サンダーインパルス(Vガンダム)

登録日:2024/12/17 Tue 20:01:09
更新日:2025/03/26 Wed 19:30:33
所要時間:約 5 分で読めます




ハハハハハ おどろかせて悪かったな!

サンダーインパルス見参!!




サンダーインパルスとは、機動戦士Vガンダム漫画版に登場した小隊である。
TVアニメ版には未登場である。
また「隊」はつかない
それとZGMF-X56Sの形態の1つでもないし、雷龍剣は無関係。

【概要】

ザンスカール帝国軍に所属する小隊で、ゼナ、ブラスト、シューバットの3人で構成されている。(フルネームや階級は不明)
元々はMSグランプリのトップドライバーであるが、高機動に重視しすぎて誰も操縦できなくなったリグ・シャッコーのパイロットとして招集された。18年くらい早いね
「このリグ・シャッコーはごきげんなMSだぜ!」という程気に入っており、初登場時は戦艦のメインブリッジに猛スピードで近づきぶつかる寸前に急旋回するという操縦技術とヤンチャな一面を見せていた。

彼らはそのままウッソ・エヴィンVガンダムがいるリーンフォースを襲撃。
三位一体の攻撃とコンビネーション、更にウッソの操縦にVガンダムがついていけない事態も発生し、あっという間に彼を追い詰める。
更にアステロイドベルトでも苦なくMSを操りじわじわと追い詰め、いよいよコクピットだけになったところで、突如ブラストが背後からの不意打ちで爆散。
攻撃の正体は新たなるウッソの剣。機動戦士V2ガンダム
ミノフスキードライブによる高機動戦闘や射撃標準用デバイスを駆使した攻撃で、今までの優位は嘘のように覆され、サンダーインパルスは呆気なくやられてしまうのだった。

ある意味ではV2ガンダムの噛ませ犬のような存在であるが、それでも初代主人公機を追い詰めたのは事実。
扱いの難しい新型MSを手足のように操り、また連携も取れていた紛うこと無き強敵。
…ではあるが、軍隊ではない為か味方相手に危険な運転をするわ、敵の攻撃や不測の事態にいちいち狼狽したりするわと、戦場に出る心構えはできているとは言い難い。
彼らにとっては殺意の塊である戦争もレースの延長線くらいと思っていたのだろう。
そういう意味では清々しいまでの悪役とも言えるが、良く悪くも単なる小悪党な為に、ゴッドワルド・ハインギンザエフのようなインパクトは無い。これでインパクト薄いとかあの漫画どうなってんだ。


【構成員】


ゼナ

サンダーインパルスのリーダー格の男。決してミネバのお母さんではない。
他のキャラクターと違い劇画調の濃い顔が特徴的で、テンションが非常に高い。
しかし不測の事態に陥ると特に狼狽しやすく、ブラストがやられた時やVガンダムが分身した時は絶望したかの表情を見せている

それでもリーダーである為か最後まで生き残るが、V2ガンダムの猛攻に「ひっ!や…やられる!」と最初の威勢はどこへやら、岩陰に隠れるものの強力なビームライフルによって岩ごと撃ち抜かれ、敢え無く宇宙の塵となった。


シューバット

鋭い目つきが特徴的なパイロット。
満足に動けないウッソが動きを止めたとなった際に「スキあり!」と叫んで猛攻を加える等、果敢な攻めが特徴的。
だがV2ガンダムに乗り換えられてからは手玉に取られ、一瞬で撃墜された。
コイツもコイツで常に驚いているように見えるが、ゼナのように弱気な表情は見せなかったり、状況はしっかりと把握していた為、彼よりかは度胸は座っていると言える。


ブラスト

他の2人と違いもうチンピラ度が半端ない顔が特徴的なヤツ。
…だが顔を見せたのは最初のたった2コマだけであり、その後は不意打ちで後ろから攻撃されて昇天。
扱い的には黒い三連星のマッシュに近い。
目立ちはしなかったが彼がやられた際にはゼナが思いっきり狼狽していたので、大切な仲間ではあったのだろう。
部隊名と合わせてブラストインパルスとなるが、それを見てシンがどう思うかはおそらく永遠の謎。


【リグ・シャッコー】

MSグランプリのトップドライバーだったこともあってか、左肩の狼のようなエンブレム以外にも、右肩の星や英文でザンスカールと書かれたステッカーでデコられており、やや戦場では浮いた印象を与える。ちなみにサンダーインパルスのパイロットスーツにもいくつかステッカーが貼られている。中にはBONBONと書かれたものも。
他にはコクピット部分には海賊のようなドクロマークがペイントされているちょっと早いね



【余談】

というわけで漫画版におけるV2ガンダムという新しいガンダム登場の礎となったサンダーインパルス。
であるが、おそらく当時の読者なら思っただろう。
「ちょっと待て、キャラの名前が間違っていないか?」と…。

というのもこいつらが「ゼナ、シューバット、ブラスト」になったのは2024年に発売された新装版での話。
じゃあ元々の名前はというと…
ナ→
シューバットシューマッハ
ブラスト→プロスト

うん、当時の…いや、最初に挙げた人が翌年に事故死した『音速の貴公子』で知られるあの人であり、ほか2人も最初に挙げた人のライバルとしても今なおそれぞれが知られる、伝説として語られるF1ドライバーの方々である。普通にアウトだろこれ…。
ついでに言うとゼナの顔もアイルトン・セナ氏本人にクリソツである。

しかし、一体なぜ実在のF1ドライバーの名前を付け、さらにセナ本人の顔に似せるようなネタを盛り込んだのか?それはこの漫画が連載されていた当時の時代背景にあった。

Vガンダムが放映前後の当時の日本は、バブルによる好景気の後押しの影響を受けたF1を中心とした空前のモータースポーツブームであり*1、日本の自動車メーカーや日本の企業スポンサーロゴに彩ったマシンが各カテゴリーで活躍。
それらの活躍は、地上波放送を中心にテレビで様々なカテゴリーのレースの中継番組が放送されていた事もあり、普段はモータースポーツに関心の無かった大人たちはもちろんのこと、子供たちもこぞってレースを見ていた。
令和の時代の今で例えば大谷翔平らが活躍するメジャーリーグと同じくらい、世間的な知名度・話題性が高く人気のあるスポーツに位置づけられており、サンダーインパルス隊の元ネタになった3人のF1ドライバーも、スポーツ界のスター・有名人として知られていたのである。

もちろん、この空前のモータースポーツ人気は各メディアにも影響を与えており、有名なのではあの週刊少年ジャンプもマクラーレンF1チームのスポンサーとしてマシンにジャンプのロゴが貼られ、ジャンプの雑誌内でもマクラーレンF1の活躍を掲載。
ボンボンのライバル雑誌のコロコロコミックで扱っていたミニ四駆もちょうど第一次ブームの終わりから「爆走兄弟レッツ&ゴー!!」による第二次ブームの間位のミニF1シリーズが展開していた頃で、Vガンダムの放送の2年前には同じサンライズ制作でその影響を受けた「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」が放送されていたりする。
また、アニヲタ諸君でも知っているミニカーブランドである「トミカ」の方でもF1カーだけでなく、91年のル・マン24時間レースを制したマツダの787Bや、国内のツーリングカーレースを席巻していた日産・スカイラインGT-Rのレースカーなど、数多くのレーシングカーモデルが販売されていた程だった。

また他の当時の児童向け作品もそんな流行の流れに乗ってか、モータースポーツ&クルマネタを入れまくっており、前述の「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」では同じくミハエル・シューマッハから取られた「ナイト・シューマッハ」というキャラクターが登場*2し、またF1中継を行っていたフジテレビの子供向け番組「ウゴウゴルーガ」でもF1関連の話題やネタを振ったりする位。
Vガン本編のバイク戦艦やタイヤ付きもその影響を受けているかもしれない。

更にボンボンVガン以外のガンダムシリーズも例外ではなく、名機ガンダムF91だって、当時のフォーミュラカーの影響は名前だけでなく胴体あたりのデザインに強く見られる。その前日譚『フォーミュラー戦記0122』で戦ったオールズモビル(ガンダムシリーズ)もランサム・E・オールズという人名に由来する自動車ブランドと同名である。
他にもガンダムGT-FOURなどまんま当時のトヨタの車名からいただいているし(セリカGT-FOUR、当時のトヨタワークス・WRC班が使っていたのがこれ)、そのライバル機ザクスピードも、1989年のF1に於いて鈴木亜久里氏が所属していた*3ドイツのレーシングチームまんま(創設者エリッヒ・ザコウスキーに由来し綴りはZakspeed)である。一方SDガンダム班は「SDガンダムのキャラ達が『チキチキマシン猛レース』をパロディ化したカーレースを行う」というアウトを通り越してもはや自殺行為レベルな短編アニメを作っていた。そしてそれは後に封印作品となった
Vガンと入れ替わりに連載を終了した横井画伯の漫画『元祖SDガンダム』ではキャプラーレンホンダ、鈴木アッグ里、中ジム悟、ギャンアレジ、バイアランプロスト、クィンマンセル、ゲルハルトベルガダラス*4など直球パロを続けていた。*5
ガンダム誕生前夜の1970年代後半にロボットアニメから次々と枠を奪い、ブームに乗り遅れたバンダイも追い詰めたスーパーカーブームのトラウマがそうさせたのだろうか。
若者のクルマ離れと少子化が進む中でクルマ・モータースポーツ系のものを流行らせる事は難しい現在では考えづらいが、ともかく、「今も昔も、子供達にもハマっている程の社会現象になっているものをモチーフにする」というのはそれほど効果的だったのである。

だからこそ、こうした当時人気の有名人だったセナ氏らを用いたキャラクターを振ったのだが、そうした攻めすぎたネタには問題があった。肖像権の問題である
特に外国人は肖像権の扱いが非常に難しく*6、たとえ当人が乗り気であっても様々な問題がある。そもそもセナ氏に至っては当人が乗り気になる以前の問題なのは前述の通り。
正直ギンザエフがザンギエフのオマージュである以上にやばい案件だったわけだ。
更にVガンダムから数年後のユンゲラーの騒動もあって特にその辺りは慎重になっている。
だが、彼らサンダーインパルスの登場回は後期主人公機V2ガンダムお披露目な上に、最後のオチが非常に重要なキャラクターとの再会なので話の流れ的にカットするわけには行かず、コミックスには載り続けた。
ボンボンとしては単なるそっくりさんで押し通すつもりだった…かどうかはともかく、2003年頃に発行されたコンビニコミックス版でもそのままだったが、結果的に新装版ではやっぱりダメだったというわけで改名するに至ったわけである。
同じボンボン掲載漫画で「アウトなんだよ 今の時代」と改定されたのと同じようなケースである。正直言うと、名前をもじるのもかなり媒体によってグレーゾーンだったりするが。
なおボンボン掲載時とコミックス版ではプロストがやられた際に「ロスト」と誤植されており二重に失礼な事になってる。なのでコイツラは関係ない。

ちなみにTV版本編でV2ガンダムの初陣の相手となりリグ・シャッコーを操ったのは漫画で出番をオミットされたカテジナさん
要するにこいつらはカテジナの代役とも言える存在である、のかなぁ…。
またアニメ版では乗っていたアインラッドもコミックではカットされている。レーサーなのに。

また、2024年現在はF91やVガンダムといった作品の再評価が進み、あのギンザエフですらガンダムの正史に刻まれることとなった。
…が、サンダーインパルスはこの扱いかつ途中で改名したという経歴があるため、もし組み込むとしたらどうなるか注目されている。

ちなみに『F90FF』ではヴェロニカが「昔MSレースをしてた頃」という発言があり、『F90クラスター』では『機動戦士ガンダムF90』の主人公デフが「MSでレースをしているところをパイロットにスカウトされる」というシーンが有る。現実の草レースやアマチュアクラスのレース、D1GPの下位グレード*7、創作物で言えば『頭文字D』の多くのメンバーが『MFゴースト』でプロ入りしたことが語られているのと似たようなものか?
もっと言えばアナハイム・ジャーナルの時点でプチモビを使ったプチモビ・レーシングについての記述があったりする。
…とにかく、MSでレースすることもそこからパイロットに転身することもあの世界では当たり前、つまりサンダーインパルスも宇宙世紀では普遍的な存在だったことが判明した。そんなバカな。
しかしメタ的な公開順ではMSレーサーはサンダーインパルスが多分最初、次に現れるのは冒頭で語っている通り18年後の話であり、ある意味では先見の明を持っていたと言えるだろうか。
ただしデフの方は上述の通り「F1ブーム絶頂期」のキャラなので、もしかしたら当時から裏設定であったのかもしれないが。










ハハハハハハ!追記して悪かったな!サンダー修正ス見参!

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最終更新:2025年03月26日 19:30

*1 ただ、Vガンダムが放映された1993年頃のF1は参戦していた日本の自動車メーカーのホンダが前年に参戦休止を発表しており、バブルの崩壊により各F1チームのスポンサーを務めていた日本企業がスポンサーを降りたり、マンセルや中嶋悟といったブームを支えたドライバーが引退。アラン・プロストもこの年に引退しているので下火に向かっていた時期なのであるが。

*2 その他にも「サイバーフォーミュラ」と同じく1991年にサンライズ制作で放送された『機甲警察メタルジャック』ではシルバージャックに変身するF1ドライバーのアグリ・亮(元ネタはもちろん鈴木亜久里氏)や、サンライズ制作の「勇者シリーズ」でも当時実在していたスーパーカーをモチーフにした自動車メカも登場していたりする。

*3 ただし、この年はエンジン供給していたヤマハ発動機がまだ初年度で経験も浅かった事もあってかマシンの競争力は無く、亜久里氏は鈴鹿での日本GPを含む全てで予備予選落ちで決勝は走れなかった程でザクスピードもこの年限りで撤退してしまう。

*4 チームのマクラーレンホンダ、当時~ちょい前のドライバーである鈴木亜久里、中島悟、ジャン・アレジ、アラン・プロスト、ナイジェル・マンセル、ゲルハルト・ベルガーがモチーフ。もちろん鈴木~ベルガーは全員が「スーパースター」と呼ばれるべきF1ブームの中では人気のあったドライバーであったのは言うまでもない

*5 さらにマニアックな箇所では、キャプラーレンが初登場したSDグランプリ第一戦の前号のコミックボンボンの改造作例にて、『キャプテンガンダムF1』なるものも紹介されており、フェラーリF1のプラモデルのパーツを流用して作成した作品となっている。

*6 1990年代〜2000年代頃まではコミックボンボンに限らず、コロコロコミックで連載されていた「かっとばせ!キヨハラくん」や続編の「ゴーゴー!ゴジラッ!!マツイくん」などといった児童向け作品に於いて実在の人物のパロディにした漫画や作品がよくあり、中にはモチーフ元の人物が見れば失礼になるような言動を取る作品もあったりしたが、外国人で無くても肖像権が厳しくなった2024年現在に於いては少なくなりつつある。昔と違って実在の人物のパロディーがおおらかに許されるような時代では無いのであるという事だろう。

*7 性質上、いわゆる『走り屋』『ドリフト小僧』出身のドライバーは珍しくなく、『頭文字D』の監修を務めるプロドライバーの土屋圭市氏もこの辺出身。もちろんD1の規定上、ライセンス発効後にそういった行為を行ったら没収ではある