カイオウ


「その時オレは誓った、この世から一切の情愛を抹殺すると!

 そして悟った!情愛に打ち勝てるもの、情愛に微動だにせぬもの!!

 それは唯一 “悪” であるということを!!」

+ 担当声優
内海賢二
『北斗の拳2』
大倉正章
『北斗の拳2』(少年期)
石塚運昇
『真・北斗無双』
金本涼輔
『真・北斗無双』(少年期)
前田剛
『DD北斗の拳』
玄田哲章
『LEDENGS ReVIVE』

内海氏と玄田氏は実弟であるラオウと兼任。
『LEDENGS ReVIVE』ボイス集

漫画『北斗の拳』の登場人物。
名前の漢字表記は無く海王界王ではないし、四皇の一人でもない。
ラオウ死後を描いた通称「修羅の国編」における敵の一人で、修羅の国を支配する三人の羅将の一人。
第一の羅将。第三の羅将ハン第二の羅将ヒョウと違い、彼は「羅将カイオウ」と呼ばれる事は少ない。
「修羅の国編」におけるラスボスであり、アニメ版はそこまでで終了したのでアニメ版のラスボスでもある。

北斗琉拳伝承者の一人。
北斗宗家に繋がる人物リュウオウの末裔であり、その証として額に北斗七星を象った痣がある。
弟にラオウ、トキ、妹にサヤカ*1がいる。
トップ画像では素顔を表わしているが、当初は全面を覆う兜で素顔を隠していた
もちろん隠していた理由はラオウと血縁者である事が周囲にバレないようにするためで、顔にΛ状の大きな傷跡がある。
顔つきは原作ではラオウと比べるとやや面長であったが、
TVアニメ版ではラオウとほぼ瓜二つの顔つきとなっている。

+ 作中の活躍
幼少期よりその拳才は群を抜いており、同門の少年達からは英雄のように慕われていた。
だが彼は「北斗宗家に仕える屑星」としての立場を強要され、
まだ年少のヒョウの前で無様な醜態を晒すよう命令されるなど不当な虐待を受けて育つ。
周囲の少年達のほとんどはこの一件でカイオウを見限ったが、
ヒョウとラオウはカイオウの悲しみを知り、彼を心から尊敬していた
(トキは幼すぎて拳法の修行を始めていなかったのか、その場面には描かれていない。ケンシロウはまだ赤ん坊の頃)。

199X年に起きる最終戦争の数年前に勃発していた局地戦の影響で凱武殿が被害を受けて火災を起こし、
火の中に取り残されたヒョウとケンシロウの命を救うためカイオウの母が焼け死んでしまう。
カイオウは亡き母が死後も凍えぬようにと溶岩の沸き立つ地に母の遺体を埋葬し、この世から一切の情愛を抹殺する事を心に誓った。

核戦争によって既存の国家が消滅すると、カイオウは祖国を「修羅の国」とするため同門のヒョウ、ハンと共に決起。
完全に統一するより前に、日本で同様の行動に出ていたラオウの訪問を受け、兄弟は完全に決別する。
ラオウはカイオウを尊敬しつつも兄が悪の道に堕ちる事を予見していたのか、ケンシロウが北斗神拳伝承者に選ばれた時に、
「もし兄カイオウが歪んでいたならばその手で殺せい!!カイオウは俺の心の中でいつまでも英雄でなくてはならないのだ!!」
と命じていた。

ラオウと決別したカイオウは、いずれ自身を倒しにラオウが海を渡って来るという「ラオウ伝説」を国に流布し、
ボタン一つでラオウ襲来が国中に広まる伝達体制までも整備した。
それは救世主として現れる北斗神拳伝承者ラオウを倒す事で、自分や北斗琉拳が北斗宗家・北斗神拳の屑星では無いと示すためであった。
しかし、修羅の国に現れた北斗神拳伝承者はラオウでは無く、ラオウを倒したケンシロウであった。

第三の羅将ハンを倒したケンシロウが挑んでくるが、
カイオウは魔闘気によって空間を歪曲し、無重力空間を発生させる北斗琉拳奥義・暗琉天破によって無想転生を破り、ケンシロウを撃破する。
北斗七星を模した柱にケンシロウを拘束して息の根を止めようとするが、
そこにシャチや、その父親の海賊・赤鯱らがケンシロウ救出に現れる。
実力では彼らを圧倒するカイオウだが、赤鯱の策にはまって硫酸を浴びてしまい地底の水路に撤退。
追撃に来た海賊達を次々に殺すものの、その間にシャチがケンシロウを連れて逃走する。
しかしカイオウはシャチの逃走経路に突如出現し、二人を殺そうとするが、
ケンシロウが放った闘神のオーラに畏怖して魔闘気を封じられ、二人の脱出を許してしまう。

カイオウは北斗宗家の血を極度に恐れ、同じく宗家の血筋を引く第二の羅将ヒョウをケンシロウと戦わせて相打ちにさせるため、
ヒョウの恋人である自身の妹サヤカを殺害、その犯行をケンシロウになすりつける事でヒョウを魔神に変貌させる。
だがヒョウはケンシロウとの戦いの中で真実の記憶を取り戻し、二人は和解してしまう。

そして北斗琉拳打倒の鍵を秘めた北斗宗家の秘拳を伝承されたケンシロウの挑戦を、母の遺体が眠る地で迎え撃つ。
カイオウは虐げられてきた自身の人生と北斗琉拳の呪われた宿命を語るが、
ケンシロウは北斗神拳の大いなる愛とラオウから受け継いだ思いを込めて立ち向かう。
戦いの中でカイオウもまた北斗宗家の血を引いている事が判明、北斗宗家の拳である女人像の構えを繰り出して戦うが、
ケンシロウは北斗神拳創始者シュケンの霊からその攻略法を伝授されていた。
北斗宗家の拳は極められた拳であったがゆえに、受け身の技も極められ、実戦での威力を失っていたのだ。
ケンシロウが伝授されたのは特定の奥義では無く、奥義の回避方法であった。
力を失ったカイオウは、それでもなお己の道を貫きケンシロウに立ち向かい、打ち倒される。
最後の一撃を放ったケンシロウは、万感の思いを込めて「おまえも、まさしく強敵(とも)だった!」と告げた。

敗れたカイオウは自身の悪が弱さから生じたものだった事を悟り、駆け付けてきた瀕死のヒョウにこれまでの事を詫び、とどめを刺すよう促すが、
ヒョウは逆に自分が強ければカイオウは歪まなかったと詫びて息を引き取る。
そしてカイオウもまた、ヒョウの亡骸を腕に抱いたまま溶岩の噴出を浴びて、その凄絶な生涯を閉じた。

+ そもそもの発端
そんな壮絶な生涯を送ったカイオウだが、そもそも全ての運命が捻じ曲がったきっかけは、彼の北斗琉拳の師であったジュウケイが、
才気に溢れたカイオウが宗家を脅かす事を恐れる余りに、彼の尊厳を徹底的に踏みにじった事が原因である。
しかもその手口の中には、カイオウの血縁者たるラオウとトキを人質にするという外道の所業も含まれる。
ジュウケイ自身、北斗琉拳の魔道に堕ちて自ら妻子を殺害した末、北斗神拳のリュウケンに敗れて目を覚ますという経験をしているにも拘らず、
「我らは宗家の影に徹するべき」という自らの考えを押し付け、カイオウを魔道に蹴り落とす行いをしているのだ。
挙句、文明が崩壊した時に北斗神拳伝承者が来なかった場合の保険のため、禁を破って北斗琉拳を三人の弟子に教え、
結果的にその弟子達が羅将となり世を更に乱れさせる事となった。
カイオウの才能を危険視するのなら北斗琉拳を教えるべきでは無かったし、教えるなら教えるでカイオウの才能を伸ばしてやるべきであったし、
北斗宗家の嫡男という血筋が分かっているヒョウに「呪われた魔道の拳」とまで言う北斗琉拳を教えるべきでは無かったし、
「宗家の血が薄い」と北斗神拳伝承者候補としては見切りを付けたヒョウの拳才は、
宗家の血に目覚めた状態、つまり彼が本来修得すべき拳法を伝授されていたらケンシロウとも五分に渡り合える力を持っており、
まだ幼かった頃に見切りを付けられるほど酷くは無かった(カイオウには遠く及ばないとは言え、それはカイオウが強すぎるだけである)。
ジュウケイの行動は理屈に合わないばかりでなく、行動そのものが一貫しておらず、実際に行った事はことごとく裏目に出て、
カイオウ、ヒョウを含む多くの人々を犠牲にしていった。
ジュウケイがカイオウやヒョウに北斗琉拳を伝授せず、ヒョウには記憶を封印などせず北斗宗家の拳を解明させていれば、
作中の悲劇のほとんどは起きなかったはずなのである。
その癖、自分は被害者ぶってカイオウの流したラオウ伝説に縋って何の手立ても講じず、ケンシロウが現れた事でラオウ伝説が潰えた事を知って、
ようやく重い腰を上げる体たらく。北斗琉拳とカイオウの真実を語る場面など、もはや完全に犯行の自白パートでしか無かった。
最後は北斗宗家の秘拳の在処を知るため、ヒョウの記憶の封印を解除しようとして失敗した結果殺害されるのだが、
正直全ての悲劇を生んだ張本人の分際で、「北斗琉拳は滅亡すべき拳なのだ」とかどの口で言っているのだという反応にならざるを得ない。
そもそも記憶を奪う事を決めたのはジュウケイ自身で、その理由も「拳を教えるのにヒョウの優しさが邪魔になるから」という無茶苦茶な理由からだった。
しかし実はジュウケイによる記憶の封印は失敗しており、その事を知ったカイオウが改めて別の手段で封印したのが解除に失敗した原因である
(重要書類の保管庫にヘボい鍵つけたせいであっさりピッキングされた挙句、勝手に別の鍵に付け替えられていたような状態)。
他人の人生を散々引っ掻き回してきた挙句がこれでは、さすがに弁護のしようも無い。

「ゆ…許せ…この大馬鹿者を!!」
無理だ、その願いは私の忍耐を超えている……

+ 外伝作品での扱い
ギャグ漫画『北斗の拳 イチゴ味』でもその圧倒的な強さは健在。
サウザーら南斗聖拳の拳士達+ファルコが修羅の国に侵攻し、海岸線を守っていた修羅達の警備を突破して休息を取っている所に、
郡将カイゼルとか羅将ハンとかを飛ばして三羅将最強のカイオウがいきなり出現。
暗琉天破→暗琉霏破の連続技で侵入者六人を一人で蹴散らし、彼らが車で逃走すると馬で追撃、
やっとの事で船まで逃げおおせたと思ったら水中から突如出現して全員まとめて吹っ飛ばした。

暗琉天破はケンシロウですら初回では対応できず敗れた奥義であり、
また「逃げ切ったと思ったら水中から出現」も原作で本当にやっていた事なので、この大暴れにはファンも納得。
そして、その状況からなんとか生きて帰ったサウザー達もやっぱり凄い。ギャグ漫画補正か
修羅の国編(イチゴ味)ダイジェスト

『真・北斗無双』の幻闘編では本編が始まる前に、北斗琉拳を駆使して修羅の国を平定するまでの活躍が描かれている。
情愛なき世界を構築して北斗神拳抹殺を目指すという言葉通りの苛烈なやり方は、共に戦う兄弟であるヒョウの胸中にも疑問を呼び起こすものではあったが、
過去の経験もあってカイオウに強く異を唱える事もできず、国の平定という目に見える成果もまた否定できず、強く反論する事はできなかった。
その一方、美しく成長したサヤカを見て母への想いが蘇ったり、そんなサヤカが火事に巻き込まれた際には誰よりも先に助け出したりと、
当時の時点では完全に情を捨てきれていたわけではなかったのだが、その度に自分の肉体を素手で抉る激しい自傷行為に走っていた。
そして一度修羅の国に来た弟ラオウと手合わせをするのだが、ラオウはすっかり変わり果てた兄に対して失望。
ラオウもカイオウも覇道を進む兄弟ではあるが、似てるようで二人のやり方は完全に別物。
情を捨てた者はいずれ破滅が待っているのは明白だが、ラオウは恐怖で世界を統べるために情を捨て、
情を捨てた己だけが破滅すればそれでいいと思いながら拳王という生き方を選んだ。
だが、カイオウが目指す世界は全ての者が情を捨てて孤独に生きる世界であり、それは世界の全ての人間が滅びる事を意味している。
言ってしまえばカイオウ自身が抱く、孤独から生じた破滅願望で世界をも道連れにしようという迷惑極まりない道でしかない。
「兄者は負けたのだ。兄者自身に」「認めよ、兄者こそが誰よりも情愛を欲している」と述べたラオウは、
最早戦う意味すら無くなった兄に背を向けて国を去った。
その後、カイオウはラオウの言葉を反芻しながら、弟への情を消すための激しい自傷行為の中で、
「その通りだラオウ!俺が消さねばならぬのは己自身!」と己の中の情を完全に滅ぼす。
それにより魔界を見る事に成功し、魔闘気を纏った真の北斗琉拳伝承者として覚醒。
修羅の国を、恐怖が支配するこの世の地獄として完成させたのだった……。

つまりカイオウが魔神と化した最後の決め手はラオウの説教のせいと言えなくもないのだが、
ラオウはケンシロウやトキとの決着を付けたらカイオウを倒しに戻ってくるつもりであったし、
自分が倒れた場合のためにケンシロウにカイオウ打倒を言い残してはいた。
しかし、ラオウがこの時にカイオウを倒さずに去ってしまい、
後にケンシロウが渡航してくるまでの数年間で犠牲になった人々にとっては、やはり災難だったとしか言いようがない……。
そこで最大の問題になるのはケンシロウがラオウの遺言をすっかり忘れており、リンが修羅の国にさらわれなかったら渡航もしなかっただろうという事になるが


「最後に生き残るのは!!悪!!」


ゲームにおけるカイオウ

修羅の国編まで描かれたゲームは少ないが、流石に修羅の国の最後の敵だけあって、
SFCの格ゲー『北斗の拳6』と、
ゲームボーイの『凄絶十番勝負』にプレイアブルキャラクター兼ラスボスとして登場している。

また、ジャンプ漫画作品大集合ゲーの『ファミコンジャンプ』でも、ケンシロウが仲間になるエリア1のボスキャラとして早速登場する。
最終決戦に出てくるラオウの顔グラが彼のコピペ(傷を消しただけ)なのはここだけの話

他、ジャンプからのパク……ネタ引用を衒いも無く繰り出す『ワールドヒーローズ』のゼウスはラオウ等と並んでカイオウの影響も見られ、
特に『WHP』での小ポートレイトはまず間違いない引用ぶりである。

「うぬぬほ…………
 北斗神拳であるがゆえにその男たちを凌駕したというのか!!」*2


MUGENにおけるカイオウ

ガ・タキリ・バ氏によるものが存在。
スプライトは『北斗の拳6』の物を使用。
原作の通り、しゃがみガード・空中ガード・投げ技・ダッシュ・バックステップ等は無い。
攻撃はパンチ、キック、魔闘気弾(飛び道具)、超必殺技に凄妙弾烈、暗琉天破がある。
暗琉天破が10割持っていくのは原作そのままらしい。
色々と漫画とは違うが、SFCの『北斗の拳6』がこうだったという事で……。北斗現れるところクソゲーあり
AIは未搭載。

また、コンプゲーム『HOKUTO NO KEN LST』でもプレイアブルキャラとして参戦している。
3タイプ(全身甲冑・兜無し・最終決戦)存在し、どれもが単なるコンパチキャラではなく、技内容も大幅に異なるという豪華仕様。
性能的には全身甲冑版は魔闘気を用いた広範囲な攻撃、残り2タイプは近接戦闘が主体。
原作で見せた奥義の数々が余す所なく再現されており、第2部の大ボスに相応しい風格と凶悪さを兼ね備えている。
全タイプ解説動画


「思えばこのカイオウもまた弱者であったか……
 弱者ゆえに悪に魂を染め生きてきた……
 すべてはオレの手で新世紀を創るために……
 だがそれもしょせんはかない夢であった」

「もっと早くお前と出会っていたなら……
 オレはオレの宿命に素直に……」

出場大会

  • 「[大会] [カイオウ]」をタグに含むページは1つもありません。


*1
あのカイオウやラオウと同じ血を引くとはとても思えぬ美女で、
修羅の国の王女でありながら(だからこそ?)拳法家の家柄らしく活発そうなレオタードの美女。
年齢はケンシロウと同じか年上のはず(カイオウの母はケンシロウが赤子の頃に亡くなっており、サヤカはそれより前に誕生しているはず)で、
恐らく二十代後半のはずなのだが、十代の可憐な美少女にしか見えない作中最高の美女である
(顔立ちはユリアやマミヤと違わないだろうが、年齢を考えると際立ちすぎている)。
兄達の拳才と同等の素養を全て美容に注ぎ込んだらこうなったと言うべきなのか……。

運動ができそうな格好をしているが、拳法を学んでいたかは不明。
唯一の場面が「全く無防備な所をカイオウに一撃で殺された」では力量の測りようも無い。

*2

カイオウが発した有名な迷言。うにゅほ?……多分関係無いと思うけどね
「ひでぶ」「ばわ」「うわらば」「をろあ」など変な断末魔に事欠かないこの漫画では普通に流されてしまったのだが、
よく見るとこの台詞は、

「うぬぬ
 ほ……北斗神拳で
 あるがゆえに
 その男たちを
 凌駕したというのか!」

と改行すれば何もおかしくないはずだったのだ。
だが北斗故にこの「うぬぬほ……」が自然に受け入れられてしまい、『北斗の拳 究極版』でも改行されていない。


↓ 改訂後コラージュ

なお、『真・北斗無双』では「うぬぬ……北斗神拳であるがゆえにその男たちを凌駕したというのか!」と訂正されている。
これだと改行ミスでは無く、本当に衍字(えんじ 不要な文字が入ってしまう事。脱字の逆)だったかのようで、なおさら恥ずかしいような……。


最終更新:2025年07月11日 19:53