繰田孔富(忍者と極道)

登録日:2022/05/10 (火曜日) 21:49:00
更新日:2024/03/12 Tue 10:52:16
所要時間:約 18 分で読めます


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知らないわ 法なんて


この世はみんな病んでいる……

表向きは元気でも 法など守っていては救えぬ心で溢れてる────

…私の兄も よく…そう言っていたわ…


繰田(くりた) 孔富(あなとみ)とは『忍者と極道』に登場するキャラクターである。

目次

【概要】

東京で破壊の限りを尽くす極道の精鋭集団「破壊の八極道」の一人。
『バットマン』のトゥーフェイスよろしく、濃淡が左右ではっきりと分かれた、紫色の異様なドクターウェアを着用している。
怪獣医(ドクター・モンスター)」の異名を持ち、その異名の通り
  • 左右非対称な薄緑色と黒色の2色に分かれた髪
  • 牙のようなギザギザの歯がびっしりと生え、口紅が塗られている大きく裂けた口
  • 先が二つに裂けた蛇のような長い舌
  • 長く伸びた鋭利な爪
  • 異様に高い胴体と合わせて3mはある八極道最大の背丈*1
という蛇や怪物じみた不気味な容貌をした人物。
ちなみに元からこの容姿だったわけではなく、左虎が持っていた本には変貌前(?)の写真が写っている。
明らかに医療活動には不向きなこの体躯だが、幼少期に視聴した特撮の金字塔『ネビュラマン』を彩った怪獣たちの妖艶(エロ)く力強い"異形"の姿」への憧れに関係がある。


表社会では大リーガー逢魔賀広偉の故障を治療して復帰させた『オーマガ術式』を始めとする数々の革新的術式を発明。多くの人々を救った名医(ゴッドハンド)として高い名声を持っていた世界的外科医。
左虎も「最も尊敬する」医者として孔富の名を上げている。
現在は兄に寄り添うという信念から闇医者に転落。
『繰田医院』という闇病院を運営しながら、後述する兄のように自身も医学を悪用して麻薬の製造に関与している。
そして地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)』を作り上げた張本人であり極道(きわみ)からは「“地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)”開発せし稀代の闇医者」と称えられている。
その知識から禁断の2枚服用の存在をガムテに諭したのも彼。
闇医者としては自身の闇病院に限らず日本各地で精力的に活動をしており、劇中では極道患者の往診のために大阪にも足を運んでいた。

極道(きわみ)のことを「ダーリン」ガムテ「王子様」と呼ぶ一方で、夢澤殺島、八忍の面々のことは「ボウヤ達」と呼ぶ。
殺島からの愛称は「孔富姐サン」
何故か同じ八極道の砕涛華虎からはその容姿と性格からなのか、はたまた因縁があるのか不快男(キモメン)と呼ばれる程毛嫌いされている。
自身も華虎のことを「うるさい男子」として嫌っている模様。

背中の刺青は「右顔面が黒い泣き顔、左半分が白い笑顔の2色に分かれた仮面」。
また左半身の背中・胸部・腕部には骨格を模したタトゥーのようなデザインの黒い刺青を彫っている。


【人物】

一人称は(ワタシ)
怪物じみた風貌に反して挙動と言動は完全にオカマキャラ
陽気な笑いと余裕に満ちた飄々とした態度を崩さず、小生意気な言動で他者を煙に巻く食えない性格。
一方で仕事熱心であり、他の八極道によるテロ現場に赴いては巻き込まれた民間人の救命活動を行っている。
プライベートでは美容に力を入れているらしく、大阪での仕事ついでに梅田で堂々と新作コスメ*2を買っていたこともある。

医者ではあるが「この世はみんな病んでいる。表向きは元気でも法など守っていては救えぬ心で溢れている」という信条から薬事法はガン無視
倫理観も一般的な医者とは逸脱しまくり、法律に反する違法薬物*3「みんな人を救うために作られたお薬」と捉え、「本来そこに悪意も罪も存在しない」と考えている。
そのため適切だと判断したなら、それらを薬局の処方箋感覚で気軽に処方する生粋の闇医者。
初登場時点でも極道(きわみ)とガムテのDNA鑑定を興味本位で勝手に行い、その結果を無断で第三者*4に見せるという医者としてアウトな行動を堂々としている。

人々を苦しめる麻薬を生み出す一方で、先述したように八極道の破壊活動による怪我人を治療して回るなど、一見すると暴力による民衆の殺生は好まないような行動を見せている。
しかし
  • 左虎と右龍から逃げる際、(少なからず死傷者が出るのを承知の上で)派手な破壊活動を行ったうえで逃走する
  • 麻薬汚染に伴い引き起こされる事故などの二次災害に関して全く意に介していない
  • 浄水場を占拠する際に職員達を何の躊躇もなく殺害している(下っ端極道が行った可能性もあるが)
という有様であり、やはりその善意はかなり独善的
「どんなに医療が発達しても救えぬ心で満ちている」という心情を元に麻薬中毒による汚染を「救済」と考える極めて歪な善意を持つ。


なお医者として超一流の技巧と頭脳を持っていたが故に部下のような医療関連のトラウマや失敗経験とは全くの無縁。
そもそも彼が極道の道へ堕ちた理由は「裏稼業に手を染めてでも自分を支え続けた兄を支えたい」という純然たる兄弟愛のみ。
兄に寄り添うという覚悟を決めた途端からの転落スピードも凄まじく、
  • 兄に寄り添うためならば、清い医者としての道やキャリアを躊躇いなくドブに捨てて兄と同じ麻薬製造業や闇医者業務といった副業に手を染め出す
  • 弟への気遣いと思わしき麻薬(ヤク)は“救済(すくい)”」という兄の主張を詭弁呼ばわりする
  • 麻薬研究所に拉致され、麻薬の実験台にされた多数の債権者達の苦悶の叫びをバックに「今更“治験者”が中毒死(くたば)った程度じゃ凹んだりしないわよ」と何の良心の呵責も示さない。
といった具合に倫理観が兄弟愛の内で完全に自己完結しており、兄への親愛のためなら倫理と無辜の民を躊躇いなく踏み躙れる破壊の八極道に相応しい生粋の極道精神を有している。
特に昔の麻薬研究所での仕事は兄と一緒に働けるだけでなく、儲かる上にすこぶる優秀かつ好みのタイプだった極道(きわみ)と働けることもあり、「悪くなかった」と本心から語ってモチベーションは非常に高かった。


ちなみに職業柄か洞察力は高く、極道(きわみ)の腹心たる夢澤や人心掌握とカリスマに長けた殺島でも察せられなかった極道(きわみ)とガムテの「親子」関係を正確に把握。
極道(きわみ)の普通の親としては最低レベルの言動に隠された不器用な親心を「あれが…極道(ダーリン)の王子様への…“(ラァヴ)”♡」と形容して二人を諭していた。


麻薬学(ヤクがく)の父』繰田(くりた)美伴(びばん)


麻薬(ヤク)は“救済(すくい)”なんだ
破滅と引き換えにしてでもみなが心の底から欲する───……
オレ達が作ってるのは…そんな“救済(すくい)”なんだ

孔富の実兄にして天才麻薬学者と呼ばれた男。2012年に死去。*5
ビジュアルは孔富とは反対に黒髪をオールバックにしたワイルド系のイケメン。一卵性双生児なので骨格や顔つきは似通っている。
純度100%のメタンフェタミン(覚醒剤)や、遺作でもある『天国への回数券』の開発に成功したことが主な業績。
また、表社会では弟の孔富と共に『救済の医』という本を執筆・出版している。

一人称は「オレ」
孔富とは対照的にガラが悪く、キレるとすぐに手が出る短気な性格で、言動含め見るからに反グレだったが孔富は幼少期から非常に慕っていた。
とはいえ弟想いだったのも事実であり、孔富が不良に傾倒した時は孔富を弱者男性(シャバゾウ)と吐き捨ててブチギレてタコ殴りにすることで無理矢理更生させている。
麻薬の売人だけでなく麻薬製造に才覚があったのも事実で、本人は「意外にも楽に稼げた」と評していた。*6
加えて彼が度々口にしていたという「この世はみんな病んでいる。表向きは元気でも法など守っていては救えぬ心で溢れている」という思想は孔富も共有していたが、本音としては極道稼業に弟を引き込んでしまった負い目から来る思想だった様子。

両親の遺産を勝手に食い潰した叔父の所業を隠して独りで孔富の学費を稼ぐべく薬物の売人に堕ち、やがて麻薬の製造に傾倒。
麻薬製造で得た資金を孔富が医者になるための資金援助を行い続けていたが、叔父が孔富に金の無心に訪れたことで全てが孔富に発覚。

ヒャハハハハハハハ楽に稼げたぜェェ麻薬(ヤク)はよォォッッ!!
(ワリ)ィなァァ弟よォ!!てめーをこんな(きたね)ー金で医者にさせちまってよォォ!!!
悪ィなァァ弟よォ!!世界的名医は麻薬(ヤク)の力で産まれたンだぜェェェェ!?こいつぁ傑作だヒャハハハ!!!

───……さて

警察(サツ)…行くぜ

自身の汚い金で孔富を医者に押し上げたことを皮肉って懺悔混じりで自嘲し、弟のため自ら警察に出頭しようとしたが、表の立場よりも兄に寄り添うことを重要視した孔富が麻薬製造に自ら関与することを志願。
その1年後極上麻薬(ヘロイン)を超える麻薬の革命『天国への回数券』は完成した。

名前や没年が判明してからも死因は長らく不明だったが、第五章において呪血の忍者兄弟の襲撃(カチコミ)に遭いそのまま兄弟の手で殺害されたと明言されていた。
しかし、実際には死亡しておらず、極道(きわみ)の手により救出され孔富の治療により一命を取り留めていた。
それでも脳の1/3を失うほどの重症を負っており、麻薬も効かないほどの苦痛で錯乱し大暴れする美伴。
鎮静のために『天国への回数券』の溶液を注入された美伴は、飲みの席の幻覚を見ながら孔富の素晴らしさを語り続け、昔の思い出や「昔は怪獣役をやりたかったが弟のため我慢してヒーロー役をやっていた」という弟への想いを吐露。
弟を何より大切に誇りとしていた内なる本音を聞いて救済(すく)われっ放しじゃない」と号泣する孔富は兄の願望を叶えるためと兄の敵を討つべく、当初は諦観から諦めていた忍者への復讐を決意。


極道(きわみ)BOY(ボーイ)

ヘロイン 覚醒剤(シャブ) 天国への回数券(ヘヴンズ・クーポン)───
ありったけの麻薬(ヤク)を そして───

手術(オペ)の準備を


極道(きわみ)すらたじろぐ程の気迫と愛憎から自身と美伴の身体を接合するという狂気の発想を思いつき、極道(きわみ)を助手とした45時間に渡る壮絶な手術の末、ここに『驚躯凶骸』を持つ、忍者への憎悪に燃える『最恐の怪獣』が誕生した。
左虎は「孔富が極道と闇医者の道に転落する切っ掛けになったのは彼の死ではないか」と推察していたが紛れもない事実であった。


【関連用語】

  • 天国への回数券(ヘヴンズ・クーポン)メモリアルバージョン
単行本で明らかになった、2020年1月に全世界で5000枚限定を謳い文句にダークウェブ上で売り出された違法薬物。
兄・美伴の没後7年を記念して孔富の手で開発されたもので、染み込ませる薬物量が従来品の1.5倍になっているという。
美伴の肖像画がサイケデリックなデザインでプリントされているのがトレードマーク。
「私の中に生き続けるお兄ちゃんから愛のプレゼントよ♡」とは孔富の談。

  • ネビュラマン
宇宙の彼方のM84星雲からやってきた正義のヒーローが怪獣と戦う特撮作品。2021年には『シン・ネビュラマン』が公開予定。
作中では孔富と右龍の2人が「大好き」「超好き」とファンを公言している。一方、左虎は特に興味がなかった模様。
もっとも、孔富は怪獣の方が好きなようだが。子供の頃からよく兄とネビュラマンのごっこ遊びで楽しんでいた。
元ネタは『ウルトラマン』。

  • 麻薬研究所(ヤクラボ)
美伴と孔富が所長を務めていたと思わしき極道運営の施設。
麻薬の製造開発施設であった事が窺わせ、当時大学生だった極道(きわみ)も下働きの助手としてこの研究所で働いていた。
極道に金を貸して返済を求めていたと思われる多数の(カス)*7を麻薬の実験台にして中毒死させていたが、呪血の忍者兄弟の非道な襲撃(カチコミ)に遭い研究所は壊滅。所員は美伴と極道(きわみ)を残しほぼ全殺しにされ、美伴も脳の1/3を失う重症を負ってしまった。

なお債権者を犠牲にするトンデモ内容から誤字と疑われたが、単行本のおまけページでは足立のジョーごっこで債権者を度々撲殺していたネット住人と、それに対して可哀想だからすぐ殺すよう苦言を呈するネット住人がいるので、極道業界では債権者を殺すのは当たり前の行為なようだ。
なお苦言を呈された件の住人も若気の至りだったと反省しており、現在はSDGsに配慮して一撃で殺す様心掛けている模様。

  • ドクイーン
単行本のおまけページで明らかになった『フラッシュ☆プリンセス!』の敵キャラ。
33話辺りで登場しており、主人公の住む街の水道に毒を流してプリンセス達を毒で蝕んだという。
なお33話で流れたMAYAの挿入歌『Inherit The Love』は動画サイトで200億再生を果たし、この曲が収録されたアルバムは全世界で8000万枚を売り上げ伝説になった。


【戦闘能力】


怪獣は“超越”するの
その異形で 人智の限界(カベ)を…!


ネビュラマンの怪獣が持つ異形の姿への憧れから、全身を手術(いじく)って改造した肉体が武器。
裂舌(スプリットタン)埋込(インプラント)、骨延長など色々施されているが、後述の人体改造の成果として
  • 軽く唾を吐き捨てただけでも忍者(しのは)を吹っ飛ばし、本気で放てば華虎の「照拳」と合わせて惨蔵が放った全力の「老腕若火(ろうわんじゃっか)の帰還」すらかき消してしまう超人的肺活量
  • 蛇の如く通常の人体では不可能な形状・角度で異様に曲がる長い胴体
が発現している。
医者ながら呪血の忍者兄弟の追撃を引き離しながら逃げ続ける敏捷性もかなりのもので、6本の手足と奇怪な屈曲が可能な人体構造を駆使した極めてトリッキーな体術で忍者と互角に渡り合う。
おまけに通常5分で死ぬ"地獄への回数券"2枚服用(ギメ)も、人間2人分の肉体を持つためデメリットなし。おまけに更なる強化の余地すら有するとんでもない奥の手まで隠し持っていた。

また戦闘能力とは無関係だが、瀕死の人間に適切な処置を施し延命させるなど医師としての技量も知識も超一流。
彼の手術を目の当たりにした助手は「なんて精密!なんて優美な手術妙技(オペテク)ッ!!」とスタンディングオベーションで喝采を挙げるほどで、薬物に関する知見も世界レベルに卓越している。


極道技巧(ごくどうスキル)

  • 驚躯凶骸(メルヴェイユ)
孔富が持つ医療の技巧と怪獣への憧れの集大成で、上述の「蛇の如く通常の人体では不可能な形状・角度で異様に曲がる長い胴体」の正体。
孔富の肉体そのものが極道技巧であり、白黒の白衣の下にあるのは屈強な成人男性2人の身体が縦向きに融合した二連体(カラダ)というあまりにも奇怪すぎる肉体。
具体的には兄・美伴の首に当たる部分から孔富の腰から上が生えている異様な姿で、境界線に当たる部分に手術跡は無し。
そしてその構造上腕が4本あり、足と合わせて6本とも自由に稼働。当然肺や小腸といった五臓六腑も常人の2倍の数を擁する。
その人体構造を左虎は「中半身」と評しており、孔富は「コレが私達(・・)の“願望(ユメ)”の到達点」「双子の肉体だからこそ(・・・・・・・・・・)成し得た奇跡」と語る。
これにより孔富は地上最大の六足生物と化した。
作者によれば中半身から伸びる腕は普段、お腹周りを抱きしめるような形で収納しているとのこと。

この身体を実限させるために自らの胴を鋸で切断する事で生きながらに解体。天国への回数券を始めとしたありったけの麻薬を鎮痛剤代わりに飲合(チャンポン)している。
奇怪な形相の顔になったのもこの手術の際の壮絶な苦痛と多量の薬物による副作用だった模様。
そしてこの時服用した多種多様の薬物群が作用し合い『地獄への回数券』と同等の薬効を発現させ、『地獄への回数券』作成の礎になった。

名前の由来はヴィジュアル系ロックバンド・MALICE MIZERが1998年に発表したアルバム『merveilles』から。
またフランス語で「驚異的なもの」「素晴らしいもの」を意味する言葉でもある。

  • 咲き乱れよ乙女達(フラワーズ・オブ・ロマンス)
2人分の肺と小腸を用いた強烈な火炎放射
小腸で生み出された多量のメタンを、凄まじい勢いの呼気に乗せると共に、鋭い歯を火打石のように打ち鳴らして着火する。
陽日の灼華繚乱ほどの火力はないが、脅威となる攻撃であることは揺らいでいない。
名前の由来はロックバンド・CASCADEが1998年に発表した楽曲『FLOWERS OF ROMANCE』から。

  • 六足六速(ヘヴンズ・ドライヴ)
六本の手足と二人分の体節により蜚蠊の加速と百足の機動を再現し、六足を地につけた前傾姿勢からの虫のように地を這う変幻自在の移動で相手を翻弄。
無数の残像を生み出すほどの超高速移動で相手の周囲を取り囲みながら連続で掌打を繰り出し続ける技。
孔富によるとネビュラマンの国民的怪獣・ヴァルカン星人の分身の術の再現であり、その速度は鍛錬で超人的速度を得た忍者すら上回る。
名前の由来はロックバンド・L'Arc~en~Cielが1999年に発表した楽曲『HEAVEN'S DRIVE』から。

  • 生命の技巧(アート・オブ・ライフ)
喰らいなさいな忍者共ッッ!!
お兄ちゃんの麻薬(ヤク)が!!私の手術(オペ)が産みしこの奇跡の身体ッ
だからこその 私の“最終極道技巧(ファイナル・ゴクドウ)”!!!

孔富が編み出した最終極道技巧(ファイナル・ゴクドウ)
2枚服用で超絶強化された4本の腕を以って相手の四肢をロック。コンクリート製のビルの地面ごとぶち抜く超人的脚力で天高く舞い上がり、超高高度から相手の身体を大地目掛けて叩きつけるプロレス技じみた奥義。
劇中では4本の腕を用いて呪血の忍者兄弟2人をまとめて技に掛けて披露した。
名前の由来はロックバンド・X JAPANが1993年に発表した楽曲『ART OF LIFE』から。


救済(すくい)なき医師団(いしだん)


……大丈夫 大丈夫よみんな───
表社会(オモテ)の医療界を追われた貴方達でも

きっと救える…!この…残酷で病んだ世界を──……


孔富が率いる極道陣営4番手。
何らかの理由で表社会の医療界から追放された医療従事者5人で構成される闇医者集団。
全員孔富と同じくセンター分けされて2色に染められた異様な髪と、同じように分けて染められた白衣で統一されている。*8
名前の由来は恐らく「国境なき医師団」。
しかし公開された正面のビジュアルはほぼヴィジュアル系ロックバンドのそれで、一見ではとても医療従事者とは思えない。
特徴は構成員全員が「人を麻薬で中毒(ラリ)らせ殺してやることが救済である」という信念を掲げ、全員がその信念を心から信じていること。
極道(きわみ)「孔富達の"優しさ"は常軌を逸する」「優し過ぎるが故に苦悩し鬼畜に堕ちる」「まさに"堕天使(ルシフェル)"」と評している。
そして極道の例に漏れず部下である医師団のメンバーへの慈しみは深い。
戦死した面々に対しては満足して救済われて死ねたかどうかを考えて感傷に浸り、部下が幸福なのであればどんな行動も許容する器の広さを持つ。

貴方達が望むなら…私が叶えるわ
それが…どんなに(イカ)れた悲惨な破滅でも……!!

とは本人の談。それゆえに部下全員から慕われ深い忠誠を抱かれている。
詳細は個別項目を参照。


【劇中での活躍】

ガムテの外伝において名前だけ登場。武装した極道を素手で屠るという『代紋密漁者』に興味を示しており、遺体の回収を依頼した*9
初期の時点からシルエットで登場しており、その特徴的な風貌から否応なく目立っていた。

第三章では本人は直接登場しないものの、大橋ジャンクション付近にて極道車と衝突して瀕死の重傷を負った少年とその一家に適切な延命処置を施して救済(すく)っている。
この時少年に「救済」の花言葉を持つ蓮の花を渡して去ったという。


『第四章・幼狂死亡遊戯』


()ン…無情 また…人が傷つくのねェ

()くのですね ”先生”

そうねェ…艶道(エンドウ) イキましょ……♡

救済(すく)いに…

終盤で本格的に登場。
忍者(しのは)に敗れ戦死したガムテを抱え、心を殺された子供達の味方にして英雄として戦い続けた彼の気高さと怨念を讃えて涙ながらに仇討ちを決意。
極道(きわみ)と衝突した忍者(しのは)に“唾”を吐きかけて一蹴、惨蔵が放った「老腕若火(ろうわんじゃっか)の帰還」を正面から相殺するなど、その実力の片鱗を見せた*10


『第五章・極契大壊嘯(ブロマンスダイタルボア)

官邸から撤退後は屋形船にて陸地にばかり目を向け河川に目を向けない日本警察を嘲笑しながら、忍者を愚弄(おちょく)れたことを肴に上機嫌で部下達と共に宴会。
その傍らで「忍者と懇意になった自分を責めてくれても構わない」物憂(アンニュイ)極道(きわみ)を一切責め立てることなく慰める。

貴方は誰より深い”孤独”と誰より深い”愛”の男──
”孤独の王”輝村(きむら) 極道(きわみ) 貴方こそ──八極道(われら)の将にふさわしい男…!!

そして極道(きわみ)から次の刺客として指名されると同時に何を破壊してくれるのかと問われ、「この東京全部」と返し、「この東京に 救済(すくい)の洪水を」と宣言。
以後は決行日まで闇医者としての業務を行いつつ表立った行動は控えるようになる。

だが、大阪で患者の往診を行いつつ新作コスメのショッピングをしていたところ、偶然にも同じく大阪に足を運んでいた左虎・右龍とバッタリ遭遇。
口内に仕込んだ『地獄への回数券』を服用し、けん制しながらの問答を行う。
その中で2人が兄を殺した下手人だと知り、普段の飄々とした余裕の笑みが消えた素の怒りの表情を一瞬露にする。
それでもすぐにいつもの調子を取り戻し、逃げ(トンズラこき)ながら招集した医師団全員の助けを借りて2人の追撃を回避。
改めて東京で行う悪事で兄弟2人を「念入りに 確実に ブッッ殺すわ…!!」と宣言し、自信に満ちた笑みを浮かべて大阪から撤退した。

歪罹井(エリイ) 美陀(ヨシダ)
嫌慈(ケンジ) 叛巻(ホンマ)
艶道(エンドウ) 大丈夫…
みんな…みんな救うから────

明日───────…

大阪での邂逅後、悪事の下準備を手助けしてくれた極道(きわみ)へ感謝と愛の言葉を電話で届けると、上記の台詞で泣き叫ぶ医師団の面々を慰める。
そして翌日、準備を済ませたテロを遂に決行。
浄水場を介して東京の水道水を莫大な量の『天国への回数券』で汚染し、全てを麻薬化。
汚染水を摂取して顔中の穴から体液を垂れ流しひきつったような満面の笑みを浮かべながら快楽に溺れ昏倒する夥しい数の中毒者を発生させる。
旅客機墜落などの二次災害まで巻き起こるなど、東京全土を阿鼻叫喚の地獄絵図に叩き落とした。

この世はみんな病んでいる
どんなに医療が発達しても 救えぬ心で満ちている

だから───────

浄水場から水道通じて “全東京”を“麻薬(ヤク)漬け”に……!!

さあみんな…溺れましょう

救済と死の大海嘯よ

その後は駆け付けた忍者(しのは)・左虎・右龍のうち、2人の援護を受けて先に向かった左虎と対峙する。



【余談】

五章からの各話のサブタイトルは、多くが90年代のヴィジュアル系ロックバンドの楽曲が元ネタとなっている。
MALICE MIZER』を中心に『L'Arc~en~Ciel』など幅広く拾われているため、これを期に聞いてみてもいいだろう。

ちなみに、この異常すぎる肉体についての伏線はわりと早いうちから描写されており、何故かタナカカツキ氏のエッセイ漫画「サ道」とのコラボ読み切りにて匂わされていた。
向こうの主人公であるタナカが都内某所のとある銭湯(タナカ以外の客は皆極道であり、破壊の八極道のうち男メンバー全員も同時に入浴中という世紀末すぎる状況)で湯治とサウナを楽しんでいた際、
水風呂にて「ちょっとアンタ 足当たってるわよォ~~」目測で何故か3m近く離れていたはずの孔富から文句をつけられている。
明らかにおかしい状況をタナカはあまり気にしていない*11為幸いにも彼の肉体の真実を知ることはなかったが、それは彼の長身痩躯が普通の人間のソレではない事を示唆していた。

その奇怪なビジュアル故に地味に作画コストがヤバいらしく、作者は
「俺は今日も原稿…孔富姐さん…アンタが我儘ボディ(作画コスト的に)してるから…」
とコメントしている。
また真の姿を見せる前にうっかり下書きで身体の下絵が描かれたものを数枚、誤って読者プレゼントにしてしまう大ミスをやらかしてしまったそうだが、幸運にもネタバレがネットに流れることはなく、そのリテラシーに関して作者が感謝のコメントを送っていた。



追記・修正は”真の救済”を成し遂げてからお願いします。

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最終更新:2024年03月12日 10:52

*1 「史上最も身長の高い人間」として知られるアメリカ人男性、ロバート・ワドロー氏の身長が272cmである。

*2 その時持っていた袋に書かれていたブランドは「ANNE SUI」と「AMURA」。元ネタは『ANNA SUI(アナ スイ)』と『AYURA(アユーラ)』か。

*3 例として鎮痛・鎮咳効果を期待して開発されたり、現代でも医療目的でも使われることがある大麻やモルヒネ、ヘロインを挙げている。

*4 同胞たる八極道にしてそれぞれ極道(きわみ)の腹心たる夢澤とガムテが慕っている殺島相手だが、それでも「血縁関係の証明書」等と言うセンシティブな書類を、である。寧ろそれぞれの関係を考えれば興味本位で見せていいものではない

*5 なお、彼の顔は聖華天編における惨蔵の顔に類似しているが関係は不明。

*6 ただし手が薬品荒れでボロボロになっていた辺り自虐も含まれている

*7 当初は「債務者」の誤植や勘違いを疑われていたが、この作品の極道にしてみればもっと長く搾り取りようのある債務者を実験で使い潰すよりも、「身勝手にも」身内から金を毟り取ろうとする借金取りを薬漬けにした方が借りた金もチャラに出来るし一石二鳥…という醜悪な考えにたどり着いても何らおかしくない。

*8 なお個々人のそれ以外の服飾(ヒール,タンクトップ,髭など)も可能な限り左右で分けられている。

*9 効能の類似性からして、おそらくこれが『地獄への回数券』の原型になったと思われる。

*10 なお、この間ずっとガムテの遺体を抱えたまま戦っていた。両手を塞いだまま忍者複数名と渡り合う戦闘能力の高さもそうだが、「王子様」への思いが強くうかがえる。

*11 「3mは離れてるのにな」と少しだけ困惑はしていた。というか周囲で極道が普通にサウナや水風呂を楽しんでおり、何人かは互いにガンを飛ばしあって今にも殺し合いをしそうな空気になっている、というか実際に殺し合いもやってる異常な状況でありながらも、タナカは特に気にしてなかった。