重音テト

登録日:2009/06/09 Tue 20:44:06
更新日:2025/04/02 Wed 00:12:43
所要時間:約 18 分で読めます



( i ) 情報
本項目で引用した著作物の出典は、項目末尾にまとめて表記することとします。





未来から来たボーカロイド!?
ツンデレキュートなニューアイドル。




重音(かさね)テトとは、2008年4月1日に突如公開された音声合成DTMソフトウェア、およびそのキャラクターのことを指す。

概要

クリプトン・フューチャー・メディア(以下、「クリプトン社」と表記)のVOCALOID製品・「キャラクター・ボーカル・シリーズ」の一つ。
ものすごく簡単に言えば鏡音リン&鏡音レンに続く、初音ミクの後輩バーチャル・アイドルなのだ。



出典:〔1〕


プロフィール


追記・修正は重音テトを手に入れてからお願いします。



この項目が面白かったなら……\テトペッテンソン/


















君 は じ つ に 馬 鹿 だ な


























   *   *
 *   + うそです
   n   )    n
+ (ヨξ(*´∀`)ξE)
     Y   Y  *





それは四月の万愚節 すべての嘘が許されて
人々が嘘を競い合う 年に一度の祭りの日

ある日誰かが思いついた ちまたで流行の歌姫の
リアルな偽物こしらえて ニコ厨どもを釣り上げろw

出典:〔2〕


……4月1日という日付で何かを察した人もいるかもしれない。

それもそのはず、先ほどの解説および画像は全部嘘である。

重音テトというVOCALOIDキャラクターは存在しない。


真の概要

改めて重音テトとは、VOCALOIDやニコニコ動画のユーザーを釣るために、2ちゃんねるのニュー速VIP板の住人達(通称・VIPPER)によって生み出されたエイプリルフールの嘘企画
簡単に言えば、一日限りのイタズラのためにでっち上げられた偽物である。

2008年3月30日の0時、「架空のボーカロイド作ってニコ厨釣ろうぜww」というスレが立つ。
一応設定は決めつつ次スレも立てて進行していたものの、当初はそれこそ「こんなものがあったらいいな」「でっち上げてやろう」と笑い合うだけの与太話でしかなかった。
が……

134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/31(月) 16:03:39.92 ID:BUcbZ6aW0
(注記: URL省略。元は音声ファイルへのリンク。)
とりあえずみくみくで歌ってみた
出典:〔3〕

こう書き込んだ一人の女性VIPPERが、自らの声を偽VOCALOIDのサンプルボイスとして当てがったことをきっかけに、掲示板内の空気は大きく変わることとなった。

勢いに乗った後のVIPPERたちの熱量は凄まじかった。
  • あれよあれよと言う間にデモソングが誕生し、
  • 使われもしないプロフィール*4が出来上がり、
  • 本家「初音ミク」のプロフィールに画風を寄せた、巧妙なニセの立ち絵(当記事冒頭の画像がそれ)を描くVIPPERが現れ、
  • 技術畑のVIPPERが特設のニセ公式サイトを用意し、
    • URLのドメインもクリプトン社のもの(crypton.co.jp)をもじって“crvipton.jpn.org”と設定し、偽サイトと悟られにくいようにした
    • しかも翌日にはそのウェブサイトの中身を、引っかかったユーザーをバカにするAAにすり替えていた
  • そして、ニコニコ動画のプレミアムアカウントを持つVIPPERが「新作VOCALOIDの体験版を家電量販店で入手した」という体を装い、動画を投稿。
……そうした、偏執的とさえ呼べるこだわりの粋を注がれ、「重音テト」はこの世界に産声を上げた。
これをわずか2日間という短さで成し遂げてエイプリルフールに間に合わせたのだから驚きだ。
それは見事に功を奏し、かくして彼女は幾多のボカロPとボカロファンを阿鼻叫喚の渦に叩き落とすことに成功したのである。

ちなみにプロフィールは、安価(「アンカー」…スレッド内の投稿(レス)番号を使う手法)によって次々と決められていった。具体的な様子はニコニコ動画のネタばらし動画を参照。
この見た目で年齢31歳、性別が男でも女でもなくまさかの「キメラ」、所々に挟まれるドラえもんネタ、VOCALOIDのつもりなのに歌が苦手など、多少無茶があるのはそのため。
とはいえ、あと1つでもズレていたらこれどころではない釣りもへったくれもないカオスすぎるレスが採用されていた場面も多々あるため、ある程度まとまった設定が出来上がったのはむしろ奇跡である。

爆発的な知名度を獲得しているためか、しばしば亞北ネルや弱音ハクのようなVOCALOID派生(亜種)キャラクターであると思われがちだが、今の所クリプトン社に公式に二次著作物として認められているわけではない。
つい忘れがちだが、あくまでも彼女は「エイプリルフール用の一発屋」という立場なのである。


「僕の活躍は永遠に終わらないのさ。だから君たちも早く追記・修正をするんだ!」



この項目が面白かったなら……\テトペッテンソン/






















電子の海に消え、ゆっくりと忘れられていく。

それが重音テトの運命―――の筈だった。


たとえ偽りであろうと、ほんの刹那であろうと、自分たちの手で生み出した歌姫の輝きを、VIPPER達は忘れられなかった。
ここで終わらせたくない。もっとその先を見たい。……そんな願いが芽生え始めていた。


彼女が世間を賑わせた2008年。それは、飴屋氏によってフリーの音声合成ソフト「UTAU」*5が開発されたのと偶然にも同じ年だった。

祭りから2日が経った日の夜、そこに目をつけたVIPPER達はなんとかしてテトを残してやろうと、音声ライブラリー「UTAU 重音テト」の開発をスタートしたのだった。

そして、プロジェクトが進行すること3日――






そこには、UTAU音源を手にし、かの『鳥の詩』を歌うテトの姿があった。







重音テトは、蘇った。


「言っただろう?僕の活躍は永遠に終わらないって。君たちはじつに馬鹿だね」




●目次


UTAUとして

エイプリルフールの一発ネタに過ぎなかった「重音テト」は初のユーザーサイド開発によるUTAU音声ライブラリーとして、VOCALOIDでこそないものの本当に歌えるバーチャルシンガーとして生まれ変わったのである。
UTAUの50音ライブラリーに採用されてからもその人気は止まらず、今となってはUTAUの代表としてその看板を背負う存在にまでなっている。

改めて、声の主は「()(やま)() 舞世(まよ)」。
ウソ企画が出た当初は同じ漢字で「小山(大山) 乃舞世(のぶ代)」と読ませるモノだったのだが、さすがに自重したらしい。
なお、この小山乃氏は上述した「釣り企画で声を当てた有志」その人である。しかもその声を当てた2008年3月当時は女子中学生だった*6というから、これまた驚きだ。

UTAUがフリーソフトであることから、テトの音声データも無料で入手可能。
長きに渡り改良が重ねられたため、多くのバージョンが存在する。
多少のスキルを必要とするもののタダで歌わせることができるため、数ある音声合成ソフトの中でも導入ハードルはかなり低い。
お財布に優しいこともあってか活動の幅も広く、実況・喋りなど、基本的に楽曲専用となっているミク以上に仕事を選ばない。
また、上述の出生の経緯を元にした楽曲「嘘の歌姫」「キ・セ・キ」も存在し、両方とも非常に人気が高い。



その後の躍進

  • 2009年
重音テトの普及活動のため、小山乃氏と上述の嘘企画スレッドでイラストを提供した「(せん)」氏*7が中心となり、公式サークル「ツインドリル」が発足した。

また、当項目冒頭の画像にもあったテトのロゴについて、クリプトン社の本物の製品と間違われるおそれがあるため、それに似せない独自のロゴを公募の上で決定。


出典:〔4a〕

  • 2010年
4月1日にツインドリルによるテト誕生日生放送が、更に同月3日~4日にかけて有志による重音テト聖誕祭24時間生放送が行われ、大盛況のうちに幕を閉じた。
その際に、ツインドリルからクリプトン社との契約が発表され、著作権を線氏・小山乃舞世氏の両名に残したままpiapro等にイラストを投稿できるようになった。
またカラオケ化の際、正式に「○○ feat.重音テト」のように表記できるようになったのも非常に大きいと思われる。
扱いについても以前と同じ様に亜種ではなく別キャラクターとして扱われることが決定。
それに伴い、商用窓口がクリプトン社に設けられ、フィギュア等の発売も夢ではなくなった。

また同じく4月1日、テト生誕2周年記念日にクリプトン社が重音テトを同社公認オリジナルキャラとして正式に許諾。
piaproへのイラスト投稿が可能になり*8、カラオケ楽曲への「重音テト」表記のアーティスト表示、また社による正式許諾キャラの証である「PCL」許諾取得。
これによりクリプトン社公認のオリジナルキャラとして、正式にミク達VOCALOIDと同等の立ち位置に存在する歌姫と認められた。

なお商用窓口こそクリプトン社だが、テトの著作権は線氏と小山乃氏の両名が所持したままであり、管理・運営もツインドリルが引き続き行っている。
権利諸々が全てクリプトン社へ渡った訳ではないので注意が必要。

  • 2011年
なんとクリプトン社の公式ゲーム「初音ミク -Project DIVA- 2nd」にて、モジュール配信としてではあるが参戦!!
お値段は300円。extend版でも使用可能。

  • 2013年
またまたなんと、北海道放送(HBC)の「春夏PRアシスタント」として起用!! 好評のため「秋冬」もそのまま務めることとなった。
2014年3月までの期間限定で、同局ロビーに等身大パネルが配置されたり、当時配信されていたHBCのアプリ「HBC聞き耳App」にもテトがあしらわれたりもした。

  • 2014年


出典:〔4b〕

線氏により、キャラクターイラストが刷新された。

  • 2015〜2016年
上述した「フィギュア等の発売も夢ではなくなった」の通り、2015年7月にねんどろいど化が発表!!
2016年3月に発売された。

  • 2017年
7月3日、ツインドリルがバーチャルシンガー「重音テト」の商標登録申請を発表。
目的は商用化された製品の権利保護であり、同人レベルでの使用を制限するものではないとの事。
翌年4月6日に商標登録出願が認められ、登録が完了。

  • 2018年
4月に誕生10周年を迎えた。
その記念として、公式フィギュア化や初音ミクシンフォニー2018-2019への起用も発表された。

  • 2021年
12月、個人開発のトークソフト「TALQu」用の音源が公開。テト史上初のトーク音声合成である。

  • 2023年
 そして 
 ここから新しく歩み始める 
 走り始める 

 その奇跡は速度をあげ 
 光を放ち 
 やがて輝く星となる 



出典: 画像は〔4c〕、煽り文は〔5〕

誕生15周年という節目のこの年、4月3日正午に突如として「Synthesizer V  AI  重音テト」(通称・重音テトSV)が発表された。
小山乃氏の声をもとにした全く新しい音源となっており、UTAUと比べると
◆AI型音声合成になり、歌い方が遥かに滑らかになった
◆得意な音域も「D3~G5」に拡大し、男声の音域にもある程度対応できるように
英語・中国語・スペイン語といった多言語歌唱も正式にこなせる
……など、表現力が大幅に強化されている。
それでいて、UTAU版から声色が離れすぎないという絶妙な調整。
公式イラストには新たに商業イラストレーターの「坂内 若」氏が起用され、より軍服然とした衣装に生まれ変わった。

VOCALOIDでこそない*10がテト史上初の有料ライブラリであり、とうとう歌声音源の商品化が実現。同年4月27日に発売された。
なお、SV版が登場したからといってUTAU版が廃止されるわけではなく、これまで通りUTAU版もダウンロード・使用可能である。

発売されるやいなや、たちまち歌声合成界隈で人気が爆発。一躍Synthesizer Vの大看板としても君臨することとなった。
しかもこれに合わせてUTAU版の人気も再燃し、どちらも人気オリジナル曲が次々と出現している。

また、10月10日にはSV版デザインでのねんどろいども発表され、翌5月に発売された。
11月30日には、小山乃氏が31歳の誕生日を迎え、テトと同い年となった。

  • 2024年
SV版発売の勢いは全く衰えず、年間通してヒットソングが次々に登場。

さらに、元ボカロPで「和楽器バンド」の亜沙が率いる「亜沙バンド」とのタッグによるリアルライブ「重音テト×亜沙 テトライブ2025」が2025年3月に開催予定であることが告知され、それに向けてのクラウドファンディングが7月19日から9月30日まで実施された。
開始から10日で目標額の700万円を達成し、最終的には目標額を1000万円以上上回る結果となった。

10月10日からは、約半月間秋葉原テト史上初のポップアップショップが開催!!
多数のファンが訪れ、連日大盛り上がりとなった。


発端はVIPの安価スレ、それもエイプリルフールネタと考えると、誰がこれほどのコンテンツにまで成長すると考えただろうか。まさに「嘘から出たまこと」を最大限に体現していると言っていい。
「偽りの歌姫」から「並び立つ歌姫」へと昇華され、なくてはならない存在になったテト。
彼女の歌は、これからも続いていくのだろう。


主なオリジナル曲

印はUTAU版の声、印はSynthesizer V版の声を使用。

  • 耳のあるロボットの唄
作詞・作曲・編曲 耳ロボP
重音テト生誕から2か月後に投稿された、テト初の歌詞付きのオリジナル曲*11。耳ロボPの名前の由来にもなっており、同氏の代表作。
歌姫としての重音テトの礎ともいうべき歌で、UTAUオリジナル曲の歴史においても非常に重要な意味を持つ。
投稿から1年後、重音テトおよびUTAUオリジナル曲として初の殿堂入り*12を達成し、同年に同じく初のカラオケ配信が実現した。
耳ロボPによりデータが公開されており、所謂「課題曲」として他音源によるカバー数はニコニコ動画で最多を誇る他、Mac音ナナの中の人やペッパー君によるカバーも存在する。

歌詞に登場する「phoneme(フォニーム)の列」「(隠された)マルコフ」「最尤(さいゆう)」「F0(エフゼロ)」「パラ言語」「枝を切れ」といったワードは音の機械合成の分野で使われる用語で、簡単に言えば重音テトを開発・アップデートするために必要となる技術のこと。
この歌は、試行錯誤を繰り返しながら「最尤(さいゆう)*13を探すエンジニア、ひいては苦心の果てに価値の創造を目指すクリエイターに向けて、その技術の結晶であるテトが愛とエールを贈る曲である。

  • 嘘の歌姫
作詞・編曲 telmin(テルミン)
原作曲・原作詞 悪ノP
上記「うそです」のすぐ下にある文章の元ネタ。
テトの誕生経緯について歌い上げた楽曲。多少脚色は入っているが、動画の演出やストーリー性のおかげで感動を呼ぶ仕上がりとなっている。
元々替え歌であり、原曲は悪ノPによる『悪ノ娘』。

  • おちゃめ機能
作詞・作曲・編曲 ゴジマジP
2010年の投稿以来、テトを代表する曲として長年親しまれているポップソング。
複数のバージョンがあるが、イラストを千愛、動画をキッカが担当した手描きPVが「本家」らしい。
なお、タイトルを「吹 っ 切 れ た」とするのは誤り。これは本来、当楽曲のインストを流しながら八頭身モナーが腰を振る動画(および、色々なキャラが首を左右に振りながら当楽曲を歌う派生動画)のものだが、そっちが有名になりすぎてタイトルを間違えて覚える人が続出した。
作者のゴジマジPは『ぽっぴっぽー』や『驫麤~とりぷるばか~』*14、ゲッダンで知られるラマーズPの別名義なのだが、 楽曲仕様についてのガイドライン によると、混同した場合世界から抹消されるおそれがあるので要注意。
その後、投稿から1年足らずで伝説入り*15を達成し、重音テトひいてはUTAUオリジナル曲初の伝説入り曲となった。

  • 吉原ラメント
作詞・作曲・編曲 亜沙
台詞・調声・映像 小山乃舞世
吉原遊郭の花魁がテーマの、ちょっぴりエロい演歌。
小山乃氏が動画制作・絵・途中の台詞パート、そして調声を担当した。
2013年に小説化が実現し翌2014年には伝説入りも達成。
2023年にはSVを使ったリメイク版も投稿された。

  • 短しよ乙女
作詞・作曲・編曲 デスおはぎ
映像 小山乃舞世
家出したり恋を求めたりと波乱万丈な乙女の一生を描いたバンドソング。
タイトルは大正時代の流行歌『ゴンドラの唄』の有名な一節から取られており、作者によれば「これしかないと思い、このフレーズを曲名に拝借」したとのこと。
こちらはPVを小山乃氏が担当している。
2016年には伝説入りを達成した。

  • ピーチミートパイ
作詞・作曲・編曲 hario
「毎晩ピーチミートパイを食する事を強いられているテトが、本当はフランスパンが食べたいのにと嘆きつつピーチミートパイを食べる」という、わかるようなわからないような内容のブルース。
その気だるさと哀愁をないまぜにしたような妖艶なメロディは一聴の価値あり。
「ピーチミートパイ」の方も労働、学業、家事、といった「やらなければならないこと」として読み替えるとそれっぽく聞こえることから、「疲れた現代人に捧ぐ哀歌」として評価が高い。

  • 性格悪くてすみません。
作詞・作曲・編曲 青谷
別名「謝罪P」の青谷氏による「謝罪シリーズ」のひとつで、捻じ曲がったような間奏ととノリのいいギターリフが特徴のロックンロール。
ひたすら逆張りしつつも一方で自己嫌悪を感じさせる、捻くれ者の歌で、疑心暗鬼を経験したことがあるならより沁みるかもしれない。
全部聞いた上で「本当は優しい人」と受け取るか、「そういう所も性格が悪い」と感じるかは聞き手次第。
氏にとって初の伝説入りとなったほか、YouTubeにてUTAU単独使用曲として初の1000万再生を達成している。

  • 右に曲ガール
作詞・作曲・編曲 はるふり
イラスト 非狐
ただ周囲に流されるままの生き方を嘆く自分と、いつでも我を貫く1人の少女の対比を、軽快なギターとドラムに乗せて歌った正統派ロックンロール。
足音からギターに切り替わるイントロや、サビに嵌め込まれたリズミカルなスキャットが印象的。
はるふり氏にとって初の伝説入りを達成した。
SV版でも公式デモソングとしてカバーされ、伴奏が本人の手でリアレンジされている。

  • 黒塗り世界宛て書簡
作詞・作曲・編曲 フロクロ
同じ音階の音(ピー音)を往復するような音色が特徴のピアノジャズ。
規制だらけのディストピアな世界観をテーマに、歌詞の多くが黒塗り・ピー音で消されているのが特徴。
特に後半部分のピー音はモールス信号として解釈できるようになっており、それを解読すると…?


  • イワシがつちからはえてくるんだ
作詞・作曲・編曲     
タイトルでもある「イワシがつちからはえてくる」を筆頭に、奇妙な内容を示唆する予言書のような歌詞と、ついつい何度も聴きたくなるふんわりした旋律が光るゴスペル。
「不気味なのに心地いい」「恐怖と安心感が同時にやってくる」「狂ってる世界で平穏に暮らしているよう」と評される摩訶不思議な魅力は、あらゆるボカロ曲を見渡しても(おそらく)唯一無二。
作詞作曲のところが空白だが、これは作者が自分について言及しないで欲しいと言うメッセージを残して姿を消してしまった為。ネット上ではその流れを汲む形で「作者の名前は出さない、クレジットしない」という暗黙の了解が出来上がっている。

  • ライアーダンサー
作詞・作曲・編曲 マサラダ
「嘘」をテーマとしつつも、それを前向きに肯定する歌詞や、終始ハイテンションなメロディが詰まった明るい作風の曲。
安っぽい作画でヌルヌルとしたダンスを披露するテトの姿は必見。
ただ、冒頭のテトはサングラスの下で涙目になっており、歌詞の内容もよくよく聴くと「適当に話を合わせる」→「嘘をついて自分を売り込む」→「一人きりの部屋で妄想に逃げる」と言った具合に嘘の度合いがどんどんエスカレートしており、本当に“嘘で良かった”のかが不明瞭という不穏要素も。
投稿翌年には伝説入りを達成している。

マサラダ氏のテト曲は、以降も『㋰責任集合体 』が伝説入りしている。やはりよく動くMVが好評。

作詞・作曲・編曲 ンバヂ
落書きのようなゆるい絵柄のドラゴンが、リズムに乗せて好きな惣菜を次々に発表する、ただそれだけの本当にタイトル通りの曲。
そんな超シンプルながらシュールかつ替え歌しやすい構成が大ウケし、ネットミーム化。
ンバヂ氏によるデータ公開も手伝い、惣菜以外の好きな物を歌わせる二次創作が大流行した。
1ヶ月後には続編として『みんなのコメント参考ドラゴン 』も投稿された。
詳細は単独項目を参照。

  • 人マニア
作詞・作曲・編曲 原口沙輔
2:07という短い時間の中に不協和音、叫び声、不安を煽るメロディを無秩序に詰め込んだEDM。
結果として、何度も聴きたくなる中毒性と、ジャンプスケア*16まみれのホラー風味とが奇跡のバランスで合体した一種の"電子ドラッグ"とも呼べる楽曲に仕上がっている。
中毒性の強い歌詞やメロディにより人気が爆発し、投稿から2ヶ月で伝説入りを達成するなど大流行を見せる。
その結果2024年2月、ニコニコ動画におけるUTAUオリジナル曲の再生数で、上記『おちゃめ機能』の記録を塗り替えて1位となった。

原口氏は当楽曲の後にも『ホントノ 』『イガク 』など、ヒット曲を連発している。
特に『イガク』は投稿から24時間足らずで伝説入り、「ボカコレ2024冬TOP100ランキング」優勝によりテト曲として初の「プロジェクトセカイ」実装と、次々に快挙を達成している。

  • オーバーライド
作詞・作曲・編曲 吉田夜世(やせい)
映像 シシア
(人ならざる存在である)重音テトが、人類のままならなさを煽り、嘲笑う縦ノリ系ロック。
ライアーダンサーと同様の軽快なメロディに加え、映像にはネッやIT用語がふんだんに盛り込まれており、わかる人ならクスっとできる、(ある意味での)懐メロでもある。
余談だが、夜世氏の手によって早期からコラージュ素材が提供された影響で、テトを別キャラに置き換えた改変動画が活発に創作されている。

  • メズマライザー
作詞・作曲・編曲 サツキ
映像 channel
非常にテンポの速いJポップ。初音ミクとのデュエット曲である。
最初から最後まで最高潮の勢いを維持したまま突っ走る狂気的なテンションのメロディと、ピクトグラムっぽいデザインのかわいいMVが相互作用を起こしたスルメ曲。
投稿直後から爆発的に流行し、投稿から僅か14日で伝説入りを達成したほか、YouTubeでは投稿から204日というボカロ史上最速かつ史上初の年内1億再生を達成した。
更に、ぬいぐるみやバッジなどの公式グッズ化も決定。
MVはドスケベな初音ミクに定評のあるchannelが制作。同氏にとって初めてのオリジナル曲のMV制作と相成った。
ちなみに、サツキ氏、channel氏の両名は「催眠術(メズマライズ)」というキーワードを取り決めた以外はほとんど制作上のコミュニケーションを取らずに製作していたそうで、ゆえに『メズマライザー』という曲の全貌は自分たち二人を含め誰も知らないとのこと。
海外ファンの間ではいつの間にか亞北ネルが黒幕ということになっていた。

この曲の大ヒットを受けてか、後にサツキ氏は同じくミクとのデュエット曲で「流行り廃りとそれに翻弄される創作者」をテーマにした『オブソミート 』を投稿している。

  • テトリス
作詞・作曲・編曲 柊マグネタイト
イラスト 瀬奈悠太
テトリスのBGMとして有名なロシア民謡『コロブチカ』を大胆にEDMアレンジした楽曲。権利関係の諸々はクリアしているのでご安心を。
ニュース番組風のトンチキな字幕を背景にぐるぐる回り続けるデフォルメのテトというネタっぽいMVとは裏腹に、躁鬱の心境を歌ったようなテトリス要素ほぼ0の病み系の歌詞が特徴的。その手の症状を経験した人にはかなり刺さるはず。
韻を踏んだ小気味良いリリックも中毒性をプラスしている。
やはり意味が通るかよりリズムに乗るかが重視されている、平成らしさも残る楽曲。
なおMVには「どんなマイクも握ります」「あなたは本当に愚かです」「【朗報】レンタルDVD延長料金5000兆円突破!!!!」といった文言が流れるなど、テトの設定を意識したような小ネタも挟まっている。
YouTubeでは歌ってみた動画よりゲームのテトリスの切り抜き動画のbgmとしての使用が圧倒的に多い。
柊マグネタイト氏と言えばのイメージを塗り替えた楽曲とも言える。




余談

◆勘違いされやすいが「VOCALOID」という語は、世の中にたくさんある音声合成ソフトの総称ではない。
基本的に「ヤマハの開発した音声合成技術・ソフトウェアと、それを利用した音声ライブラリ(クリプトン社製の音声合成キャラクターも含まれる)」の事だけを指す。
つまり、テトは動作するソフトウェアが違う(UTAU・Synthesizer V)上、クリプトン社による企画でもないので、VOCALOIDと呼ぶのは厳密には間違いなので注意しよう。
VOCALOID製作元のヤマハ・クリプトンも、VOCALOIDカテゴリで投稿してもいいよって言ってるけどね!

◆当項目のセリフ文にもある通り、テトの一人称を「」とすることが一般的になっているが、これは決め台詞の呼びかけが「君」で、その元ネタ発言者の一人称が「僕」であることからの連想だろう。
女声としてはやや低めの声なことも影響しているか。
一応、公式プロフィールでは決まっていないので、各ユーザーが自由に決めても構わない。

◆「重音」は“じゅうおん”ではなく“かさね”と読む。
そもそも誕生経緯からして、初音(はつね)ミクや鏡音(かがみね)リン&レンに似せるために作られたので、名前の形式も彼女らに合わせてあるのだ。
……が、2024年現在でも「じゅうおん」「おもね」などと誤読している人がそこそこいる。楽器の演奏方法に「重音(じゅうおん)奏法」というものがあるため、そこから混ざった可能性もあるだろうか?

◆テトを男体化した「重音テッド」という派生キャラも存在する。


出典:〔4d〕

もともとはニコニコ動画の一ユーザー(既に退会済み)が創作した存在であり、テトの声を加工して男風にしたもののため、独立した音声ライブラリがあるわけではない。
後にツインドリルにより公認化され、さらにテッドの権利もツインドリルに移っているため、テト同様に自由な創作ができるようになっている。

◆重音テトの成功を受け、VIPPER達はその後もボカロ界隈を釣るために偽VOCALOID(通称・VIPPALOID)を次々と作り上げた。
2008年11月に「欲音ルコ」、2009年10月に「波音リツ」、そして2010年6月に「健音テイ」が生まれ、それらもまたテト同様にUTAU音源となり、ファンからはテトと共に愛されている。


追記・修正たのんだお!



◆当項目で引用した著作物の出典

〔1〕重音テト・オフィシャルサイト https://kasaneteto.jp/history/about_history.html
運営者: ツインドリル, 2024年7月25日閲覧

〔2〕テキスト「嘘の歌姫」, piapro https://piapro.jp/content/q94jk1upbe9hex6y
作詞者: テルミン, サイト運営者: クリプトン・フューチャー・メディア(株), 2024年7月25日閲覧
作者氏名表示、かつ非営利で利用可

〔3〕ボーカロイドテト, 2ちゃんねる (旧リンク)http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1206938220/
(現リンク・過去ログ)https://kako.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1206938220/
運営者: Loki Technology, Inc., 2024年12月5日閲覧

〔4〕重音テト・オフィシャルサイト https://kasaneteto.jp/illust_logo/
運営者: ツインドリル, 2024年7月17日閲覧
公式配布物をガイドラインに則り使用
〔4a〕デザイナー: 市井, 〔4b〕イラスト: 線, 〔4c〕イラスト: 坂内 若, 〔4d〕イラスト: さくるり

〔5〕2023/3/31_ツインドリル生放送 テトたん2023 アーカイブ https://www.youtube.com/live/Gdn_d8AhoIM?t=10909s
YouTube, 重音テトおふぃしゃる「ツインドリル」youtube支部, 2024年7月25日閲覧

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最終更新:2025年04月02日 00:12

*1 NHKの「みんなのうた」にて放送された、同名の楽曲に由来する。

*2 何の略かは定まっていない。「デトロイト・メタル・シティ」か「デビルメイクライ」のどちらかと思われる。

*3 提案者から取り下げ提案が出たが、安価での決定のため設定自体は尊重されている。

*4 上の「プロフィール」ではいくつか「ドラえもん」にリンクが飛んでいるものがあるが、それもそのはず、小山乃舞世は「大山のぶ代」のもじりであり、決め台詞も本来はドラえもんの発言を流用したものだからである。

*5 音MAD動画や、人力VOCALOIDから派生して作られた。発端についてはニコニコ大百科の「炉利音コム」の記事に詳しい。

*6 さらに中学校を卒業したばかりで、高校入学直前の春休み中だった。

*7 この名義は、嘘企画スレッドにて公式画像最終案の線画を提供したことに由来する。

*8 楽曲についてはこれより前に許諾が出ており、他VOCALOID達とのコラボ楽曲の投稿も許諾を得ていた。

*9 TALQuの開発者からも、TALQu3に正式対応していない音源の継続使用はできるだけやめてほしい旨が語られている。

*10 実は2012~2013年頃に、本当にVOCALOID化するための企画が動いていたのだが、当時のVOCALOID技術ではUTAUの声に近づけるのが困難だと判明し、企画が流れてしまっていた。

*11 歌詞無しも含めると『テトでGO!』(oops404)が初のオリジナル曲。

*12 VOCALOID等の音声合成ソフトウェアを使用した楽曲がニコニコ動画で10万回以上再生されること。

*13 もっとも良いこと。考えられる上で限りなく完璧に近いこと。

*14 メインコーラス初音ミク、サブコーラステト、ピコピコ音亞北ネルで、テト参加楽曲の初期の代表作の一つ。2020年に伝説入り達成。

*15 VOCALOID等の音声合成ソフトウェアを使用した楽曲がニコニコ動画で100万回以上再生されること。

*16 びっくりさせる仕掛けのこと