このうちに相違ないが、どこからはいっていいか、勝手口がなかった。
往来が狭いし、たえず人通りがあってそのたびに見とがめられているようなせいた気がするし、しようがない、切餅のみかげ石二枚分うちへひっこんでいる玄関へ立った。すぐそこが部屋らしい。云い合いでもでもないらしいが、ざわざわきんきん、調子を張ったいろんな声が筒抜けてくる。待ってもとめどがなかった。いきなりなかを見ない用心のために身を斜によけておいて、一尺ばかり格子を引いた。と、うちじゅうがぴたっとみごとに鎮まった。
.
最終更新:2011年06月22日 09:12