タニノギムレット(ウマ娘 プリティーダービー)

登録日:2023/06/04 Sun 15:05:00
更新日:2024/04/11 Thu 18:14:27
所要時間:さあ、約 21 分で読むがいい!






画像出典:【ウマ娘 プリティーダービー】CM「Glories」タニノギムレット 篇
© Cygames・JRA



俺を見ろ! ワタシにこそ酔え!
さあ、ぶっ壊してやる!!


タニノギムレット(Tanino Gimlet)とは、『ウマ娘 プリティーダービー』の登場キャラクターである。
CV:松岡美里

モチーフ元である競走馬『タニノギムレット』は当該項目を参照。

+ 目次

◆プロフィール

キャッチコピー:この美学に酔いな! ピーキーな耽美系破壊神
誕生日:5月4日
身長:166cm
体重:パーフェクト
スリーサイズ:B77・W56・H79
靴のサイズ:左:24.5cm 右:24.0cm
学年:高等部
所属寮:栗東寮
得意なこと:神話、哲学、ヴ音の発音、日曜大工
苦手なこと:予定調和、半熟卵、りんご
耳のこと:俺を謳うは俺──(※取材陣を無視しがち)
尻尾のこと:概念に抗え──(※尻尾でも柵を壊したい)
家族のこと:家の表札は壊した柵の再利用(母のお手製)
ヒミツ:①亡霊を黎明へ誘う手遊び(廃材DIY)が得意

自己紹介:俺はタニノギムレット! 求めるのは理想の"ワタシ"。 仮棲まいの己を騙る気はない。 壊せよ、蹴破れ──そして進みな、終焉へ!

キャラクターソング:Destroy for Dasein

祝杯をこの手に

過信と油断はなかったが
運もまたなかった。
悔しさが、無念が、怒りがつのる。
勝利の美酒をあびるのは
自分だったはず、と。

今日こそは酔おう。
感情を余すことなく
全力で芝に叩きつけよう。
すべてを出し尽くした先には
きっと祝杯が待っている。

2017年URA 名ウマ娘の肖像「タニノギムレット」より

◆概要


画像出典:【ウマ娘 プリティーダービー】CM「Glories」タニノギムレット 篇
© Cygames・JRA

掲げよ、

刹那の盃を

類まれなスピードと総合力を持ち、皐月賞・NHKマイル・日本ダービーのクソローテ過酷なGⅠ競走3連戦に挑み、日本ダービーを制した競走馬・タニノギムレットがモチーフのウマ娘
2022年5月5日の横浜開催の4thイベントにてシンボリクリスエスと同時に参戦が発表され、同時に同年秋からのショートアニメ「うまゆる」での主人公ポジションをクリスエスと共に務めることも発表された。
トレーナーからの通称は「ギムレット」、あるいは史実由来の「ギム爺」「ギム様」または「親父」。

流星を模した白いメッシュに、右目に眼帯をつけた非常に独特な容姿のウマ娘。
実際のタニノギムレット号も独特な目の持ち主であり、右目は黒目部分が多いのに対し、左目は白目部分が多く三白眼のようなギョロリとした目をしているのが由来か。
眼帯を取った姿を見せることはほぼないが、潰れたりしている訳ではないようで、素顔を見たことがある数少ないウマ娘の一人、シンボリクリスエス曰く「かわいい」「美しい」らしい。
余談だが、史実ギムレットはウマ娘化後の2023年に緑内障を発症し、左眼の視力をほぼ喪ってしまったという…
またリアルの方のウオッカの父親ということもあってかウマ娘の方のウオッカとデザインも体型も非常に似ている*1

この見た目から既に察しているかもしれないが、重度の厨二病……ウオッカのそれをさらに拗らせたようなセリフ回しを多用する。
キャラクター紹介文では「独特の美学を持ち」とマイルドな表現になっているが。
ごく普通の言葉であっても、ギリシャやローマの神話に登場する神々や英雄の名、哲学用語にラテン語やギリシャ語などのルビが振られるような言動を多用するため、ネオユニヴァースには及ばないもののその真意を探るのは難しい。
だがそれっぽい単語を適当に並べるありがちな邪気眼キャラではなく、そういった神話や伝承、哲学に精通しているあたりかなりの博識で、おでかけイベントでは大学で哲学の講義を聴講している。

特技の一つはカクテル作り。
その気になればアルコール入りのも作れるだろうが、トレーナーや他のウマ娘に振る舞うのはノンアルのカクテル(モクテル)で、その腕前はなかなかのもの。材料さえ揃っていればその場で作ってくれる。そしてやっぱり名前は厨二病全開だが
シェイカーは父親からもらったもののようだ。

またもう一つの趣味は柵の破壊トレセン学園内でもコースの柵を蹴り壊したり、備品やゴミを蹴り壊そうとするため、ついた異名は「破壊神」。
柵であればなんでもいいらしいが、一番壊し甲斐があるのは木製の牧柵らしい。
ただ壊しっぱなしというわけではなく、「破壊と再生」が彼女の美学で、破壊した柵は後日自分で修理している。

その他父親の影響でカクテルのギムレットが登場する探偵小説を読んだことから、時折探偵のまねごとを始める*2が、こちらはなかなかの迷探偵ぶりを見せている。
一歩間違えばとんでもない一大事になる相手まで巻き込むのはやめてほしいところだ。

スピードの求められるマイルを統べる「疾さ」と、スタミナまで求められる中距離を制する「強さ」に対し非常に強いこだわりを持っており、それを実現するだけの天与の才能もあるうえ、
さらに研究熱心かつ努力家の一面もあり、それらを以てNHKマイルカップと日本ダービーの連戦、「MCローテ」を完遂しようとしている。

◆アニメ版での活躍

うまゆる

キービジュアルにも登場しており、主役の一人として登場。出演回数も多い。

  • 第3話「今宵、BARでカクテルを」
細江ママが経営するバーに後輩のウオッカと飲みに来る。
バーの常連らしく「いつもの」とキープしてあるギムレット…ではなくスポーツドリンクを注文した*3お酒は二十歳に成ってから
ここは『Bar細純』ウマ娘たちの休息所。

  • 第8話「取材ですよ!乙名史さん!」
雑誌の特集でウオッカがタニノギムレットを、ダイワスカーレットアグネスタキオンについて語った記事を読み、先述の2人同様にタキオンとどっちが自分の事を分かっているかで張り合っていた*4

  • 第12話「鎖威拒宇血夷武(さいきょうちーむ)!波羅離螺(ぱらりら)!」
史実の「ブライアンズタイム」系で結成された不良チーム「無頼暗(ブライアン)」の総長として登場。
ウオッカからは「ヴェルサイユの破壊神」なる異名で呼ばれていた。

◆アプリ版での活躍

性能

バ場 芝:A ダート:F
距離 短距離:F マイル:A 中距離:A 長距離:F
脚質 逃げ:G 先行:D 差し:A 追込:A
2023年5月19日に☆3「身に纏うケラヴノス」として実装。
5月=日本ダービーということで、その覇者である彼女が順当な時期に実装となった*5

マイル・中距離の差し・追込を得意としているが、固有スキルや習得できるスキルを考慮すると、中距離・追込での運用で最大の強さを引き出せる。
パドックではやる気が好調以上だとケンカキックを披露してくれる。どうしても何か蹴りたいらしい

[身に纏うケラヴノス]

クク…ッ、魂が躍動する! さぁ走らせろ!

画像出典:ウマ娘 プリティーダービー「[身に纏うケラヴノス]タニノギムレット」勝負服
© Cygames・JRA

「タニノ」冠名を用いる馬主、谷水雄三氏の勝負服「水色襷」をモチーフに、黄色のノースリーブシャツに濃紺のベストを着用。水色のタイがなびくとちょうど水色襷の再現になる。
また左右の前脚の色が異なるのを反映してか、右手には黒、左手には白の手袋をつけている。
膝かなり上のショートスカートに脚全体を網タイツで覆い、ロングブーツに四重のベルトを巻いている。

「ケラヴノス」(κεραυνός)は古代ギリシャ語において「雷」を意味する。また、ギリシャ神話における最高神・ゼウスの持つ武具の名でもある。

ステータス成長率はパワー+30%の極振り。追い抜く際やバ群から抜け出す際に求められるパワーを、スピード練習だけでかなり補えるため嚙み合った補正でもある。

覚醒スキルでは「疾風怒涛(「仕掛け抜群」上位スキル)」と「雲蒸竜変(うんじょうりゅうへん)(「自信家」上位スキル)」のレアスキルを習得可能。
「雲蒸竜変/自信家」は新緑スキル。「スピードとパワーが十分に強いとスピードとパワーが(わずかに)上がる」という、マイル・中距離限定で発動する緑スキルである。
進化スキルでは「疾風怒濤」が「嵐を呼ぶ破壊神」に、「雲蒸竜変」が「酔い痴れよ、世界」に進化する。

自信家、雲蒸竜変、酔い痴れよ世界の3つは全てギムレット実装と同時に追加された新スキルで、その効果は「スピードとパワーが十分に強いとスピードとパワーが上がる*6」というものになっている。
ステータスさえ十分ならほぼ無条件にステータスを更に底上げできるという意味ではかなり有用なのだが、スキル説明が進次郎構文トプロ構文っぽいということでネタにされることも。



我が手にはパンドラの箱、禁断の果実──


破壊に、禁忌に、


このワタシにこそ酔えッ!!


画像出典:ウマ娘 プリティーダービー「[身に纏うケラヴノス]タニノギムレット 固有スキル発動」
© Cygames・JRA

固有スキルは「霹靂のアウフヘーベン」。
発動条件と効果は「レース終盤に後方にいると最終直線で力を解放し前に出る、東京レース場の中距離レースならものすごく前に出る」というもの。
終盤に後方にいれば、最終直線に入った瞬間、それも突入時点の順位に関係なく発動する。東京レース場の中距離レース、日本ダービーや天皇賞(秋)、ジャパンカップの条件では効果が増す。
しかし、それらのコースは直線一気が無効*7であったため、差しにするなどといった工夫が必要であった。
現在はドゥラメンテから渾身の足取り*8の因子を継承したり、オルフェーヴルのサポカからヒントを得ることでこれらでも十分に力を発揮できるようになった。

固有演出はギムレットが右腕から雷を迸らせ、足下と高く掲げた右腕の先に魔法陣を展開し、瞳から閃光を走らせながら紅い月の光を背景に決めポーズ…と、これでもかというくらいに厨二全開のイカスもの

酔え、ワタシに! 勝利の美酒たるこの俺にッ!

固有二つ名は「耽美系破壊神」。
取得条件は「作戦「追込」かつ無敗で皐月賞、NHKマイル、日本ダービーを勝利し、基礎能力[パワー]が1200以上になる」。
史実ではなし得なかった皐月賞・NHKマイル・日本ダービーの制覇を求められる。
特にスピードが求められるNHKマイルカップの直後にスタミナが要求される日本ダービー、それもシンボリクリスエスにライバル補正がかかった状態で控えているため、まさに「疾さ」と「強さ」の両立が求められる。
パワー1200以上は、+30%の成長率を活かせば到達できるだろう。

サポートカード

汎用Rのほか、「うまゆる」配信記念として配布されたSSR【Welcome to Umayuru】が、
2023年9月29日にはストーリーイベント「フェアウェルを継ぎ接いで」に合わせたSSR【フォルトゥーナの喝采】が実装されている。また、2024年1月19日にはSR【ギャラルホルンを磨き上げよ】が実装された。

SSR【Welcome to Umayuru】

得意練習はパワー。
マイル・中距離の追込向けスキルを所持している。
配布サポートカードらしく出力は低め。
連続イベントを進めると確定でレアスキル「疾風怒涛」のヒントを入手可能。
サポートカードのイラストは「うまゆる」制作陣の描き下ろしで、友情トレーニングの際にはデフォルメされたギムレットの顔がドアップになる。

SSR【フォルトゥーナの喝采】

こちらの得意練習はスタミナ。
完凸すると15%という非常に高いトレーニング効果アップが得られる他、友情ボーナスとやる気効果アップ、更には根性ボーナスにスキルPtボーナスと幅広く備えており、総合的な練習性能はSSRクリーク【一粒の安らぎ】にも匹敵する優秀なスタミナサポートカード。
また、連続イベントを進めることで中距離用のレアスキル「高揚感」を取得可能。

SR【ギャラルホルンを磨き上げよ】

得意練習は賢さ。
練習性能は控えめだが、レースボーナス10やスキルPtボーナスといった貴重なボーナスを持っているのが強み。
スキルは中距離や追込で使えるものが揃っている。

個別ストーリー

仕事で失敗してしまい、バー&レストランのカウンターで溜息をついていたトレーナー。

お客様、こちらを。
──深淵の吐息にインスパイアされたオリジナルモクテル……『神聖なる喜劇(ラ・ディヴィーナ・コメディア)』だ。

差し出されたのはモクテル。運んできたのはマスター……ではなくウマ娘。

……ククク……ッ! ハァーッハッハッハ!
驚くのも無理はないか、しかしワタシは酩酊を乞う溜息(こえ)を聴いた!
ならばオマエを導こう!彷徨える子羊よ!
この浄化の炎が、オマエの迷いを、罪を全て清めよう!

さあ、秩序(コスモス)を疑え! 理性(ロゴス)を手放せ!

ひとまず差し出されたモクテルを手に取る。この店のスタッフだろうか?
しかし何を言っているのか戸惑っていると、近くで見ていたマスターが声をかけてくれる。あなたのために作った、元気が出るから飲んでほしい、とのことらしい。

そういうことなら、とありがたくひと口飲んでみる。柑橘系の甘味と酸味、そこにザクロの風味が合わさった、爽やかでおいしいモクテルであった。
さらに、これをブレンドしたのは目の前にいるウマ娘だという。確かに、オリジナルモクテルとは言っていた。

いついかなる時も酩酊を生む。 それこそがワタシの可能性(デュミナス)、俺の──タニノギムレットの手腕だ!
さぁ、飲み干せ、全てを焼き尽くせ! 罪よ裁かれよ、さすれば新たな扉がオマエに与えられん!

そう言い残し、高笑いしながら去り、給仕を続けるタニノギムレット。

世話焼きで、暗い顔をしたトレーナーのことが放っておけなかったんだろう、とマスターは語ってくれた。



その後、校内で彼女の姿を見かけた。どうやらトレセン学園の生徒であったようだが……
なぜか破壊された柵の破片を抱えていた。

…………罪。 それは輪廻の隠し味。 運命(フェイト)筋書(シナリオ)すら変える一滴のガーニッシュ……。
マティーニ*9にはレモンピール、ジン・トニック*10にはライムスライス。
ならば、タニノギムレットには──破壊を。

と、そこに教官が駆け寄ってくる。どうやら柵破壊の常習犯のようで、教官もうんざりといった感じである。

案ずるな、破壊の裏にこそ再生(ルネサンス)は存在する。 俺の槌を振る手は冥界の番犬(ケルベロス)さえも止められやしない。

壊したなら自分で直せばいい、と言っているようだが、教官の叱責などどこ吹く風とばかりにどこかへ去っていく。
かと思えば……

見よ、この天界の光を。闇と紡がれたコントラストを。 埃舞う中、ひっそりとたたずむ──禁忌(タブー)を。
偶然通りかかった生徒の心には、こう刻まれるのだ……!
──廃屋に、光をもたらす者(ルシファー)が舞い降りたと……!
嗚呼、神が求めど俺は戻らない!

頻繁によくわからない理由で授業をさぼる問題児であった。
しかし、トレーニングだけは真面目に取り組む、そんなウマ娘のようだった。

そんなある日、タニノギムレットが模擬レースに出走するという噂を耳にし、見に行くことにした。
条件は芝1600m、天候は晴れ。
タニノギムレットの実力はトレーナー陣にも広く知られており、彼女のおかげで立て直したクラブチームもあるという。
そして現在、タニノギムレットには専属トレーナーは不在。多くのトレーナーが、彼女をスカウトすべく見に来ていた。

そうしてレースが始まる。位置取りは後方のまま、最終直線に差し掛かる。
しかしバ群の中に囲まれ、前も壁という絶体絶命の状況。

戦士の迷宮(エインヘリアル・ラビリンス)か! 辿るべきアリアドネの糸は──途切れた。)
(フッ……! 面白い! ならば身ひとつで、切り抜けるまで!)

ラスト100m、ようやく追いこんできたが……3着。
勝利こそ逃してしまったが、あの凄まじいスピードと切れ味。まともに追い出していれば、勝利は確実だっただろう。
専属トレーナー不在であの才能、それは彼女の天賦の才能であることを意味していた。
マイル路線であればそのスピードで邁進すれば、とんでもない活躍ができるに違いない。
観客席を飛び出し、ターフに立つギムレットの元に向かい、スカウトしようとする。

断る。
『君は類まれな才能を持っている。 あの凄まじいスピードを持ってすれば、マイル路線で素晴らしい活躍ができる』
……オマエの言葉(レター)は受け取った。 俺の才能を評価する、ならば第一関門はクリアだ。
しかし、あくまで第一関門だ。 ……見ろ、これは何本に見える。

そう言って指を一本立てる。正直に答えると……

フッ。 2本だ。
可能性を1つにしか絞れない。 オマエにはまだ──足りていない。

ならばやるべきことは1つだ。 俺がオマエをツイストしてやる。
そうして見極める、オマエも、俺も。 この海洋(オケアノス)の果てに、理想郷(エリュシオン)はあるのか。
目指すべくはそれのみ。 アスポデロスの野*11であってはならないからな。
──まずこれを託そう。 文字に従い過去を追い、未来を見定めろ……!

託された手紙を開いてみると、それはタニノギムレットの人生を綴った手記。
父はバーテンダー、母はトゥインクル・シリーズを駆け抜けたウマ娘で、カクテル、レースともに身近な存在であった。
レースでは他の追随を許さぬ『速さ』にレースを征服する『強さ』に心打たれ、目指すべきものは自ずと形作られていった。
速くあれ、強くあれ、それが至上の美学である、と。

しかしある日、自分には『ベース』がないことに気づく。
スタンダードカクテルは甘味、酸味、そして『ベース』にあたる酒の3要素を踏襲するものとされている。
ちょうど、バラライカがウォッカをベースに、ホワイトキュラソー、レモンジュースを混ぜて完成するように。
またウォッカをブランデーに替えればサイドカーに、ジンにすればホワイト・レディに、テキーラにすればマルガリータになるように。

美酒というのは、ベースで名が決まり完成するものなのだという。
つまり、『速くあれ』『強くあれ』という甘味と酸味をいくらシェークしたところで、それだけでは完成しないのである。
何を成したいのか……そう悩んでいたギムレットに、父からあるカクテルを教わった。

と、手記はここで途切れており、その代わりか1枚のメモが挟まっていた。
Want to hear the rest? You know the bar(続きを聞きたいか? ならば例のバーで).』と。
何故英語で書かれていたのかはともかく、強さと速さ以外に求めたものを知るべく、例のバーへと向かった。

バーに着くと、どういうわけかマスターからサービスカクテルが差し出される。曰く「うちの風変わりなスタッフから」と。
大人しくひと口味わってみると、キリッとした辛さが特徴的なカクテル。これは……

ギムレットだ!
……ククッ! ようこそ、我が世界樹(ユグドラシル)へ。 オマエならば、それを読み、必ず訪れると踏んでいた。

父から教わったカクテルというのはギムレット。
『ギムレットとは刹那にて強烈に残り、そして思いを馳せたくなる美酒だ』と父は語っていたのだという。
また『長く輝き続ける美学もあれば、刹那に輝き深く刻む美学もある。 愛されるのは長い輝きだが、心を焦がすのは刹那の煌めきだけだ』とも語る。

……心を焦がす、刹那の輝き。
強く激しいギムレットが追い求めた光は、まさにこういうものなのかもしれない。

ああ、ああ! それこそだ、父さん! この躍動する鼓動(エラン・ビタール)が聴こえるか、父さん!
速さと強さをもって、刹那にて眩く輝き! 目に、脳に、心に、過去に未来に刻印せし神話(ミュートス)だ……ッ!
それこそが俺の求めるワタシ! ギムレットをもって『タニノギムレット』の存在意義(レゾンデートル)は開始する!
もはやそれ以外はいらない! 牢獄(タルタロス)よりも深い、燃えるような爪痕をワタシは、ワタシこそが……!

この世界(ガイア)に刻みつけよう……!

トレーナーも引き込まれるほどの熱弁。
それ以来、ギムレットをベースに強さと速さを磨いてきたのである。
圧倒されるトレーナーを見て不敵な笑みを浮かべると、1枚の手紙を取り出す。中に入っていたのは、模擬レースの観戦チケット。
手作りのチケット。通常模擬レースの観戦に必要なく、これも演出なのだろうか?
次の模擬レース……芝2400m。

これが意味するところ。
マイル戦から、そう期間の空かないうちに行う2400mのレース。
天性のスピードが要求される『NHKマイルカップ』と、世代最強を決める『日本ダービー』を制する総合的な強さが必要な『MCローテ』と酷似している。
速く、そして強く。彼女の美学にも合致する栄冠。

入学後、運命(フェイト)はワタシとそれを引き合わせた。 俺は確信した。 俺こそがそれを最初になし得る刺客(アサシン)なのだと!

その日以降、さらに熱心にトレーニングに励むギムレットの姿を見かけるようになった。
一見して世界観の強いウマ娘のようだったが、実際は夢見た己になるべくひたむきに駆け抜け続け、そこで出会った栄冠を達成すべく挑み続ける努力家であったのだ。
そんな覚悟を持ったウマ娘のレースに、期待は日増しに高まっていった。

そして迎えた模擬レース当日。出走者の中にはシンボリクリスエスの姿もあった。
マイル戦での活躍が評価される一方で、スタミナを不安視するトレーナーも少なくはない。

ゲートが開く。クリスエスは中団前に、ギムレットは中団後方に位置取る。

(俺は歴史を繰り返さない! 永劫回帰を引き受けはしない──!)

前回のような展開を避けるべく、第4コーナーからゆるやかに外へと持ち出し、仕掛けていく。
ギムレットを阻む壁はどこにもない。そして前にいたクリスエスらの集団を捉え、突き抜ける。
タニノギムレット、1着。

努力は当然のこと、強烈なまでの才能がなければ証明できないMCローテに、専属トレーナー不在のまま最も近づいたのである。
彼女とならば、MCローテの達成も夢ではない。そう確信を得る。
観客席を飛び出し、雨の降り始めたターフへと向かう。

空が泣いている。 ワタシの勝利に歓喜して……! フフッ! アッハハハハハハハ!

駆け寄るトレーナーの顔を見たギムレットは、したり顔でこちらを見つめていた。
君の担当トレーナーになりたい。そう言おうとしたところで、手首を取られ、彼女の耳元へと当てられる。

審判(ジャッジメント)は下された。 おめでとう。
オマエはワタシに酩酊する才能がある。
己を顧みろ。 それを酩酊のほか何と呼ぶ。

胸は高鳴り、顔が、いや体全体が熱く火照っていた。

速い脈、上昇した体温──理性の飛んだ2度目の担当契約依頼(ラヴ・レター)。 他でもないタニノギムレットを浴びたから──違うか?
俺がワタシに想う理想の姿(イデア)は、世界(ガイア)を酔わせる刹那の輝きであり、その化身(インカーネーション)だ。
ならば当然、俺は側近たるトレーナーこそを最も酩酊させなければならない……!
トレーナーも当然、誰よりワタシに酔える逸材でなければならない!

ここまでの演出は、彼女に心酔できるかどうかを見定めるための前座だったのかもしれないと、そう気づく。
ギムレットもトレーナーが気づいたことを察したのか、専属トレーナーに就くよう打診してくる。
当然、快諾。

彼女は天に向かって手を伸ばす。ちょうど、グラスのようなものを持つかのような手つき。

さあ、見えるか! この空に乾杯だ! 長い旅路に至上の破壊(デストロイ)とビターズを……!

──ギムレットには、まだ早すぎる。*12

演出か必然か。その指先には、見事な虹がかかっていたのだった。

育成シナリオ

メイクデビューからシンザン記念を経て皐月賞、NHKマイルカップ、日本ダービーの3連闘をこなすことになる。
その後は神戸新聞杯から天皇賞(秋)、シニア級は安田記念と宝塚記念の連闘後に天皇賞(秋)、ジャパンカップと、早期引退した後のifの世界、それもシンボリクリスエスとの対決が中心。
史実通りクラシック級の天皇賞(秋)は中山レース場での開催になる。

シニア級の有馬記念に出走すると隠しイベントが発生。2003年の9馬身差をつけた再現か、かなり強いシンボリクリスエスが出走してくるほか、素の長距離適性がFであることも相まって難易度は高め。
さらにマイル・中距離のG1で勝利を重ねると隠しイベントが発生するが、詳細な条件はまだ判明していない。

クラシック級前半は過密なローテーションで、スピードが必要な1600mの直後にスタミナまで求められる2400mのダービーを走ることになるため、サポートカードや因子が揃っていないうちはかなり厳しい目標となる。
パワーはスピード練習が踏めていれば成長率補正もあり最低限は確保できるため、スタミナ因子を多めに積んでおくと安定するだろう。


◆関連キャラクター

ギムレットを慕う後輩。
ギムレットの方もハッキリと「特別な存在」と認識しており、そこに巡り(フォーチュン)宿命(ディスティニー)の気配」を感じ、「未来で必ず凄まじき破壊(カタストロフィ)を為し、大いなる混沌(カオス)を招くことになる」と予見している。
もちろん育成シナリオでも重要なポジションで登場。先輩後輩の関係を超える熱い展開が待っている。

史実では親子。
ウオッカも64年ぶりの牝馬による日本ダービー制覇…日本ダービーの父娘二代制覇に加えG1競走7勝とまさしく「凄まじき破壊」をもたらしている。
ウマ娘版ギムレットの発表前からギョロ目の絵文字をアバター代りに「息子よ……」と天の声的に語りかける*13二次創作ネタが定着していたので競馬ファン以外でもご存知のトレーナーは多かったはず。

不動にして漆黒の戦士。
シナリオ中でもライバルとして幾度となく対決することになり、「互いの宿命(アナンケー)であり同じ定めの鎖の重み(フェイト)を分かち合う存在」にして、「その定め(フェイト)を乗り越えるための"試練"」と認識。
目標レースもマイル・中距離路線をメインにしつつも、各所でクリスエスと対峙することになる。

史実では同期。ギムレットがダービー後に引退したため、対決したのは日本ダービーの1戦だけ。

知恵者にして探究者。
初詣イベントではギムレットとウオッカで出かけていたところにタキオン・スカーレットの2人と遭遇。
ウオッカ・スカーレットのケンカップルぶりを見て、なぜかギムレットとタキオンの方もヒートアップ。どっちが優れているか、料理、羽子板、ゲームのどれかで決着をつけることになる。結果はお察し
もちろんこの2人が争う理由はスカーレットが史実におけるタキオンの娘だから。要するに時空を超えた親バカである。

餓えた戦士。栗東寮のルームメイトでもある。
ブライアン曰く「こいつの言っていることはよくわからない。恐らく、これから先も理解できないままだろう」との事で、ギムレットからの言葉には簡単な相槌で返すことが常。
ただ熱を追い求める姿勢には一定の共感を示しており、悪い気はしないらしい。

同室の繋がりは両者ともブライアンズタイム産駒のダービー馬という点か。

魔性の君(ファム・ファタル)*14
育成イベントではラモーヌが置いたオレンジの周りに蹴り壊した柵の廃材を配置した共同作品、題して「黄金のリンゴを守る蛇(ラードーン)」の評価をトレーナーに求めてくる。
誕生日のホーム会話ではギムレット節全開の会話にも難なく返すなど、会話が通じている…というかラモーヌもノリノリで受け答えしている。
これまでは謎めいており孤高の印象が強かったラモーヌと大変ウマが合う様子がみられることに、ギムレット担当以外のトレーナーからも驚きの声が多くあがった。

史実では産駒、メジロラスタバンがいる。
この"ラスタバン"はりゅう座ベータ星の名前。作品名「ラードーン」も様々な伝承があるが、黄金のリンゴ*15を守護する竜の名というのは共通している。

語彙力が時々残念なひたむき委員長。
育成イベントや保健室イベントで登場し、疲労回復に効くモクテルを飲んだ時は「なんかやたらおいしいですっ! ごくごく飲めます!」と、
保健室イベントでは「すごく……すごい、なんか闇の力で……! たくさん破壊するのですっ!」と、語彙力を存分に発揮している。

対戦経験はないものの、種牡馬時代に隣の放牧地であり、仲がよかったとか。

我らが同志デジタル殿。
育成シナリオでシニア級安田記念、天皇賞(秋)にてネームドとして登場する。
2年ぶりの安田記念と言っていたり、ギムレットから、「数多の戦場を駆けし偉大な勇者」と評されていたり、史実と同じ戦績を重ねてきたものと思われるが、既に古豪と呼ばれるキャリアとなっても、天皇賞(秋)でギムレットとクリスエスが並び立つ姿に感涙するなどウマ娘ちゃん愛は変わらない(いつものデジたん)
安田記念ではギムレットは彼女からわずかに定め(フェイト)を担う者」の力を感じ取りパドックで言葉を交わしたが、顔を近づけすぎたせいでレース直前なのにいつも通り卒倒させてしまった。

天才的な閃きを持つ、爛漫たる花信風。
ギムレットと同室のナリタブライアンにつきまとっているせいか、育成イベントでも度々登場する。

史実ではブライアン、ギムレット同様ブライアンズタイム産駒。

ナリタブライアンの姉である勝利の探究者。
実家が酒屋であるために、幼き頃に姉妹でギムレットの父のバーに一度遊びに行ったことがあり、別れ際にはモクテルを振る舞われた。

史実では当馬同士の関わりこそないが、タニノギムレット号が繁養されているヴェルサイユリゾートファームにはビワハヤヒデの産駒であるアニバーサリー号がいたりする。



活きのいい項目を見つけた……! クク、ハハハッ! 出逢った今こそ追試・修正するべき時か──ッ!!

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最終更新:2024年04月11日 18:14

*1 ウオッカのスリーサイズにそれぞれ+1するとギムレットのそれになる。

*2 なお、読んだ小説はおそらく個別ストーリーでその一節を引用しているハードボイルド小説の名作、レイモンド・チャンドラー「長いお別れ」と思われるが、この「ハードボイルド」という単語には「固ゆで卵」という意味もあり、彼女の苦手なことに半熟卵が入っているのはここに着想を得たと思われる。

*3 実馬のタニノギムレットが夏バテした際に栄養補給の為に水ではなくスポーツドリンクを飲ませたのが元ネタ。

*4 言わずもがな、史実ではお互いの娘なので親バカ比べの様相を呈している。

*5 因みに、ヒシミラクルやネオユニヴァースなどのスピード実装が続いていたため、同じ日本ダービーモチーフのジャングルポケットの実装を予想する人もした。

*6 上がり幅はそれぞれのスキルによって異なる

*7 東京レース場で直線一気が有効な距離は1600m

*8 中距離の追込用のスキル。分かりやすく説明すれば追込用の「会心の一歩」。

*9 ジンをベースにしたカクテル。「カクテルの王様」の異名を持つ

*10 ジンをベースにしたカクテル。現代のスタンダードカクテル

*11 ギリシャ神話における冥界の一部。死後の魂はここに行き着くとされる

*12 レイモンド・チャンドラー「長いお別れ」の一文

*13 なお、当然ながらウオッカは史実でもウマ娘でも女性なので「ウワーッ!俺は娘だよ親父ー!」的なレスを返すまでがワンセット。

*14 男にとっての「運命の女」即ち運命的な恋愛の相手、もしくは赤い糸で結ばれた相手、というのが元々の意味であるが、同時に「男を破滅させる魔性の女」のことを指す

*15 イベント中でもギムレットが解説してくれるが、「黄金のリンゴ」は多くの言語でオレンジを指す。