アバドン(悪魔)

登録日:2012/03/01(木) 23:17:59
更新日:2024/01/22 Mon 07:53:26
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「第五の御使いが、ラッパを吹き鳴らした。するとわたしは、一つの星が天から地に落ちてくるのを見た。
この星に、底知れぬ所(アバドン)の穴を開く鍵が与えられた。そして、この底知れぬ所の穴が開かれた。
すると、その穴から煙が大きな炉の煙のように立ちのぼり、その穴の煙で、太陽も空気も暗くなった。」

「ヨハネの黙示録」



◆アバドン◆

「アバドン(Abaddon)」はユダヤキリスト教に於ける悪魔めいた存在。
元来、この名はギリシャ語で「破壊するもの」を意味する「Apollyon」に由来すると考えられているが、
冒頭の「ヨハネの黙示録」の一文に倣ってか、後には「深淵」や「奈落」とも訳される様にもなった。
一般的には地獄の君主階級に属する大悪魔の一人と考えられているが、上記の呼び名の様に「底無しの穴」の意味として、地獄の呼称の一つにも用いられる。



【概要】


「地獄の底無しの穴」に潜む悪魔の王、或いは天使の一人と考えられている。
アバドンの登場する最も有名な文献である「ヨハネの黙示録」の記述から、
地獄の悪魔とも、アバドンを呼び覚ました第五の御使い(ラッパを吹く者)と同様に天使であるとも、単に「奈落」を意味する名詞である等、
解釈によって諸説が入り混じっている。
天使と考えた場合にしろ、悪魔と考えた場合にしろ、何かしらの存在と見なした場合には「黙示録」の記述に倣い、
「地獄の鍵」を管理し眠りにつくサタンを閉じ込めているとされるが、
その役割の大きさから悪魔王ルシファー、及びルシファーの一側面とも呼ぶべきサタンやサマエルとも同一視された様だ。

……これらの要素から、アバドンは堕天使の一人にして、邪悪や不和、復讐の女神を支配する「奈落の王」とされたのであろう。

また、ヘブライ民族により信仰が断絶させられた、カルデア人が黒き太陽と呼んだ黄泉の神アルシエルもアバドンの別名とされている。

ユダヤ/キリスト教に於いて最も偉大な天使とされる大天使ミカエルも、元来はカルデアの太陽神に由来すると云う。

悪魔の中でも「特に恐ろしい姿」で現れるとされており、
その姿は「喩え召還者がアバドンを正式な方法で呼んだとしても」直視した場合には気絶を免れない程であるとされている。

……悪魔召還には、まともな手順を踏まないと姿がグロくなるとかの決まり事があったのだろうか?

その姿に関しては「黙示録」にて、「馬に似た姿で頭には金の冠を被り、翼と蠍の尾を持ち、顔は人間に似るが、獅子の歯と女の髪の毛を持つ」……とされている。

……何とも恐ろしい姿だが、実はこれはアバドン自身では無く、アバドンの率いる(或いはアバドンから解放された)「イナゴ」の姿であるともされている。

「黙示録」によれば、第五の御使いにより解放された「イナゴ」の大群は世界を覆い、神に許されぬ「額に神の印を持たぬ人々」を蠍の尾で刺し、
死ぬ事も許されぬままに「死よりも優る苦しみ」を「五ヶ月」もの間、与えると云う。

その、余りにもドSな記述から「イナゴ」をアバドン配下の悪魔の軍団とする場合もあるが、
これは元来はシュメールやエジプトの文明以前より大陸に棲む人々を脅かして来た「蝗害」を忌避する神話から誕生した設定であるらしい。

日本人には今イチ実感が湧かないが、大陸ではある種の飛蝗の類が相変異により群生相へと突然変異を引き起こした結果、
天をも覆う程の無数の飛蝗が一塊となって、凡る植物を食い荒らす「蝗害」は、正に神や悪魔の御業であった。
「黙示録」には「神の怒り」を代行する御使いにより、地上に災厄がバラ撒かれる場面が登場するが、
この「蝗害」が「疫病」や「」よりも後に配置されている辺りに、如何に欧州で「蝗害」が恐れられていたかが判ろうと云うものである。



【アポリュオン】


悪魔としてのアバドンの原型となったアポリュオンとは、ギリシャ神話の太陽神にして予言の神であるアポロンの異名であるとされる。
アポロンは神話の中で、自分と妹の月と狩猟の女神アルテミスの誕生を阻むべく、
母神レトを追い回した蛇神ピュートーンを打ち倒し、自らが代わってデルフォイで神託を齎す神となるが、
このピュートーンとアポロンが同一視されると共に、悪魔化したのがアポリュオン(アバドン)の由来であるともされている。
※アポロンは聖石オムパロスの下の「地面の裂け目」に葬ったが、オムパロスとは「臍」の意で、同地が世界の中心たることを示すという。
……尤も、そう考えられたのにはそれだけの理由があり、より古い神話によればピュートーンとアポロンは双子の神であり、
互いに別の側面を象徴する神性であったとされる物もある。
この事から、アポリュオンを「アポロンの死の仮面」と訳す場合もある様である。

尚、ピュートーン(Python)はニシキヘビを意味するパイソンの語源である。



【主な登場作品】


ゲーム

『女神転生』シリーズ

デジタルデビル物語 女神転生Ⅱで「怪獣 アポリオン」名義のボス悪魔として登場し、真・女神転生以降は堕天使または魔王としてたびたび登場している。
全てを呑み込もうとするかのような巨大な口を持つ怪物のような姿、あるいは地中にその身を潜ませ巨大な頭部を表す悪魔の姿で描かれる。
時には「地獄の底無しの穴」に潜む悪魔の王としてストーリーに絡み、真・女神転生Ⅱではヴァルハラエリアを呑み込んで消化吸収してしまい、内部に突入して倒すボス悪魔になっており、
デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 アバドン王ではタイトルになっているだけあって、「無限奈落アバドン」としてこの世に出現し、黙示録で語られたイナゴを元にした姿の「アバドン虫 アポリオン」が中から飛来している。
そうでなくてもゲーム終盤の強い雑魚として登場するあたり、優遇されている。
デビチルシリーズだと何故かケツアゴ忍者だったりするけど。

◆『ペルソナ』シリーズ

P4にて「大谷花子」として登場
P3では悪魔のペルソナ、P4では塔のペルソナ、P5では審判のペルソナとして登場。
いずれのタイトルでも物理系攻撃にとても強い。

◆『悪魔城ドラキュラ』シリーズ

DS版「蒼月の十字架」にてボスとして登場。やはりイナゴを操って攻撃してくる。

◆『メギド72

スマホゲームメギド72では、アバドンの名を冠する兵器がリリース当初の最終ステージのボスを務める。
かつての古代戦争で導入予定だった兵器という設定であり、追放メギド達では束になっても敵わないとされる存在。だが、その見た目は巨大なロボットそのもの。他のゲームと比べると明らかに異質である。
多くのロボット系のエネミーは「物体」属性を持つが、アバドンの属性は「神」「龍」と属性の傾向もかなり謎なラインナップ。これはアップデートで追加された亜種も同様である。

◆創作怪談

SCP Foundation

SCPオブジェクトのオブジェクトクラスに於いて、
現段階ではまだ非公式ながらKeter(収容が極めて難しい上に放置すると世界を破滅させかねないブツ)をも上回るシロモノとして「Apollyon」というクラスが存在。

◆実写

劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME

仮面ライダーアバドン」というイナゴをモチーフとした量産型ライダーが登場。夥しい数の変身者がおり、謎の赤いガスで民間人を襲う。

漫画

るくるく(漫画)

瑠玖羽の率いる悪魔の中に王冠を被って直立したイナゴのような姿の「ドンちゃん」がいる。イナゴを食べることに抵抗はない模様。
バイク乗りのようなファッションの元ネタは、どう考えても国民的バッタヒーローからであろう。ちなみに仮面ライダーアバドンより前の作品。

ライトノベル

◆ 『俺の足には鰓がある』

改造人間を擁する悪の秘密結社と戦うイナゴ男、「蝗王アバドーン」が登場。
お察しの通り国民的バッタヒーローがモデルだが、その名の通り毒針を持ち、何より言動も昆虫的で正直怖い。ちなみに仮面ライダーアバドンより前の作品。
余談だが挿絵は前記『るくるく』の作者。しかしとぼけた顔のドンちゃんとは似ても似つかない怖い顔をしている。

◆食玩

◆ 『神羅万象チョコ

『大魔王と八つの柱駒』に暴魔王に次ぐ「グラトニー」のナンバー2「蝗魔大公アバドン」が登場。
蝗の群れを率いて毒の蠍を操る実力者で、直立した筋骨隆々のバッタのような姿に頭には王冠、
緑の体、赤い複眼に赤いマフラーを巻き、手にしたは赤く尖り、柄には赤い風車のような鍔…ともはや隠す気も感じられず仮面ライダーBLACK RX。 
だからって「蝗魔大公!緑の体躯(ボディ)!蝗魔大公!真っ赤な眼!蝗魔大公アバドーン♪アール…」なんて歌うと「ゆ゙る゙ざん゙!(一欠)」されるのでやめておこう。
次の『九邪戦乱の章』では体と目の配色が入れ替わり王冠が巨大化した「奈落火蝗魔王アバドン」が登場。またマニアックな所から拾って来たな。


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最終更新:2024年01月22日 07:53