ハン


「オレの拳は疾風!!
 その速さに未だかつて誰も拳の影さえ見た者はおらぬ」

+ 担当声優
戸谷公次
テレビアニメ版
佐藤晴男
『パンチマニア 北斗の拳2 激闘修羅の国編』
桐本琢也(現:桐本拓哉)
『真・北斗無双』
矢部雅史
『DD北斗の拳2』
小西克幸
『北斗の拳 LEGENDS ReVIVE』

戸谷氏は同作品においてはジャギや若かりし頃のリュウケンも演じている。
小西氏は『北斗無双』シリーズ以降、ケンシロウ役として出演する作品が度々あり(『LEGENDS ReVIVE』のケンはAC版やパチスロの河本邦弘氏)、
桐本氏は映画『真救世主伝説』でシンを演じるなど、何かと過去に北斗への出演経験があるキャストが多い。
小西氏(『LEGENDS ReVIVE』)

漫画『北斗の拳』の登場人物。
元の皇帝ヘナクソーではないし、『燃えよドラゴン』に登場する麻薬組織のボスとか千のサブミッションを持つ男とも関係無い。
ラオウ死後を描いた通称「修羅の国編」における敵の一人で、修羅の国を支配する三人の羅将の一人。
第三の羅将。肩書きを付けて「羅将ハン」と呼ばれる事が多い。

北斗琉拳伝承者の一人。
その拳はあまりの速さのため誰も見えないほどの速度を誇り、いつ経絡破孔を突いたのかも悟られぬ内に相手を葬る事が可能。
また闘気技にも長けており、作中で唯一の互いの闘気で岩石を浮かせて叩き付け合う激戦をケンシロウと繰り広げた。もう超能力戦じゃん…

モデルは、QUEENのボーカルであるフレディ・マーキュリー氏とされている。

+ 作中の活躍
修羅の国に連れ去られてきたリンが紆余曲折あって*1捧げ物として献じられると、救出に来たケンシロウとの戦いになる。
それまで圧倒的な強さを見せつけてきたケンシロウと互角の拳の速さを見せ、両者の拳は目にも見えぬほどであったが、
互いの血飛沫が拳の影となって壮絶な撃ち合いが目視できるようになっていく。
ケンシロウをチョップで全身が地面に埋まるほど深く叩き込みその上から瓦礫で完全に埋めようとして殴り返されるというお茶目な仕草を見せ
互いに城の壁に体を叩き付け合って破壊しながら激闘を繰り広げ飛び散った破片が当たって観戦していた修羅が何人か死に
頭上から巨大な石像の頭部が落下してくれば二人の体を避けるように真っ二つに割れその下敷きになってまた修羅が何人か死に
ケンシロウを勢い良く叩き付けて地割れに巻き込まれた修羅が何人か死に
とどめに繰り出した闘気技「白羅滅精」はケンシロウの天将奔烈で撃ち返されて数十mくらいの高さまで吹き飛ばされて城に激突。
その高さから落下して床にめり込んだものの、大したダメージにはならずに戦闘を継続する。
そこで天将奔烈はラオウの技だと悟るものの相手はラオウ本人では無いことも見抜き、相手がケンシロウである事を推測する。
二人の闘気によって周囲の瓦礫が宙に浮き上がり、竜巻のように飛び交って互いに打ち砕き合う。
流石にもう危険を悟って遠くから観戦していたらしく、周りの修羅は死ななかった
ケンシロウに闘気を込めた掌底を叩き込み、先の天将奔烈で飛ばされた位置と同じ高さまでケンシロウを吹き飛ばして岩石飛ばしで追撃するが、
ケンシロウがいきなり地下から出現して叩き付けられ、再び岩石を飛ばし合う攻防に入る。
ここまで全く互角の攻防を演じてきた二人だったが、ハンは必殺の経絡破孔が突けぬ代わりにケンシロウの足を封じており、
奥義「斬風燕破」でとどめを刺そうとするが、ケンシロウはハンの視神経を封じていたため突きが破孔を逸れ、
その隙にケンシロウの連打を受けて遂に倒れた。

戦いの後、過去にラオウ、トキ、ケンシロウの三人が修羅の国から日本に旅立った時の事をケンシロウに伝え、
「ラオウでなければ羅将ヒョウは倒せぬ!たとえお前がラオウより強くともな!」
「これより先はお前には地獄より辛い道!帰れ!帰らねばその宿命に狂い果てるぞ!」
とケンシロウの運命を案じる言葉を遺して亡くなった。
その遺体は城外の川へと転落し、後に川を流れて第二の羅将ヒョウの居城へ流れ着き、ヒョウによって手厚く葬られた。
ヒョウはケンシロウの実の兄であり、ハンは兄弟が激突する悲劇を行わせぬよう案じていたのだ……。

+ 解説
作中の役割としては「新章の最初の中ボス」であり、この後に描かれる北斗神拳・北斗琉拳の長い戦いの血統と宿命には殆ど関与していないキャラクター。
立場としては「最強クラスの拳法を学んだだけの凡人」に過ぎず、一応血縁者であるジャギよりも伝説から遠く、
北斗神拳で言えばアミバや光帝バランやバットくらいにまで無関係なはずである。*2
だが血統と宿命がほぼ10割を占める作中の強さランキングにおいて、
北斗の血統と何の関係も無いのに実力だけでトップクラスに入っているハンの圧倒的強さに心惹かれたファンは多い。

その性格は狂的なまでの戦闘愛好者。「命のやりとりほど面白いゲームは無い」と嘯き、常に己の命を狙う者を周囲に置いている。
戦いを挑んでくる者に対しては(やはり狂的なまでに)鷹揚に接しており、
侍女の一人が自分を毒殺しようとすれば、番犬すら見抜けずに舐めて死んだ毒酒を看破し、
恐怖に震え上がった女に悠然と「替わりを持て」と許している
(アニメではさらに毒と分かっていてワインを飲み干し「こんな毒ではオレは殺せん」と余裕の一言)。
修羅の一人に髭剃りをさせ、その修羅がハンの喉元に剃刀を近付けた時には、
「このオレに隙あらばいつ喉を掻き切っても良いのだぞ」と自ら暗殺を促してみせる。
修羅はためらうが、ハンに全く隙が無い事を悟って手を引き、「貴方はそうやって何人の修羅を殺してきたのですか」と問いかけ
ハンが「百人から先は覚えていない!」と不敵に笑う場面はまさに彼の真骨頂と言える。
だが無闇やたらと殺しまくっているわけでは無く、かつて戦って倒したカイゼルの有能さを見込んで郡将の地位を与えている。
殺すのが好き」ではなく「戦うのが好き」なのだろう。

逆に、新たに修羅となった男が「自分の腕ではここまで。これ以上の野心は無い」と言い出すと、
呆れ返ったように「だったら生きていても仕方あるまい」とその場で殺している。
この時、逆襲を試みた修羅に言い放った「もう葬っている!」の一言は、まさに北斗琉拳式「お前はもう死んでいる」であった。
そこで「愚かな男よ、体得する拳を誤ったな!北斗琉拳なら何も考える事無く、即刻このハンの首を狙いに来るものを!」と語っており、
やはり「自分の命を狙いに来るほどの男なら死なずに済んだものを」という考えだったようだ。*3

世紀末という血と暴力の狂気の時代を、紛れも無く最も愛し満喫したであろう、『北斗』随一のバトルジャンキー。
修羅という男達について「愛を否定する」という思想教育が行われるのは愛を否定するカイオウの命令なのだろうが、
「15歳までに100回の戦いを行い、勝ち残った者にしか生を許さぬ」という戦闘政策はハンの発案か、
あるいはハンの治める領地でしか行われていないシステムなのかも知れない。
ハンが治めている最前線の領域では、
名も無き修羅が(負傷していた上に義足が破損するアクシデントがあったと言え)ファルコに勝利するほどの強者がいたが、
カイオウが治める内陸部の修羅は殆ど拳王軍と大差が無い連中ばかりであり(久しぶりの火炎放射器ザコまでいる)、
逆に、心優しいヒョウの領地では真人間な修羅がおり、住民も恐怖の支配ではなくヒョウに敬服して暮らしていた。
修羅の国全体を見てみると「羅将を除いて、強かったのはハンの領地だけ」だったのである。
ハンだからこそ、いずれ攻めてくるであろうラオウ対策のため修羅を鍛え上げる事ができ、
またラオウ襲来を国中に伝達する大がかりな設備も備えた、最前線の統治に最適任の人物と言えた。

北斗琉拳の使い手は心を完全に憎しみに染めた時「魔界に入る」と呼ばれる闇落ち現象を経て「魔神」と呼ばれる状態に入り、
「魔闘気」と呼ばれる異常な闘気を操るようになるが、岩石を飛ばすほどの闘気を操れるハンは魔界に入った様子は無い。
これは、ハンの性格が限りなく陽性のものであり、戦いに悲しみや憎しみを持たず、むしろこの上無く戦いを楽しみ喜ぶ人物であったためであろう。

+ 外伝作品での扱い
ギャグ漫画『北斗の拳 イチゴ味』では度々登場。
本作はほぼ全ての人物が生存しており独自の時間軸が描かれるので、サウザーなど原作で会わなかったキャラと共演する。
原作風の作画なのでエスプレッソ感溢れる濃厚な顔は健在。というかさらに濃ゆさが増しており、登場時「もわぁ…」という擬音が鳴る。
そして他の人物の例に漏れずハンも全開でキャラブレイクしており、ゆく先々で何故か男達を童貞呼ばわりしたり、
「粟立つ」というワードを事あるごとに連発したり、本作のサウザー以上にマイペースな傍若無人と化している。
一方で戦闘能力は原作通りであり、ヒューイやリュウガを瞬殺したりサウザーを圧倒したりと格の違いを見せ付けた。
また「確かに破孔をついたはず!?」の定番ネタをする羽目にもなったが、直後「破孔が効かないなら直接身体を砕くのみ」と、
即座に持ち直して戦法を変えるクレバーさを見せた。
だがそんな彼も、ターバンのガキには敵わなかった
(サウザーには天翔十字鳳を解禁された事で敗れたが、ユダ曰くハンがガキに足を刺されていなければ勝負は分からなかったという)。

『真・北斗無双』では北斗琉拳勢で唯一NPCとして登場。なおNPCとしてはシャチのコンパチ。
本作では本編前にシャチと出会った際に彼が弟弟子と言う事を知っており、
更には後々ラオウ(≒ケンシロウ)を導く事になるのを見抜くが、今のシャチでは導けないとばっさり切り捨て、彼の成長を促す役割を与えられた。
その後DLCとしてプレイアブル化している。


「ハ……ハン様、貴方はそうやって何人の修羅を殺してきたのですか!?」
「百人から先はおぼえていない!!」


ゲームにおけるハン

戦闘能力、カリスマ性など存在感十分な人物であるのだが、如何せんラオウ編以降で人気の差があるのでハンのゲーム出演は少ない。
SFCの格ゲー『北斗の拳6』は修羅の国まで描かれたがハンは不在。何故か黒夜叉が出ている

ゲームボーイの『凄絶十番勝負』にはプレイアブルキャラクターとして登場している。

それよりも『KOF』のクローンゼロの元ネタとしての方が有名であろう。
技名は丸ごとパクられているが内容は結構違っており、
例えばMUGEN界隈では「白羅」と言えば画面全体攻撃であるが、ハンの白羅滅精はそれほど攻撃範囲が広い技では無い。


魔舞紅躁は会話の最中に攻撃すら見せずに相手を葬るモーションを完全再現……と思いきや、
実はこちらも元ネタと異なる箇所が存在する。
+ 詳細解説
闘技場で一人の男が勝ち抜き、新たな修羅となった。ハンは上機嫌でこの男に謁見を許すのだが……

「よくぞ今日まで生き残ってきた。望みがあるなら言ってみよ!」
「いえ望みなどとんでもございませぬ。これで十分、結構です!
 私の器ではここまででございます。
 もし許されるならばこのままハン様の下で一生お仕えしとうございます」

「野心は無いのか?」
「ございませぬ!!」
「だったら生きていてもしかたあるまい」


この一部始終をまるっきり再現してるかのように見えるゼロの魔舞紅躁だが、どこが違うのか。

まず、一見すると「ぷあ!!」のコマでいかにもハンが見えない速さで攻撃を放っているかのように思えるが、
実は(あまりの速さのため見えないが)「は?」ビュウウウゥッのコマで攻撃している。
右膝をつく以外何の動きも見せていないハンだが、風も無いのにハンのマントが軽く翻っている。一方、相手の男のマントは動いていない。

では「ぷあ!!」のコマでは何が起きているのか。
ハンの攻撃は既に終わっており、「もう葬っている!!」のである。
猛烈な風が吹いているように見えるエフェクトだが、ここではハンのマントは動いていない。
これは、経絡破孔の効果によって、やられた男が自分で勝手に吹き飛んだ、と言うか、体を捻りつつジャンプしたのである。
その後こいつは「ゲベ!デボ!」と全身を爆裂させて死亡した。*3
「衝撃波を喰らったため死亡」ではなく、「ジャンプしたのは演出で、内部から爆裂したのが死因」であった。

以上を踏まえてゼロの魔舞紅躁を見てみると……
このようにゼロのスカートは、元ネタでいう「は?」でなびかず、「ぷあ!!」で大きく風を起こすように舞い上がっている。
早い話、ハンの魔舞紅躁とは衣服の翻る順序が逆になっているのである。
加えて、片膝をついた時ではなく背を向けて風が起きる時に相手の体力が減るように設定されてもいるので、
スカートから衝撃波を発しているようにも見える。

とはいえ、ダメージの入るタイミングこそ上述の通りだが、
スカートが舞い上がり終えてから相手は吹っ飛ぶので「元ネタ同様相手が自分で勝手に飛び上がっている」と主張できるし、
「開発スタッフは解釈を間違えた」とは断言し難いものがある。
翻る順番が異なるという点についても、
「ゲームとしての見映えを優先して背を向けた時に風が起きる演出にした」という可能性だって考えられるのだ。
何より、技の効果が後で発動する経絡破孔の設定がクローンゼロには無い以上、「背を向けてから風を発する」技にするしか無かったのだろう。
尤も、このアレンジによって屁をこいたようにしか見えなくなってしまったのは想定外だったのだろうが……。


MUGENにおけるハン

長らくクローンゼロのボイスを差し替えたパッチが存在するだけだったが、
ガ・タキリ・バ氏によって遂にハン本人が公開。
スプライトは『凄絶十番勝負』の物を使用。
原作の通り、ガード、ダッシュ、バックステップ、投げ、画面端でのノックバック等は無い。
攻撃はパンチ、キック、オーラ(飛び道具)のみで、漫画で見せた様々な奥義は再現されていない。
AIは未搭載。

また、コンプゲーム『HOKUTO NO KEN LST』でもプレイアブルキャラの1体として公開されている。
やはりと言うべきか、クローンゼロのモーションを参考にして奥義の数々が再現されているが、
中々に格好良くアレンジされており見栄えが良い。屁をこくハンなんていません
ベースにしたキャラの影響から、当て身系の技が多めのキャラとなっている。
解説動画

この他、ハンの別称「羅将ハン」が元ネタの「羅将モン」というギースの改変キャラも存在する。


「フ……フハハハ!! 嬉しくて肌が粟立つわ!!
 この世で命のやりとりほど面白いゲームは無い!!」

出場大会

  • 「[大会] [ハン]」をタグに含むページは1つもありません。


*1
中央帝都が崩壊するどさくさに、ジャコウ総督の息子ジャスクがリンを誘拐して修羅の国に渡る。
その目的はリンを修羅に渡し、救いに来るであろうケンシロウとファルコが修羅と戦って死ぬよう誘導するためだった。
だが修羅の国に渡った所でジャスクと部下は殺され、リンは修羅に浚われ、郡将カイゼルのもとで戦う修羅達の勝利者に与えられる事になる。
だが修羅の国打倒を目指す若者シャチの手でまたまた浚われ、
シャチは奴隷に扮してリンをハンに献じると言って近付き、ハンを暗殺にかかるが、ハンは余裕でシャチを返り討ちにする。
しかし、服の下に防具を仕込んでいたシャチは経絡破孔の効果を免れて立ち上がる。
シャチは「その女がいずれ貴様に死を呼ぶ事になろう」と言い残して逃走。
リンを追ってきたケンシロウがハンと戦う事になると予想していた、二段構えの策であった。
その直後にケンシロウが現れたためシャチも戻ってリンと共に戦いを観戦。
以後シャチはケンシロウの仲間として共に戦い、ケンシロウの窮地を救うために奮闘、落命した。

*2
続編の前日譚『蒼天の拳』に、主人公・霞拳志郎の朋友に潘光琳という人物がいるが、彼がハンの父親という話は公式に描かれた事は無い。
潘光琳は拳法家の血筋では無いので、血縁があったとしてもあまりアドバンテージにはならない。
上海の裏社会を支配する青幇の頭首であった潘光琳の子が、後に中国を修羅の国に変えて支配する羅将の一人となったとしたら、
それもまた宿命と考えられなくも無いのだが……。

*3
この男、「ゲベ!」の時点で顔を真っ二つに引き裂かれて死んでいるにも拘らず、
さらにその後から改めて「デボ!」と断末魔を追加する余裕を見せている。
上昇志向の無さのためハンはこの男を殺す事にしたのだが、その生命力や根性などには見るべきものがあったのではないだろうか。
「体得する拳を誤ったな」という評価は、幾ばくかはこの男を惜しむ気持ちがあったのかも知れない。

また、修羅の国にはこの男と同様に、
  • 完全に体が消滅して顔だけの状態(肺が無いので発声のための息を吐けない)から「無無……なべ」
  • 頭を叩き割られて脳が破壊された状態で「ヨ……ヨダレじゃありません 血ぃでず げべ……」
  • 顔面真っ二つになった後で「あはら!」
と発声が不可能な状態になってから断末魔を遺して死んだ超人的な者が複数存在する。
最後のヌメリは特に「修羅の国に居ながら愛を知る男」「北斗琉拳の経絡破孔をある程度知っている」
という特異な個性とあれだけサモトを引っ張ったのにそれをデコピンで殺して出てきたインパクトと、
そうしてまでわざわざ登場したのにいきなり瞬殺された殺られっぷり
からファンも多い。


最終更新:2025年04月26日 15:57