射手座のアイオロス


「いずれこの女神のまわりに真の勇気と力をもった少年たちがあつまってくるでしょう
 ……邪悪をはらい地上の正義をまもろうとする少年たちが……」

+ 担当声優
屋良有作
TV版、『冥王ハーデス冥界編』、『黄金魂(ソウルオブゴールド) -soul of gold-』、『セインティア翔』
大倉正章
TV版(幼少期)
森川智之
『Legend of Sanctuary』
梅原裕一郎
『セインティア翔』(ドラマCD)
森久保祥太郎
『ライジングコスモ』

『週刊少年ジャンプ』にて連載されていた車田正美氏の漫画『聖闘士星矢(セイントセイヤ)』の登場人物。
「射手座」は「サジタリアス」と読む。
名前はギリシャ神話に登場する人物に由来すると思われる。ギリシャ神話に「アイオロス」という名の人物は複数おり、
実はポセイドンの息子にもいたり、アテナと無関係な風の神の名でもある。

獅子座のアイオリアの実兄であり、人馬宮を守護する黄金聖闘士(ゴールドセイント)
本編開始時では既に故人。享年わずか14歳という短命な人生だったが、その風貌は何故か20歳に成長した時点の弟より年上に見える早熟な人物である。*1
かつては最年少で黄金聖闘士に抜擢される程の優れた精神と力を持った戦士であり、
双子座のサガと並び次期教皇候補に挙げられ、最終的に教皇シオンにより次期教皇に指名された。
しかし、次期教皇に成れなかったサガが悪の人格を発現させてしまいシオンを殺害。
その後、女神アテナをも暗殺しようとした所を阻止したものの、シオンに化けていたサガにより逆に女神暗殺未遂の汚名を着せられてしまう。
逃避行の中、追手として現れた山羊座(カプリコーン)のシュラとの戦いで致命傷を負ってしまい
(『エピソードG』設定では、事情を知らないシュラに本気を出せなかったとされている。
 え、原作のシュラはサガの悪事を知っていたって?この直後にサガの幻朧魔皇拳を喰らって洗脳されてしまったという設定なので……)、
偶々ギリシャに女あさりに来ていた城戸光政(星矢達の父)にアテナを託し命を落とす。

以上のように、彼がいなければそもそも『聖闘士星矢』という物語は始まらなかったのであり、事の発端を担う重要なキャラクターであると言える。
その死後も魂は黄金聖衣に宿り、重要な局面で聖矢達を導き続けた。
彼の信念に影響を受けた登場人物は多い。

故人という事もあるが、原作漫画の中では戦闘シーンが一度も無く、名前付きの必殺技を繰り出したことも無い。*2
唯一の攻撃は黄金聖闘士全員の小宇宙を込めて射手座の矢を放ち、冥界の嘆きの壁を破壊した時のみ。
この時もせっかくの出番なのにまともな台詞が無かった*3
(全員で行った掛け声の冒頭の「いくぞ!」がアイオロスの号令と考えられるが)。
むしろ霊魂としてアイオリアを叱責した時の方が台詞が長い。
アテナへの忠誠心は極めて高く、相手が本物のアテナか見極めようとして拳を向けたアイオリアに、
「死をもってその罪をあがなえ、バカ者め」と咎める厳しさも見せている。*4
戦いで死んだ黄金聖闘士たちが冥王ハーデスの走狗として蘇った……という演技をしてアテナの聖衣の存在を伝えに十二宮に来た時も、
アイオロスだけは同行しなかった。
たとえハーデス側を欺く策略だったとしても、アテナに反逆する行為は断固として受け付けなかったのだろうか。
演技が下手クソ過ぎて前教皇シオンに「ハーデスに作戦がバレるから来るな」と言われただけかもしれないが

これらの事により「出番の無い人」という形で揶揄される一方、
星矢やサガが強さを見せる度に「その星矢やサガよりも強かったと思われる最強の聖闘士」というイメージから、
ランキング外の上位キャラとして持ち上げられる事もある等、ファンからの評価が分かれる人物である
(ニコニコ大百科の「 星座カースト制度 」の記事は前者の評価だが、コメ欄では後者の評価をしている者からの反論も少なくない)。
…実際は(『Episode G アサシン』に登場した「ロストワールド(異世界)のアイオロス」を除き)乙女座のシャカの方が強いと思われるが
(ただしシャカは本人も認める通り「慈悲の心が無い」ので教皇には向いていない。その割には暗黒聖闘士時代の一輝に慈悲を与えたが
 真実が見え過ぎる所為で、逆にサガの裏切りを一輝の時と同じノリで見過ごしたりもしている)。

外伝作品では、本編の前日譚に当たる『Episode G』は現役時代の活躍を見ることができる。

また、webアニメ『黄金魂』では、他の黄金聖闘士と同様にアスガルドの地で復活し、戦闘に参加している。
他の黄金聖闘士よりも早く復活したため仲間の助けを得られない孤立状態で、
邪神ロキに憑依されたアスガルドの地上代行者アンドレアスと対峙する事になってしまう。
しかもこの時は聖闘士の小宇宙を吸収するユグドラシルが存在していたため全力を発揮できず、重傷を負ってしまったものの、
アンドレアスに憑依したロキの力を大きく削減する一矢を撃ち込み、後に復活したアイオリア達の戦局を有利に動かしている。
つまり、本作における「黄金聖闘士が活躍しすぎると主役を食っちゃうから早期に退場させて静かにしててもらおう」枠である。
しかし最終的に12人の黄金聖闘士が完全復活し、弟アイオリアや、因縁があるサガとも共闘を果たした。
悪心に囚われて凶行を犯してしまった事を詫びるサガに対して、それ以上に善の心が苦しんでいた事を見抜いて労りの言葉をかける描写は、
この二人は心深くまで信頼し合っていた事を現している。
最後の戦いで黄金聖闘士達が神聖衣(ゴッドクロス)を身に纏い、次々にロキに攻撃を仕掛ける場面では、サガと共に攻撃を繰り出す夢の瞬間を実現した。
これで技がアトミックサンダーボルトでさえなければ……。新技を設定してくれても良かったのに

+ アイオロス以外の射手座の黄金聖闘士達について
「射手座の黄金聖闘士が聖闘士達の指揮を執って敵と戦う」というシチュエーションを叶えてくれる作品に『THE LOST CANVAS 冥王神話』があり、
そこでの射手座のシジフォスは見事に「アイオロスが生きて活躍してくれていたら」のifを見せてくれた。
そして恐れられていた通り完全に主人公を食って空気化させた

正式な前日譚となる『NEXT DIMENSION 冥王神話』では、射手座の聖闘士はアイオロスとは路線が異なる人物ゲシュタルトが登場。
懇意にしていた愛馬の死による精神的なショックにより、自身が愛馬と一体となり人馬と化したと固く思い込み、
その妄想を強烈な精神力で周囲の人間にも現実だと思い込ませるという、間違った方向に強烈すぎる精神力の持ち主。
自身の時代の女神サーシャではなく、未来の時代から来たという女神沙織(しかも幼児の姿に変化している)を初見では信用しきれず、
射手座の矢を向けてしまうが、女神の力によって矢を跳ね返され、
破壊された人馬宮の壁に時代を超えたアイオロスからの遺書「少年達よ、君らに女神を託す」の文章が現れたのを目の当たりにして、
ようやく相手が(時代は異なるが)真のアテナなのだと納得する。また、前述の妄念からも解放され、本当の姿を取り戻した。
ハーデスとの戦いが詳細に描かれないまま作品が完結してしまったが、史実では、その後の聖戦において勇戦し戦没する運命が語られている。

『聖闘士星矢』では、星矢は射手座の聖闘士ではないが、
彼がピンチの時にアイオロスの残留思念が力を貸すという形で、たびたび星矢が射手座の黄金聖衣を纏っている。
原作では3度使用しているほか、当時の劇場版作品ではラストバトルに射手座の黄金聖衣が飛んでくるのがお約束の展開となっており、
射手座の黄金聖衣は星矢の切り札というイメージだった。
だが、こうした描写や、星という名前のイメージと裏腹に「星矢が正式に射手座の聖闘士になる」という展開は本編では最後までなかった*5
本編終了後を描いたアニメ『聖闘士星矢Ω』では、大方の予想通り星矢が射手座の黄金聖闘士に就任している
(一方でまたもや失明中の紫龍が弟弟子だった玄武に天秤座の聖衣を奪われたり
 (後に玄武の露悪的な態度は一度破門された自分が聖闘士として戦う事に対する照れ隠しに過ぎず、純粋に味方だった事が判明。
  更に第二部で戦死してしまい、遂に復活した紫龍が就任する事になる)、
 氷河が水瓶座に就任していなかった(しかもこちらは最終回まで)事は視聴者を驚かせた)。
だが射手座の聖衣を着ているのに長いこと「ペガサス星矢」呼びが続いたり、使う技もペガサス流星拳だったりと、
やはり定着したイメージを変えるまでには時間がかかった。
しかし2期になると『Ω』の主人公である光牙が、1期での活躍により周りからも「ペガサス座の聖闘士」「神殺しのペガサス」と認められるようになったため
(尤もアテナである沙織さんが認めている以上は1期の時点から正規のペガサス座なのだが)、
星矢も「サジタリアス星矢」「黄金のペガサス」と呼ばれるようになった。
さらに、アニメ版のアイオロス譲りの必殺技「アトミックサンダーボルト」を使うだけでなく、
黄金の弓矢を放つ際に「コズミックスターアロー」の技名を付けている。
また一番美味しい所は光牙に譲り、星矢自身が味わった黄金聖闘士が活躍して本来の主人公が空気化する展開にはしなかった。
流石にそういう展開は許されなかった


MUGENにおける射手座のアイオロス

Oscar123氏によるMUGEN1.0以降専用キャラが公開中。
氏の他のキャラクター同様、3Dモデルを使用している。
通常技が近接戦闘特化なのとは対照的に、ゲージを使用した技は光速拳や弓矢の連射など攻撃範囲の広い技が揃っているのが特徴。
総じてヌルヌル動き、非常に見栄えの良いキャラとなっている。
AIもデフォルトで搭載済み。

また、Hector Zapata氏が画像をHD化したバージョンも存在する。
紹介動画(DLリンク有り)

上記の他に、tmich氏とFlach Arcadia氏の共同製作による手描きドットのアイオロスも確認されている。
現在はhjhhjhhjh2氏による改変版が公開されているが、入手するには氏が所属しているMUGENフォーラムへの登録が必要。
紹介動画


ここを訪れし少年達よ きみらに女神(アテナ)を託す…

出場大会

  • 「[大会] [射手座のアイオロス]」をタグに含むページは1つもありません。


*1
ページ冒頭の画像も20代半ばの青年にしか見えないが、あれで14歳。同年齢のキャラクターと見比べてみよう
また、回想シーンでアイオロスと並んでいた双子座のサガ(当時14歳)もアイオロスと同じく、13年後と風貌が全然変わっていない。
少年期に早く成長して、青年期には全然変わらない体質だったのだろうか……。
まぁ牡羊座のムウ曰く「要は小宇宙(コスモ)です」な世界なので、小宇宙の力で若くして急成長し、以降は全盛期の姿を保ち続けているのかもしれない。
教皇シオンも享年約248歳でありながらも、背筋はピンとしていたし
(なおシオンと同世代である天秤座の童虎は、速度が1/365になる代わりに老化速度も1/365になる秘法を先代アテナから受けていたので例外。
 まぁ光速(マッハ88万)で動ける黄金聖闘士なら1/365でもマッハ約2411くらい出せるので問題は無いのだろう。白銀聖闘士はマッハ5だし。
 当然、聖戦では光速で戦えないと話にならないので、秘法を解除している)。

また、アイオロスを殺害した当時の山羊座のシュラは10歳のび太と同年齢。
アイオリア達、通称「年少組」に至っては当時6-7歳だった訳だが既に黄金聖闘士達に着任したぐらいである。

*2
アニメ版や、外伝などでは回想という形で戦闘シーンや必殺技が描かれているのだがどれも微妙な上に各作品で設定が一定していない
弟アイオリアの使うライトニングボルトやライトニングプラズマ、
後任となる星矢のペガサス流星拳やペガサス彗星拳の上位版というイメージの光速拳と、
射手座の矢に小宇宙を込めて発射する場合が多い。
矢は一本しか無いと思いきや次から次へと湧いて出るらしく、凄まじい数の弾幕を張る事も。
「矢の形をした小宇宙の弾を発射している(弓を撃つ動作は空撃ち)」と考えれば矢の本数について辻褄は合うのだが、明らかに実物を撃っている。

ちなみに聖闘士は武器を使用してはいけないので、一見武器に見える円盤棘付き鉄球なども聖衣の装身具扱いという設定があるのだが、
弓矢はどう考えても武器であるにも拘らず作中で突っ込まれた事は無い。
だが流石に常用するものでは無いようで、相手が神ないし相応の大敵
(神の代行者を相手に自分の小宇宙が封じられた状態、巨大戦艦の主砲と弓矢で撃ち合った、相手もやばい武器を持っていた、
 神話の時代からの聖域の逆賊で十三番目の黄金聖闘士、を撃とうとした時にたまたま射線上にいた奴に当たっちゃった
を相手にする場合の特別な切り札という使われ方が多い。
天秤座の12の武器のように、どうしても必要だと射手座の聖闘士が認めた時に許されるものなのだろう。
相手が神クラスでなければアトミックサンダーボルトで事足りるし。
劇場版オリジナル作品でも「星矢達5人の小宇宙を射手座の矢に込めて神を撃破」は定番である。

後に『聖闘士星矢 EPISODE.0』で相手の影に小宇宙の矢を撃ち込み動きを封じる「シャドウアロー」が描かれ、
これが原作者が描いたアイオロス唯一の技という事になる。
しかしこれは敵にとどめを刺すメインの必殺技では無く、本来は味方である黄金聖闘士と傷つけ合わずに素通りするために用いた技で、
アイオロスを代表する技という印象では無い。
シャドウアローで動けなくなった無防備な敵をアトミックサンダーボルトで滅多打ちというのもアイオロスらしからぬ戦法だし……。

*3
OVA版では弟アイオリアとの会話が追加された。

*4
外伝などで人物描写が為される時は、兄弟仲は良く頼れる優しい兄であり、私的な部分では気さくな面もある人物として描かれている。
この時の厳しい台詞は、ひとえにアテナを守る聖闘士として相手が本物のアテナであると見抜けなかったこと、
アテナ自身がやっても構わないと言ったとはいえ、本当に拳を向けるという大罪を犯してしまった事への咎め立てなのだろう。

また、ほぼ同様の経緯を辿っていたゲシュタルトへの時を超えた進言においては、流石に243年前の先輩に向かってきつくは言えなかったのか、
星矢達に遺した言葉によって理解を得る形に留めている。

*5
この事が一番問題になるのは英語版のタイトル『Knights of Zodiac(黄道十二宮の騎士達)』。
「黄道十二宮の騎士=黄金聖闘士」なのに「主人公は最後まで青銅聖闘士のまま」というタイトル詐欺である。
『Knights of Constellation(星座の騎士達)』じゃいかんかったのか?

なお、設定的には黄金聖闘士の条件は「常にセブンセンシズ(第七感)状態を保てる」なので、「最大限に小宇宙を燃やせばセブンセンシズに到達する」程度では、
たとえエイトセンシズ(第八感)に目覚めようとも「黄金聖闘士並みの強さを持つ青銅聖闘士」「黄金聖闘士より強い青銅聖闘士」でしかないんだそうな。
リアルに考えたら、常にセブンセンシズ状態でないと小宇宙を燃やす暇も無く瞬殺されるはずだし
蠍座のミロや魚座のアフロディーテよりも強かったケフェウス星座のアルビオレが白銀聖闘士なのも同じ理由なのだろう。
あと、聖闘士は実力と共に星座に選ばれねばならないので、前任者が存命の場合は実力があっても聖闘士にはなれない。
最も極端な例は、双子座のサガがいるために雑兵だった(と言うか存在を認知されていない)カノン。サガの死後はいきなり双子座の黄金聖闘士になっている。
アルビオレの場合、(彼の誕生日がダイダロスと同じだったとしたら)守護星座は牡牛座になるので、
アルデバランが死なない限り牡牛座の聖闘士にはなれないのである。

余談だが、『鬼滅の刃』で「鬼殺隊の」になる条件も「常に全集中の呼吸状態を保つ」事だとか
(ただし主人公達をからかうための嘘だった可能性がある)。


最終更新:2025年09月10日 21:50
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