ブランドン・ブライア


「どうして僕を裏切ったの?
 たった一人の味方だと思っていたのに…」

2019年のアメリカホラー映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』(原題:Brightburn)の登場人物。
演者はジャクソン・A・ダン氏。日本語吹替声優は 庄司宇芽香 女史。
姓に関しては発音の違いで「ブレイヤー」等と表記される場合もある。
ブランドン・ブライア?けっ!これからてめーをブラブラって呼んでやるぜ!

2006年のある日の夜、カンザス州ブライトバーンでブライア夫妻が営む農場に墜落した宇宙船に乗っていた赤ん坊。
夫妻は彼を自分達の子供として育てる事にし、「ブランドン」と名付けた
(「ブランドン」とは「灼熱の丘」や「」を意味する英語圏の男性名で、現実だとこの人息子の名でも知られる。
 他にも姓や地名に使われる事も)。
12年後、ブランドンは自身に超能力が宿っている事を自覚するが、その頃から彼には不審な言動が見られ始め、
  • 眠ったまま納屋へと歩いて行って収納された宇宙船の残骸に反応する
  • 伯父夫婦からプレゼントとして贈られた猟銃を両親が「(渡すには)まだ早いから」と先送りしようとするとキレて誕生日パーティーを台無しにする
  • フォークを噛み砕く
  • 人間の臓器の写真を収集する
  • 両親が連れ出してくれたキャンプの最中にテレポートで友人(女の子)の家に移動し不法侵入する
  • 家のニワトリを引き裂いて殺す
  • 授業で行った遊びの際、転んだ自分を助け起こすのを渋った上記の女友達の手を怪力で握り潰す
等、思春期特有の反抗期にしては些か行き過ぎな面が表出していく。
学校を2日間停学になり、カウンセリングを受けるブランドンだったが、事態は全く好転しない。
そればかりか、ある日義母のトリはブランドンが納屋の中で空中浮遊しているのを見つけるのだが、
彼は「世界を我が物に」というフレーズを繰り返し呟いていた。

本人なりに超能力を持つ自分へのスーパーヒーローとしてのヴィジョンを抱いているのか、
普段布団代わりに使っているブランケットを改造した赤いフード付きマントを身に着けている。
非常に不気味なデザインであるが本人はこれを大いに気に入っており、否定的な意見に対しては憤りを見せる。

やがてトリはブランドンに彼が自分達夫妻の本当の子供ではなく宇宙船の中で発見した子であることを伝えるのだが、
ブランドンの凶暴性はより悪化し、とうとう周囲の人々はもとより自身の家族にまでその牙を剥き始める。

およそ地球上の物質では一切傷を負うことの無い肉体を持つブランドンだが、
唯一の弱点は彼を乗せて落着した宇宙船に使用されている金属。
ブランドンはこの金属に対してだけは抵抗力が無く、普通に傷付いてしまうのだ。
そして母親がついにその破片で自分を殺そうとした時、ブランドンは全てに見放された事を悟る──……。
予告映像まとめ

──以上の概要でピンと来た人もいるかと思われるが、このブランドンという少年はかのスーパーマンのif存在である。
スーパーマンに限らず、名立たるアメコミの(あるいはそれ以外も含めて)ヒーロー達が「もし根底から狂っていたらという前提から描かれた物語と言える
(イニシャルが“B・B”になるのも「ピーター・パーカーの“P・P”に意図的に擦っているのでは」とも)。*1
「生まれついて超能力を持った子供がごく普通の家庭で育ち、その能力を暴走させてしまったら」「超人的な力を持った子供がもし邪悪な存在だったら」
という発想から生まれたキャラクターであり、
日本でも藤子・F・不二雄氏の『わが子・スーパーマン』や『ウルトラスーパーデラックスマン』など同類が存在している。
有名どころでは本場アメリカでコミックからテレビドラマ化された『ザ・ボーイズ』のホームランダーが知られる他、
そのような超人は人間と隔絶した心理状態となるのではという意味では『ウォッチメン』のDr.マンハッタンが存在する。
……というか、そもそも元ネタのスーパーマンの時点で作品によっては様々な要因により 悪堕ち してたりするが。

正義のスーパーヒーローになり損なった哀れな暴君・破壊者という救いの無い存在であるが
純粋な人間(ホモ・サピエンス)と明確に隔絶された存在ではなく、
その性格や気質は現実にも普通にいる「ちょっと変わった子」の延長線に過ぎない部分も見られ、
このような状況に陥ったのは彼に超能力が備わっていた事、そして宇宙船からの何らかの精神的影響による事が示唆されており、
ブランドンが決して生まれながらの邪悪ではない事は、作中でも明確に表現されている。
彼が最終的に完全に一線を踏み越えてしまうのも、(愛ゆえにという部分もあったにせよ)最愛の母親から裏切られた事が大きく、
本作を視聴した人からは、反抗期や思春期を迎えた我が子のモンスターぶりを想起して共感するという声もあったとか。
またブランケットをコスチュームにしているのも、「ライナスの毛布」「ブランケット症候群」と呼ばれる、
母親から離れる事に不安を覚えた子供が愛用の毛布などに執着して安心感を得ようとする心理状況の現れと思われる。
ブランドンが自分が孤独である事に怯える一人の少年であった事は、どうか忘れずに覚えておきたい。
育て方や育てる人の度量、周囲の環境、その他諸々の条件次第では、ひょっとしたらちゃんとしたヒーローになれていたかもしれないのだ。

+ EDネタバレ
ちなみに本作のEDではブランドンの出現に呼応するかのようにして世界中で超常現象の発生や超人の活躍が報道されているのだが、
その中に同監督の制作したヒーロー映画『スーパー!』に登場する悪党の頭をレンチでかち割るマンこと「クリムゾンボルト」が確認できる。
「それで何か変わるのか?」「わからない。試してみないと」
0:55左下にご注目
だからきっとブランドンも宇宙船の破片でぶん殴られて頭かち割られるんじゃないかな……「Shout up crime!」


MUGENにおけるブランドン・ブライア

Kidthomas氏によるものが存在。
「The Mugen Multiverse」のフォーラムに公開先のアドレスが記されているためそこから入手できる。
スーパーマン同様にニュートラルの時点で若干浮遊しているが、喰らい判定自体は普通なので問題無い。
目からレーザービームを発射したり空中を飛んで突進したり、氷の息吹で凍らせたりと、いかにもスーパーマンのif存在らしい攻撃手段を取り揃えている。
また、原作で見せた凶暴性の再現か、フェイタリティも搭載されている模様。動画の使用には注意が必要かもしれない。
AIは強クラス程度の強さのものがデフォルトで搭載されている。


「僕は他の子とは違う…

 僕は他の子とは違う…

 僕は他の子とは違う…」

出場大会

  • 「[大会] [ブランドン・ブライア]」をタグに含むページは1つもありません。


*1 
リード・リチャーズ(Reed Richards)」「ブルース・バナー(Bruce Banner)」など、初期MARVELヒーローは頭文字が同じ者が多い。
これは子どもたちに名前を覚えてもらうため意図的に行われていた手法で、アメコミ本国では「あるある」ネタとなっており、
ヒーローのパロディや、ヒーローである事を示唆したいキャラクターの姓名が、同じ頭文字に設定される事がしばしば行われている
(我々日本人の感覚で言えば「本郷」「一文字」「早田」「諸星」などの苗字を持つキャラクターに受ける印象が近いか)。
一例としては映画『アンブレイカブル』が、一見して謎めいたサスペンス、スリラー作品として始まりながら、
最終的に主人公が自らの不死身の肉体という宿命を受け入れてヒーローとして立ち上がるという展開は、
彼の名前が「デヴィッド・ダン(David Dunn)」という時点で最初から暗示されていたと言える。
一方でブランドンの場合は彼が超人的な存在である事を示唆すると共に、そうはならないというミスリードとなっている。


最終更新:2024年08月25日 11:59
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