」という点。
ゾイドはモーターやゼンマイによる動力を備えており、これによって歩行、羽ばたき、咆哮、武器展開…といったアクションが発動する。
これらはモチーフになった生物の実際の動作がしっかり反映されており、公式からは「リアルアクションキット」「リアルムービングキット」などと呼ばれることもある。
同じモチーフでも、発売時点での最新学説に基づいた異なる造形やギミックが採用されていることもある(特に恐竜型)ので、それらを見比べるのも面白い。
そして、そのようなアクションギミックを備えた玩具を自分の手で組み上げていくのが最大の楽しみのひとつである。
その仕様上、間違って作ると動作中に壊れてしまうリスクもあるため、製作中にも逐一動作確認することが推奨されているが、この段階でも自分の手で「動き」が段階的に組み上げられていく過程を体感できる。
…こう書くとなんだか難しそうな印象を受けるかもしれないが、子供をメインターゲットとしている以上、安全性や、過度な複雑化の回避は常に意識されている。
パーツを固定するためのゴムキャップのおかげで初期から接着剤は不要であり、ただ作るだけならニッパーや爪切りさえあれば大丈夫。
モノによっては完成済みの素体にアーマーと武装を装着するだけでよかったり、ニッパーすら要らなかったりもする
平成以降は部分塗装が施されることも多くなり、そのまま組み立てるだけでもバトストの写真やアニメ劇中に近い印象に仕上がるようになった。
連動するカスタムパーツも多数販売されており、自分だけのバリエーション機体を作るのも伝統的な遊び方である。
勿論、腕に覚えがあればさらなる塗装や成形を加えたり、大規模な改造を施して自分だけのゾイドを組み上げることも出来る。
公式改造コンテストやアイデアコンテストも何度も開催され、時には入選した機体が商品化されることもあった。
一部には関節可動やパーツ組み換えなどをメインにした無動力ゾイドもある(詳しくは後述)が、「基本は動力搭載」という点は一貫している。
玩具それ自体がアクションを行えることを活かし、TVCMや店頭PVでは実際の玩具を使ったミニチュア特撮が用いられるのもゾイドの伝統である。
一部のものはタカラトミー公式がYouTubeで無料公開しているので、是非観てみよう。
【歴史】
・メカボニカ
ゾイドの起源は、トミーのゼンマイ駆動式キャラクター玩具「ちっちゃな仲間たち」シリーズに遡る。
これを本格的に男児向けとして展開する企画が持ち上がり、動物をモチーフにしたゼンマイ駆動のロボット玩具が誕生した。
当初はアメリカで発売されたが、現地法人が独自に『ZOIDS』というタイトルを用意した。
トミー側はこれに驚いたものの、結果としてZOIDSはアメリカで好評を博し、日本でも発売されることが決定。
その販売計画を任されたのが、当時トミーに入社したてだった徳山光俊氏だった。
元々動物や恐竜が好きだった徳山氏はこのZOIDSをいたく気に入り、「mech」と「bone」を組み合わせた『メカボニカ』というタイトルを付けて、宇宙探査ビークルという設定で発売した。
しかし、アメリカのZOIDSと違い、日本のメカボニカはいまいち売り上げが振るわず、低空飛行のまま3種だけで展開が終了した。
…ここまでで終わっていれば、メカボニカは歴史の隅でひっそり消えていったマイナー玩具として、一部のマニアにだけ記憶される存在となっただろう。
だが、これこそが、トミーを代表する一大シリーズのひとつが産声を上げた瞬間だったのである。
・第一期-メカ生体ゾイド-
この戦いに、勝者はいない…
果てしない戦闘メカ達の、叫びが残るだけだ
メカボニカが不振に終わってから少し経った頃。
トミー社内で、新規IPを創設すべくアイデアコンテストが実施されていた。
メカボニカに大きな可能性を感じていた徳山氏はこれを好機と感じ、「遥か宇宙の彼方の惑星に生息する金属生命体」「金属生命体と共存する共和国と、主従関係を築く帝国の対決」という世界観のうえでメカボニカをもう一度売り込むアイデアを応募した。
結果、徳山氏のアイデアが一等賞を獲得し、メカボニカ再生プロジェクトが始動。
徳山氏、エンジニアの二階堂輝夫氏、デザイナーの藤野凡平氏によるプロジェクトチームが設立され、彼らを中心にして詳細な世界観設定や、玩具のアイデアが練られていった。
普通ならアニメなどのメディアミックスを通して販売促進を行うところだが、徳山氏は「作品の旬が過ぎると価値が落ちてしまう」という理由から、TVアニメ化には消極的だった。
そのため、あくまで玩具を中心とし、世界観設定とそれに基づく断片的なストーリーを通して子供達のイマジネーションに訴えかけ、ユーザーそれぞれに自分の中の物語を展開させることで末永く続く「普遍のものさし」を目指す方針で展開されることとなった。
そして、「語呂が良い」ということでアメリカからタイトルを逆輸入し、ここに『メカ生体ゾイド』のブランドが誕生した。
納期に余裕がなかったため、初期に展開されたへリック共和国ゾイドのラインナップは、メカボニカからそのまま流用されたガリウス、グライドラー、エレファンタスを基本とし、その設計をアレンジすることで製作されていった。
そして、メカボニカからの新生を示すフラッグシップとして、徳山氏は元々アメリカ版ZOIDS用に用意され、ロールアウト寸前までこぎつけていた大型アイテムに着目。
その設計がそのまま日本に持ち込まれ、シリーズ初のモーター動力を導入した大型ゾイド、ビガザウロが登場した。
TVCMでもビガザウロの雄姿が映された他、発売に当たっては店頭で実演展示が行われ、ゼンマイを上回るパワフルさと、恐竜の動きを忠実にトレースした躍動感あふれるアクションによってゾイドの存在を強力にアピールした。
この効果は中々のもので、ゾイドは発売当初から人気を獲得。
店舗によっては一日三桁以上の点数が売れることもあったという。
その後もゾイドは次々に発売され、やがて次のターニングポイントを迎えることとなった
1984年に発売されたゼンマイ駆動の小型ゾイド、
ゴドスである。
それまでのゾイドは動力ブロックにフレームとコクピットと武装を取り付けただけのシンプルな外見で、さながら骨格のような外観だった。故に後年のファンからの通称も「
骨ゾイド」である。
しかし、ゴドスは構造こそガリウスとほぼ同一ながら、装甲を纏った重厚なデザインであり、より「兵器」としての説得力が強くなった。
装甲自体は前年の年末商戦で登場した
ゾイドマンモスにも部分的に取り入れられていたが、大部分のパーツをビガザウロから流用したマンモスが骨格の面影も色濃く残していたのに対し、ゴドスはより洗練され、重装甲と全体的なラインの美しさを両立することに成功している。
そして、84年には遂に、シリーズの象徴たる恐竜型大型ゾイド、
ゾイドゴジュラスが登場。
動力ブロックはマンモスと同じくビガザウロから流用されたが、四足歩行のビガザウロから直立二足歩行に転換されたそのフォルムは既視感をまるで感じさせず、シリーズ初の発光ギミックも搭載。
ゴジュラスはたちまち大人気を博し、ビガザウロの後を継ぐ新たなアイコンとして子供達のハートを鷲掴みにした。
そして全国の幼稚園や小学校では、高価なゴジュラスを買って貰えなかった子供達が、買って貰えたお坊ちゃんの自慢を聞きながら歯ぎしりする光景が繰り広げられた
ゾイド本体だけでなく、一緒に遊ぶための兵士フィギュアやジオラマベースなども展開され、「動物型ロボット」と「リアルミリタリー」という、一見すると相反する要素はより高度に融合していった。
同年にはゼンマイ駆動の
マーダと
モルガ、モーター駆動の
レッドホーンも発売され、共和国と敵対するゼネバス帝国の商品展開が開始。
重装甲のコクピットや赤基調で統一されたカラーリングを特色とする帝国ゾイドは、それまでの共和国ゾイドと明らかに異なる存在として強烈なインパクトを発揮した。
こうして、全国のゾイダー達は「共和国派」「帝国派」に二分され、共和国と帝国との対立構造によって購買意欲を煽る商法が本格的に定着した。
ゴジュラスのライバルとなる帝国の象徴的ゾイドの
アイアンコングや、「大型高速ゾイド」という新境地を切り開き記録的ヒットを叩き出した
サーベルタイガーなど、帝国ゾイドはその後も次々に登場。
共和国側からもこれに対抗する形で、巨大要塞ゾイド
ウルトラザウルスや、共和国版サーベルタイガーと言うべき
シールドライガーなどの更なるゾイドが出現し、両勢力の対立構造が本格化。
各小売店の協力も得て精力的なプロモーションが続き、ゾイドシリーズはますます躍進を遂げていった。
…しかし、栄光はいつまでも続かなかった。
どんなブームにもやがて終わりは来る。ゾイドとて例外ではないのだ。
時期的に言えばゾイドよりも前から存在したタミヤ模型のミニ四駆だが、80年代後半から次第に本格的なブームが過熱。
「自分で作り上げたマシンで友達と競い合い、最速を目指す」というコンセプトは全国の子供たちを熱狂させたが、それは同時に、それまでゾイドに熱中していたユーザーがミニ四駆に流れていくことも意味していた。
これを受け、ゾイドでも対戦遊びがあれこれと検討されたものの、結局「面白くない」ということで没に。
代わりに、よりヒロイックで、よりキャッチ―で、より強い機体が次々に送り出された。
…しかし、結論から言えばこれは完全な逆効果だった。
新規層を取り込みたかったのか、マンネリ打破を目指したのか、それとも単純に「子供受け」を狙いすぎたか…
いずれにせよ、それらのゾイドはミリタリーテイストからかけ離れた豪奢なカラーリングや派手な武装を引っ提げ、既存のゾイド達を蚊トンボの如く蹴散らすような反則じみた機体ばかり。
根強く応援してくれたゾイダー達も、今までのゾイドの特色を半ば放棄するかの如き路線変更や、過激化し続けるパワーインフレに愛想をつかして次々に離れていった。
そして1990年10月に発売された
デス・キャットを以て、遂にゾイドシリーズは終了。
バトストも
常識外れの強さを誇るチートゾイド達の激突の末、天変地異によって殆ど不可抗力的に終戦という、殆どヤケクソじみた形で完結した。
翌年、小型ゾイドがスーパーマーケット向けに吊るしボックスで復刻販売されたこともあったが、人気は出ずに2種だけで終了し、それきりゾイドは過去のものになっていった…。
・第二期-機獣新世紀ZOIDS-
第一期の展開終了後も、トミー社内では「ゾイドを復活させたい」という声が何度も上がっており、90年代後半には公式Webサイト開設、イベントでの限定販売、ホビー誌での特集などを通した根気強いプロモーションが行われた。
そして1999年。20世紀が終わりを迎えつつある中、ゾイドシリーズは遂に『機獣新世紀ZOIDS』として9年越しの復活を遂げたのである。
復活したゾイドをより強力にアピールするべく、
上山道郎氏による漫画がコロコロコミックにて連載され、更に昭和では禁じ手だった
アニメ版の制作にも着手。
ウルトラシリーズ平成三部作が放送されていた土曜18時の枠が、トミーによる強力なアピールで確保され、10月よりシリーズ初のTVアニメ『
ゾイド -ZOIDS-』の放送が開始された。
当時最新のCGによって描かれるゾイドの活躍や、少年
バン・フライハイトの成長と冒険、明朗快活な活劇の中にも戦争や政治的駆け引きの要素を盛り込んだ肉厚で奥の深いストーリー
、そしてかわいいヒロインとセクシーなお姉さんは新世代の子供達を魅了し、ここにゾイドは二度目のブームを迎えることとなった。
一部の古参ゾイダーからは、それまでの主役だった大型ゾイドよりも高速ゾイドがピックアップされる風潮や、バトスト設定とアニメ描写の相違などに難色を示す声も上がったものの、それでも全体としては文句なしのメガヒットである。
バトストも再始動し、天変地異を生き残ったゾイド達の新たな戦いが描かれた。
当初、玩具ラインナップは過去の商品の復刻版やそのバリエーションで構成されていたが、2000年3月には平成オリジナルの完全新規ゾイド、
ジェノザウラーが登場。伝統の恐竜モチーフを採用しつつ、当時最新の学説に基づいた前傾姿勢のフォルムを忠実に再現することで、ゾイドのニュースタンダードを打ち立てた。
そして、これに対抗するライオン型ゾイド
ブレードライガーもゾイドシリーズの新たな看板として人気を獲得。ゾイドは本格的に再定着することとなった。
次回作として放送された『
ZOIDS新世紀/0』も同様に大ヒットを記録。「戦闘競技」という背景のもとに個性的なゾイドが週替わりで登場し、僅か半年の放送にも拘わらず視聴者を再び熱狂の渦に叩き込んだ。
中でも、目玉機体である
ライガーゼロや
バーサークフューラーはアーマーユニット着せ替えという新機軸を搭載。
かねてよりゾイダーの間で盛り上がっていたカスタム需要に強力に応え、より幅広い遊びを実現した。
現在でも、この頃を「全盛期」と評する声は多い。
昭和時代のゾイドチームが考えていた通り、アニメを主軸とした人気は旬が短く、『スラゼロ』放送終了と同時にブームは静まっていったが、それでも熱心なファンは多数残っていた。
バトストも変わらず継続され、「パーツ組み換え」を主体にした完全無動力シリーズ「
ゾイドブロックス」を中心とした新たなシリーズが始まった。
ブロックスは古参ゾイダーからの賛否両論もありつつ、集めやすい低価格と組み換えの面白さ、動力ゾイドとの連動によって一定の人気を獲得し、地道な展開が続いていた
…しかし、2003年にアメリカで放送されたアニメ『&bold({
ゾイドフューザーズ}』をきっかけに、風向きが変わり始めた。
同作は『スラゼロ』人気を受けたアメリカの要請によって製作されたのだが、『スラゼロ』を意識しながらも良くも悪くも全然違う作風や、CG品質の低下を指摘され、人気を獲得できずに1クールで打ち切られてしまったのだ。
『フューザーズ』用に開発されたゾイドはリカラーされ、日本でもバトストによって販促されたが、昭和末期を彷彿とさせるパワーインフレが再び表面化し始め、日本でも次第に人気低迷の兆しが見え始めた。
『フューザーズ』は2004年に日本でも放送され、一度バトストオリジナルとして登場したゾイドも元のフューザーズ仕様にリニューアルされて発売されたが、
ただでさえリカラーばかりで目新しさの薄い商品ラインナップに加え、セット販売を中心にしたせいで値段もバトスト版より高額になってしまい、これが祟って結局日本でも不振に終わった。
翌年には、世界観を一新し、本格的戦記物を志向した更なる新作アニメ『
ゾイドジェネシス』の放送が開始された…のだが、ここでも波紋が生じた。
シリーズ屈指の問題児、
バイオゾイドの登場である。
骸骨のような有機的デザインを特色とするバイオゾイドはそれだけでも異彩を放つ存在だったが、作中ではなんと既存ゾイドの武装を全て無力化し、倒せるのは特殊金属リーオの武器を持ったごく一部の機体のみという無茶苦茶な強さを誇った。
そしてリーオの武器を持つ機体というのは、勿論『ジェネシス』の新機体のみ。
既存ゾイドが全部纏めて引き立て役と化してしまい、おまけにバイオゾイドが恐竜で統一された兼ね合いなのか過去の恐竜型ゾイドは全てリストラ。ゾイダー達を荒れさせるには十分だった。
作品自体の完成度はむしろ高く評価されたのが救いだったが、あまりにもハードで重苦しい作風から、広範な人気を獲得できたとは言えない状況だった。
一応キャラクター人気は中々のものがあったため、後期にはヒロインのレ・ミイと
コトナ・エレガンスをプッシュした「萌え」路線も取り入れられた。
しかし、ただでさえシリアス化し続ける物語とのミスマッチが目立った上、古参ファンからは「安易な萌えに走った」と叩かれ、キャラ目当ての新規視聴者は重い作風でふるい落とされ…と、最終的には「二兎を追う者は一兎をも得ず」の典型例のような結果になってしまった。
そもそも実際のアニメ劇中だと、ディガルド討伐軍のオッサン連中やトンチキ集団の無敵団の方が、ヒロイン2人を食いかねない勢いでイキイキしてたし…
誤解しないでいただきたいが、『フューザーズ』と『ジェネシス』も、決して誰からも支持されなかったわけではない。
先ほどはあえて悪いところばかり書き連ねたが、どちらも幾つもの魅力のある作品だし、今でも熱心なファンはいる。
映像ソフトや後述の無料配信によって後からハマった視聴者からの再評価の声も少なくない。
ただ、当時の商業企画としての結果は、どう贔屓目に見ても成功とは言えないものだったのだ。
この頃トミーを離れていた徳山氏も、ゾイドシリーズがかつての「普遍のものさし」というビジョンから離れ、アニメに頼ったコンテンツになったことには複雑な心境を抱いていたという。
末期はハイターゲット向けの展開がメインとなり、過去のゾイドの復刻販売企画『ゾイドリバースセンチュリー』や、徳山氏を再び招いて2010年より発売されたアートブック『ZOIDS concept art』と、それをもとにした『ゾイドオリジナルシリーズ』、
1/144プラモデル『モデラーズスピリットシリーズ』、トランスフォーマーマスターピースとのコラボレーションで発売されたハイエンド商品『ゾイドマスターピース』…と様々な企画が打ち出されたが、いずれも短命に終わってしまった。
2006年からコトブキヤより発売された無動力プラモデルシリーズ『ハイエンドマスターモデル』は好評を博し、その後も現在まで継続されているため、第一期と違いシリーズ完全終了にこそならなかったものの、トミー直系のゾイドはほぼ姿を消すことになった。
・第三期-ゾイドワイルド-
最強のメカ生命体ゾイドと人間が
究極の絆を結んだとき
秘められた力が覚醒する!
二度のシリーズ終了を経て、ゾイダー達の間で「もう復活はないだろう」という諦めにも近いムードが漂いつつあった中。
タカラと合併して「タカラトミーアーツ」となったトミーで、ゾイド復活プロジェクトがひっそりと始動。
ゾイドの生みの親である徳山氏、平成ゾイド世代と、そのさらに後の世代の若いスタッフも終結し、新たなゾイドを生み出すべく検討が行われていた。
打ち出されたコンセプトは「野生」と「人機一体」
ゾイドの生物としての側面をより強力にプッシュするため、ゾイドの闘争本能の高まりによって発動する必殺技「本能解放」、機体外に露出した騎乗式コクピット、アーマーがなくとも骨格としてのリアリティを感じられる駆動系デザインなど、様々な新機軸が取り入れられていった。
舞台も惑星Ziから地球に変更され、全体的に心機一転が図られた。
しかし、ひとつ重大な問題があった。
子供達を社内に招いて昔のゾイドを作ってもらい、その様子をモニタリングしたところ、現代の子供達の模型離れが、スタッフの想定よりも遥かに深刻だったことが判明したのである。
上手く作れた子も勿論いたが、中にはニッパーの扱いにすら苦戦する子もいる有様であり、模型がもはや子供達にとって身近な存在でなくなっているのは明らかだった。
かつてはそれでも企画が押し進められてきたが、「子供向け」を貫くのであれば、従来の手法はもう通用しない。
ゾイドシリーズが三たび復活するためには、時代に即した全く新しいゾイドが必要不可欠だったのだ。
これを受けた一つ目の改革は、言うまでもなく組み立ての簡略化。
少ないパーツで複雑なアクションを実現し、それでいて「金属生命体」としてのリアリティと玩具としての遊び応えも保てるデザインが、多数試行錯誤された。
そしてもうひとつにして最大の改革がランナーレス化。
工場出荷段階でパーツを全てランナーから切り取り、パーツを種類ごとに袋分けして梱包。各パーツ識別は説明書「復元の書」のパーツ見取り図で行い、ユーザーがパーツを探し出して組み立てる方式を採用したのだ。
結果として、組み立て作業にもパズル的な面白さが付加され、「動きを組み立てる」というゾイドの伝統に新たな視点が加わった。
このアイデアは若手スタッフが「組み立てを化石発掘に見立て、ユーザーが作る過程も世界観に組み込んではどうだろう」という意図で考案したものであり、徳山氏は「手間やコストがかかるので、絶滅危惧種の自分では絶対にやらない手法だったが、彼らは本当にやってのけた」と、その熱意を称賛している。
こうして、新世代のゾイド『
ゾイドワイルド』が誕生した。
かつての『機獣新世紀』のように、森茶氏による漫画版や、それを原案としたTVアニメを送り出しただけでなく、連動するスマホアプリのサービスも開始され、ゾイドの姿を撮影、編集してSNSに投稿したり、ゲームを楽しんだりすることも出来るようになった。
そして、2018年に遂に送り出された『ワイルド』は、発売されるや否や大きな反響を呼んだ。
古参ゾイダーの間ではもはや恒例行事としてその思い切った路線変更や、アニメの今まで以上に低年齢層を意識した作風に対して嫌悪感を露にする声も少なくなかったが、メインターゲットの子供からは無事に人気を獲得。
同時期の男児向けロボット玩具業界に『新幹線変形ロボ シンカリオン』という強力なライバルが存在したことや、少子化と物価高の影響も相まって第一期や第二期のような社会現象まではいかなかったものの、
それでもタカラトミーの見込みは十分に達成し、どのゾイドも好調に売れ、公式アプリも非常に高い利用率を叩き出したという。
一番人気は主役機のワイルドライガーだったが、年末から年越しにかけての目玉となったデスレックスやハンターウルフも発売され次第店頭から狩り尽くされる大人気商品となり、公式からも安定供給に大変苦労した旨が語られた。
翌年には新たなアニメ『
ゾイドワイルド ZERO』が放送され、ゾイドの原点であるミリタリーテイストに一度回帰。
世界観を一新した前年と、旧来のゾイドのミッシングリンクを補完しつつ、ゾイドの伝統である「改造」も再びプッシュされた。
更に、ゾイドのアニメ化が始まってからはどうしても脇役に甘んじがちだった大型ゾイドが久々にフィーチャーされ、大一番では超大型機の大暴れが見せ場になったこともゾイダー達を喜ばせた。
一方、漫画版は『ZERO』のコミカライズではなく、前作の路線を継続した『
ゾイドワイルド2』が始動。『ワイルド』の強烈な個性を好んでいたファンへの配慮も忘れなかった。
コトブキヤのHMMも継続されており、子供とコアファンの両方を狙った商品展開が実施された。
…が、ここで再び試練が立ち塞がった。
2019年から新型コロナウイルスの感染が拡大し、社会は大混乱を迎えた。
ゾイドもまたこの影響をまともに受け、「商品販売スケジュールを立てるのが困難」ということから、当初予定されていたTVシリーズ第三作の放送が中止されてしまったのである。
ショートWebアニメ『
ゾイドワイルド戦記』や、Web小説『
ゾイドワイルド列伝』、フォトストーリー『
ゾイドワイルド戦記外伝』、漫画『
ゾイドワイルド2+』などが登場したものの、TVアニメ停止はやはり大打撃だったようで、商品展開そのものは大幅に縮小された。
幸いシリーズの完全終了とはならなかったが、新規ゾイドは『戦記』の
ゼノレックスを最後に途絶え、上記した各作品の終了後は他のサブカルチャー作品や博物館等とのタイアップでリデコ商品が細々と発売されるのみとなった。
・そして40周年へ…
EVOLVING
ZOIC-ANDROIDS
ZOIDS 40TH ANNIVERSARY
『ワイルド』もアニメ終了に伴って失速し、もはやこれまでと思われていた時。
ゾイドシリーズ40周年と初代アニメ放送25周年を迎えた2024年に、タカラトミーから大々的なアニバーサリー企画が発表された。
まず、それまでレンタルDVDやオンライン配信がなく、人気に反して視聴ハードルが高かった初代アニメがTOKYO MXで再放送され、更に他の第二期アニメシリーズ3作と共にタカラトミー公式YouTubeチャンネルにて無料配信され、その後待望のサブスク配信も開始。
次に、ゾイドマスターピースをベースにリニューアルしたハイエンド動力玩具シリーズ『40th Anniversary ZOIDS』が始動。アニメシリーズの歴代主役機が、より高密度な姿に生まれ変わって次々に商品化されていった。
また、この時期にはタカラトミーとバンダイのコラボレーション企画が実施されており、バンダイからまさかの超合金ライガーゼロも登場した。
これだけでもゾイダー達を喜ばせるには十分だったが、更に少し経った頃、タカラトミーがハイターゲット向け商品展開を包括して展開する新企画『T-SPARK』を発表した。
トランスフォーマーやダイアクロンなどと共に、ゾイドもこの中に組み込まれ、『Advanced Zi』と改題されたAZや、
低価格で組み立てやすい1/100プラモデルシリーズ『REALIZE MODEL』によって、ゾイドの商品展開が本格的に再始動されたのだ。
『ワイルド』もT-SPARK内のコラボレーション商品を包括したブランド『
SYNERGINEX』に組み込まれる形で継続された。
相変わらず完全新規機体はないものの、玩具のみならず漫画の連載も交えた『
機動警察パトレイバー』コラボ、2度にわたって開催され、計4種類ものゾイドが送り出された『モンスターハンター』コラボなど、大規模な企画が複数展開された。
一方、『T-SPARK』はあくまで大人向けの企画であり、子供向けコンテンツについては依然途絶えたまま。
『ワイルド』の更なる後釜となる、新世代のゾイドを待望する声は多い。
以上が、これまでゾイドシリーズが辿ってきた歴史の大まかなあらましである。
長年に渡って愛されてきたシリーズではあるが、その歴史はここまで書いてきた通り、お世辞にも順風満帆とは言えない苦難の連続であった。
しかし、二度のシリーズ終了を経ても尚ゾイドは復活し、その時代なりの新機軸を目指した展開が繰り広げられてきたのである。
今後のゾイドがどのような歩みを見せていくか、目が離せないところだ。
【特殊なゾイド】
長い歴史の中で、通常のシリーズとは趣の異なる特殊なカテゴリのゾイドもいくつか誕生している。
その特殊性故に難色を示されたものも多いが、裏を返せばそれらもまた、ゾイドシリーズが常に時代の最先端を目指して試行錯誤を繰り返してきたことの証明でもあろう。
・24ゾイド
玩具としての基本構造自体は通常のゾイドと同じだが、その名の通りスケールが1/24に変更され、超小型ゾイドとして設定されているのが特徴。
パイロットフィギュアも大型のフル可動仕様となり、『ミクロマン』や『G.I.ジョー』のような、兵士とビークルを絡めた遊びが主軸になっている。
これはアクションフィギュア人気の高いアメリカ市場を狙っての仕様だったようだが、最終的には国内のみで販売された。
ゾイドではない通常のホバー車両、サンドスピーダーなんて変わり種も。
あまり人気は振るなかったのか、1年ほどで終了したが、可動式の兵士フィギュアは当時の店頭PVにおけるミニチュア特撮で大いに活躍していた。
平成にはサソリ型のデスピオンがトイズドリームプロジェクトで復刻された他、帝国機がWAVEの手で復刻されたこともある。
他社からの販売となったため、タイトルは『装甲動物戦記パンツァーティーア』に変更され、タカラトミー公式のゾイド年表でも基本的にスルーされているが、仕様はほぼそのまま。
なんならWAVE公式サイトの説明文にも普通に「ゾイド」と書いてあったりする。
後述のコマンドゾイドでは、ゴーレムとバトルローバーが通常のゾイドと同じ1/72スケールで加えられた。
・アタックゾイド/コマンドゾイド
手のひらサイズの超小型ゾイド。前者が昭和の、後者が平成の名称。
昭和は食玩、平成はガシャポンとして発売されたが、スケールはメインの玩具と同じ1/72であり、バトスト設定にもしっかり組み込まれている。
簡単な可動ギミックを備えるほか、昭和の第一弾のみ、ジョイントによって通常のゾイドにマウントさせることが出来る。
・トランスファイターゾイド
昭和末期に発売された、変形機能を持つ無動力ゾイド。
武器に変形してパワーコネクター搭載ゾイドに合体することが出来、スプリングによる弾体発射ギミックを備えている。
人気が衰えていた時期に展開されたためマイナーで、3体のみで終了したが、「ゾイドそれ自体がカスタムパーツになる」という発想は後のブロックスにも通じるものがある。
・SSゾイド
その名の通り「SSサイズ」の小型ゾイドで、動力がない代わりに関節可動をウリとしている。
通常ゾイドの強化パーツになったり、パイロットフィギュアとは別の兵士フィギュアが付属するものもある。
ゴムキャップは専用の六角形のものが採用された。
組み換えを主軸とした無動力シリーズ。
連結させたブロックで出来たボディにパーツを取り付けることで構成されている。
『スラゼロ』終了後の主力商品としてかなりの長期間続いており、モチーフ2種混合タイプの
キメラブロックスや、よりアクションフィギュアとしての性質を強めた
ネオブロックスなど、様々な派生形が発売された。
詳しくは個別項目参照。
・グラビティーゾイド
海外向け開発チームによって送り出された変わり種。
従来のモーターやゼンマイではなく、フライホイールを動力としているのが特徴で、専用のワインダーを差し込んで引っ張ることでアクションが作動する。
中でもメイン格のグラビティ―ウルフはなんとバイクに変形するという奇抜な代物。
ボディに大型のフライホイールを内蔵している都合上プロポーションが犠牲になっていたり、逆にホイールを小さくしたせいでパワーが物足りなかったりするものが多く、いまいち評判は良くないが、「着眼点は悪くない」と評する声もある。
基本的に海外向けのシリーズだが、『ジェネシス』放送時には完全国内向けのグラビティーゾイド、ランスタッグが登場している。
余談だが、実は第一期の初期ラインナップとして、グラビティーウルフと同じくバイクに変形し、フライホイールの力で走行するゾイドが検討されていたことがある。
最終的には『変幻機械獣スタリアス』という別のシリーズに組み込まれ、ビッグマンモスという名で日の目を見ることになった。
もしビッグマンモスが当初の予定通りゾイドとして発売されていた場合、グラビティーゾイドもスタンダードのひとつになっていたのだろうか。
『ジェネシス』の敵機体として発売されたシリーズ。
主な特徴は先述の通り。
玩具としては、完成済みの無動力素体にPVC製の外装を取り付けていく仕組みで、可動、発光、サウンドギミックを搭載する。
詳しくは個別項目参照。
【派生シリーズ】
・装甲巨神Zナイト
1991年から展開されたロボット玩具シリーズ。
時々間違われるが、「Ziナイト」ではなく「Zナイト」。
舞台は地球だが、実はゾイドの正当後継シリーズであり、時系列的にも昭和バトストの後に位置付けられている。
ゾイドが動物型なのに対し、こちらは人型アクションキットであり、ゾイドコアを組み込まれた巨大兵器「ゾイドアーマー」という設定。
ゾイドと同じく電動で歩行し、上半身の可動や武器の保持といったギミックもある。
店頭PVとして全2話のアニメ版も製作され、鳴り物入りでリリースされたが、高額なせいで人気は振るわず。
低価格商品に主力を移したり、ラジコン操作を取り入れたりと試行錯誤が行われたりもしたが、結局3年で終了した。
ゾイダーからは黒歴史的に扱われることも多いのだが、平成に復刻販売されたり、『フューザーズ』でチラッとゾイドアーマーの写真が写っていたり、コトブキヤの手でまさかのHMM化を果たしたりしており、公式からなかったことにされているわけではない。
・生体バトルビークル ZEVLE
ゾイド第一期が終了して2年ほど経った1992年末頃に始動したシリーズ。
有り体に言えば24ゾイドのリニューアルであり、色変更、ステッカー追加、兵士フィギュアを完成済み1体から組み立て式2体に変更、と幾つかの差異もある。
世界観は完全新規になり、惑星メルダを舞台としたメルダ警備隊VSゼ―ヴァ軍の戦いを背景としている。
詳細は割愛するが、ゾイド以上に善悪の境が曖昧な、中々入り組んだストーリーが用意されていた。
…が、結局玩具としては24ゾイドの焼き直しであり、ゾイドブームの終息から数年経ってのリリースということもあって結果は大失敗。
おかげでメガトプロスは唯一ゼブル化されず、当初予定されていたというオリジナルゼブルも全てお蔵入りとなった。帝国機しか復刻されなかったパンツァーティーアといい、メガトプロスは泣いていい
よほど流通量が少なかったのか、中古市場ではかなりの高額で取引されている。
君は項目を追記・修正出来るか!?
ANIWOTA ON!
- 造形が素晴らしいというか秀逸なデザインのが多いから好き。 -- 名無しさん (2025-10-01 23:43:32)
最終更新:2025年10月01日 23:43