ルパン三世 炎の記憶 ~TOKYO CRISIS~

登録日:2016/07/30 (土) 09:45:21
更新日:2023/07/16 Sun 12:21:27
所要時間:約 10 分で読めます





待て…ルパン!

悪ィが、泥棒が警官を助けるワケにゃいかねーんだ

固いこと言うな! 今のわしは警官じゃねーんだからよ!?

…そりゃそーだなァ


『ルパン三世 炎の記憶 ~TOKYO CRISIS~』とは、1998年7月24日に金曜ロードショーにて放送された、ルパン三世テレビスペシャル第10弾のタイトルである。

監督:篠原俊哉
脚本:藤田伸三
主題歌:まりや(林原めぐみ)「あこがれ」


タイトルから分かる通り、日本の東京が舞台となっている作品。
今回は前作の反動からかコメディが多彩かつ、ルパンの好敵手である銭形警部にスポットが当てられている作品となっており、今までとは一味違う彼の敏腕刑事ぶりが見られる。
また今回はストーリーが進むうちに、銭形がとある女性に淡い恋心を抱くようになるという、一風変わった作品でもある。
この女性が囚われの身となった時には、彼女を救うため危険も顧みずに巨悪に立ち向かう事を誓う。
この時の、決意に燃える銭形はかなりカッコいいので、ファンは必見である。

最高視聴率は24.1%で、これはTVスペシャルでは『燃えよ斬鉄剣』に続く歴代2位となる記録である。

テーマとなっている徳川慶喜は同時期に大河ドラマも放送されており、当時ちょっとしたブームとなっていた。

【あらすじ】

徳川の埋蔵金の在処が記されていると言われている2枚のガラス乾板「巽の慶喜」と「乾の慶喜」。
今回のルパンのターゲットはその2枚のガラス乾板であり、手始めに「巽の慶喜」を盗もうとするのだが、所有者のマイケル・スズキの依頼で警備に当たっていた銭形の登場によって計画は失敗に終わる。

今度は仲間を集めて「乾の慶喜」を頂こうとしたルパンだったが、不二子と五エ門の所在は分からず、頼りの次元も虫歯が原因で銃を撃つこともままならない状態だったので、仕方なく単独で行動する事に。
一方、次の任務として「乾の慶喜」の護衛を任された銭形は、夜間に大型トレーラー数台を使って輸送する作戦を決行。
この情報を掴んだルパンはガラス乾板を輸送中に盗む事を思いつき、トレーラーが首都高に差し掛かったタイミングで作戦を実行。
しかしその計画も途中で銭形にばれてしまった事で、夜の首都高を舞台に彼とルパンとの一騎打ちが始まった。
だがその最中、突然トレーラーが銭形の命令を無視してルパンを襲い始め、その暴走と手榴弾の爆発により首都高で大惨事が発生。
トレーラーの暴走によって一度は首都高から落ちたルパンだがしぶとく舞い戻り、ガラス乾板が積まれたトレーラーに乗り込む。
そこで待ち構えていたスズキの部下のゴンドウと戦うが、その最中に不二子と五エ門が乱入。ガラス乾板を盗まれてしまい、ルパンはやむなく退散を余儀なくされる。
そんなルパンを追おうとする銭形だったが、通報を受けて駆けつけたパトカーに取り囲まれ、道路交通法違反の現行犯で逮捕されてしまった。

首都高での大惨事で奇跡的に死者は出なかったものの、その責任を取らされた銭形は近々オープン予定の娯楽施設「アクアポリス」の警備から外され、休職命令を言い渡されてしまう。
仕方なく引き下がった銭形はその夜、彼に密着取材を行っている記者の一色まりやを連れ、屋台で飲んだくれる。
暴走したトレーラーを運転していたのは、スズキが用意した運転手であったらしく、この裏には何かあると勘づいた銭形は命令違反を覚悟で、翌日から単独で捜査を開始。そんな銭形を心配したまりやも手料理などを用意して応援した。

一方、ルパンと次元はようやく不二子と五エ門に接触し、彼らと手を組んでアクアポリス内にあるガラス乾板を盗み出そうとする。
雑誌社の人間を装って内部に潜入するルパンと不二子だったが、その目論見はスズキに全てばれてしまっていた。
地下に連れて行かれる途中で毒ガスによって殺されかけるが、ルパンが機転を利かせたおかげで助かり、隙を突いて不二子は逃走した。
そしてアクアポリスに残ったルパンは、その地下で謎の研究施設を発見し、マイケル・スズキの“裏の顔”に気づく……


【登場人物】


◆レギュラーキャラクター


CV:栗田貫一
ご存知・天才的アクションに生きる男。
今回はどうにも絶不調でスランプ気味。徳川の埋蔵金の在処が記された2枚のガラス乾板を狙うが、今回の銭形が冴えまくっているせいか、計画がことごとく失敗に終わる。
アクアポリス地下にある研究施設に銭形たちと侵入した時には、この研究施設が造られた目的とスズキの野望について知っている事を教えた。
下見をしていたにしてはやけに詳し過ぎるようだがその理由は……?
今回は下町のボロアパートに潜伏しているが、スズキのプライベート・オフィスの玄関のセキュリティの見立てでは、かなりズボラかつ不健康な生活をしている模様(ビール専用の冷蔵庫を持っているあたりから察しはつく)。

今作での愛車はアルピーヌ・A110。アパート横に無断駐車しているらしく、よくフロントガラスに注意の張り紙がされている。シビエのフォグランプに見えるのはルパンお手製のメカ…なのだが、劇中ではトラックの不意打ちに遭って使うタイミングを逸したためどのようなメカかはよく分からずじまい。首都高でのカーチェイスでズタボロになったあげく、物語終盤でアパートの火災に巻き込まれて燃えてしまった。

「とっつぁん…今宵は、とことん勝負といくかい!?」


CV:小林清志
ご存知・ルパンの相棒。
今回は虫歯が原因で銃を撃てないというガンマンとして致命的な弱点を抱えてしまっている。
加えて、勇気を出して大嫌いな歯医者で治療しようとしたところにルパンが乱入してきたり、予備の痛み止めを頻繁に忘れたりで終盤まで使い物にならなかった。
スズキの部下からパンチを食らった拍子に虫歯が抜けた後は、堰を切ったようにに相棒のコンバットマグナムでスズキの部下たちをバッタバッタと制圧していた。
そして、最終盤に「ギリギリセーフってとこ」でキメるあたりはさすが次元大介という貫禄を見せつける。

「取ぉれたぁ〜っ!!」


CV:井上真樹夫
ご存知・鮮やかな剣の使い手。
こちらは女の色香に惑わされ、命より大事な斬鉄剣を盗まれてしまう
そのため、泣く泣く不二子とコンビを組む羽目となった。
ちなみに斬鉄剣がない時には、ノミとカナヅチで何とか凌いでいた。いつもの服装は本人曰く「これが某のトレードマークでござる」とのこと。
後に斬鉄剣を取り戻した時には次元同様ハイテンションとなり、つまらぬものつまるもの問わずズバズバ斬りまくって斬れる事の喜びを噛み締めていた。「感無量…!」と涙を流すほどに。
今回は人間離れした動体視力を生かした新たな特技を披露し、エンディングでは次元と組んでラスベガスのカジノで大儲けしていた。

「刀が無くては切腹も出来んッ…!」


CV:増山江威子
ご存知・謎の女。
今回はタウン誌「TOKYO LIFE」の編集長に扮し、アクアポリスの取材と称してパーティーに潜入する。
得意のお色気でスズキに取り入り一緒に彼のプライベート・オフィスに入ったつもりだったがそれは罠で、その先でスズキに捕まり持っていた「巽の慶喜」を奪われてしまった。
ルパン程ではないが、やや不調気味。
分け前を8(自分):2(ルパン)に強引にするなどがめつい所は相変わらずだが、珍しく終始味方で、裏切りはしなかった。
「文句があるなら、降りてもいいのよ?」


CV:納谷悟朗
ご存知・ルパン三世にチャレンジする男にして今回の真の主人公。
今回はコミカルさは残しつつも彼の敏腕警部としての一面と、ルパンとの友情も垣間見せる。
記事冒頭に書かれてる留置所でのルパンとの会話は、「ライバルであり、友である」銭形とルパンの絆を感じさせてくれる『ルパンシリーズ』屈指の名シーン。
自分に付きまとうまりやを最初は鬱陶しく思っていたが、彼女が自分のために味噌汁の支度をしてくれていた事がきっかけで徐々に一目置くようになる。
スズキの依頼で2枚のガラス乾板を警護するうちに彼に不信感を抱くようになるが、首都高の事故の責任を取る事となってしまい、警察手帳と手錠、拳銃を返却し休職を余儀なくされる。
それでもめげずに事件を追い続ける事を決意。アクアポリスに侵入し、そこでスズキの本性を知る事となる。
命令を無視した事と不法侵入で再び逮捕され、牢屋にいた間に自宅アパートが全焼しても心が折れる事はなく、焼け跡から見つけた先祖伝来の十手を手にしてスズキに捕まったまりやの救出を誓うのだった。
ちなみにアパートの大家のおばさんとは昔なじみの仲らしく、彼女からは「コウちゃん」とあだ名で呼ばれている。

「自分の手下を使って自作自演! 日本政府を脅迫して身代金を巻き上げる…
わしにはさっぱり理解できん計画だな。
…だがな!! そんな奴をのさばらせておいたんじゃ、ご先祖様に申し訳が立たねぇんだ!!」


◆ゲストキャラクター


  • 一色まりや
CV:林原めぐみ
タウン誌「TOKYO LIFE」の記者。今回のルパンガール……ではなく銭形ガール。
編集長(不二子)の指示で、銭形への密着取材を行う。
銭形の事は「ルパン専任の敏腕刑事」と聞かされていたようだが、冒頭でルパンに手玉に取られる銭形を見て幻滅してしまう。
しかし、銭形と行動するうちに彼の信念などに惹かれていき、いつしか彼に実の父親の姿を重ね合わせて慕うようになる。
母は早くに病気で亡くし、父親は遺伝子学者であったが彼女が幼い頃に失踪している。普段から愛用している懐中時計は父親の形見。
非常に勘が鋭く、場合によっては数時間後に起きる出来事も予測する事ができる。

「こーゆーの、一度やってみたかったのよね!」


  • マイケル・スズキ
CV:山寺宏一
日系ハーフの青年実業家。
お台場に建設中の巨大娯楽施設「アクアポリス」のオーナーでもある。
裏の顔は大いなる野望を胸に抱き、闇の世界に名を馳せようと企んでいる野心家。
普段は紳士的な人物を装っているが、その本性は使えない部下は容赦なく殺害する冷酷な人物である。
アクアポリス地下にある研究施設で人体への遺伝子実験を繰り返し、「ハイブリッドソルジャー」を量産して軍隊などに売り込もうとしていた。

「勝負のシナリオを作るのは、この私だ…!!」


  • ゴンドウ
CV:山寺宏一
スズキの秘書兼ボディーガード。ハイブリッドソルジャーを率いている。
屈強な体格の大男で、遺伝子操作をしたからなのか、人間離れした怪力の持ち主。
「乾の慶喜」を輸送中にトレーラーを操り、乗り込んできたルパンも持ち前の怪力で追いつめる。
ルパン、銭形、まりやの住居に放火してまりやを攫った後は、ハイブリッドソルジャーを率いてアクアポリスで“マイケル・スズキの誘拐”と称したデモンストレーションを行った。

「このアクアタワーは、たった今我々“黒い彗星”が占拠した…!!」


CV:藤本譲
警視庁で一番偉い人。
銭形が「巽の慶喜」を死守した事を、まるで自分の手柄のように喜んでいた気のいいおっちゃん。
各国のVIPが招待されているアクアポリスのオープンパーティーの警備を警視庁が行うという事で、銭形を信頼してそれを一任していた。
だが直後に首都高の事故が起きてしまった事で、責任を取らせるために銭形を警備から外し休職命令を言い渡す。
それでも折れる事なく事件を追い続け解決に貢献した銭形の熱意を最後には認め、事件解決後に彼の現場復帰を認めた。

「…頼むぞ! 銭形くん!!」


  • 中島誠之助
CV:中島誠之助
開運!なんでも鑑定団」で御馴染みの鑑定家で本人が声をあてている。アフレコは非常に上手い。
最初の方で「いい仕事してますねぇ~」と御馴染みの台詞を言いながら登場。
銭形が壊した(とは言っても首が取れただけだが)「安本亀八の雛人形」の変わり果てた姿を見て、頭を抱えるほどのショックを受けていた。
ちなみに今回のタイトル題字も担当している。今作でいい仕事をしているのは中島氏自身。

  • 一色博士
まりやの父親で遺伝子学者。水戸徳川家に仕えていた医者の末裔でもある。
妻を失った難病に侵され苦しむまりやを救うために、彼女に遺伝子治療を施す。
その際にまりやが予知能力を持った事を知り、その解析データを2枚のガラス乾板に記録した。


【キーアイテム、用語】


  • 徳川慶喜のガラス乾板
徳川慶喜の肖像が写っているガラス乾板で、「巽」と「乾」の2種類がある。
噂ではこの2枚が揃った時に時価2000億円の徳川埋蔵金の在処が分かるとされている。
だが実際この2枚には、まりやの父親によって予知能力を起こす遺伝子の構造が記録されていた。

ちなみに伝承どおりに2枚のガラス乾板を置いて地下を掘っていくと、警視庁の地下牢を目指す事となる。埋蔵金はデマだったのか、ルパンが解釈を間違えたのか…

  • まりやの懐中時計
まりやの父親の形見である古い懐中時計。
恐らく水戸徳川家から拝領された品であり、かなりの年代物の逸品らしい。


  • 銭形平次の十手
銭形警部の先祖・銭形平次の使っていた十手。
劇中、夢の中でまで先祖を重んじる発言をする銭形の様子を見るに間違いなく本物。
海外を飛び回ってほとんど片付けできない銭形の散らかった部屋だが、この十手が飾られている所だけは綺麗に掃除がしてある。
アパートの火災によって建物もろとも消失したと思われたが焼け跡でがっくりと膝をついた銭形の目の前に埋まっており、それも組み紐以外は不思議なほど美しい元の姿のまま現存していた。

まるで絶望しかけた幸一を銭形平次が力強く鼓舞するかのように…

  • アクアポリス
お台場にある人工島に建設された大型娯楽施設。8月1日にオープン予定。
イルカをモチーフにデザインされた世界初の海底コースターが最大の目玉で、他にも78種類のアトラクションが存在する。
シンボルである高層ビル「アクアタワー」の最上階には、スズキのプライベート・オフィスがある。
スズキのプライベート・オフィスの玄関のセキュリティは、指紋認証と同時に体調管理もする便利な代物。
変装したルパンの際は『体温分布・異常。不健康ナ生活ヲ、謹ンデクダサイ』と注意していた。別人だと気づけよ。



【余談】

  • 今作の悪役であるマイケル・スズキの声を担当した山寺宏一氏は、ご存じ銭形警部の2代目担当声優である。
    • 山寺氏は、その後も銭形役の引き継ぎの前に『お宝返却大作戦!!』にて敵役のラッツ(イワン・クロコビッチ)役で出演している。

  • 舞台が日本というだけあって、98年当時の東京を忠実に再現されており、背景の書き込みが半端でなく細かい。
    • 本編には直接関係ないが、FCGビル(フジテレビ社屋)、レインボーブリッジ、東京ビッグサイトやゆりかもめ、隅田川の渡しなどが描かれている。
    • 不二子がルパンとの打ち合わせに使っていたジャズ・パブ「G.H nine」は上野に実在する。(現在は休業中)
    • このシーンにはルパンシリーズの音楽を手がける大野雄二も出演していた。

  • 劇中のニュース番組のキャスターやリポーターは現役の日本テレビのアナウンサー鷹西美佳氏、古市幸子氏、河本香織氏(当時)が出演している。
    • なお、エンドクレジットに記載されてないが、ブレイク前のネプチューンの堀内健氏が、声優としてモブ役で出演している*1

  • オープニングで、ハチ公前でアクアポリスの風船が配られているシーンが一瞬だけ登場する。
    • その場面で風船を受け取っている子供達の中に、『名探偵コナン』の主人公江戸川コナンが混じっている。
    • その隣には毛利蘭毛利小五郎と思わしき人物も立っているが、3人ともコナン本編とは違う髪の色となっている。
    • 後姿での登場のため見逃しやすいが、コナンと蘭は特徴のある髪型で割と分かりやすくなっているので気になる人は是非探してみよう。
    • ちなみにルパンとコナンは今作が放送された数年後に、今回と同じ金曜ロードショーで正式な共演を果たす事となり、まりや役の林原氏も灰原哀役で劇場版のほうで再びルパン一味と絡む事になる。


追記・修正は予知能力のある人にお願いします。


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最終更新:2023年07月16日 12:21

*1 OPでルパンが変装していた飛行機の添乗員の男性がソレ。よく聞くとルパン役の栗田氏とは声質が違う事がお分かり頂けるだろう。