宮野明美

登録日:2023/09/28 Thu 17:30:28
更新日:2024/10/12 Sat 11:24:24
所要時間:約 9 分で読めます





心配なのは志保、あなたの方よ

いい加減薬なんか作ってないで、恋人の一人でも作りなさいよ

お姉ちゃんは大丈夫だから



宮野明美とは、『名探偵コナン』の登場人物。

CV:玉川紗己子


概要

作中に登場する犯罪組織・黒の組織のコードネームを持たない末端メンバーで、灰原哀(宮野志保)の実姉。
直接登場したのは『奇妙な人探し殺人事件』のみである上に同エピソードで殺されてしまうが、その後も回想シーンなどで度々登場する。

組織の科学者だった宮野厚司、エレーナ夫妻の長女として誕生*1
ただ、優れた科学者だった両親やその才能を受け継いだ妹とは違い、IQテストで高い結果を出せなかったため組織に深くかかわることはなく、監視付きであることを除けばごく普通の生活を送っていた。
とはいえあくまで組織の重要な目的を担う科学者として使うには知能が足りなかったというだけで、一般人レベルで見れば頭は良かった模様。学校での成績は優秀だったらしく、またコナンでも少々手こずる暗号を小学六年生で編み出してのけてもいる。

妹が生まれてすぐ両親が亡くなったこともあってか、たった一人の肉親である灰原(志保)に対しては深い愛情を注いでいた。
妹は組織の命令でアメリカに留学させられなかなか会えなかったが、いつも気にかけており一緒に撮った写真を大切にしていたことからもその気持ちがうかがえる。
当然、志保からも大切に思われており、明美が組織に抹殺されるまで特に組織に不満や反感を抱いている様子は見られなかったが*2、姉が犠牲になったことを契機に組織から離反しているほど、かけがえのない人だった。

両親が組織に加入する少し前には、父の幼なじみ小学校~高校の同級生であった出島壮平のデザイン事務所を訪れていた。
そこで親しくなったデザイナーの今井徹夫の「疲れた」という発言*3を真に受け、仕事を休めるように仕事道具をトイレの給水タンクの浮き球に貼り付けて隠した。

組織の命令で様々な学校を転々とさせられていたようだが、卒業した小学校は何の因果か後に幼児化した妹が通うことになる帝丹小学校だった。
ちなみに19期生(本編時点では25歳)で、妹の担任でもある小林澄子の一学年下で、警視庁捜査一課の刑事である千葉和伸、及び交通執行課の婦警である三池苗子の一学年上に当たる。

とても明るく心優しい性格で人望が篤く、帝丹小時代はクラスの男子全員から好意を寄せられており、しかしだからといってそうしたことで女子に嫌われることもなく親しくしていた。
クラスメートの柳町岳が質の悪い友達と火遊びをしているのを発見した際には密告したりせず柳町に「勇気を出して(つるむのをやめようよ)」と告げ、
テストで後ろの席の市橋聖子が自分の答案を盗み見てカンニングしたと察した際には怒らずに一緒に勉強しようと誘い、
美術コンクールで画家志望の村田匠が隣で同じ場所の絵を描いていたため、明美の方が上手く描けていたにもかかわらず村田に自信を持たせるためあえて自分はコンクールに出品しなかった。

大学は南洋大学に通っており、恩師の広田正巳教授の名前は後に自身が名乗る偽名の元ネタとなった。
広田教授や学友たちと旅行に出掛けるなど、こちらでも楽しく過ごしていた模様。

自身の性格や能力の低さもあってか組織に深くかかわってはいなかったが、両親や妹が組織の重要人物だったため組織の内情をある程度把握していた模様で、少なくともバーボンこと公安警察安室透とは組織内で交流があった模様。
その安室とは幼なじみだが、明美がそのことを覚えていたのかは不明(少なくとも安室の方は覚えていた)。

本編の5年ほど前、諸星大という青年と交際を開始。諸星はその後灰原とも交流を持ち、彼女の周りのコネクションを利用して組織に加入。徐々に頭角を現し、コードネーム持ちの幹部にまで上り詰めた。
しかし、実は諸星の正体は組織に潜入したFBIの捜査官・赤井秀一*4であり、組織への加入から3年後に組織の幹部の中でもボスとの繋がりが深かったジンを捕える作戦を敢行するが、
作戦に参加していたアンドレ・キャメル捜査官のミスにより組織に正体がばれてしまい、組織にいられなくなる。
なお作戦の前日に明美は赤井から正体を打ち明けられるが、実は明美も薄々察していた。
よって赤井が最初から利用する目的で自分に近付いたこともわかっていたが、それでもなお彼を愛しており、赤井の方も明美をいつしか本気で愛するようになっていた模様。

この件は組織の壊滅につながりかねなかった明美の重大な失態で、本来ならすぐに始末されていてもおかしくはなかったが、灰原は組織にとっても本当に重要な人材だったため組織も明美に手を出すことはできず、住居や連絡先を変えて赤井と連絡を取れないようにさせるのが精一杯だった。
しかし組織からは「FBIを引き込みこれから先も連絡を取る可能性がある」と見做されており、それから2年後、業を煮やした組織から10億円強奪の仕事を命令される。
「成功すれば明美と灰原は組織から抜けられるが失敗すれば二人とも命は無い」という条件を提示され、妹を組織から解放するためこれを承諾。
「広田雅美」という偽名を用いて、広田健三・広田明の2人と共に10億円強奪を行うこととなる。

なおその少し前に出島の事務所を訪れ、かつてそうしたように、母が生前灰原に遺したメッセージの入ったカセットテープをトイレの給水タンクに貼り付けて隠す。
「仕事」の前日には赤井にメールを送り、仕事の内容と成功したら組織を抜けられることを伝えるとともに、「もしもこれで組織から抜けることができたら今度は本当に彼氏として付き合ってくれますか?」と質問していた*5

そして10億円強奪は、警備員を殺害してしまうアクシデントがあったものの無事成功。しかしドライバー役だった健三が10億円を持ち逃げしてしまう。
焦った明美は女子高生に扮し、三人とも偽名に同じ広田姓を使っていたことを利用し健三の娘として健三の捜索を毛利小五郎に依頼した。
その後灰原と会っており、毛利探偵事務所で会ったコナンのことを「変わった子」として話していた。
この時灰原は明美から他の組織のメンバーと同じような気配を感じたという。
コナンとの活躍もあり健三は見つかったものの、もう一人の仲間の明が怒って健三を扼殺してしまう。
その後、組織にもらった「睡眠薬」を明に飲ませるが、その薬の正体は「青酸カリ」であり、明美は「10億円強奪の首謀者」「殺人犯」という濡れ衣を着せられることとなる。
埠頭でジン及びウォッカと落ち合い10億円と引き換えに灰原の身柄を要求する明美だったがジンは「ヤツは組織でも有数の頭脳だ」と拒否。
組織の目的は「仕事に失敗した制裁」という名目で灰原も納得するように明美を処分する事であり、
仕事を成功させてしまった明美は組織にとって不要どころかFBIに情報を流しかねない危険分子でしかなかった。
銃口を向けて「金の在処を教えれば命は助けてやる」と言うジンの脅しに対し、それでも彼らの思い通りにさせまいと口を割ろうとしない明美。
そして「だいたいの見当はついている…」とほくそ笑みながら、ジンは最後のチャンスをふいにした明美に向かって発砲。

その後、明美を追ってきたコナンたちは彼女を発見して駆け寄るが、明美は腹を押さえながら前のめりに倒れこむ。
傍に拳銃が落ちていた事から、コナンは状況を察知して蘭に救急車を呼ぶよう指示を出し、小五郎たちにこの事を知らせるために蘭はその場から走り去る。
だが、明美はもう手遅れだと薄々気づいており、傷口が開くのも構わずコナンにどうして居場所が分かったのかを問いかけ、彼はその経緯を明かす。
そしてコナンの高い推理力に驚き、思わず彼に「あなたは一体…」と訊くと……

江戸川…いや…

工藤新一…探偵さ!

……と、彼女がもう長くないと悟っていたからか、隠す事無く自分の正体を明かした。
それを受けて明美は、健三が殺害される時に抵抗して明の腕時計を壊した事、その明に自分がしていた腕時計を譲った事などを告白し、最後に自分はある組織の末端の構成員だという事をコナンに教える。
明美の話から「彼ら」の好む色が“黒”だと知ったコナンは、一連の事件の黒幕が自分をで小さくした黒の組織だと気づき、驚愕の表情を見せた。
そんなコナンの腕を最後の力を振り絞って掴み、彼に10億円の在処がホテルのフロントだという事を伝えてそれを黒ずくめの男たちよりも先に回収してほしいと頼む。そして……

もう奴らに利用されるのは…

ご、ごめんだから…


頼んだわよ…

小さな探偵…さ…

……と、自らの思いを託しながら静かに息を引き取った。享年28歳。

その後、彼女の証言を元に警察の捜査が開始され、証言どおりホテルのフロントで10億円全てが回収される。
そして彼女の近くに落ちていた拳銃から彼女の指紋が発見された事から、「罪に耐えかねて拳銃自殺した」と処理され事件は決着を迎える事となる。
明美を道具程度にしか見ておらず、そして利用価値が無くなった途端に容赦なく抹殺する組織のやり方に対し怒りを覚えたコナンは……

いつか必ず!!

このオレが、闇から引きずり出してやる!!

……と、組織打倒を改めて決意するのだった。

明美の死が影響を及ぼしたのはコナンだけではなく、灰原は明美を殺した組織に反発した末離反、赤井はトレードマークだった長髪をバッサリ斬り落とし、明美の仇であるジンを標的に据えた。
このように序盤で退場したキャラながら、様々な人物に影響を与えており、読者からの人気も根強い。

余談だが外見がどことなく蘭に似ている(と赤井が発言している)。灰原も他人を思いやりすぎるあまりにムチャばっかりする蘭の姿に姉をダブらせている所がある。
志保は鈴木園子に外見が似ているが、蘭と園子の姿を在りし日の姉と自分に重ねて……いるかどうかは不明。


アニメ・劇場版において

アニメ版の『奇妙な人探し殺人事件』は原作と結末が大きく異なっており、明美は死亡しないどころか、組織とは全く無関係の人物となっている。
これは、原作のオチがあまりに救いが無かった事(と、アニメがここまで長期化すると思われていなかった事)による為の改変*6で、結果的に「原作とアニメ版で登場人物の生死が変更される」という『コナン』でも非常に珍しいエピソードとなっている*7
その為、アニメ版の『奇妙な人探し殺人事件』では妹の存在も仄めかされなかったし、コナンも明美に自らの正体を明かさなかった。

以上の経緯から、アニメ版で作品のキーパーソンである“明美の妹”を登場させる為に、改めてアニメオリジナルエピソードとして『黒の組織10億円強奪事件』が作られる流れとなり、そのラストシーンは『奇妙な人探し殺人事件』の原作版に沿った作りとなっている。
したがってアニメでは「何者かに命じられて、10億円の強盗事件を起こすも、黒幕は金を手に入れられない、広田雅美を名乗る本名・宮野明美」という女性が2人存在する、奇妙な状況が生じている。
更に余波として、本来原作10巻前後で出すはずだった明美の妹もこの改変のおかげで登場が見送られ18巻でようやく果たせた。なお、実は灰原の代わりに登場したのが服部平次である。

ちなみにアニメスペシャル『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』ではこの話も登場しており、原作に準拠した結末に変更されたうえで明美の死亡シーンが描かれた。
2017年の45代目OPテーマ『Lie,Lie,Lie,』の映像(9月以降)でも遺体が原作寄りの姿となっている。
対して『名探偵コナン 漆黒の追跡者』の冒頭の紹介ではアニメ版の死亡シーンがリメイクされている。

明美を演じている声優も変更されていて、『奇妙な~』では勝生真沙子氏、『黒の組織~』以降のエピソードでは玉川紗己子氏が担当。
ちなみに、玉川氏と赤井役の池田秀一氏はリアルご夫婦。再度のキャスティングはこのことを踏まえたもの……かどうかは定かではない。
なお、アニメ『奇妙な人捜し殺人事件』では明美役だった勝生氏は、のちに平次の母親である服部静華を演じている。

劇場版では、『天国へのカウントダウン』では留守録の音声のみ登場。
灰原はこの声聞きたさに夜な夜な電話をかけていたが、その行動が発端となり……。
直接顔が描かれる形での登場は『黒鉄の魚影』まで待つこととなる。


余談

『青いペン軸』によると、名前は少年探偵団共々一般公募から名付けられたとの事。


もう奴らに荒らされるのは…

ご、ごめんだから…

頼んだわよ…

小さな追記・修正者…さ…


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最終更新:2024年10月12日 11:24

*1トイレに隠した秘密』で明らかになった情報によると、夫妻が組織に加入したのは明美が4、5歳ぐらいのころである模様。

*2 APTX4869を勝手に使われたことは不服だったようだが、後に新一の生存の可能性に気付いた際「死亡確認」にデータを書き換え、その理由として「興味深い素材だけど組織に報告したら私の手元に来る前に殺される可能性が高かった」と述べており、明美が殺されるまで薬の研究は続けていたようなので、明美の一件が無ければ組織に残って研究を続けるつもりだった模様。

*3 当時今井は出島の圧力で仕事を奪われ古巣である出島の事務所に戻らざるを得なくなっていた。

*4 後に赤井と明美が従兄妹だったことが判明するが、2人がそれを知っていたのかは不明。

*5 なお、その文の下にさらに追伸があったがそちらの内容はいまだ不明。

*6 この話より前の『新幹線大爆破事件』も同様に組織と無関係の事件に改変されている。

*7 その理由もあって、アニメ版の『コナン』は他作品と比較して原作をほぼそのまま忠実にアニメ化している稀有な作品となっている。