三人称の文体の参考にするために、天童荒太「永遠の仔」を部分的に読み返してみたり、桐野夏生「OUT」、高村薫「レディ・ジョーカー」と比べてみたりしている。
「永遠の仔」の地の文は、「OUT」「レディ・ジョーカー」と比べると、世界をあるがままに見ていると思う。世界を見るときに、ことさらに冷淡な偏見を通していないというか、ただそこにあるものを描写している印象。
「OUT」「レディ・ジョーカー」は語り手が世界を冷厳に見ていると思う。
物語中で起きる事件はどれも同じように暗いのだが、書き方にこんなにも差があるものかと驚く。一度目に読んだときには気付かなかった。
暗い物語を書くなら地の文もそれ相応の暗さを醸し出しながら書こうとするのが普通だと思うし、実際「OUT」「レディ・ジョーカー」ではそれが話の雰囲気作りに活きている。「永遠の仔」にはそれがない。文章そのものは平板で平明だ。脚本のト書きのような印象。文章の格調はない。しかし、だからといって、それがマイナスになってはいない。そのことに気付いたので、ここに記しておく。
第一巻
序章
第一章一九九七年春
第二章一九七九年五月二十四日
第三章一九九七年五月二十四日
第四章一九七九年初夏
第二巻
第四章一九七九年初夏(承前)
第五章一九九七年梅雨
第六章一九七九年仲夏
第七章一九九七年冷夏
第三巻
第八賞一九七九年盛夏
第九章一九九七年晩夏
第十章一九七九年初秋
第四巻
第十一章一九九七年仲秋
第十二章一九七九年晩秋一九八〇年冬
第十三章一九九七年冬隣
第五巻
第十四章一九八〇年春
第十五章一九九七年初冬
終章一九九八年早春
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最終更新:2010年11月14日 02:46