一
人はこの理不尽な世に生を受け、胸の内にその寂しさをたったひとりで引き受けながら日々を生きるしかない。
そんなことを考えながら、明は通用口の重たい扉を開ける。外へ出た途端に暗く冷たい空気が頬に吹きかかり、温もりを奪っていく。外に出ると、白く無機質な電灯が頭上に点り、申し訳程度に足許の段差を照らすだけで、そこから数歩も行けば、ビルの脇道はほとんど闇だった。明は砂利を踏みしめる足音だけを頼りにして、表通りに出るまでの細い道を歩いた。
表通りに近づくと街灯の光が細く差し込み、明を取り囲む「無意味の壁」を薄く照らし出した。それは角張った輪郭をして、いつものように明の周りに突き立っていた。透明で、虹色に光を返し、さながら明は巨大な宝石の中に閉じ込められているようであった。
けれど風は通り抜け、息をするのに苦しくはない。
排気ガスの匂いのする空気をよく吸い込むことが出来た。
無意味の壁がよく見える。
明はその壁に無意味の壁と名付けた。
出社してから誰とも会話を交わしていないからだろうか。そんなことが無意味の壁を見るのに関係あるのかどうかもよく分からないが。
何が無意味なのか。
初めに無意味の壁を意識したのは、大学を卒業して入社した会社に勤め出して、半年ばかりが経った秋の頃であった。
仕事を面白いと思うことは一日たりとも無かった。
重苦しい日々がただ過ぎ去っていくばかりであった。
朝、布団の中で目が覚める。目の中に入る天井からいき
朝起きたときに、布団の中で明は思考を殺した。
思考を殺さなければ、起き上がることも、息をすることもできなかった。
そうした苦しみを抱えながら、それでも三年は勤めた。
甘えであったのかもしれないし、そうではないのかもしれない。それが何であるのかは今でも分からずにいた。
流れ落ちる砂の中に埋められていくようであった。
家に帰れば泥のように眠るばかりであった。
大学のときに仲の好かった友達とも次第に疎遠になっていった。
その壁がはっきりと見えるようになったのは二十代の中頃、大学を卒業して会社勤めを始めてから三年と半年が過ぎた頃だった。
明は会社員を辞めた。
明はずっと派遣社員をしてきた。
会社から駅までの道のり。
ひとりでいることにも慣れた。それが明にとっての日常であり、すなわち生きることだった。
明はいつもその無意味の壁に取り囲まれていた。
無意味の壁とは、
どんなにもがいてもあがいても、その壁を乗り越えることも、打ち破ることもできなかった。
駅で電車に乗り渋谷まで。
こうした感覚は二十歳を超えた頃から意識されるようになったのだけれど、思い返してみれば、明は小学校に通う頃からそのような気持ちをいつも心に抱えている子供であったと今では考える。
排気ガスの臭いしかしない空気を肺一杯に吸い込む。
明は仕事で疲れた頭を外気に晒しながら
扉のすぐ脇に立っている明は少しばかり背を屈めると、ビルの隙間から僅かばかりに覗かれる遠くの空を窓枠の中から見やった。空はから明はJR渋谷駅のホームへ降り。
通りを歩き、店まで。
そしてまた自分が他人とそれほどに顕著に異なる心理を持っているとは考えずにいた。
どうして自分はこのような性格であるのかを悩んだ。
自分は自分であることから逃れることができない。
逃れられないと分かっていながらも、それを諦められないのが人の性でもある。
働くということに無意味性しか感じずにいた。
何の疑問も感じずに生きられる人たちが羨ましかった。或いは、それらの人々も本当のところでは何かしらの疑問や悩みを胸に抱えながら生きているのかもしれない。それでも、正常の心情を保ったままで生活する分には問題ない範囲で、その煩いは収まっているのだろう。
懐疑なのだろうか。
家と会社を往復するだけの月日。
明は会社勤めに復帰して、正社員になってから半年目である。
時間を無為に捨て暮らしていた。
有意義なことなど何も感じられなかった。
自分は中途半端に優しい男なのかもしれない。
他人。
他人との距離をどうとれば良いのか見当がつかないでいた。
銭金を得ることに一日中を費やし、それで何を買うわけでもなかった。欲しい物などないし、家族や子供も欲しくなかった。そんなものはただ煩わしいだけのものだと感じていた。
友人が欲しい時期もあったが、失望を重ねるうちにそれも欲しくはなくなった。
欲しいのは時間だった。
それでいて、休みの日などには、ただただ布団の上で眠り過ごした。
女が欲しかった。女の肌だけは求めずにいられなかった。
明は腑抜けと考えられていた。
覇気のない男。
二
アヤという女はホームページに顔の写真を出してはおらず、口角のやや上がる口元が写真の端に僅かに写るばかりで、そこで切れていた。
綾子と、店で。
綾子はどんな女なのか。
綾子に焦がれる。
綾子の魅力とは。
綾子の感じる無意味性、または理不尽さとは。
綾子は美人である。
体を売っているということ。
綾子と店外で会いたいと申し出る。
しかし、断られる。
三
帰り道。
近所のスーパーで総菜や安くなった野菜を買う。
アパートにて。
小杉という男。
四
会社の飲み会。
調子に乗っている男たち。
清花というデザイナーの女。
清花と別れた明は、渋谷の街をふらふらと当て所もなく彷徨い歩いた。
五
会社を辞めて、一年半、何もしないでアパートで暮らした。
失業保険と、僅かばかりの貯金、それから部屋に残っている家電製品や本を全部売り払ってできたお金で暮らした。
失業保険の貰い方など知らなかった。
それでも、失業保険が入った日の翌日か翌々日には、明は風俗に行って女の肌にしゃぶりついた。
ある日は昼間から河原へ出掛けて、一日中河川敷の土手に腰を下ろし、川の水の流れを眺めていた。
白鷺が飛んできて、浅瀬となった川縁に立つ。川面はきらきらと太陽光を反射して白鷺の足下で輝いた。
ある日には街中へ出掛けていき、喫茶店に入り、窓から見える人の流れを見つめていた。一時間か二時間で店を替え同じように窓際の席に座って外を眺めるか、でなければ頬杖をついて眠った風を装って、薄目を開けては店内にいる人々の姿を見たり、人の話す声を聞いていた。
あるとき、隣の席に座る爺さんに声を掛けられた。
それ以外の日は、だいたいアパートの殺風景な部屋の中で本を読み耽った。
一年半というもの誰とも話をしなかった。
一年半という月日に、誰一人として、意義のある会話を交わさないということは、頭の働きを鈍らせはしないかと危惧された。
しかし、それは杞憂であった。
思いの外、明の言語能力は衰えなかった。
もともと、会社で働き、表向きには社会と繋がっているときにだって、明は本当の意味においては誰とも会話を交わしていなかった。
浮浪者。
六
残業。
仕事をせずには暮らせない。しかし、本当のところ、他のみんながただその気持ちのためだけに仕事に就いているとも思えなかった。
七
仕事をしていなかった時期に、明は精神科に行ってみた。
精神科へ行くのは初めてだった。
医師は金縁の眼鏡を掛けていた。
パーマを掛けていた。
Tシャツの上に薄手のジャケットを羽織り、下はずだ袋のようなズボンをだらしなく履いていた。素足にサンダルだった。
自分の精神構造を問うてみた。発達障害のようなものではないかと。
精神科医との問答。
すると、違うと云われた。
医師は、自分を発達障害にはしたくなさそうであった。
どうしてそうしたくないのか理由ははっきりとは分からなかった。
八
筆談風俗嬢。美菜。
美菜のお客にもなった方がいいのだろうか。
綾子の生い立ちは。
綾子の生活環境は。
綾子の出身は。
美菜は綾子の友達。
何処で知り合った?
美菜は小杉と付き合っている。
渋谷の街で知らない若者と喧嘩する。
酔っ払っていた。
ゲロを吐いた。
知らない女に声を掛けた。
無視された。
学生時代の友だちの結婚式に呼ばれて出席する。
大阪へ行く。
また別の日には、夜中に東京の街中を歩いた。
どこかの学校のグラウンドに迷い込んで、力一杯に走った。転んで土まみれになって、体に傷を作った。
九
就職活動をした。
いくつか受けた後、今の会社に勤めだした。
面接に於いてははったりの明るさを用いた。明は自分がそういったその場限りの陽気さを持ち合わせていることを知っていた。
しかしながら、そうして勝ち得た採用、しだいには社長の幻滅を日ごとに感じていくのであろうことは目に見えていた。
ウェブサイトを作っている会社だった。
面接の時にはありのままを話した。自らの心配をよそに、いくつかの会社では採用の通知をもらった。断りの連絡を入れなければならないほどだった。
むろんどの会社も大企業などではなく中小企業だった。社員数は十人にも満たない零細企業もあった。
それでも、自分にはそれだけの会社に採用される価値も能力もないように感じ、採用の通知を受けても実感も感慨も湧かなかった。ただ、またこれから会社勤めをしなければならない苦痛を重い、気が沈むばかりだった。
朝起きるときの苦しみ。
家を出るときに明は心を殺すようにしていた。
何も考えないようにする。考えると家から出られなくなる。そうなっては会社に迷惑が掛かる。実際、会社の誰にどのような迷惑が掛かるのだか分からないが。世の大半の人たちはそう感じるようなのであり、そう感じなければ社会の人の輪から落後してしまうという漠然とした不安が明をそう思わせた。
満員電車に乗り込み、自分の場所を辛うじて確保する。
勤め人はみんな辛いとはいえ、他人もこのように毎朝、心を殺す儀式をしてから家を出ているとは考えられなかった。
他人はどれほどの苦痛を感じているのか明には正確に分からなかった。
十
十万円ばかり持って、一人で東京に出てきた。
友達もいなかった。
勉強できんかったし、なんの取り柄もない。
綾子は家出をしている。
高校を中退している。
綾子は頭がよくて分別のある女だ。
世の不条理を分かっている。
綾子は父から虐待を受けていた。
父は仕事のできない男だった。
綾子は周囲から差別を受けていた。
差別とはどんな。
自分の力ではどうしようも無いものがある。
「誰か助けてくれたらいいんやけどなあ」
「あたしのこと助けてくれるなら、あたしだって何かしてあげられることするわ」
それが体を男に売るということだろうか、と明は思った。
十一
私も仕事のできん男です。
「綾子さんのお父さんと同じかもしれません」
「明さんは違うやん」
綾子が好意を多少は受け入れてくれる。
十二
金のトラブルがある。
綾子は本番をしているという噂。
向井がネットで広めている。
生写真も流出させている。
綾子は白を切る。
浜崎が詰め寄る。
ネットに動画が上がる。
向井が店に火をつける。
その弁償代金まで、綾子に請求される。
一千万の請求を綾子に要求する。
アダルトビデオに出れば、返せるだろうと浜崎は云う。
新たな男がやってきて、もう契約は済んでいるという。浜崎と話はついているのだという。
綾子は断固として突っぱねる。
綾子はアパートを浜崎に押さえられている。
明が一番云われたくないと思っていることは何か。
綾子と美菜の子供の頃。
十三
綾子に子供ができる。
妊娠検査薬を店の個室で使う。
「気を悪くする質問でしたら済まんですけど、……アダルトビデオは嫌なんですか」
「他の娘にはどうか分からんけど、あたしは嫌や」
「どこがどう違うかよう説明はせんけど、あたしの中では違うんや」
「明さんは、いいの?」
「えっ……それは……見たことがないと云ったら嘘になりますけど……」
「あたしが出ても?」
「それは……」
「人がしたことはどうやっても消せないんだよ。あたしが風俗で働いていたことはどうやっても消せないんだ。風俗で働くのと、アダルトビデオに出るのと、どう違うのか、もしかしたら、そんなに違わないことなのかもしれないけど、あたしは嫌や……絶対に」
「アダルトビデオに出たら、あたしはきっと何処にも歩いて行けなくなるんだよ」
「ひとりひとりとの秘めごとだから」
「みんなに見せるものじゃないんだ」
「それがあたしの砦や。ちんけな砦やけどな」
「笑うやろ。けど、その砦を破ってしまったら、あたしはもう終わりの無いところまで、どんどんどんどん落ちていくんや、きっと」
「街往く男たちも女たちも、あたしのことカスみたいな女やって心の中で思ってるんだ。どんなにあたしが自分で、そんなことはないって、自分に云い聞かせても、みんなの視線が、もの云わぬ視線が、あたしにいつもいつも突き刺さって、あたしの言葉を剥ぎ取っていくんだ。あたしにはそれが分かるよ」
「こんなカスみたいな人生じゃ嫌だと思って東京に出てきたのに、なんでこんな風になってしまったんやろう」
「綾子さんはカスなんかじゃありませんよ」
綾子と明のあいだに沈黙が降りた。
「綾子さんがカスなら、私も同じようなものです」
「明さんはちゃんと会社で仕事しているやないの」
綾子は俯いた。
「もしかしたら、もう落ちていっているのかもしれへんけどな」
「明さん、好きな人、おらへんの?」
「好きなのは綾子さんだけです」
綾子は笑った。
「けど、今までは? あたしと会う前。もっと、今よりも、もっと子供の頃とか」
十四
母親から葉書が届く。
綾子の田舎へ。
候補は熊野とか三重県の田舎の方の村落。
旅行に行くのは春。桜の咲く頃。
綾子は父親と向き合う。
「今なら、会えるかもしれん。会って、何か云ってやれるかもしれん」
何を云うつもりなのだろう。
「誰の子か分からんよ」
「」
十五
「明さん、子供好き?」
「子供は嫌いなんですけど、それは自分の子は嫌いってことだから、綾子さんの子なら大丈夫だと思います。大丈夫っていうか、綾子さんの子なら、きっと好きになると思います」
「自分の子は嫌なん?」
「はあ」
「他の男の子でもいいの?」
「はあ」
「なんで?」
「なんでと云われましても、自分の血は、自分で終わらせたいというか」
「ふうん」
綾子は…。
「あたし、明さんの子ども作りたいって云ったら?」
「えっ」
綾子は…。
「明さん、なんであたしに敬語でしゃべるの?」
「綾子さんだって」
「明さんはお客さんだから」
「変な人」
明と綾子は激しく求め合った。互いを欲した。
十六
綾子が雑貨屋で働き出す。
が、浜崎たちに嗅ぎ付けられて、店主に迷惑をかけてしまい、働けなくなる。
十七
「そんなん法外な金額やろ」
「いいんです。私には必要の無いお金ですから」
「必要の無いお金なんてあるわけないやろう。お金はあるならあるだけあった方がいいに決まってるから。ほんの少しだって」
「いいんです。いらんお金ですから」
「明さんが一生懸命働いて稼いで貯めたお金やろ。あたしと何の関係もないやないの」
「関係ないなんて、そんな寂しいことを云わんでください。私も綾子さんを、買いましたから」
「買ったて……あれはいいんや。明さんは、あたしが好きでしたことだから」
「そんなわけありません。あのとき、私はお金を払いましたから」
「それはそうだけど……」
「明さん、お金、いらんの」
「お金はまた少しずつでも稼げば何とかなるでしょう」
明は綾子に黙って、ひとりで談判に赴く。
明は絶えず綾子を庇った。
銀行のカードからなにから財産をすべて取られてしまう。
アパートにもやってくる。殺風景な部屋に驚くが、その中でも金目のものを奪っていく。
さらには殴られる。
ただ、書きかけの原稿だけは無事だった。
さらに会社にも匿名の告知があって、職場でも噂になってしまう。
殴られた傷もまだ癒えず、痛々しいままに、人目も気にせず素知らぬ顔で働くが、それでも明は職場で働くのが辛くなる。
十八
向井も、多少、懲らしめる。
向井にも正攻法で談判する。
向井の家を探し出さなければならない。
向井の家に行く。
嫉妬に狂った向井は明を刺す。
刺されてなお動じない明に、向井は刺しながらにして恐ろしさを感じる。
明の内臓が破れた腹から飛び出していた。
刺された証拠はビデオはビデオに撮った。
「取るがいいさ」
向井を諭すと、恐れをなして逃げ出した。
十九
「旅行、楽しかったね」
「あんなに楽しい旅行、生まれて初めてやった」
もう店では働けない綾子は店を辞めてひっそりと暮らしていた。時折は明の見舞いと看病に顔を出して。
「あたし、そんな価値のある女やないわ。阿呆やな」
「私の命など、生きてても死んでいてもどうせ変わらない命ですから」
「明さん、何かやりたいこととかないの?」
「無いんです。情けないことですが」
「生きてれば、なんかやりたいこと出てくるかもしれんよ」
「そうでしょうか……それだといいんですけど」
二十
そこへ、浜崎が再びやってくる。
二十一
今までの人生で。過ちを犯している。一番云われて嫌なことは何なのか。
綾子には一番云われて嫌なことはないのか。
綾子もこれまでの生き方の中で、間違いを犯している。
美菜と一緒に店を潰した。美菜も逃げている。
小杉はどうやって殺されたのだろう。
ニュースでは練炭自殺を図ったことになっているが、実際には何十カ所も体を滅多刺しにされて死んだ。
一枚のSDカードが送られてくる。中には無残に切断された小杉の写真とビデオが入っていた。
いずれにしても、逃げ切れるわけがないのと、明にこれ以上迷惑をかけられないと思って別れを選ぶ。
「筆談のAV嬢なんてそうそういないからね」
「あたしのビデオ、見んといてな」
「私はひとりで残されて、どうしろというのです」
「私はこんなときになっても、腑抜けでしかありえないと思うと、情けなくて、言葉もありません」
「一年か、二年か分からんけど、それでもあたしのこと忘れてなかったら、迎えに来て。それまでは、絶対に会いに来たらダメだよ」
何か、連絡を取り合うための物を渡す。
「あの、誰も知らない桜の木の下に、満開の日に行くから、もし、あたしのこと忘れてへんかったら会いにきて」
小杉は何故、美菜が仕事を続けるのを辞めさせなかったのか。
明は病気になる? 救急車を呼ぶ。女医。知らない街からバスを乗り継いでアパートまで帰る。病院では治療費を請求される。
■登場人物
明…会社員。営業。三十三歳。どうしてこんなに腑抜けなのか。主人公の感じている理不尽さとは何か。
綾子…二十四歳の女。風俗店で働く。綾子の抱える理不尽さとは何か。綾子の陥る不幸は何か。また、それが周りの人間にばれて偏見の目差しで見られていた。
小杉…異端。明るい。明の友達。自分の性を受け入れている。表向きは。昔は違った。小杉にはできないことがある。美菜を助けられなかった。明とは前の職場で知り合った。美菜と付き合っている。小杉と美菜はどこで知り合ったのか。街でナンパしたとか。三十二歳。そこそこ高級なマンションに住んでいる。コンピュータの仕事をしている。
美菜…筆談風俗嬢。綾子の幼馴染み。二十二歳。当たりは優しいが、内に負けん気の強さを秘めている。
向井…ストーカー。三十六歳。
西尾…明の上司。悪。
浜崎…風俗店の店長。三十歳。暴力的な悪人。
清花…二十三歳の女。デザイナー。
ラーメン屋の店主…
■ちょっと考える
名作に悪人っている?
極悪。赤目。OUT。
子悪党。リアルワールド。
永遠の仔。
内なる悪。原罪。妬み。嫉み。
悪意の総体。人間の性、弱さ。偏見。虐め。無関心。パイロットフィッシュ。
自らの過ち。虚栄心。シュタインズゲート。
天災。病気。運命。パイロットフィッシュ。
一.理不尽な世に生きなければならないなど。明の内面。冬。
二.綾子という女。店で。三度目。
三.明の暮らし。一人暮らしのアパート。小杉という男。
四.会社での明。入社したばかり。やはり空気が合わないと思いながらも取り繕う。
飲み会。渋谷の街。清花。けど清花の役割は?
五.会社を辞めていた頃。浮浪者。小杉とだけは連絡を取っていた。小杉は働いている。
六.仕事に対する考え。綾子は絵を描くのが好きらしい。
七.精神科に通っていた頃。ここでも小杉を出す?
八.筆談風俗嬢美菜。美菜は綾子の幼馴染み。美菜と綾子の子供の頃。
渋谷の街で若者と喧嘩をする。女に声を掛ける。無視される。
美菜に笑われる。女の子のことを全然分かっていないと。小杉を美菜に紹介する。
九.就職活動をした頃の話。働く苦しみ。
十.綾子が本番をしているという噂。ネットに流れている。
綾子は家族を置いてきた。
十一.明の好意を少しだけ受け入れてくれる。なぜ?
十二.綾子の故郷に旅行する。綾子と美菜の子供の頃。父親と向き合う。春。
父親はどうやって暮らしているの? 母親はいるの? 母親が生きている場合、借金は母のものか娘のものか。
故郷の絵を描く。
明が一番云われたくないことを綾子は云う。「人生に積極的になったことなど一度も無いじゃないの」
十三.向井が店に火を付ける。向井は綾子の客だった。
向井は捕まる。向井に金はない。向井は綾子に無下あしらわれ続けている。
十四.矛先は綾子へ。アダルトビデオの話。
単に客だったと云うだけで、綾子へ矛先を向けられるか? 口調は穏やかでも有無を言わせない迫力で。
綾子なら売れっ子にすぐなれる。
十五.アダルトビデオは嫌だ。アダルトビデオに出て、金持ちになって高層マンションに住んでる子も
知ってるけど。あたしは無理。そんなに高いビルに住んだって、いつかそこから飛び降りて
死んじゃうだけだと思うから。
十六.明がお金を出す。小杉と美菜もお金を出す。向井と一対一で話を付ける。向井は消える。
小杉と美菜をこの前までにもう少し描かないと。
十七.一旦は収まった様子。綾子が普通の店で働き出す。
十八.生きていれば何かやりたいこと出てくるかもしれんよ。
十九.浜崎が再び現れる。仕事と信用を失った。俺にも金をと言い始める。
浜崎は陽気な奴だったのに、態度が豹変した。
二十.小杉が痛めつけられる。見せしめ。通勤途中に拉致される。夏。
明と小杉が話す。綾子とはどんな女なのか。明と小杉の信頼関係。小杉は納得する。
高層マンションの自室のベランダから地面を見下ろしている。小杉の無力さ。
だけど、美菜が許してくれるなら、俺は死なない。美菜が痛めつけられた。
二十一.明が正攻法で浜崎に談判にいく。浜崎には殴られる。刺される。
会社を辞める。明を介抱する綾子。
二十二.お父ちゃんが死んだ。父親は借金を残していた。父親の葬式もだせない。住む世界が違うと悟る。
二十三.あたしと逃げてくれる?
明さんはあたしたちとは住む世界が違うのよ。
電話を掛けると繋がらない。綾子は消えてしまう。数日後にメールが届く。
「楽な方を選んでいただけ。あたしの方が人生に積極的になったことなんて一度もないんだ」
アダルトビデオなんかに出ないし。ちゃんと働くんだから。明さんにも頼らない。
あたしに、どんな風にしてそんな大金稼げるのか分からんけど。けど風俗はもうやめるんや。
何年かかるか分からんけど、恥ずかしくないあたしやったら、あの桜の木の下に行くから。
毎日レンタルビデオのアダルトコーナーへ行って。あたしがいないことをチェックしてください。
二十四.あれから三年経つ。綾子の姿はまだ見えない。
単に住む世界が違うと悟るから。
調べること。借金を相続するってどういうこと。娘、つまり女でもそれは相続される?
自分などよりも明らかに好い男、見た目も、経済力も、そんな男よりも自分を選んでくれる理由
他愛のないことで笑い合える。笑いの感性が同じ。
経済力はその男の方が上かもしれないが、自分はその器じゃないと覚る。
自分のために肉体的な苦痛やひいては命をも投げ出してくれる。
別れの要因
強制の別れと決意する別れがある。
あなたを助けるための別れ。あなたを巻き込めない別れ。
恋敵。昔の男。パイロット・フィッシュ。
死。OUT。
赤と黒。
助けに行かなければならない義理。しがらみ。仲間。自己犠牲。赤目。
死ななければならない。自己犠牲。グスコブドリの伝記。アイアンジャイアント
辛い思い出が多すぎて一緒にはいられない。永遠の仔
逮捕。罪と罰。
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最終更新:2011年08月29日 18:37