登録日:2010/10/01 Fri 00:52:16
更新日:2025/03/22 Sat 22:21:52
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富野由悠季『このDVDは、見られたものではないので買ってはいけません!』
消えゆく命があります。それは私の、そして全ての子供達の母の物でした
生まれくる命があります。大きな未来を宿した命が
子供達には、その輝きがとてもよくわかるのです
次回、
機動戦士Vガンダム
『消える命、咲く命』。 見て下さい!
〈概要〉
機動戦士Vガンダム とは、1993年4月2日から1994年3月25日まで、全51話が放送されたTV
アニメ。
TVで放映されたガンダムシリーズとしては4作目で、
UCを舞台としたアニメ作品としては最も後の時代を描いている。
ガンダムシリーズの中でも一、二を争う程残酷なシーンが多く、新キャラが出てきたと思ったら名前を覚える前に死んだとかはザラ。
セリフがあるキャラの死亡率の高さたるや「
次回予告で名前を呼ばれたら死ぬ」とまで言われたほど。
内容もかなり重苦しいものになっており、所謂「黒富野」「皆殺しの富野」と呼ばれる作風の作品の一つとしてファンからは認識されている。
その理由はサンライズがバンダイへの身売り前でとっちらかってたとか、その癖上層部やバンダイが売れる作品を作れと滅茶苦茶口出ししてきたとか、馴染みのベテランアニメーターが引退して新人ばかりだったとか様々。
そんな状態ながらなんとか全51話作り上げたものの、富野監督は精根尽き果ててしまい、しばらくアニメ製作から離れる事になってしまった。
そのためか、富野はこの作品のDVDボックスが出た際に「この作品はとても見られた物ではないので買ってはいけません!」という前代未聞のコメントを出した。
Blu-ray化の際には「この作品は全否定したいと思っているものです」とのコメントを寄せており、やはり否定したい作品のようだ。しかし「購入者にはあら捜しをして欲しい」とも語っており、多少は見てほしいというニュアンスも感じられる。少しは心境が変化したのだろうか。
いつものツンデレかもしれないが。
その一方で何時インタビューやイベントに出ても『
バイク戦艦のデザイン』『ウッソをはじめとしたキャラクター』『作品を通じて一人前に成長したスタッフ』等は手放しで褒めたり愛着を持ってはいるのでその辺は色々と複雑なようだ。
主人公たちが敵対するザンスカール帝国は地球連邦やジオン公国とはまったく別の勢力であり、繰り出す敵側のMSデザインもこれまでのMS群とは毛色が大きく異なる。万人受けするものではないためか立体化にはそれほど恵まれずやや知名度が低い傾向にある。アムロやシャアが戦っていた時代から年月の経った世界観のため従来のシリーズとのかかわりも薄く、ガンダムシリーズの中でも比較的マイナーな作品とされている。
だが、富野監督の黒さが凝縮されたような作風は、ガンダムファンや当時観ていた人達も魅了。特に「リーンホース特攻」はガンダム屈指の名シーンとまで言われた。
また、戦争等の風景をよく描かれたシナリオもよくできており、今なお根強いファンは多い。
ただ、マイナー気味な作品ながら熱烈なファンも獲得した一方で、当時の玩具売上不振や富野監督が「オモチャ会社の連中と刺し違えるつもりで作っていた」と語る程対立していたのが関係しているのか、サンライズとしてはともかくバンダイからは余り触れたくない作品扱いされている節がある。2023年に放送30周年を迎えたにもかかわらず周年記念企画等の動きが全くなかった。
下ネタの多さに関しては以前「自分の小説版はアニメで溜まったストレスの捌け口」と富野は語っており、富野小説にはエログロが満載なのだが、Vガンダムでは小説まで我慢できずアニメにまでその片鱗が見え隠れしている辺り、フラストレーションは相当なものだったのだと思われる。
中には「ウッソがパンツ一丁になり、その後
フルチンのまま敵基地を脱走、敵兵に見つかるも皆硬直して一瞬見逃す」という、本作で珍しく笑えるだけの話もあったりするのだが、終盤でウッソが敵の最終兵器に乗り込んだら「裸(水着)のお姉さんがいて幻と思ったら、本物で先制攻撃される。」という立場逆のギャグ皆無の展開もあったりする。
重厚を通り越して悲惨、陰鬱とも言える作風の本作だが、スタッフインタビュー等で語られている通り実は元々子供向け、しかも小学生をメインターゲットとして作られた作品である。
- ウッソを始めとした主要キャラの平均年齢が低め
- 主役機のヴィクトリーガンダムが複数存在し、味方量産機もガンダム風のデザイン
- 監督が「RPGを意識した」と明言している通り道中で味方が加入したり
そして死んでいく、新しい武器を拾うという形で強化されるヴィクトリーガンダム
- 内容と比べると爽やかなOP
- 放送枠が当時のキッズアニメ枠の金曜17時
といった辺りからも名残が窺えるだろう。
だが、製作にあたって監督は当時混迷を極めていたチェコやポーランドに取材旅行に行ってた事を明かしているので、製作に取りかかった時点で重苦しいシナリオにする事は決めていたのでは?とする声も。
〈ストーリー〉
宇宙世紀0153、サイド2に存在するザンスカール帝国は
ギロチンを用いた恐怖政治とマリア主義を掲げてベスパと呼ばれる軍隊を地球に派遣した。
そんな中、カサレリアに住む少年
ウッソ・エヴィンは、とある出来事からザンスカール帝国との戦いに巻き込まれ、Vガンダムに搭乗することとなった。
彼は多くの人々の死を目の当たりにしながら、ザンスカール帝国へ立ち向かうため、戦場を駆けていく。
〈主な登場人物〉
リガ・ミリティア
今作の主人公。東欧のカサレリアで暮らしていた13歳の少年。
両親の英才教育によってまだ子供ながら抜群の操縦テクニックと戦闘技能を持ち、リガ・ミリティアを勝利へと傾けていく。
まさに名前の由来である「嘘」のような出来過ぎた子供である。
それもあってか女性たちの母性をくすぐる存在でもあり、多くの女性キャラから可愛がられたり、あるいは付け狙われたりしている。
母親の姓がミゲルなため、
シャアとナナイ・ミゲルの子孫という説もあったがデマである。
ある意味ガンダムの中で大人のジャンルに入るキャラ。
「陰毛はまだ生えていない」と
劇中で確認できる珍しいガンダムキャラ。
CV:黒田由美(現:市原由美)/小林愛(「SDガンダム GGENERATIONシリーズ」一部作品)
ウッソの
幼なじみで今作のヒロイン。彼女の出生にはある重大な秘密が隠されており…
ウーイッグに住んでいる少女。ルース商会の一人娘であり、ウッソに好意を寄せられている。盗撮もされている
とある出来事がきっかけで、彼女の人生は大きく変わっていくことになる。
その変貌ぶりは語り草で、担当声優に『どんなキャラか解らない』とまで言わしめた。
ウッソ達のお姉さん的存在で、リガ・ミリティアの
エースパイロット。
後述するオリファーとは恋仲で、彼との子供を身籠もっている。
設定画から判明したことだが、何気に作中で最も背が高い。
CV:園部啓一
リガ・ミリティアのエースパイロットで、女性のみの部隊である「
シュラク隊」の隊長でもある。
物語中盤、とある作戦を阻止するために大きな決断をする。
CV:中田雅之/福島潤(『SDガンダム GGENERATION SPIRITS』以降のシリーズ、スーパーロボット大戦30)
リガ・ミリティア内ではウッソの先輩にあたる兄ちゃん。15歳。ウーイッグの子供達のボス。
やや
DQN臭がする台詞を連発するが基本的には良い奴。特技は投げナイフ。
トマーシュとコンビを組み
ガンブラスターを駆る。中盤でパイロットとして戦場に出るが…。
ファンの嘆きが届いたのか、この件に関しては富野は後にイベントで謝っていた。漫画版では「タンカー投げ」が最強技。
ウーイッグの子供達の中でもヘタレ。
パイロットにはならなかった。恋愛では負け組。
CV:こおろぎさとみ
オデロ、ウォレンの妹分。とあるシーンで幾多のロリコン共を興奮させた。
ビームローターの音を聞くと身動きが取れなくなるという
トラウマ持ちだったが、克服したのか徐々に見られなくなっていった。
オデロと同じくウッソの兄貴分。基本的に慎重な性格。
オデロと共にホワイト・アークにてガンブラスターを駆る。
結構空気が読めるイイ人。実はリガ・ミリティアの子供キャラ最年長。17歳。褐色の美形。
ある時期を境に登場しなくなるが、これは担当声優が
次の番組の
主役であるため、視聴者が声を聴いてトマーシュと混同しないようにした配慮である。
CV:柳沢三千代
美人。オデロに好意を寄せられ、後に相思相愛となるが…
CV:吉田小南美
エリシャの妹。ウォレンに好意を寄せられるが、姉とは違い全く相手にしなかった。
CV:加藤治
リーンホース及びリーンホースjrの艦長。決して夜天の書の主ではない。
無精髭にメタボなおっさんだが、この人の台詞は一々カッコいい。
終盤での名言連発はカッコいいの一言に尽きる。
ただし上述のリーンホース特攻は富野曰く『
特攻はお手軽に感動的な画になってしまう』と反省材料になっている。
ザンスカール帝国
CV:檀臣幸
帝国の軍隊であるベスパの軍人。
一応今作の
ライバルキャラで
仮面…なのだが、変に
常識人な所が狂気に染まった濃いキャラ達に喰われ、一部では「カテジナのファンネル」だの「クロノクル・アチャー」だの散々なあだ名を付けられている。
悪役にしては良識的であり半端に良い人すぎた。ちなみに、作中で乗った機体は7種類とかなり多め。
CV:折笠愛
ラゲーン基地の司令官の女性。代々続く死刑執行人の家系であり、ギロチンによる処刑を行なっていた。
物語の途中、
タシロ・ヴァゴ大佐によって宇宙漂流刑に処され、死亡したかと思われたが…
CV:中田和宏
キャーイクサーンではない、金髪におヒゲ、ハーレーが似合うナイスなおじ様。
「バイク乗りの魂を見せてやる!」
が口癖の通り、
バイクに命を賭けている。かの有名なバイク戦艦も彼の案によるものである。
ある作戦により、視聴者をドン引きさせた。頭が時々ロココ調になるのはご愛嬌。
CV:中村秀利
ザンスカール帝国の大佐。
ファラを宇宙漂流刑に処した通り、かなりの地位に就いており、優秀な指揮官でもある。
かなりの野心家でもあり、実はとある野望を抱えている。
CV:篠原恵美
クロノクルの姉でザンスカール帝国の女王。サイキッカー、つまりニュータイプのようで、特殊なヒーリング能力を持っている。
なお、帝国の実権は
フォンセ・カガチが握っているため、実質的に傀儡のような存在である。
シャクティとは何らかの関係があるようだが…?
CV:大矢兼臣
かつて木星船団公社に所属していた、「木星帰り」の男。
ザンスカール帝国の宰相だが、前述の通りザンスカール帝国の実権を握っている。
〈余談〉
この陰鬱さに耐えられない人には
『コミックボンボン』連載の漫画版がおすすめ。
少年向けらしい快活な作風に仕上がっているが、その一方でどこかおかしい描写も多々見られ基地外のボルテージは漫画の方が上かもしれない。
ウッソ「貴様は電子レンジにいれられたダイナマイトだ メガ粒子の閉鎖空間の中で分解されるがいい」
シリーズの中でもマイナーなせいか、主役機以外の機体が
プラモデルなどで立体化される機会に乏しい。一方、ガシャポンのMSアンサンブルではV2ガンダム以外にもザンネックやらゲドラフやら
アインラッドが商品化されファンを驚かせた。
HGUCシリーズではセカンドV以降新規機体が発売されていないけど
また、宇宙世紀の中では後の時代かつ、内容を大真面目に再現しようものなら
CERO爆上がり確実なためか、
スパロボなどでの参戦の機会も少ない。
スパロボの方も2003年の『
D』から2021年の『
30』まで
18年間も本家シリーズへの参戦が空くこととなった。
宇宙世紀作品といえば
無節操に増える外伝漫画が定番となっているが、本作にはそういった類はあまり存在せず、
『機動戦士Vガンダム プロジェクト・エクソダス』と『
機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』くらいしか同時代を描いた作品は存在しない。
- ↑3 実際マイナーじゃね。てかこれに限らずU.C.0100以降の作品はどれもこれも基本的に不遇。 -- 名無しさん (2017-04-16 11:04:00)
- ↑3 むしろなんでシャアの子孫って設定にする必要があるの? -- 名無しさん (2017-04-16 11:14:24)
- そっちの方がドラマチックだと思う人もいるんだろう。個人的にはそんなに世界を狭く扱われたら興醒め以外の何物でもないが -- 名無しさん (2017-04-16 15:43:02)
- エヴァンゲリオンの後に見たせいか、そんなに重々しくは感じなかった。 -- 名無しさん (2017-05-02 23:10:20)
- メチャクチャ暗いしエグい。けど、描き方が凄く丁寧だから、単なる暗くて胸糞の悪い展開にとどまらない、視聴者の胸を打つ「悲劇」としてしっかり完成してるから、精神ダメージ以上の感動を与えてくれる作品だと思う。 -- 名無しさん (2017-06-19 00:34:01)
- 酷い状態で作った割には普通に出来がいい話なんだよね、残酷ではあるけどさ。初視聴時はシャクティにイラつかされたが、子供に何が出来るかと考えれば納得できるし、本当に御大は登場人物一人一人の思考を想像させるような話作るなあ、と感心。 -- 名無しさん (2018-05-06 11:20:55)
- ↑6自分もそう思ってたが、ガンダム総選挙でF91だけ異様に人気なの分かったから一概に侮れないよな -- 名無しさん (2018-05-24 07:31:50)
- 元々富野監督としては逆襲のシャアでガンダムは終わりのつもりだったのに会社に無理やり続編を造らされたのが相当不満だったらしい -- 名無しさん (2019-02-25 01:39:23)
- 時代的にファーストの頃のキャラも年寄りにはなってもまだ生きていておかしくない年代だから想像しておもしろい -- 名無しさん (2019-03-15 12:07:32)
- ↑2 ましてやF91の続編の構想潰てんだから鬱も怨念も相当なもんだっだろうな -- 名無しさん (2019-03-15 12:21:28)
- ↑×2カツレツキッカやミネバ様がおじいちゃん・おばあちゃんになってるからな~。どのくらい生きてるかな。 -- 名無しさん (2019-03-15 12:32:52)
- あ、カツはZで死んだんだった -- 名無しさん (2019-03-15 12:34:01)
- 相談所に報告があった荒らしコメントを削除しました。 -- 名無しさん (2019-05-18 10:26:34)
- バレンタイン前日にまさかガンチャンでリーンホース特攻回を見ることになるとは -- 名無しさん (2020-02-14 01:37:36)
- リーンホース特攻は感動シーンに仕立て上げられてるけど、実際は子供や若者を巻き込んでいった老人達が後処理なんて考えないで自己満足を満たして特攻したと言う見方もできるのよね -- 名無しさん (2020-09-06 10:47:07)
- ↑子供巻き込んだ老人達が後の時代に残されなかったという好意的な見方も…後処理はウッソの親父がするだろうし -- 名無しさん (2020-09-06 11:12:35)
- 個人的にシンエヴァをより楽しみたいなら旧世紀版より優先して観てもらいたい作品。配信に恵まれてないから視聴難易度高めだけども。 -- 名無しさん (2021-03-12 15:04:56)
- 久しぶりにスパロボ参戦するけど、どうなる事やら… -- 名無しさん (2021-07-12 09:09:56)
- 典型的なガンダムで(黒)富野節だなァとは思ったが世間で言われるほどドギツイとは一度も思ったことがない。昭和黒富野作品群の記憶や衝撃ってそんなにあっさり薄れるものだったろうか? -- 名無しさん (2021-10-15 16:38:40)
- キャラデザが柔らかだったのはハードさを緩和したのかそれとも逆に一層強調したのかどっちだろう -- 名無しさん (2021-10-15 16:42:58)
- キャラデザに関しちゃ元々子供向け作品として作られてた頃の名残かと。 -- 名無しさん (2021-10-15 16:45:12)
- ↑11 スパロボ30ではミネバが真のジン・ジャハナムということになっていたな。原作時空で考えても73,4歳だから真のジン・ジャハナムではないにしろあり得ない話でもない(その一方で世界観の兼ね合いとか関係なくマジの偽物のジン・ジャハナムにされてしまうハンゲルグ…) -- 名無しさん (2022-05-02 09:40:03)
- ログ化を提案します -- 名無しさん (2022-07-18 20:13:13)
- コメントをログ化しました。 -- (名無しさん) 2022-12-05 17:20:21
- 富野御大は元々自作に辛口な人だけど、Vガンには特に厳しいのって、多分「子供にもウケるガンダムで新規ファン層開拓」ってコンセプトに真っ向から背くような作品にしてしまったことに対する反省や後悔の念が大きいんじゃないかと思ってる -- (名無しさん) 2023-05-15 19:13:47
- 「監督に否定されている」という印象が一人歩きしすぎている感のある当作だけど、当時演出家として携わった方のインタビューを読むに監督はいつも楽しそうに作っていたそうなんだよね。否定の言葉もあの人なりの強がりなんじゃないかと述べている。これって救いだと思うし、今後作品を語るならちょい頭に入れとくべきかもね。 -- (名無しさん) 2023-06-15 10:24:41
- とち狂ってる描写ばかりが持ち上げられしまうけど、互いに善性が残りながらも戦争や残虐してしまう歪さや命の営みとは何かを真摯に描いている作品だよね -- (名無しさん) 2024-06-12 20:54:39
- バイクメカだビームローターだの、翌日のマイトガインはやりたい放題だった。 -- (名無しさん) 2024-06-30 02:23:39
- ユカ役の田中敦子女史までマーベットの妊娠を先に逝った連中に教えに行ってしまわれた。30年前の作品とは言えVガン制作に関わった著名人はG~Xと比べても早死にが多い。当の存分に病んでいた富野御大は81歳でもお元気なのに -- (名無しさん) 2024-08-21 21:14:44
- マリア姉さんのキャストもクロノクルのもとへ逝ってしまわれた… -- (名無しさん) 2024-09-12 21:10:12
最終更新:2025年03月22日 22:21