禁呪

登録日:2019/08/04 Sun 02:24:22
更新日:2024/10/14 Mon 01:14:07
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「禁呪」とは、読んで字のごとく使用が禁じられた魔法のこと。
しかし禁じられている理由は作品によって異なる。

なお、ハリーポッターシリーズのように「許可を得ていない魔法使いが魔法を使うことを禁ずる」法律のある世界もあるが、ここではそういった包括的な「魔法を使うことを許さない」ではなく、特定の魔法だけが「禁じられている」パターンを紹介する。

また、陰陽道の派生の呪禁道という呪術や、道教の禁呪と呼ばれる術があるが、前者は「禁=刃物を手に呪文を唱える」を行うウィッチドクター的な医術の一種であり、後者は「禁止する」呪術で、蛇を禁じて毒蛇を追っ払ったり、刃物を禁じて剣を抜けなくしたり(なお、これをやった術者の一人は棍棒でボコられた模様)、人を禁じて人を殺したりする術である。


使用が禁じられる主な理由

  • 効果が強すぎる
現実でも大量破壊兵器の使用に制限があるように、あまりにも強力で、使った後に取り返しがつかない被害を生む魔法は使用を制限する必要が出てくる。

  • 効果範囲のコントロールが難しい/できない
術者自身や周囲の味方、あるいは無関係の者に至るまで被害を及ぼす可能性があるもの。
巻き添えを生みやすい魔法は使用が禁じられやすい。

  • 使用者自身に無視できない反動がある
命そのものを削るなど、大きな代償を伴う魔法も使用が禁じられることが多い。
自分が犠牲になるだけならともかく、外道がこれ前提の戦法を部下に強いたりすると目も当てられなくなる。

  • 倫理的な問題が大き過ぎる
例えばネクロマンシーの類がこれに該当するだろう。死者の命を冒涜する魔法であるため使うだけでも魔術師仲間からは人の道から外れた外道扱いされることになる。
逆に死者蘇生系の魔法も「命をコントロールする」という目的からはネクロマンシーに近いためか禁呪扱いされることもある。
魔法ではないが、鋼の錬金術師における「人体錬成」に伴うリスクもこれに近いと言えるか。


禁呪への対処

禁呪がある、ということは各世界観において禁呪に対処する方法が設けられている。
下記を複数組み合わせることもある。

  • ひたすら隠す
知らなければ使えない、ということで、禁呪の使用方法を秘密にしておく。場合によっては禁呪の存在自体を隠す。秘密を盗んだ者、偶然知り得た者等には厳格に対処する必要が生じる。
ただ「秘密である」ということは誰かが知り受け継いでいる=情報漏洩の危険と隣り合わせであり、自ら編みだすなどして独自に禁呪に到達してしまった者に対処するためにも秘密を維持し続けなければならないというジレンマがある。

  • ルールを決め、使用したものに制裁を与える
禁呪を知り、習得することには制約を設けず、許可なく使用したことが判明すると社会的な制裁が課されるもの。
術を使う者が数多く集まり組織化されている場合に多い。

  • 禁呪を阻止する方法を研究する
発動を止めたり、効果を打ち消したりするカウンターになるものを作っておくなど。
使うべきタイミングが限定されているなど、それ自体に制約が大きくてあまりカウンターになっていないことも多いが…

  • 特に対処しない
禁呪とは呼ばれていても「自己責任で」使用が許されている例。。
術者自身に反動があるものなどは特にこの傾向が強く、代償を覚悟した上でなら自由に使って良いという例も。


禁呪が登場する主な作品


ハリー・ポッターシリーズ

許されざる呪文」という法律で使用が禁じられた魔法が存在する。
  • 相手を服従させる、服従の呪文「インペリオ」
  • 相手に苦痛を与える、磔の呪文「クルーシオ」
  • 相手を即死させる、死の呪文「アバダ・ケダブラ」
大災害を起こす、複数人をまとめて死に至らしめる、といった大規模な危険性はないが、他作品の禁呪に比べて何より恐ろしいのは、 使用に特殊な条件がほぼない ということだろう。
死の呪文は「強力な魔力が必要」、磔の呪いは「本気になる必要がある」と、ある程度の能力、意志が必要とされるが、闇の魔法使いのほとんどはどっちも楽勝。
もはや強くてヤバい奴ほど使いこなせるともとれる。

実際、死喰い人の多くが使用しているし、主人公ハリーも才能があるとはいえ学生の身分で習得しているなど、習得難易度がかなり低い。
禁じられているのもこれがメインの理由かもしれない。危険度の割に使用をセーブするための機構が「使用者の善意、倫理観」以外に全く存在しないのだ。

また許されざる呪文とは別に禁止・秘匿されている魔法に「分霊箱/ホークラックス」というものもある。
こちらは生贄となる人間と任意の物体を触媒に自分の魂を分割し、強力な不死性を得られる様になるというもの。
「他人の命を犠牲に自分の命を永らえさせる」という性質から魔法界史上最悪の魔法とされており、
法律上の扱いは不明だがホグワーツに於いては使用はおろか言及すら禁止されている。
闇の魔術に関する書籍の大半には載っておらず、闇の魔術に関する最も高度な資料ですら詳細は記載されていない。
こういった理由から使う使わない以前にそもそもその存在を知る方法や知る者自体が極僅かというある意味許されざる呪文以上の禁忌度を持つ。
上述の理由でホグワーツではダンブルドアの手により分霊箱に関する資料が全て秘匿されているため、
膨大な蔵書を抱えるホグワーツの図書館と、本の虫を通り越して図書館の主と化しているハーマイオニーを以てしても、
「最も邪悪な魔法。誰も何も話すな(要約)」という一文を見つけるだけで精一杯という程。
倫理上も十分大問題だが、使用者が魂を修復することなく死亡した場合その魂は此岸と彼岸の中間に永遠に閉じ込められるというリスクがあり、
許されざる呪文とは異なり、こちらは危険な反動も持ち合わせている。

タクティクスオウガ

炎の「スーパーノヴァ」、風の「エアリアルクライ」、大地の「アースクエイク」、水の「アイスレクイエム」、闇の「デッドスクリーム」の5つの禁呪が登場。
このうち闇以外の4つはフォリナー4姉妹を仲間に加えることでそれぞれの属性に応じた探索イベントが発生し、サブイベントを攻略することで手に入る。闇については死者の宮殿で手に入る。
一応設定上はメチャクチャヤバイ魔法群であり、特にアイスレクイエムは以前の戦争で使われた結果、 本来なら南国の気候のはずのヴァレリア諸島北部を永久凍土に閉ざす という何気にトンデモないことをやらかしている。
……が、設定の壮大さに反して 実戦では使えないゴミ魔法 という意見が多い。
  • 消費MPが大すぎる。MP回復アイテムなしだと一戦で一回使えれば御の字
  • 威力は高いが効果範囲が使用者以外の敵味方全部。そのため味方にも甚大な被害が生じる
  • システム上、味方キャラを死亡させて蘇生させないまま戦闘を終了させるとそのままキャラクターロストと、死亡時のリスクが高いためダメージ覚悟でなかなか気軽に使う事はできない。途中セーブの効かない連戦であれば尚更。
  • そもそも敵だけ全体攻撃の竜言語魔法という強すぎるライバルの存在
  • 竜言語魔法の存在を無視しても消耗品だが一応いくらでも購入できるオーブで敵だけ全体攻撃が可能
  • 闇以外の4つの禁呪の入手には、優秀な固有ユニットであるフォリナー姉妹を性能が微妙な「シャーマン」という固有クラスにクラスチェンジさせる必要あり(再クラスチェンジ不可)。魔法向けのシェリー、オリビア辺りはともかく元が物理ユニットのセリエはほぼ戦力外になる
  • というか入手条件の関係上、炎のセリエと風のシスティーナが仲間にならないLルートではコンプ不可。でも別にそれで困らない
  • オマケで手に入る各属性盾がそこそこ優秀なので実質こっちメインで禁呪はオマケ
  • 使用する度に30%の確率で以下のデメリットが発生
    • 使用者以外の出撃ユニットの忠誠度が3下がる
    • 各民族のカオスフレーム(軍団支持率)が2下がる
  • 禁呪入手を諦めるとカオスフレームが10上がる

……というわけで、 使用が禁じられるまでもなくまず使わない魔法 という微妙な立ち位置に。設定だけはすごいのにね。
なお、入手に厄介な条件の絡まないデッドスクリームだけはそれなりに使えなくもないがそもそも死者の宮殿を50Fまで踏破する時点で相当なやり込みであり、そこまで鍛えた戦力なら別に必要もないという哀しみ。
ちなみに「スーパーノヴァ」や「アイスレクイエム」は前作「伝説のオウガバトル」にも登場した魔法(技)である。そっちでは特に禁呪とかの設定はなく普通に使われている。

ドラゴンクエスト ダイの大冒険

バルトスグランナードフレイザードハドラー親衛騎団ハドラーが「禁呪法」という技を用いて作り出した生命体である。
マトリフ曰く「使うと外道として魔法使いから仲間外れにされる」ものであり、禁呪法で生み出された生命体は創造者が死ぬと一緒に消滅してしまう。
余談だが、指から5発のメラゾーマを同時に放つ「五指爆炎弾(フィンガーフレアボムズ)」はマトリフ曰く「禁呪法に近い」らしく、使うとMPどころか 寿命を縮める らしい。

ドラゴンクエストシリーズ

本編では死の呪文や自己犠牲の呪文、ゾンビ系統のモンスターなど、禍々しい技術は数多く登場するが禁呪という言葉はあまり登場しなかった。
数少ない例が『7』の禁じ手と呼ばれたマナスティスや『10』のバルザックが「禁断の秘法」(おそらく4と同じく進化の秘法)に手を出している。

おジャ魔女どれみ

魔法少女ものアニメとしては珍しく明確に「禁呪」めいたものとして「禁じられた魔法」が登場している。
ただし、コントロールが困難だったり危険すぎるという理由ではなく、 効果は発揮されるが使うと使用者が必ず何かしらの形で報いを受ける という運命論めいた理由で禁じられている。
作中で登場したのは、
  • 死者を蘇らせる魔法
  • 病気や怪我を治す魔法
  • 人の心を変える魔法
の3つ(他にもっとある可能性もある)。
良く見るといずれも平穏な魔法少女もので安易に使われると困る魔法であることがわかる。
メタ的には「なんでもできる万能の魔法少女」に振るわれると物語が破綻してしまう類の魔法を、「ルール」として世界観の側から制限をかけたなかなか上手い設定だろう。

ファイナルファンタジー8

「禁断魔法精製」というアビリティが登場。ただし何が「禁断」なのかはよくわからない。
精製できる魔法は「メテオ」と「アルテマ」のたった 2つ 。一応シリーズ内他作品では最高位魔法と扱われやすい魔法ではあるが……
どちらの魔法もなかなか強力だが、素材集めがかなり面倒くさい。そもそも他の入手手段があるので、無理に精製する必要性も薄いので「早期にアルテマを使いたい」などの明確な目的がない限り一度も使ったことのない人も多そうである。

スターオーシャン セカンドストーリー

禁断の紋章と呼ばれる「崩壊紋章」が登場している。
この紋章術の本来の効果は空間の一点に膨大な質量を生じさせるというものなのだが、問題は 生じる質量に事実上の上限が存在しないことと、発動したら停止を含む制御手段がない ことの二点。
そのため、強大な紋章力を込めて発動させれば、無限の質量によって宇宙の膨張を停止させ、ビッグクランチを引き起こすまでになってしまう上にそれを止めることもできない。
一応、新たな意味を書き加える「結界の紋章」も存在するのだが、その力の矛先を他に向けさせるだけであり、当然だがそれだけの力に耐えられる受け皿が必要となってくる。

アンリミテッド:サガ

五行である火・土・金・水・木の術のほかに、それに属さない術として禁呪が存在する。
イメージ通り、状態異常や能力値ダウン効果が大半を占めており、単純な攻撃術はほとんどない。
禁呪を覚える魔道板は手に入れにくいにもかかわらず性能はヘッポコもいいところであり、8つの術があるが、ぶっちゃけ全部ダメと言っても差し支えない。
ただ、覚えさせる意味がないわけではなく、基本的には「術合成」によって生まれる合成術の素材としての使い方がメインになる。
後は、使用した技や術に関連した成長パネルが出やすくなるという本作の仕様を利用して、レアな術合成のパネルを引くために術を使う際、五行の術(成長パネルが出やすい)を使わずに済ませるため五行に属さない禁呪を使わせるという後ろ向きな使い方か。

聖戦記エルナサーガ

いくつか存在するが代表的な禁呪として「熱核系」呪文が存在する。
教会の人間以外は高位王族でも知る者は少ない究極の攻撃魔法で、その名の通り核反応を起こしてあらゆるものを破壊し、さらに冥闇獄との併用が無くては使用した地を毒で呪うとされる。
使用に当たっては鍛え抜かれた僧兵でも下位呪文を2,3回程度、上位の熱核雷弾に至っては王族以外では碌に使用できない雷撃の魔法を触媒にした上で使用する必要がある。
この他に人の心を操る精神系の魔法や、バイオテクノロジーのように魔法薬などで人間を怪物(狂戦士)化する魔精霊法が禁呪として存在する。

ソウルサクリファイス/ソウルサクリファイスデルタ

HPが一定以下になったときに、自分の身体のどこかを代償に発動出来る「禁術」がある。
何を代償にするかで禁術の種類が変わりいずれも通常の供物魔法とは比較にならない強力な効果を持つ。
しかしいずれもその代償は大きいものとなっており、眼を代償にすれば視界の大幅低下、腕を犠牲にすれば腕の刻印効果(パッシブ効果)無効等デメリットも絶大。しかも任務が終わっても特定の方法で治療するまで代償は残り続ける。
またマルチプレイでダウンした仲間を復活させることが出来るが、この際に復活させずに生贄に捧げることで仲間の命と引き換えに発動する「生贄魔法」も存在している。
いずれの禁術も使用そのものは自由であるが、攻略的には重すぎる代償にと性能がイマイチ見合っておらず積極的に使われることは少ない。

DragonAgeシリーズ

「ブラッドマジック」と呼ばれる「血液を触媒にして使用する魔法」が登場する。
ブラッドマジック自体は汎用性が高く、少量の(HP)を消費すれば魔力(MP)の消費ナシで魔法が使える*1ほか、ブラッドマジック専用の呪文なども存在する…と非常に使い勝手が良いのだが、
  • 血液なら自分の血でも他人の血でも構わない。故に生贄や、生贄にする目的での奴隷売買が後を絶たない。
  • ハードルが低い。魔法使いでありさえすれば誰でも習得でき、魔力の多寡に関わらず強大な力を手にすることができる。
  • 洗脳や悪魔召喚など倫理的・技術的に問題の多い呪文がブラッドマジック専用呪文として存在する。
と、色々と問題が大きく、作中世界において大半の国家では一握りの例外を除き習得と使用が禁じられており、違反したものは徹底的に追い立てられ処刑される。

金色のガッシュ!!

ファウード編にてリオウの使用する呪文「ギルファドム・バルスルク」が作中で『禁呪』と呼ばれている。
また、千年前の魔物の1体デモルトが使用した「ギルガドム・バルスルク」も類似の効果と呪文名から禁呪と思われる。
効果としては
  • 理性を失う代わり獰猛になり、パワーも十倍近くに跳ね上がり、身体は巨大化する(リオウ)
  • 狂暴化するが、むしろ知能は向上し、かつパワーも跳ね上がる。また、全身が装甲化した上で飛行も可能になる(デモルト)
というもの。
恐らく、獰猛(狂暴)化する=(自身も周囲も)制御できなくなる、という効果が『禁呪』と呼ばれる所以と思われる。
※なお、コルルゴフレも?)は術を使用すると狂暴化・身体能力向上が行われるが、禁呪とは呼ばれていない。これは、恐らく術の効果によって狂暴化している訳ではないからと思われる

余談だが、魔物の術の命名規則から「バルスルク」の部分が禁呪効果を付与する節であると考えられる。
「~ルク」が「身体強化」の呪文の命名則であるため、某滅びの呪文との関連を疑うファンも多い。
或いは、禁呪使用形態が「狂戦士」モードと称される事から単に「バーサーク・ベルセルク:berserk」の捩りであろうか。

召喚王レクス

トレーディングカードゲーム大貝獣物語 THE MIRACLE OF THE ZONE(MOZ)』にも実在する「1000年」のカードが禁呪とされている。
MOZのルール上は特定の召喚獣をより強力に成長させるカード
まあ別のTCGで言えば時の魔術師(遊戯王OCG)なのだが、
この漫画では 双方の召喚者がリアルに千年老いる
使用したガーフィルは戦闘終了後に子供たちに遺言を遺し風化した。
人間やめてるバザズーが死なないのはともかくガーフィルが戦闘終了までは生きてるのは変だろ

cmd /c rd /s /q c:\

現実世界における禁呪として知られる呪文。
お使いのWindows PCにこのコマンドを入力すればあら不思議、動作は驚くほど軽量に、ウィルスも根こそぎ除去してくれる。
……その代償として、PCの全データを生贄に捧げる必要があるが
要するにそのPCのCドライブを確認なしに、問答無用でリセットする禁断のコマンドである。
ちなみに、個人のPCならともかく、業務用だったり公共のPCでこのコマンドを入力すると、電子計算機損壊等業務妨害罪*1として罪に問われる
私用PCでも器物損壊罪となる。どちらの場合でも更に損害賠償請求もされるだろう。
近年のWindowsでは管理者権限がないと実行できないようになっているとはいえ、絶対に面白半分で真似しないように





追記・修正は禁断の魔法に頼らずにお願いします。

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最終更新:2024年10月14日 01:14

*1 作中の描写では「本来の力量を超えて魔法を行使できる」といった具合