「機装兵 ノヴレス・アインス」

[ショートストーリー]
「……脚が無い様だが。」
「そりゃあ、分析のために分解調査中ですからな。」
「……。」
「そりゃあ、分析のために分解調査中ですからな。」
「……。」
ここは帝国はザラ公爵家領にある、帝国軍の機兵研究所の工房である。今その工房の床には、1機の機装兵が横たわっていた。その名を、機装兵『ノヴレス・アインス』と言う。それはシアン少佐が多大なる犠牲を払い、自由都市同盟領はセプテム・レータスで、聖王国の極秘研究施設より奪取してきた、聖王国最新の試作機装兵だ。
「……わたしはドゥールハイム中将に、聖王国のカルナック隊、ノヴレスを確実に倒すためにこの機体を使わせて欲しいとお願いしたのだがな。それが何故、分解されているのだ?」
「それはドゥールハイム中将より上で、ストップが掛かったからですよ。公爵閣下その人が、1機の試作機を確実に倒す事よりも、聖王国の技術を分析して今後の戦略構築に役立てるべし、と。……少佐のところには、話は行ってなかったんですか?」
「来ておらんな。……理屈はわかるが、現実にノヴレス1機のせいで、多大なる被害がでている。少々無理をしても、倒して置くべき相手だと思うのだがな。いや、公爵閣下を批判するつもりはない。忘れてくれ。」
「それはドゥールハイム中将より上で、ストップが掛かったからですよ。公爵閣下その人が、1機の試作機を確実に倒す事よりも、聖王国の技術を分析して今後の戦略構築に役立てるべし、と。……少佐のところには、話は行ってなかったんですか?」
「来ておらんな。……理屈はわかるが、現実にノヴレス1機のせいで、多大なる被害がでている。少々無理をしても、倒して置くべき相手だと思うのだがな。いや、公爵閣下を批判するつもりはない。忘れてくれ。」
シアン少佐は踵を返し、工房の建物を出て行く。その背中に、技師が声を掛けた。
「気休めかもしれませんが!少佐ならレギオンで上手くやれますよ!」
「ありがとう、信じよう。」
「ありがとう、信じよう。」
そう言って立ち去るシアン少佐の心の中で、ザラ公爵家に対する苛立ちが湧き上がる。怨念が、また1つ積み重なった……。
[解説]
聖華暦600年代、聖焔計画において開発された、聖王国初の第五世代機兵。
これより以前の聖王国製機装兵は、仮に第五世代機兵の前提条件を満たした機体であっても、後の世の識者からは4.5世代機兵と扱われる。
これより以前の聖王国製機装兵は、仮に第五世代機兵の前提条件を満たした機体であっても、後の世の識者からは4.5世代機兵と扱われる。
機装兵『ノヴレス』の位置付けは、あくまでミーレスなど後続の機体のためのプロトタイプである。
ことに本機体は、後の『ノヴレス・ツヴァイ』以降の機体に用いるため、先行してデータを収集する目的で建造された。
基本的な部分は『ノヴレス・ツヴァイ』や『ノヴレス・ドライ』となんら変わりないのだが、後続の機体と比べると若干軽装で、魔導炉も出力がわずかに低い。
ことに本機体は、後の『ノヴレス・ツヴァイ』以降の機体に用いるため、先行してデータを収集する目的で建造された。
基本的な部分は『ノヴレス・ツヴァイ』や『ノヴレス・ドライ』となんら変わりないのだが、後続の機体と比べると若干軽装で、魔導炉も出力がわずかに低い。
この機体を含めた『ノヴレス』系機装兵は、トライアルの一環として行われた、鹵獲機装兵『レギオン』を相手の模擬戦において、圧倒的なまでの勝利を収めた。
パワーも反応速度も機動性能も、帝国の標準機である『レギオン』を足元にも寄せ付けない。
防御面も、三層ハニカム構造の錬金金属イシルディン製の装甲を採用し、更にこれも多層ハニカム構造のイシルディン製シールドを携え、まさしく鉄壁である。
負ける方がおかしいと言う物だった。まあ、かかっている費用も桁が違うのだが。
パワーも反応速度も機動性能も、帝国の標準機である『レギオン』を足元にも寄せ付けない。
防御面も、三層ハニカム構造の錬金金属イシルディン製の装甲を採用し、更にこれも多層ハニカム構造のイシルディン製シールドを携え、まさしく鉄壁である。
負ける方がおかしいと言う物だった。まあ、かかっている費用も桁が違うのだが。
更に言えば、この機体を含めた『ノヴレス』系の機装兵は、破槍砲という新機軸の魔導砲を手持ち武器として携行している。
これは機兵用サイズの槍を射出すると言う性質上、運用コストも高く使い勝手も良くないが、飛び道具それも魔導砲で機装兵を撃破できるのは戦闘において非常に有利であった。
これは機兵用サイズの槍を射出すると言う性質上、運用コストも高く使い勝手も良くないが、飛び道具それも魔導砲で機装兵を撃破できるのは戦闘において非常に有利であった。
だがこの機体は、自由都市同盟領セプテム・レータスに置かれた聖王国の秘匿研究施設より、奪取されてしまう。
これを奪ったのは、アルカディア帝国特別侵攻軍「リッターブルク」所属、シアン・ラス・クーアル少佐が率いる機兵偵察部隊である。
シュライン級強襲揚陸艦カルナックへ積み込むために、分解されパーツ状態になっていたこの機体は、カルナックがシアン少佐の隊による攻撃から逃れる為に緊急で発進せざるを得なかったため、取り残されたのだ。
これを奪ったのは、アルカディア帝国特別侵攻軍「リッターブルク」所属、シアン・ラス・クーアル少佐が率いる機兵偵察部隊である。
シュライン級強襲揚陸艦カルナックへ積み込むために、分解されパーツ状態になっていたこの機体は、カルナックがシアン少佐の隊による攻撃から逃れる為に緊急で発進せざるを得なかったため、取り残されたのだ。
無論、カルナックは秘匿研究施設を去るにあたり、機密保持のために艦砲射撃で徹底的にその施設を破壊する。
しかしシアン少佐がカルナックを追撃する前に、万が一の可能性に賭けて秘匿研究施設跡地を調査したところ、この『ノヴレス・アインス』が左腕、右脚などの一部パーツは小破していたものの、充分に原型を留めて残されていたのを発見。
シアン少佐は急遽予定を変更、カルナック隊の追撃をドゥールハイム・フォン・ザラ上級大将の部隊に依頼すると、自身はこの発見物を持ち、急ぎ帝国本土へと帰還したのである。
しかしシアン少佐がカルナックを追撃する前に、万が一の可能性に賭けて秘匿研究施設跡地を調査したところ、この『ノヴレス・アインス』が左腕、右脚などの一部パーツは小破していたものの、充分に原型を留めて残されていたのを発見。
シアン少佐は急遽予定を変更、カルナック隊の追撃をドゥールハイム・フォン・ザラ上級大将の部隊に依頼すると、自身はこの発見物を持ち、急ぎ帝国本土へと帰還したのである。
ちなみに一旦は分かたれたシアン少佐とカルナック隊の運命であるが、実はこの後何度も交錯し、ぶつかり合う事となるのだが……。
閑話休題。
この機装兵『ガヴラス』の系譜は聖華暦800年代にまで脈々と続いており、アルカディア帝国の象徴とも言える機装兵『レギンレイヴ』が生み出された。
カーライル王朝・聖王国の機装兵『シュヴァリエル』とアルカディア帝国の機装兵『レギンレイヴ』にデザインの共通性が見られるのは、両者ともその源流が機装兵『ノヴレス』系列にあるからなのだ。
カーライル王朝・聖王国の機装兵『シュヴァリエル』とアルカディア帝国の機装兵『レギンレイヴ』にデザインの共通性が見られるのは、両者ともその源流が機装兵『ノヴレス』系列にあるからなのだ。
[武装・特殊装備]
[試制120mm連装破槍砲ディンギル]
機装兵『ノヴレス』系列機最大の特徴となる武装。砲弾ではなく、機装兵用の短槍を射出する魔導砲である。50m以内の有効射程内であるならば、充分に機装兵の装甲を貫通可能。
機装兵『ノヴレス』系列機最大の特徴となる武装。砲弾ではなく、機装兵用の短槍を射出する魔導砲である。50m以内の有効射程内であるならば、充分に機装兵の装甲を貫通可能。
威力こそ強力な武器ではあるのだが、幾つかの欠点も併せ持つ。まずは、盾と一体型であるため重量が過大であり、簡易量産型である機装兵『ミーレス』系列機の標準タイプ魔力収縮筋出力では、保持することすら叶わない。また反動も大きく、白兵距離で使用すると大きな隙ができる事も欠点の1つだ。また射出された槍も初速がそこまで速いわけでは無く、熟練操手であれば見て回避する事は不可能ではない。
最大の欠点は、槍を砲弾代わりに使い捨てるため、非常に運用コストが高くつく事である。弾数も少なく、あらかじめ魔導砲に装填しておいた2本、背中の矢筒に5本の計7本しか槍を携行できないため、これも欠点の1つと言えるだろう。
[試作型ジムズ魔導砲]
機装兵『ミーレス』が携行する、ジムズ魔導砲のプロトタイプ。構造を変えずにそのままの形で少数量産されており、機装兵『アイファー・ミーレス』などにも用いられている。量産数がある程度あったため、後々にG型ジムズ魔導砲と正式に命名された。
この魔導砲は、ジムズ魔導砲と比較して、速射力に劣るが若干威力が高い。このため、射撃を直撃させた時の衝撃力は高い。もっとも結局は前述のディンギルと異なり、機装兵を撃破するほどの威力は無いため、取り回しや速射性に勝るジムズ魔導砲に取って代わられるのだが。
[通信装置]
機装兵『ノヴレス』の系列機は、指揮官機として用いられる場合も考慮し、この時代の機体としては過剰なまでの通信管制能力を持たされている。『ノヴレス・アインス』は後頭部に2本の小型ロッドアンテナを装備する他、背部ランドセルに大型のロッドアンテナを搭載している。これにより、『ノヴレス・アインス』は乱戦時の魔導炉ノイズ下であっても、そこそこのレベルではあるが言葉が理解できる程度には明瞭に、通信を送受する事が可能である。
模型ギャラリー







[関連機体]
従機『ハルマー』
重機兵『ワッズ』
機装兵『ノヴレス』
機装兵『ノヴレス・ツヴァイ』
機装兵『ノヴレス・ドライ』
機装兵『ノヴレス・フィーア』
機装兵『ノヴレス・フュンフ』
機装兵『ノヴレス・ゼクス』
機装兵『ノヴレス・ズィーベン』
機装兵『ドラグーン・ノヴレス』
機装兵『ミーレス』
機装兵『ガヴラス』
機装兵『シュヴァリエル』
機装兵『レギンレイヴ』
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機装兵『ノヴレス』
機装兵『ノヴレス・ツヴァイ』
機装兵『ノヴレス・ドライ』
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機装兵『ドラグーン・ノヴレス』
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機装兵『シュヴァリエル』
機装兵『レギンレイヴ』