アットウィキロゴ

菊花賞

登録日:2026/08/11 Tue 21:42:17
更新日:2026/08/17 Mon 11:53:00
所要時間:約 5 分で読めます




京都競馬場 芝3000m

最も強い馬が勝つ



菊花賞とは、競馬の競走名に使用されるレース名。
本項目では日本中央競馬会が主催するG1レースに限定して記載する。

概要

京都競馬場*1で1938年以降、戦時中の1945年を除き毎年開催されている芝3000mの馬齢3歳限定のレース。*2
時代によって異なるが、開催時期はざっくり纏めると10月下旬~11月上旬くらい。
名高きクラシック三冠を飾る最後の一冠であり、それまで苦汁を舐めてきた馬にとっても最後のチャンスを狙える重要なレースである。

しかし芝3000mという距離はそれまで出走可能なレースには無い長距離で、ステップアップレースにセントライト記念や神戸新聞杯こそあれど距離不安を抱える中での出走になることが大半。
適正距離ではなくともそれを承知で挑む陣営も多く見られ、近年でも三冠馬コントレイル福永祐一から距離適性不安を指摘されながらも陣営は出走を強行している。
一方で、春に開催される他の二冠と異なり秋の開催で大きく期間が離れるため、その間に成長して一気に台頭する、いわゆる「夏の上がり馬」の存在が勢力図に与える影響も大きい。
3歳春では仕上がりにくい長距離上等のステイヤーなどが夏の上がり馬として菊花賞を制し、そこから時の最強馬に上り詰めていくというのもよくあるパターンである。

だが、昨今では適性だけでなく斤量ボーナスや賞金、何より繁殖時点からの長距離軽視の傾向(要はどれも「挑むメリットが少ない」)のため敢えて菊花賞を回避し、古馬混合戦を承知で距離の短い天皇賞(秋)、あるいは最大の栄誉を求めて凱旋門賞へ進路を向ける陣営も多くなってきており、それは皐月賞や日本ダービーを制した馬であっても例外ではない。この傾向は近年特に強く、2020年代の内皐月賞とダービーの勝ち馬が別馬だった世代で、皐月賞馬とダービー馬両方が参戦したのは2023年のみ。逆に皐月賞馬もダービー馬も参戦しなかったケースは3度発生しており、菊花賞を軽視する傾向は浮き彫りになりつつある。
ただし、二冠どちらも獲って三冠が掛かっている場合に(故障以外の理由で)菊花賞を回避した事例はまだない。コントレイルもその典型例であり、菊花賞が軽視されても未だ日本のホースマンにとって三冠馬の価値は不変なのだろう。

長距離レースの価値低下が特に叫ばれ始めた21世紀以降でも、本レースを制した後に種牡馬として成功を収めた馬も少なくない為、クラシック本来の意義である繁殖馬選定競争としての役割も何だかんだ果たせている。

コースの特徴

京都競馬場の芝3000mは外回りで行われる。
まずスタートは3コーナー手前からのスタートとなり、そこから外回りコースを1周半して正面スタンド前のゴール板を通過する流れとなる。3コーナーには通称淀の坂と呼ばれる高低差約4.3mの起伏があるため、スタート直後と1周後の2回でこの坂を駆け上がらなくてはならない。
また3コーナーからスタンド前にかけてある下り坂と観客の歓声によって折り合いを欠いてしまったり、スタンド前=ゴール直前と認識しているは一週目でラストスパートを出しかねないので制御は必須となる。
長距離かつ直線の長いレース構造なので枠順不利や位置取りはタイトではないものの、コーナーを6回曲がるのでインコースを意識した走りは有利に繋がるケースが多い。

これらの要素から、長距離を走り抜けるスタミナにそれを途切れさせない集中力と、強い精神力や騎手との折り合いをつけて最後まで駆け抜けられる根性を必要とする。
また、淀の緩いコーナーと坂を降りきったらゴールまで続く長い平坦区間から、十分な末脚の速度も当然要求される。

「皐月賞は最も速い馬が勝つ」
「日本ダービーは最も運が良い馬が勝つ」
「菊花賞は最も強い馬が勝つ」

牡馬クラシック三冠について競馬界では古くからこう言われているが、菊花賞は騎手と馬の全ての力が試される、非常に過酷なレースという事である。
このように総合力を問うレースである為か、故障等で精細を欠くケースもある一方で古馬になってからも活躍を続けるケースも非常に多く、最も強い馬という格言を体現した馬も多い。
特に同コースで開催される春の古馬王道最大規模のレースである天皇賞・春との親和性はほぼ直結と言えるほど非常に高く、本レースと天皇賞・春を制した馬は特に数多くいる。

出走権

出走資格はサラ系3歳馬(騙馬は除く)で、未勝利馬や未出走馬も除外対象となる。
JRA所属馬は下記のトライアル競走で3着以内に入線した馬に優先出走権が与えられる。
G2レース セントライト記念 中山競馬場 芝2200m
G2レース 神戸新聞杯 阪神競馬場 芝2400m
それ以外の馬は獲得賞金順で出走枠が確定していく。

ちなみにトライアル競走からのステップアップ組は、2000年以降だとセントライト記念組からの菊花賞制覇が5頭しか出ていないのに対し、神戸新聞杯組からは16頭と雲泥の差がある。名前を冠している割に後輩に優しくない馬である。
ただし、セントライト記念組の5頭の内3頭は2021年以降の馬であり、近年は両トライアル格差についてはやや変化しつつある模様。

歴代優勝馬

開催日 優勝馬 優勝騎手 管理調教師 馬主 備考
71回 2010年10月24日 ビッグウィーク 川田将雅 長浜博之 谷水雄三 初勝利から106日でG1勝利
72回 2011年10月23日 オルフェーヴル 池添謙一 池江泰寿 ㈲サンデーレーシング クラシック三冠達成。ついでに騎手まで振り落とす
73回 2012年10月21日 ゴールドシップ 内田博幸 須貝尚介 小林英一 ミスターシービーのCMを見て掟破りの淀の坂の早仕掛けで皐月菊二冠達成。
74回 2013年10月20日 エピファネイア 福永祐一 角居勝彦 ㈱キャロットファーム
75回 2014年10月26日 トーホウジャッカル 酒井学 谷潔 東豊物産㈱ 記録3:01.0は2026年8月時点のレースコード及びコースレコード。デビュー149日での菊花賞制覇も史上最速。
76回 2015年10月25日 キタサンブラック 北村宏司 清水久詞 ㈲大野商事 「淀は祭りだ!キタサン祭りだ!」漢北島三郎、魂の熱唱
77回 2016年10月23日 サトノダイヤモンド C・ルメール 池江泰寿 里見治 父ディープインパクトとの父子菊花賞初勝利
78回 2017年10月22日 キセキ M・デムーロ 角居勝彦 石川達絵 台風21号の影響による不良馬場の為、戦後2番目に遅い3:18.9を記録。
79回 2018年10月21日 フィエールマン C・ルメール 手塚貴久 ㈲サンデーレーシング
80回 2019年10月20日 ワールドプレミア 武豊 友道康夫 大塚亮一 武豊騎手は最年長勝利記録(50歳7ヶ月)を達成。
81回 2020年10月25日 コントレイル 福永祐一 矢作芳人 前田晋二 無敗でのクラシック三冠達成
82回 2021年10月24日 タイトルホルダー 横山武史 栗田徹 山田弘 京都競馬場改修のため阪神競馬場開催
83回 2022年10月23日 アスクビクターモア 田辺裕信 田村康仁 廣崎利洋HD㈱ 京都競馬場改修のため阪神競馬場開催。記録3:02.4は当時の阪神3000mコースレコード。
84回 2023年10月22日 ドゥレッツァ C・ルメール 尾関知人 ㈱キャロットファーム 三冠を分け合った馬全馬が参戦したのは1999年以来
85回 2024年10月20日 アーバンシック C・ルメール 武井亮 ㈲シルクレーシング
86回 2025年10月26日 エネルジコ C・ルメール 高柳瑞樹 ㈲シルクレーシング C・ルメール騎手は史上初の3連覇を達成した。

余談

クラシック三冠レースにおいて、『皐月賞・日本ダービー』の二冠馬は数多く存在しているが、菊花賞を含む二冠馬はそれと比べるとやや少ない。
『皐月賞・菊花賞』の二冠馬は古くは1949年のトサミドリや1954年のダイナナホウシユウ、1974年のキタノカチドキ、1985年ミホシンザン、1987年サクラスターオー、1998年セイウンスカイ、2000年エアシャカール、2012年ゴールドシップと8頭が該当する。
だが『日本ダービー・菊花賞』の二冠馬は1943年のクリフジと1973年のタケホープといった皐月賞不出走組しかおらず、この二頭以外で2レースを制しているのは三冠馬しかいない。
単純に考えて皐月賞と菊花賞の距離差1200mが影響を与えているのか、レース間隔や調教による成長によるものなど考えられる余地はあるのだが、この疑問についての明確な回答は未だ出ていない。

牝馬の優勝は1947年のブラウニー以降達成されていない。*3
近年でも2021年のディヴァインラヴが3着や、2019年のメロディーレーンが5着と掲示板を抑えるのが精いっぱいなレベルで、そもそも出走する牝馬自体が非常に少なく、特にグレード制以降はディヴァインラヴまででわずか5頭。
(これは皐月賞や日本ダービーにも言えた話だが)クラシック三冠を狙えるほどの実力があるなら牝馬三冠を狙うのが通常であるし、何より牝馬路線は全体的に距離が短いもので、その傾向に逆らってわざわざ3000mに挑むメリットは基本的にない。
特別距離が長いわけではない皐月賞や日本ダービーなら出走馬を見て「こっちの方が勝てそう」といった選択肢もあるが、菊花賞はいくらなんでも適性の壁が厚すぎるため、珍しく長距離適性が見られたから行ってみるという方がまだ現実的(前述の掲示板内2頭もそのパターン)。

かの有名な騎手武豊が初G1制覇をしたのはスーパークリークで挑んだ菊花賞である。



追記・編集は淀の坂を駆け上がれるようになってからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2026年08月17日 11:53

*1 京都競馬場が改装されていた1979年と2021~2022年は阪神競馬場で代替開催されている。

*2 1944年のみ、能力検定競走として開催。

*3 ちなみに皐月賞も1948年のヒデヒカリ以降達成馬はいない。