2011年12月
寝ているときの方が真実に目覚めている。
目覚めると、掴みかけていた真実が立ち消え手ゆく。
わたしは真実を掴みかけていた。
これは、カント体験だろうか。
わたしは中学生で、岡原さんのことを好きだった。
月曜の朝だった。
兄の部屋にあるステレオか、あるいはわたしの頭の中だけで、
「少女A」がずっと流れている。中森明菜の声で。
兄は結婚していて、どうしてかわたしと一緒に暮らしている。
わたしも、というべきか、誰かと、できるなら岡原さんと、
結婚したいと強く感じていた。
誰かを求めていた。他人に絶望したわたしであるからこそ、
他人を求めていた。
それは単に理想化された他人なのかもしれない。
わたしは家族からも疎外されていた。
グレーゴル・ザムザのように。
今日は体育の時間があり、わたしは体操服を探している。
体操服がなければ怒られる。
さりとて、遅刻しても怒られるのだ。
他人に絶望しているからこそ矢張り、ひとりでは生きられぬのだ。
兄夫婦の姿も、両親の姿も見えない。
もちろん岡原さんも。
体操服も見つからない。
わたしは半分だけ、これが夢であることに気付いている。
今日は月曜日だが、中学校ではなく、本当は会社に行かなければ
いけないことに、頭の隅では気付いている。
どうして誰もいないのだろう。
玄関の扉が開け放たれている。
冷たく乾いた外気がそのまま家の中の全部を満たしている。
誰の姿も見えない。
なんだわたしも、本当は寂しかったのか。
編集(管理者のみ)

人は空想の中で、また抽象世界の中で運動会ができることをぼくは証明してみせた。

旗。空に舞いはためく旗。

子犬。崖から滑り落ちる子犬。

財布。梅宮の財布。母。ぼくは梅宮の財布を右のポケットに入れている。

体育館の中。鬼は小島君。ぼくはすりぬける。

運動場に向かう。昇降口にXXXさんとXXXさん。人が怖い。その裏返し。

運動場に出る。音楽が始まる。空に旗が広がる。

墨で描かれた旗が、青空の彼方よりも無限の天空まで続く。


2011年11月10日(木)

 家には死体がある。ふたりの死体。誰かは分からない。毛布にくるまれている。

 お父さんは社長になり、小さな仕事をもらうために奔走しているようだ。お父さんもお母さんも謝ってくれた。

 死体を隠し続けなければならないが、ぼくは裏の窓からこっそりと家を出た。

 外に出たぼくは窓をもとの通りにぴったりと閉めたけれど、鍵までは外から掛けることはできない。

 逃げ出して草むらの中から家を見ている。お母さんが窓を開けて外を眺めている。ぼくはすぐに見つかってしまった。

 ぼくは仕事を続けると言うが、本当のところどちらが自分のためになるのかまだ分からない。

 加代ちゃんは、、自分のために穏やかに暮らしていくらしい。

2011年11月30日

 僕は三人の女を殺した。真夜中。公園を歩く。日本海側の辺鄙な街。

 僕は追われている。いや、追われてはいない。ばれてもおかしくはないが、まだ誰にも気づかれてはいない。

 僕は証拠を残している。警察が調べればすぐにわかる証拠を。









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最終更新:2012年01月11日 02:55
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